2023年2月11日更新業種別M&A

SaaS業界のM&A最新動向とは?費用の相場や積極買収企業も解説!

SaaSの多様化に伴い、今後もさまざまなニーズを見据えたM&Aが実施される見込みです。SaaS業界でM&Aを考える際は、業界動向を分析しつつ、今後の展望を見据えることが大切です。今回は、SaaS業界のM&Aの最新動向や買収・売却事例を紹介します。

目次
  1. SaaS業界とは
  2. SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功ポイント
  3. SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡で注意したいポイント
  4. SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の相場
  5. SaaS業界でM&A・買収・売却・譲渡を行うメリット
  6. SaaS業界でM&A・買収・売却・譲渡を行うデメリット
  7. SaaS業界におけるM&Aで人気のあるタイプ
  8. SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功事例6選
  9. SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の失敗事例
  10. SaaS業界のM&A・買収に積極的な企業一覧
  11. SaaS業界のM&Aまとめ
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SaaSのM&A・事業承継

SaaS業界とは

近年、事業の強化・拡大や新規事業への参入などを目的に、さまざまな業界でM&Aが活発化しています。

SaaS業界も例外ではなく、さまざまな目的のもとでM&Aを検討する企業が増加しており、双方の技術・ノウハウを生かしてサービス体制の強化を図るケースや、新しい技術を取り入れて新分野に参入するケースなど、M&Aが盛んに行われている状況です。
 

SaaSとは

そもそもSaaS(Software as a Service)業界とは、ネットワークを経由してソフトウェアを利用できるサービスを提供する企業群のことです。

従来は各ユーザーがパソコンにソフトウェアをインストールしてサービスを利用していましたが、現在ではSaaSの登場によりネットワーク経由でサービスを利用できます。

このシステムは、サーバーがインターネットを経由してサービスを提供する仕組みです。利用者からすると、ネットワーク環境さえあれば手軽にサービスを利用できる点がメリットといえます。

IaaS・PaaS

SaaSと類似する言葉に「IaaS」がありますが、両者は異なる意味を持ちます。IaaSとは、「イァース」や「アイアース」などと呼ばれ、「Infrastructure as a Service」の頭文字を取った略語です。

IaaSは、「情報システムを稼動させるために必要な仮想サーバをはじめとする機材やネットワークなどのインフラを、インターネット上のサービスとして提供する形態」を意味します。

SaaSやIaaSと類似する言葉には「PaaS」もあります。こちらも前述した2つの言葉とは意味が異なるため、併せて把握しておくとよいでしょう。

PaaSとは、「Platform as a Service」の頭文字を取った略語であり、「パース」と呼ばれています。

「アプリケーションソフトを稼動させるためのハードウェアおよび、OSなどのプラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供する形態」を意味する言葉です。

SaaSが発展した理由

一般的にSaaSにおけるソフトウェアの保守・点検などは、サービス提供者が行います。つまり、利用者は基本的にネットワーク経由でサービスを利用するのみであり、ソフトウェアの保守・点検を自身で行う必要がありません。

また、ソフトウェアの更新・アップデートなどの手間も発生せず、常に最新状態でソフトウェアを利用できるため、特に企業からすると非常にメリットの大きいサービスです。企業が自社でソフトウェアの保守・点検などを行う必要がないため、設備に関するコストを大幅に削減できます。

そして、ソフトウェアの利用に関する手間が大きく減少することから、企業では労働生産性の向上が期待できます。これらのメリットによって、SaaSは個人・企業の双方で大きなニーズを抱えている状況です。ニーズの増加に伴い、近年のSaaS業界ではサービス内容が多様化するなど、飛躍的な発展が目立っています。

SaaS業界の特徴

SaaSの利用により、企業では労働生産性を向上させられるため、特に業務効率化が求められるビジネス領域にて、SaaSのニーズが急速に高まっている状況です。これに伴い、SaaS事業を手掛ける会社では、各ビジネス領域に特化したサービスを提供し、需要の取り込みを進めることが急務とされています。

現在、SaaS業界が提供するサービスは、財務会計・人事・データ分析などさまざまなビジネス領域に特化しています。SaaS事業を行う会社は、それぞれのビジネス分野に特化したサービスを通じて、企業側に効果的なソリューションを提供している状況です。

SaaS業界の最新動向

昨今のSaaS分野では、ネットワークでの情報共有・コミュニケーションを行う「グループウェア」や、顧客の一元管理を自動化する「マーケティングオートメーション(MA)」などのニーズが急上昇しています。

