2021年6月11日更新事業承継

事業承継とは?成功のための課題、方法、メリット、流れなどを徹底解説

事業承継とは現在の経営者が会社・事業を後継者に引き継ぐ行為です。親族内承継・親族外承継・M&Aによる承継・株式上場に分けられますが、最適な方法は各事情により異なるため注意しましょう。本記事では、事業承継を成功させるための課題・方法・メリット・流れを解説します。

目次
  1. 事業承継とは?基礎知識を確認
  2. 事業承継で引き継ぐ要素
  3. 事業承継の方法と引き継ぎ先
  4. 中小企業が事業承継を成功させるための課題
  5. 事業承継の失敗要因と注意点
  6. 事業承継の流れや進め方・手順
  7. 事業承継のタイミングと税金
  8. 事業承継で活用できる各種制度・補助金
  9. 事業承継の相談先
  10. 事業承継のまとめ
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事業承継とは?基礎知識を確認

事業承継とは?基礎知識を確認

はじめに、事業承継の意味や現状について取り上げます。特に事業承継を検討している方は、しっかりと現状や傾向を把握しておきましょう。

事業承継の意味

事業承継とは、現在の経営者が会社・事業を後継者に引き継ぐ行為のことです。特に中小企業では、それまで事業を拡大してきた社長の経営手腕や存在そのものを独自の強みとしているケースが多く、事業承継の相手先(後継者)選びは非常に重要な課題とされています。

もしも不適任な人材を後継者に選んでしまえば、事業承継後に業績が悪化するおそれがあります。こうした後継者問題以外にも、事業承継では膨大な課題を解決する必要があるため、専門家からサポートを受けながら手続きを慎重に進めると良いでしょう。

事業継承との相違点

事業承継と類似する言葉に事業継承が挙げられますが、ここでは両者の相違点を取り上げます。前提として、それぞれの言葉の意味は以下のとおりです。

  • 承継:前の代からのものを受け継ぐこと。
  • 継承:前代の人の身分・仕事・財産などを受け継ぐこと。

「承継」が全般的な要素を受け継ぐ行為を表すのに対して、「継承」は主に身分・仕事・財産などに焦点を当てて受け継ぐ行為を表します。つまり、事業承継は、身分・仕事・財産だけでなく、企業文化や先代経営者の理念など、目に見えない要素まで引き継ぐ行為です。

上記のほかにも、実際の事業承継シーンではのれんなどの要素も引き継ぐため、事業継承ではなく事業承継の言葉が用いられています。

参考:NTTレゾナント・goo国語辞典「承継(しょうけい) の意味」
   NTTレゾナント・goo国語辞典「継承(けいしょう) の意味」

M&Aとの相違点

次に、事業承継とM&Aの相違点を取り上げます。M&Aとは、会社同士の合併や、他の会社・事業の買収を行うことです。買い手企業は多角化や事業の拡大などの経営課題をスピーディーに遂行する目的でM&Aを実施する一方、売り手企業は事業承継・主力事業への集中・経営再建を目的にM&Aを行います。

つまり、M&Aは「事業拡大・選択と集中などの経営戦略を達成する手段」であるのに対して、事業承継は「会社を引き継ぐ後継者を探して経営権を譲渡する行為」です。そのため、M&Aでは現在の経営者が引き続き経営権を保持するケースがある一方で、事業承継では経営者の交代が発生します。

また、M&Aは実施の有無を自由に決定できますが、事業承継は存続を望む企業であればいずれ実施しなければならない課題であるため、経営者は常に意識しておく必要があります。そして、事業承継の経営課題を解決する手段のひとつとしてM&Aが存在するという関係性です。

事業承継に関する現状

昨今は経営者の高齢化が進行しており、これまで以上に事業承継に関する関心が高まっている状況です。これを受けて、最近の事業承継シーンでは、以下のような傾向が見られます。

  • 後継者不足の問題と親族内承継の減少
  • M&Aを利用した事業承継が増加

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

後継者不足の問題と親族内承継の減少

近年の事業承継における傾向として、「親族ではない第三者への承継(親族外承継)」を行うケースが増加している点が挙げられます。親族外承継の増加理由として挙げられるのが、近年問題視されている後継者不足の深刻化です。