グループウェアとは、メールやファイルなどの共有ツールのことであり、情報共有やコミュニケーションを効率的に進める際に必要不可欠です。また、マーケティングオートメーションでは、見込み顧客に関する情報を一元管理できるため、多くの顧客を抱えている企業の作業効率を格段に向上させられます。

いずれも日常業務の効率化に大きく貢献する分野であり、多くの企業で上記のサービスを提供するSaaSの導入が進んでいます。なお、今後はあらゆるサービスのクラウド化が予想されており、ニーズの高まりに合わせてSaaS市場はますます成長していく見とおしです。

実際に、富士キメラ総研の調査によると、国内におけるSaaSの市場規模は、2017年時点の3,871億円から2022年度には6,412億円、2024年度には約1兆1,200億円にまで拡大すると予測されています。

さらに、SaaS市場の拡大に合わせて国内SaaSスタートアップによる資金調達金額も増加しています。ユーザーベースの調査によると、資金調達金額の推移は、2017年の約400億円・2018年の約570億円から、2019年には約750億円にまで達している状況です。

参考:「デジタルマーケティング、コラボレーション、ミドルウェアの伸びが大きいソフトウェア(パッケージ/SaaS)の国内市場を調査」(富士キメラ総研)
   「ソフトウェア(パッケージ/SaaS)の国内市場を調査」(富士キメラ総研)
   SaaSスタートアップの動向(ユーザベース)

SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡動向

SaaS業界では、ニーズの高まりを踏まえて、サービス体制の強化・新分野への参入を目的とするM&Aの実施が増加しています。例えば、「同業者同士のM&Aにより、双方の技術・ノウハウを生かす形でサービス体制を強化する」といった事例が典型的です。

特にIT関連分野では、ニーズの傾向が目まぐるしく変わるため、市場の動向や需要の増加などに関して、自社ですべてに対応することは難しいです。こうした状況では、「他社とのM&Aにより事業の強化・拡大につなげて、需要の取り込みを進める」選択肢が効果的だとされています。

なお、新分野へ参入したい場合、自社でゼロから事業に着手すれば、多くの時間・手間がかかります。そのため、「特定分野ですでに事業を軌道に乗せている企業とM&Aを行い、比較的短期間で新規参入を果たして需要の取り込みを狙う」ケースも増加中です。

ニーズの動向に合わせて、SaaS業界では、今後もM&Aが加速する可能性があります。

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SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功ポイント

多くの企業がM&Aの実施を検討していますが、成功させるにはポイントを押さえて実践しなければなりません。本章では、SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功ポイントを、「売却・買収」の2つのケースに分けて取り上げます。

売却を行うケース

売却を成功させるには、相手に自社の魅力を十分にアピールしなければなりません。買い手側から見て魅力的な事業やサービスを自社が手掛けていれば、多くの企業が買収に名乗り出る可能性があります。希望どおりの条件で売却するためにも、自社の魅力・強みを理解してもらう必要があるのです。

特にSaaS業界の場合、新分野への参入やサービス体制の強化を目的にM&Aを行うケースが目立っています。そのため、魅力的なサービス体制や技術などを有していれば、多くの買い手が見つかりやすいです。具体的には、自社が特化する事業やエリアなどの魅力・強みをわかりやすく伝える準備を進めましょう。

買収を行うケース

SaaS業界では、双方の技術・ノウハウを生かす形でシナジー効果の創出を図るM&Aが多く見られます。こうした目的を持つ買収を成功させるには、自社が強化すべき事業や分野を事前に整理したうえで、いかなる企業を買収するべきかを慎重に検討しなければなりません。

このとき、強化したい分野などの目的がはっきりしていれば、適切な相手企業を探しやすくなります。ニーズの動向も踏まえながら、「いかなる部分を強化するべきか」「いかなる分野に進出するべきか」といったポイントを再確認して、買収すべき企業を検討しましょう。

売却・買収を問わず、M&Aでは専門家のサポートを得ながら手続きを進めることも成功ポイントのひとつです。M&Aを進めるには税務・財務・法務だけでなく、SaaS業界特有の専門知識も求められます。希望どおりの条件で取引するには交渉能力も必要とされるため、経営者のみで進めるとリスクが大きくなります

M&A仲介会社などの専門家に依頼してサポートしてもらうことで、リスクを軽減しながら成功確率を高められます。SaaS業界のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。

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通常、M&Aでは半年〜1年程度の期間が必要とされていますが、M&A総合研究所ではスピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月での成約実績も有しています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ、じょう)。相談料は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡で注意したいポイント