中小企業庁のデータによると、「事業をやめたい」と考えている中小企業のうち約5割の企業が、後継者に関する問題を理由に挙げています。そして、この問題を理由に挙げている企業のうち約6割が、「親族である息子や娘に引き継いでもらえない」と回答している状況です。

また、帝国データバンクの調査によると、2020年時点における全国企業の後継者不在率は65.1%と報告されており、3年連続で低下傾向にあるものの、依然として6割以上の企業に後継者がいない状況です。

加えて、最近では、子供に自由な人生を歩んでほしいと考える経営者も増加しています。こうした事情から、親族内承継の割合が急減して、従業員や社外の第三者などを後継者とする親族外承継が6割超に達している状況です。

参考:中小企業庁「後継者選びの現状と課題」(中小企業白書2013年版)
   帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)」
   中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)」

M&Aを利用した事業承継が増加

後継者不足が問題となっている現状から、親族外承継の中でもM&Aを利用した第三者への事業承継を検討・実施する中小企業が近年増加しています。とはいえ、M&Aにより事業承継を遂行する場合であっても、準備や対策の方法がわからない中小企業が多いことも事実です。

そのため、事業承継を実行したいのにも関わらず、やむを得ず廃業してしまうケースも多く見られます。また、ある日突然経営者が病に倒れてしまい、経営が成り立たずにそのまま廃業になるケースも少なくありません。

中小企業庁によると、経営者の交代を行った企業は、行わなかった企業よりも経常利益率を大きく向上させているデータが報告されています。企業を存続・成長させるためにも、事業承継の対策は早期の段階から実施すると良いでしょう。

もしもM&Aによる事業承継を検討しているならば、ぜひM&A総合研究所までお気軽にご相談ください。M&A総合研究所にはM&Aによる事業承継に精通したアドバイザーが在籍しており、手続きのフルサポートを提供しております。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

参考:中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)」

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事業承継で引き継ぐ要素

事業承継で引き継ぐ要素

本章では、実際に事業承継を行う際、後継者に対して引き継ぐ要素として、以下の3項目を取り上げます。

  1. 人(経営者)
  2. 資産
  3. 知的財産

これら3種類の要素は事業承継で引き継ぐべき最も大切な項目であるため、事前にしっかりと概要を把握しておきましょう。

①人(経営者)

事業承継では、経営権の移譲によって経営者が交代します。これにより、企業の内情が大きく変更されるため、あらかじめ事業承継後の変化を意識したうえで後継者を選ぶ必要があるのです。

特に中小企業では事業のノウハウや人脈などが経営者個人に集中してしまっているケースが多く、これらの要素を後継者に対して円滑に引き継げるかどうかが事業承継の成否を大きく左右するポイントです。

②資産

事業承継では、財産権のほか、株式・事業用資産・会社の保有する資金などの資産も引き継ぎます。ここでいう財産権とは、会社が保有する債権などの権利のことです。

合わせて、税負担に関しても十分に注意しましょう。もしも節税対策を講じておかないと、多額の相続税・贈与税が課されるおそれがあるため、資産の分散承継も意識しながら最適な承継方法を検討すると良いです。

③知的財産

事業承継では、経営者の理念・ノウハウ・信用・人脈・顧客リストなど、財務諸表には記載されない知的財産(無形資産)も引き継ぎます。これらの知的財産の承継に失敗してしまうと、事業承継後に競争力を失うなどして急速に業績を落とすおそれがあるため注意しましょう。

【関連】後継者がいない中小企業を廃業させずに存続!経営者が取るべき戦略とは

事業承継の方法と引き継ぎ先

事業承継の方法と引き継ぎ先

事業承継は、大きく以下の4種類の方法に分けられます。

  1. 親族内承継
  2. 親族外承継
  3. M&Aを活用した事業承継
  4. 株式上場

方法ごとに引き継ぎ先やメリット・デメリットなどが異なるため、それぞれの特徴を把握して自社の状況に合った事業承継を目指しましょう。

①親族内承継

親族内承継とは、経営者自身の親族(子供など)を後継者に据えて事業承継を行う方法であり、いわゆる「跡取りが家業を継ぐ」行為が最たる例です。かつては一般的に広く実施されていましたが、最近では後継者不在などの問題を理由に親族内承継の実施件数は減少しています。