M&Aにあたっては、特に「目的を明確にすること」「対象企業を丁寧に選ぶこと」の2点に注意しましょう。目的が明確化していれば、具体的なM&A戦略のもとで適切なM&Aスキームを検討できるため、方向性が定まりやすいです。

一方で、目的が不明確であれば、M&A実施後に想定していた効果が得られない可能性が高まります。こうしたトラブルを防ぐには、「M&Aにより実現したいこと」をはっきりさせると良いでしょう。また、M&Aにより売却・買収を行う以上、対象となる企業は丁寧に選ぶ必要があります。

そもそもM&Aでは、売却側であれば経営を任せることになる一方で、買収側であれば相手企業を傘下に迎えます。いずれの場合でも、相手企業には信頼できる企業を選ばなければなりません。具体的には、相手企業の事業内容・方針などを分析したうえで、自社との相性を慎重に判断する必要があります。

そして、M&A相手としてふさわしい企業が見つかったら、アプローチを早めに行うと良いでしょう。アプローチを早期に行うと、他の企業に先を越されるリスクを回避できます。

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SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の相場

SaaSのM&A・事業承継
SaaSのM&A・事業承継

SaaS業界では、技術やシステムの多様化や需要の動向などに応じて、M&A事例が多様化しています。そのため、M&Aの相場・費用を一概に判断することは非常に困難です。とはいえ、M&Aに際して相場・費用をまったく考慮しないとなると、想定外の費用が発生しかねません。

上記の事態を防ぐためにも、自社と類似する企業のM&A事例を分析し、相場・費用の目安を付けておく必要があります。具体的には、M&A事例の目的・M&A当事者となる会社の規模・対象事業の規模・会社の業績・従業員の数・M&Aスキームなどを確認し、自社の状況と類似する事例を徹底的に分析すると良いでしょう。

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SaaS業界でM&A・買収・売却・譲渡を行うメリット

基本情報を把握したところで、SaaS業界でM&Aを行うメリットも把握しておきましょう。SaaS業界を対象とするM&Aは、当事会社の双方にさまざまな効果を与えます。ここでは、SaaS業界でM&Aを行うメリットをまとめました。はじめに紹介するのは、譲渡側のメリットです。

譲渡側のメリット

SaaS業界のM&Aで譲渡側が期待できるメリットは、主に以下のとおりです。

  • 売却によりEXITを果たせる(スタートアップ企業など)
  • 事業を存続させられる
  • 後継者不在の問題を解決できる
  • 従業員の雇用を維持できる
  • 売却利益をもとにリタイアを実現できる

上記にメリットを感じる経営者の方は、自社であるSaaS企業の譲渡を検討すると良いでしょう。

譲受側のメリット

SaaS業界のM&Aで譲受側が期待できるメリットには、主に以下のような項目が挙げられます。

  • 将来性の高いアイデア・事業を取得できる
  • 関連事業とのシナジー効果を獲得できる
  • 活況のSaaS市場に新規参入できる
  • 事業成長のための時間を短縮できる
  • 売り手が繰越欠損金による節税対策を講じられる
  • 自社の弱点を補強できる
  • 人材・特許・ノウハウなど技術力を吸収できる
  • ライバル企業を取り込める

上記にメリットを感じる経営者の方は、SaaS企業の譲受を積極的に検討すると良いでしょう。

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SaaS業界でM&A・買収・売却・譲渡を行うデメリット

SaaS業界のM&Aではさまざまな恩恵が得られるものの、その一方でデメリットも少なからず存在するため注意が必要です。本章では、譲渡側・譲受側に分けて詳しく取り上げます。

譲渡側のデメリット

SaaS業界のM&Aで譲渡側が問題視するデメリットは、主に以下のとおりです。

  • M&Aに不満を抱いた従業員が離職するリスク
  • 従業員の待遇や雇用条件が悪化するおそれ
  • 経営から離脱し肩書を消失する

上記のデメリットは、主として相手企業との交渉プロセスにおける失敗が原因となり生じます。交渉をスムーズに成功させるためにも、M&Aによる譲渡の際は専門家のサポートを得ると良いです。