メリット

最も大きなメリットは早い段階から長期的な教育を実施できる点にあり、他の方法と比べると後継者教育の面で非常に有利です。社外で修行を積んだりセミナーなどで幅広く知識を習得したりと、柔軟に後継者教育を遂行できる点は、親族内承継の大きなメリットだといえます。

また、後継者が周囲の関係者に受け入れられやすい点も大きなメリットです。従業員からすると、見ず知らずの他人が自分たちの上に立つよりも、信頼できる現経営者の子供が後継者となった方が安心できます。

デメリット

跡継ぎが経営者としての資質があるとは限らないため、不適格な経営者に変わった途端に事業の業績が悪化するリスクがあります。また、会社の引き継ぎを望む人物が親族内に複数存在する場合、後継者候補の間で争いが勃発して親族内の人間関係が悪化するケースも珍しくありません。

【関連】親族内承継

②親族外承継

親族外承継とは、自社内の従業員や役員を後継者に指名して事業承継する方法のことです。親族内承継の実行件数が減少するに連れて、最近では親族外承継の実施件数が増加しています。

メリット

MBO(役員に会社を買収してもらう手法)やEBO(従業員に会社を買収してもらう手法)などの方法を用いれば、 従業員に不安や動揺が広がってモチベーションが低下するリスクを回避できます。

また、後継者に指名された従業員からすると、会社員からトップの座に付くため、従業員や役員のモチベーション向上につながるメリットもあります。加えて、既存事業の業務に詳しい人物が引き継げば、経営者の質も担保されるうえに、周囲の従業員や取引先の金融機関から受け入れられやすいです。

デメリット

親族外承継の場合、後継者の資金力では株式を取得できないおそれがあります。つまり、株式の買い取りには従業員からすると莫大な資金が必要となるため、これを理由に事業承継の引き受けを拒否されるケースも少なくありません。

また、会社内に債務など負の資産がある場合、事業承継を引き受けてもらえる可能性が低下します。このように、親族外承継はメリットの大きい方法ではある一方で、引き受けてくれる人を見つけるのが困難です。

【関連】親族外承継

③M&Aを活用した事業承継

親族や自社内に後継者がいない場合、M&Aを活用して第三者に事業承継する選択肢が検討されます。M&Aを活用する場合、自社の株式すべてを売却する株式譲渡によって事業承継が実行されるのが一般的です。なお、一部事業のみを事業承継したい場合は、事業譲渡や会社分割などの手法が用いられるケースもあります。

メリット

廃業を選ぶと在庫品の処分や税務処理などに多額の費用がかかりますが、M&Aを用いて第三者に事業承継すれば、むしろまとまった売却利益の獲得が期待できます。ここで得た資金を活用すれば、新規事業の立ち上げも可能です。

また、M&Aによる事業承継では、長年培ってきた技術や従業員の雇用などを維持できる点もメリットです。したがって、廃業を決める前に、まずはM&Aによる事業承継を実施できないかどうか検討すると良いでしょう。

デメリット

M&Aによる事業承継では、希望の条件を満たす買い手の発見が困難である点にデメリットがあります。つまり、M&Aにより自社を売却する際に、従業員の雇用や売却価格など希望する条件を承諾してくれる買い手を見つけるのは難しいです。

なぜなら、買い手企業からしても、自身に有利な条件で売買を成立させたいと思っているためです。M&Aによる事業承継を実施するためにも、時間や取引に要する労力などを考慮したうえで、妥協できる部分は妥協する必要があります。

④株式上場

株式上場とは、自社の株式を証券市場に上場させたうえで、不特定多数の投資家に購入してもらうことで事業承継を行う方法のことです。株式を公開して自社株を売り出すため、IPO(Initial Public Offering)とも呼ばれています。

メリット

事業承継において株式上場を採用すると、経営と資本を分離できるほか、株式売却による資金調達も実現可能です。また、上場を果たすことで、社会的な知名度の向上が期待できる点もメリットだといえます。

デメリット

さまざまなメリットがある一方で、株式上場には厳しい審査が設けられているため、中小企業の多くは要件を満たすことが難しい点がデメリットです。審査に向けて準備に数年単位で時間がかかるほか、上場後に経営の自由度が低下してしまう点もデメリットだといえます。

【関連】M&AとIPOのメリット・デメリットとは?EXIT戦略における違いを比較します

中小企業が事業承継を成功させるための課題

中小企業が事業承継を成功させるための課題

中小企業が事業承継を行う場合、後継者不足をはじめさまざまな課題を解決しなければなりません。中小企業における事業承継の課題は、主に以下のとおりです。

  1. 後継者の確保
  2. 事業承継の早期準備
  3. 会社内の新陳代謝
  4. 支援制度の活用

上記の課題を解決して、事業承継の成功につなげましょう。

①後継者の確保

中小企業の事業承継における最大の課題は、後継者の確保にあります。この課題はいかなる業界でも社会問題となっており、後継者不足を理由に黒字廃業する中小企業が増加中です。そのため、事業承継を成功させるには、後継者の確保が最優先課題だといえます。

後継者を確保するには、まず自社内の状況を把握したうえで、後継者候補の有無を整理しなければなりません。そして、後継者候補がいる場合には事業承継を打診して早期に確定する必要がある一方で、後継者候補がいない場合にはM&Aによる事業承継を検討しましょう。

②事業承継の早期準備

事業承継を実行するには長期間にわたる準備が必要となるため、事業承継の早期準備も留意すべき課題です。株式の引き継ぎ・後継者教育・企業価値の磨き上げなど、事業承継の手続きには時間がかかります。

そのため、経営者が体調を崩してから準備を始めると、事業承継に間に合わないおそれがあります。早めの準備は、事業承継を成功させるうえで必要不可欠な課題です。

③会社内の新陳代謝

人手不足や社内の生産性向上など、中小企業が抱える経営課題は山積しています。事業承継する後継者には課題の解決だけでなく、外部で培った経験・知識を生かしながら会社内の新陳代謝を図ることも求められるのです。

そのため、単純に会社を引き継ぐのではなく、自身で新たに会社を創業する意気込みで、事業承継後の経営に取り組むことが重要だといえます。

④支援制度の活用

事業承継の成功確率を高めたい場合は、中小企業を支援する制度に注目しましょう。事業承継の支援制度としては、事業承継税制や事業承継・引継ぎ補助金などが挙げられます。

このうち事業承継税制は、相続税・贈与税の納税猶予を受けられる制度です。要件を満たせば、課税が免除される可能性もあります。つまり、相続税・贈与税の負担がなくなる場合があるため、事業承継を検討する中小企業の経営者の方であれば制度の概要を把握しておきましょう。

事業承継で活用できる各種制度・補助金の詳細は後述いたします。

【関連】跡取りがいない会社のM&Aを成功させるには?M&A相談先の選び方や後継者不足問題を解説

事業承継の失敗要因と注意点

事業承継の失敗要因と注意点

本章では、事業承継における失敗要因と注意点を取り上げます。事業承継には以下に挙げる注意点があり、これらを意識するかどうかで事業承継の成否が大きく変動するといっても過言ではありません。

  1. 他の相続人への配慮
  2. 事業承継の税金
  3. 取引先や金融機関への説明

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①他の相続人への配慮

特に親族内承継を行う場合、他の相続人に配慮しましょう。なぜなら、後継者に全株式を集中相続させる際に、他の相続人の取得財産が相対的に少なくなるためトラブルに発展するリスクがあるためです。

もともと、法律において、「遺留分」として最低限相続できる財産が保障されています。遺留分によって株式が分散する事態を防ぐためにも、遺言や民法の特例などを用いて対策を講じると良いでしょう。

②事業承継の税金

事業承継では、相続税や贈与税などの税金が課されます。株式の引き継ぎタイミングや承継方法により課される税額は変動するため、後継者の税負担を考慮したうえで事業承継を進めることが重要です。

③取引先や金融機関への説明

事業承継を実行すると経営者が変わるため、取引先や金融機関などに事前に伝えておかないと信頼を損ねるおそれがあります。後継者を決めたら取引先や金融機関に紹介して、事業承継を円滑に進めましょう。

【関連】事業承継を成功させるための後継者選び

事業承継の流れや進め方・手順

事業承継の流れや進め方・手順

事業承継を実施する手順は、事業承継ガイドラインに記載されています。事業承継ガイドラインとは、中小企業による事業承継の円滑な実施を図るべく、中小企業庁が策定した資料です。本章では、事業承継ガイドラインの記載をベースに、事業承継の手順を以下の項目に分けて取り上げます。