譲受側のデメリット

SaaS業界のM&Aで譲受側が問題視するデメリットは、主に以下のような項目です。

  • 想定していたシナジー効果が得られないリスク
  • 生産性が低下するうえに買収費用ばかりがかさむ可能性
  • 譲渡側企業の人材流出が起こるおそれ

上記のデメリットは、主にマッチングおよび経営統合プロセス(PMI)の失敗が原因となり発生します。自社が譲受するにふさわしい相手企業を見つけるため、そして経営統合をスムーズに進めてメリットを最大限に獲得するためにも、譲渡側と同様に専門家のサポートを得ると良いでしょう。

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SaaS業界におけるM&Aで人気のあるタイプ

昨今のSaaS業界を対象とするM&Aにおいて、買収側企業からは以下の分野が特に注目を集めています。

  • マーケティング
  • データ解析
  • 文章・プロセス管理
  • EC(Electronic Commerce:電子商取引)
  • ストレージ・システム管理
  • 請求書作成
  • セキュリティ

上記の分野は、近年急激に需要が高まっており市場の拡大が続いていることで共通点です。魅力的に感じる買収候補企業が多いため、これらの分野を手掛けているSaaS企業であれば、満足のいくM&A取引を行える可能性が高いと考えられます。

SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功事例6選

本章では、SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功事例として、以下の6ケースを取り上げます。

  1. 日立製作所によるFusionex International PlcのSaaS事業取得
  2. Siderによるオプトベンチャーズを引受先とした第三者割当増資
  3. SAPによるQualtricsの買収
  4. 凸版印刷によるMonoposの子会社化
  5. ビットアイルによるAXLBITの子会社化
  6. KDDIによるServisionの子会社化

これらの成功事例のポイントをつかんで、自社のM&A戦略の策定にお役立てください。

①日立製作所によるFusionex International PlcのSaaS事業取得

日立製作所

日立製作所

出典:https://www.hitachi.co.jp/

2020年4月、日立製作所は、Fusionex International PlcのSaaS事業を承継した新会社を完全子会社化しました。本件買収価格は非公開です。買収側の日立製作所は、日本の電機メーカーであり、日立グループの中核企業です。世界有数の総合電機メーカーとして知られています。

対する売却側のFusionex International Plcは、マレーシアに主な拠点を持つ企業で、AI・ビッグデータのマーケットリーダーとしてアジア地域を中心にAIやデータアナリティクスのSaaS型サービスを提供しています。

本件M&Aの目的は、データサイエンティストやAI開発・構築エンジニアといったデジタル人財の獲得などによる、フロント機能およびデリバリー機能の強化にあります。

なお、日立製作所は従来、「2021中期経営計画」において社会イノベーション事業のグローバルリーダーを目指していました。ITセクターでは、北米・アジアを重点地域として積極的な成長投資を行う計画を掲げており、今回の投資はその一環であると発表されています。

②Siderによるオプトベンチャーズを引受先とした第三者割当増資

Sider

Sider

出典:https://sider.review/ja

2019年2月、コードレビュー自動化ツールの「Sider」を運営するSiderは、ベンチャーキャピタル事業などを行うオプトベンチャーズを引受先として第三者割当増資を実施しました。同時に、GitHub Enterpriseに対応したオンプレミス版のSider Enterpriseの正式リリースも発表しています。

今回の資金調達により、Siderは、世界各地への普及や大手企業への普及を目指すと発表しています。Siderは、ソフトウェアエンジニアがプログラミングに集中できるように作業を効率化する点に焦点を置きながら事業を展開する企業です。

具体的には、ソフトウェア開発者の業務の15%以上を占めるコードレビューを自動化して、レビュー業務の時間削減・ソフトウェアの品質向上につなげました。こうしたコードレビュー自動化ツールが、「Sider」です。

Siderは、今回の資金調達により販売活動の拡大などを加速化させるとも発表しており、「Sider」のさらなる普及が期待されています。

③SAPによるQualtricsの買収

SAP

SAP

出典:https://www.sap.com/japan/index.html?url_id=auto_hp_redirect_japan

これは海外企業のM&A事例です。2018年11月、ドイツに本社を構えるヨーロッパ最大級のソフトウェア会社のSAPは、オンライン調査サービスなどを手掛けるQualtricsの買収を発表しました。SaaS企業の買収としては最大規模の80億ドルでの買収となり、翌年1月にQualtricsの買収を完了させています。

SAPは、企業がデスクトップ環境やモバイル環境などで効率的な協業や的確なビジネス判断を行うために幅広いソリューションを提供する企業です。世界各国で約42万5,000社の企業がSAPのアプリケーション・サービスを利用しており、ヨーロッパ最大級のソフトウェア会社としてさまざまな事業を展開しています。