  1. 経営課題の可視化
  2. 後継者候補の選定
  3. 会社の磨き上げ
  4. 事業承継計画の策定またはM&Aの実行

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン」

①経営課題の可視化

はじめに、事業承継の手続きをスムーズに進行するために、経営課題など会社の現状を可視化します。この際、可視化する対象は、以下の2点です。

  • 経営者自身の状況
  • 株式の保有割合

まずは、経営者自身の負債・個人保証・保有資産の種類や価格を事前に把握しておきましょう。把握しておかないと、事業承継の前後で親族間トラブルが発生するおそれがあるためです。結果として、承継後の経営が円滑に進められず、最悪の場合には事業承継そのものに失敗する可能性があります。

なお、相続時に予想されるトラブルに対しては、必要に応じて事前に対策を立てておく必要があります。そして、中小企業が事業承継を実施する際は、株式の保有割合にも注意しましょう。事業承継後も安定した経営を継続するには、最低でも自社株式の過半数以上の株式所有が必要です。

そのうえで経営権を行使したいならば、あらゆる決定を行うために67%以上の株式保有が望ましいです。もしも株式の保有割合が低いと、経営上の権限が弱まってしまいます。

②後継者候補の選定

次に、後継者候補を選定します。これは、事業承継において最も大切なプロセスであり、経営者としての資質を持った人材を見定めなければなりません。後継者候補が見つかったら、まずは役員として経営の一部を担当させると、経営者としての素質を実地で確認できるために後悔を避けられます。

なお、もしも親族や社内に適切な後継者がいない場合には、公的機関やM&A仲介会社に相談すると良いです。

③会社の磨き上げ

続いて、後継者が継ぐにしてもM&Aで第三者に売却するにしても、自社の価値を高めましょう。特にM&Aを用いて事業承継する際は、会社の磨き上げによって、M&Aの相手が見つかりやすくなるだけでなく、希望どおりの条件で会社売却できる可能性が高まります。

会社の価値を高める(磨き上げる)手段は、主に以下の3つです。

  • 会社の強みをさらに伸ばしつつ、弱みを改善する
  • 会社の現状を利害関係者に公表して自社の信頼感を高める
  • 社内の風とおしを良くしつつ、マニュアルの整備を行う

また、トラブルを抱えている会社とM&Aを実施したい企業は存在しないため、訴訟案件の解決や私的整理の実施なども重要です。なるべく、事業承継を検討段階で会社の磨き上げに取り掛かると良いでしょう。

④事業承継計画の策定またはM&Aの実行

親族や従業員に対して事業承継を行う場合は、事業承継計画を策定しましょう。その一方で、M&Aを活用して第三者に事業承継する場合には、M&Aを実行する段階に移行します。

事業承継計画の策定

事業承継計画には、長期的な視点に立って、何を・いつ・誰に・どのように引き継ぐのかを明確に記載します。具体的な記載内容は、以下のとおりです。

  • 具体的な目標設定
  • 自社の現状分析
  • 事業承継の時期を盛り込んだ具体的な方向性の検討
  • 円滑な事業承継に向けた課題の整理
  • 今後の環境変化の予測と、その対応策の検討

事業承継では資金調達が必要となるケースがありますが、事業承継計画を策定しておくと取引先や金融機関から協力を得やすくなります。資金調達を成功させるためにも、事業承継計画の策定は重要なプロセスです。

M&Aの遂行

第三者に対して事業承継を行う場合は、M&Aを用います。中小企業が自力でM&Aを実行するのは困難であるため、専門的な知識を持った仲介会社コンサルタントなどの専門家からサポートを受けましょう。

ただし、専門家への依頼には費用がかかるため、自社の状況や依頼費用を確認したうえで依頼すると良いでしょう。もしもM&Aによる事業承継に関してお悩みでしたら、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には経験豊富なアドバイザーが在籍しており、手続きを専任フルサポートしております。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、M&Aによる事業承継をご検討中であれば、お気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

事業承継のタイミングと税金

事業承継のタイミングと税金

M&Aによる事業承継では所得税・法人税・消費税などが課される一方で、親族内承継では贈与税や相続税などが課されます。いかなるタイミングで後継者に事業承継するかによっても、税金の種類や税額は異なるため注意しましょう。