対する売却側のQualtricsは、エクスペリエンスマネージメントソフトウェア分野の世界的なパイオニアとして知られる企業です。QualtricsをSAPが買収したことで、SAPソフトウェアの業務データとQualtricsのエクスペリエンスデータが融合し、エクスペリエンス経済の活性化が進むとされています。

④凸版印刷によるMonoposの子会社化

凸版印刷

凸版印刷

出典:https://www.toppan.co.jp/

2018年8月、総合印刷大手の凸版印刷は、ECシステムの提供などを手掛けるMonoposを買収しました(買収価格は非公開)。 Monoposは、IROYAが持つリアル店舗とオンラインサイトを統合するオムニチャネルの導入支援サービスである「Monopos」事業が分割される形で2018年8月1日に設立された企業です。

本件買収は、凸版印刷がIROYAと合意したことで実現しました。凸版印刷とMonoposは、凸版印刷のデジタルマーケティング分野における企画力・ノウハウと、Monoposのオムニチャネル化のノウハウなどを生かして、リテールテックサービスの普及や顧客価値の向上などを目指すとしています。

⑤ビットアイルによるAXLBITの子会社化

エクイニクス

エクイニクス

出典:https://www.equinix.co.jp/

2013年2月、ビットアイル(後のビットアイル・エクイニクス:2017年にエクイニクス・ジャパンに合併して解散)は、SaaSプラットフォームサービスを提供するAXLBITの子会社化を発表しました。買収価格は非公開です。

ビットアイルは、総合ITアウトソーシング事業を通じて、データセンターサービス・クラウドサービス・アプリケーション開発支援サービスなどを展開する企業です。多様化するニーズへの対応としてクラウドコンピューティング分野でのサービス強化を進めており、この取り組みの中でAXLBITを子会社化しています。

対する売却側のAXLBITは、クラウド活用のコンサルティングやSaaSプラットフォームサービスの提供などを手掛けており、豊富な支援実績に強みがあります。AXLBITの子会社化により、ビットアイルではグループの強みとAXLBITの技術・ノウハウを融合し、良質なサービスの提供・開発スピードの向上を図っています。

なお、本件M&Aが生み出したシナジー効果は、ビットアイルを合併したエクイニクス・ジャパンにも受け継がれていると考えられています。

⑥KDDIによるServisionの子会社化

KDDI

KDDI

出典:https://www.kddi.com/

2007年4月、KDDIは、ホスティングサービス「CPI」の運営を行うServisionの子会社化を発表しました(買収価格は非公開)。 当時、ICT環境は大きく進化しつつある状況で、ICTソリューションプロバイダーにはプラットフォームの提供に加えて幅広いサービスやソリューションの提供などが求められていました。

こうした状況の中で、KDDIによるServisionの子会社化が実施されています。レンタルサーバー事業者であるServisionは、国内最大規模のICTリテラシーの高い代理店網を整えていた企業です。

Servisionの子会社化により、KDDIは自社の携帯電話サービスなどのICTソリューション力を強化し、より魅力的なサービスの展開につなげています。

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SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の失敗事例

SaaS業界のM&Aでは、現段階で目立った失敗事例は報告されていません。しかし、過去には、優秀な従業員の離職を起こしてしまったSaaS企業が少なからず存在します。所属企業が変更になり待遇・環境などに変化が生じたことで不満を持った従業員が離職するケースは、SaaS業界のM&Aにおいて珍しくありません。

こうしたトラブルは、経営者からすると「M&Aで期待していたメリットを得られず、人手不足に陥ってしまい、事業運営が困難になりかねない」デメリットを引き起こします。人材流出を防ぐには、M&Aにおいて、待遇をはじめとする条件面・就労環境面などに十分に配慮しなければなりません。

加えて、自社と相性の良い相手企業を選ぶことも大切です。具体的には、意思決定のスピード感・志の高さ・組織の雰囲気などが同じ方向を向いている企業を選ぶと、M&A後に従業員から不満があがりにくくなります。企業文化や経営者同士の人間的な相性も吟味したうえで、最適なM&A相手を選びましょう。

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SaaS業界のM&A・買収に積極的な企業一覧

本章では、SaaS業界の積極買収企業を5社紹介します。これらの、企業はSaaS業界を対象とするM&Aで有力なパートナー候補に位置づけられているため、概要を把握して自身のM&A戦略策定にお役立てください。

企業名 事業概要 アピールポイント
ナレッジスイート 中堅中小企業向けCRM/SFAクラウドサービス「ナレッジスイート」などのSaaSを提供するDX事業および、システム開発やIT技術者派遣を行うBPO事業を展開 ・中小企業に的を絞ったCRM/SFAの導入や構築をサポートすることで安定した業績を実現可能
・M&Aのほか、出資、事業提携も含めて迅速に判断可能
ウィクレソフト・ジャパン Microsoft社のクラウドサービス導入コンサルティングのほか、構築サービスを行う「MS事業」、会計/生産管理/販売管理などシステム開発を行う「SI事業」、エンジニア派遣の「SES事業」などを展開 ・世界23拠点のネットワークを持つWicresoftグループの日本法人
・グループ力を生かしたエンジニアリソースやノウハウが特長
・WicresoftはMicrosoft社とパートナー関係を構築
グッドパッチ ・サービスや事業のUI/UXデザインを手掛け、戦略策定からソフトウェア開発まで一気通貫でサポート
・クラウドソーシング、キャリア支援などデザイン領域のさまざまなニーズに対応する自社プロダクトも展開
・国内では希少なデザイン専門人材が約200名在籍
・デザインの力で顧客開拓、単価向上、サービス品質向上による価値提供が可能
・広報、組織デザイン、上場準備の面でも経験にもとづく知見を保有
NHN テコラス ・創業から20年間にわたり、ITインフラ・ソリューションを提供
・パブリッククラウドと物理サーバーのいずれにも精通したプロフェッショナルとして、顧客のビジネスに新たな価値を提供
過去3,000社以上、10,000台を超えるサーバーを運用してきた実績とノウハウ
イグニション・ポイント ・戦略、企画から実行までを手掛けるコンサルティングのほか、AI/クラウド/ビッグデータ/IoTなどの先端テクノロジーを活用した自社事業展開を行う"ハイブリッド"スタートアップ ・「働きがいのある会社」ベストカンパニーに4年連続で選出
・6期連続で売上前年比150%超えのイノベーションファーム
・マッキンゼー、BCG、ATカーニー、アクセンチュアなどグローバルファーム出身者が集う

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SaaS業界のM&Aまとめ

企業の労働生産性の向上につながるSaaSは、近年さまざまなビジネス領域で導入されています。あらゆる分野での業務効率化を目的として、今後ともSaaSの需要はますます増加していく見込みです。

こうした動向の中、M&Aによって事業の強化・拡大やサービス体制の強化などを実現して、需要の取り込みを図るSaaS事業会社が増加しています。M&Aを用いれば、両社の技術・ノウハウを生かす形で事業の発展につなげられるため、さまざまなニーズへの対応力強化も期待可能です。

今後はSaaSの多様化に伴い、さまざまなニーズを見据えたM&Aが加速する可能性があります。SaaS業界でM&Aを考える際は、業界動向やM&A事例を分析しながら、今後の展望を見据えた検討を進めましょう。

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木材業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

この記事では、木材業界のM&A動向について説明します。木材業界では、専門技術の獲得、コスト効率の向上のためにM&Aが活用されています。木材業界におけるM&A・売却・買収事...

漁業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

漁業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

魚介類などの海洋資源は私達の生活に欠かせないものですが、漁業業界は厳しい市場環境が続いています。そのような中で、事業継続のためのM&Aを模索する動きも出てきています。この記事では、漁業業...

農業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

農業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

農業業界では担い手の高齢化と後継者不足による廃業危機に加えて、新型コロナをきっかけとした出荷額の低迷で経営状態が不安定化し、M&Aを検討せざるを得ないところが増えています。この記事では、...

海運業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

海運業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

この記事では、海運業界の動向を説明したうえで、海運業界でM&Aを行うメリットを解説していきます。近年のM&A・売却・買収事例も紹介して、M&A動向についても紹介していきま...

老人ホームの事業承継の流れや成功のポイントは?メリットや相談先も解説!

老人ホームの事業承継の流れや成功のポイントは?メリットや相談先も解説!

近年は老人ホームをはじめとした介護福祉業界においても、後継者不在による廃業・倒産を防ぐため事例の事業承継が盛んに行われているのが現状です。本記事では老人ホームの事業承継の流れや成功のポイントを紹...

食品業界における事業承継の動向や事例を徹底解説!手続き方法や注意点は?

食品業界における事業承継の動向や事例を徹底解説!手続き方法や注意点は?

近年は後継者不足や原材料価格の高騰、老朽化などの問題を解消して事業を継続するために、積極的に事業承継を手掛ける動向の企業が増加しています。 本記事では食品業界における事業承継の動向や事例を...

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