本章では、事業承継を実施するタイミングごとに課される税金を紹介します。想定外の税金の支払いを防ぐためにも、しっかりと把握しておきましょう。

①生前贈与

生前贈与とは、現在の経営者が生きている間に会社を後継者に贈与する方法のことです。所持している全株式を後継者に贈与すると、経営権が後継者に移転します。現経営者が生きているうちに事業承継した場合は、株式を引き継ぐ後継者に対して贈与税が課される決まりです。

この際、贈与税額の算出方法は2種類存在します。実際に生前贈与する場合は、いずれかの方法を選択しなければならないため、以下では贈与税の計算方法を把握しておきましょう。

暦年課税制度

暦年課税制度とは1年間に受け取った贈与金額の合計に対して税金が課税される制度であり、受け取る金額によって税率が変動します。ただし、受け取る財産の金額が年間110万円以下であれば非課税です。この金額を超えると、一定金額ごとに税率が上がります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは生前贈与される資産額が2,500万円までなら非課税となる制度であり、2,500万円を超えた場合は20%の贈与税が発生します。一見すると優れている制度だといえますが、注意すべきポイントがあります。

相続時精算課税制度を用いると、現在の経営者が亡くなったタイミングで、相続した財産に相続税が課されます。つまり、この制度を用いて生前贈与した場合は相続税の負担が増してしまうのです。各ケースによって用いる計算方法は異なるため、自社の状況を把握したうえで生前贈与による事業承継を実施しましょう。

②相続

経営者が亡くなったタイミングで株式相続の形式で事業承継を遂行すると、相続により事業承継を実行するため、引き継いだ財産に対して相続税が課されます。株式の価格は高額なケースが大半であるため、事業承継時の相続税は高額になりやすいです。

例えば、1億円以上の財産を相続すると40%以上の相続税が課税されるため、税金の支払いにより事業承継後の経営に失敗するおそれがあります。相続税の存在により、事業承継を実施できずに悩んでいる中小企業経営者の方は多いです。

しかし、後述する事業承継税制を活用すると、事業承継で課される相続税を抑えられます。条件を満たせば、相続税の支払いについて猶予や免除を受けることが可能です。なお、事業承継税制以外にも相続税を低く抑えるための方法がありますが、代表例を以下にまとめました。

財産を減らす

相続税対策において最も広く知られている方法です。具体的な方法としては、不動産の購入・墓石や仏壇の購入・生命保険への加入などが挙げられます。相続分の財産を減少させるのみであるため、デメリットの少ない方法です。

債務や葬式などの支出の増額

債務や葬式に対する支出を増やすことでも、支払う相続税を減額可能です。ただし、あまりにも常識的な範囲を超えた支出に関しては認められない可能性が高いため注意しましょう。

【関連】中小企業庁が実施する事業承継支援

事業承継で活用できる各種制度・補助金

事業承継で活用できる各種制度・補助金

事業承継には多額の費用や税金がかかるうえに、後継者不足問題の深刻化も相まって、多くの中小企業にとって非常にハードルが高い行為です。こうした事情を受けて、事業承継で悩んでいる中小企業のために、国の機関はさまざまな支援策を講じています。

事業承継のための支援策の中でも、本章では特に事業承継で役立つサポート制度として以下の3つを取り上げます。

  1. 事業承継税制
  2. 事業承継・引継ぎ補助金
  3. 後継者人材バンク

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①事業承継税制

事業承継税制とは、後継者が現在の経営者から非上場株式を相続または贈与により取得した際に、相続税や贈与税の納税義務が猶予・免除される特例制度のことです。もともと、事業承継により後継者が現代表者から株式を取得する際には、多額の相続税や贈与税が課されます。

その結果として、事業承継後の経営が立ち行かなくなる可能性が高く、税負担を理由に事業承継を失敗する中小企業は少なくありません。ところが、事業承継税制を利用すると、税負担を大幅に軽減できます。

具体的には、事業承継税制を活用すると、相続税や贈与税が100%猶予あるいは免除されます。しかし、税制の猶予・免除を受けるには、会社・先代・後継者などに関する諸条件を満たさなければなりません。

平成30(2018)年度の税制改正により、中小企業はさらに事業承継税制を活用しやすくなりました。ただし、経営者自身で利用を検討するには限界があるため、税理士などの専門家に意見を求めると良いでしょう。特にM&Aや事業承継に詳しい税理士の方に相談することをおすすめします。

【関連】【2021】事業承継税制の特例措置のメリットや適用要件を解説!

②事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継やM&Aをきっかけとした経営革新への挑戦や、M&Aによる事業承継の実施を検討する中小企業をサポートするために支給される補助金のことです。

例えば、設備投資費用・人件費・店舗/事務所の改築工事費用・M&A仲介会社に支払う手数料・デューデリジェンスにかかる費用などの経費が補助金の対象とされています。支給される補助金の上限額は、400万円〜800万円です。

ただし、補助金を支給してもらうには、審査や長期間にわたる手続きを経なければなりません。以上の点を踏まえたうえで、事業承継・引継ぎ補助金の利用を検討しましょう。

③後継者人材バンク

後継者人材バンクとは、創業を目指す起業家と後継者不在の会社や個人事業主を引き合わせることで、創業と事業引継ぎを支援する事業のことです。後継者不足に悩んでいる中小・零細企業に対して、後継者候補となる人材とのマッチングを提供しています。

各都道府県に存在する事業引継ぎ支援センター(令和3(2021)年4月より「事業承継・引継ぎ支援センター」に名称変更)が、後継者人材バンクを運営しています。後継者人材バンクでは、起業家や起業を志す人材を紹介されるため、熱意のある人に自分の会社を引き継ぐことが可能です。

平成26(2014)年度に発足した比較的新しい制度ですが、この制度を用いて事業承継を成功させた企業は年々増加しています。事業承継で悩んでいる経営者の方は、後継者人材バンクの活用を検討してみるのも良いでしょう。

事業承継の相談先

事業承継の相談先

事業承継を実行するには、多方面にわたる専門知識が必要です。事業承継を実施する経営者の方には、ここで紹介する資格を持つ専門家に依頼してサポートしてもらうことをおすすめします。

  1. 税理士
  2. 弁護士
  3. 司法書士
  4. 事業承継士

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①税理士

事業承継では税金が発生するため、税理士の存在は欠かせません。税理士は、事業承継における税務処理のみならず、株価算定・デューデリジェンス・事業承継の計画策定など幅広く業務を遂行できます。

②弁護士

弁護士も、事業承継には欠かせない存在です。事業承継では親族間でトラブルが発生するケースもありますが、当事者同士で解決できないトラブルでも、弁護士が介入するとスムーズに解決を図れます。M&Aによる事業承継においても、契約書作成・法務デューデリジェンスなどで弁護士の存在は必要不可欠です。

③司法書士

法務手続きの専門家である司法書士は、事業承継において不動産登記を担う存在です。登記手続きは司法書士の独占業務であり、契約書作成および成年後見人制度を用いた事業承継なども手厚くサポートしてくれます。

④事業承継士

事業承継士とは、一般社団法人「事業承継協会」が認定する資格です。上記で紹介した3つの資格とは異なり民間資格ですが、事業承継に関する幅広い知識を持つ専門家とされています。

【関連】事業承継を税理士に相談するメリット

事業承継のまとめ

事業承継のまとめ

事業承継を実施する際は、進め方・税務など考慮すべき要素が非常に多いです。そのため、経営者が亡くなったタイミングで事業承継の検討を開始していると、失敗してしまうおそれがあります。

つまり、事業承継の対策は早い段階から実施する必要があるため、専門家によるサポートや事業承継ガイドラインを活用しながら手続きを着実に進めましょう。本記事の要点は、以下のとおりです。

・事業承継とは
→現在の経営者が会社・事業を後継者に引き継ぐ行為

・事業承継に関する現状
→後継者不足の問題と親族内承継の減少、M&Aを利用した事業承継が増加

・事業承継で引き継ぐ要素
→人(経営者)、資産、知的財産

・事業承継の方法
→親族内承継、親族外承継、M&A、株式上場

・中小企業が事業承継を成功させるための課題
→後継者の確保、事業承継の早期準備、会社内の新陳代謝、支援制度の活用

・事業承継の失敗要因と注意点
→他の相続人への配慮、事業承継の税金、取引先や金融機関への説明

・事業承継の流れや進め方・手順
→経営課題の可視化、後継者候補の選定、会社の磨き上げ、事業承継計画の策定またはM&Aの実行

・事業承継の各種制度・補助金
→事業承継税制、事業承継・引継ぎ補助金、後継者人材バンク

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