2024年3月11日更新事業承継

M&Aと事業承継の違い!事業承継M&Aのメリットや現状を解説

M&Aによる事業承継には多くのメリットがありますが、ポイントをおさえておかないとを失敗するリスクもあります。この記事は、M&Aと事業承継の違い、事業承継M&Aのメリットや成功ポイントを紹介します。

目次
  1. M&Aと事業承継の違いとは
  2. 事業承継とは
  3. M&Aとは
  4. 事業承継M&Aのメリット
  5. 事業承継M&Aのデメリット
  6. 事業承継M&Aの注意点
  7. 事業承継M&Aの適正を知るためのチェックポイント
  8. 事業承継M&A成功のポイント
  9. 事業承継M&Aで活用できる補助金・融資・税制
  10. 事業承継M&Aの相談先・専門家
  11. 事業承継M&Aの流れ
  12. 事業承継によるM&Aのまとめ
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M&Aと事業承継の違いとは

M&Aとは企業同士の合併や企業(あるいは事業)を買収することをいいます。一方の事業承継は、現在の企業運営を後継者へと引き継ぐことです。

事業承継は誰に事業を引き継ぐかによって3種類に分けられ、親族内承継・親族外承継・M&Aによる事業承継(事業承継M&A)があります。M&Aは事業承継方法のひとつでもあり、近年は後継者がいない企業などで活用されるケースが増えてきました。

事業承継とは

事業承継とは、中小企業の経営・個人事業の運営を後継者に引継ぐことであり、社長・個人事業主が、代替わりすることを意味します。企業・個人事業が今後も継続されていくためには、どこかのタイミングで事業承継を行わなければなりません。

事業承継の手法

事業承継は誰を後継者とするかによって大きく3種類に分類されます。もし、後継者不在などの理由で事業承継を行わない場合は、廃業という選択をせざるを得なません。

親族内承継

現経営者の子どもや配偶者、兄弟姉妹などの親族が後継者となる事業承継が「親族内承継」です。親族内承継では、現経営者が生前贈与(無償譲渡)で会社の株式、または個人事業の資産などを後継者に引継ぐか、経営者の死亡時に後継者がそれらを相続するかで行われます。

株式や事業資産は、高額な評価となるケースが多いため、後継者にとって贈与税・相続税対策が不可欠です。さらに、相続人が複数いるケースでは、会社の株式や事業資産が分散しないようにする対策も必要であり、株式が分散したままでは会社・事業の安定した経営が難しくなります。

従業員承継

社内の従業員や役員が後継者となる事業承継が「従業員承継」です。「社内承継」と呼ばれることもあり、従業員や役員は会社や事業のことは熟知しているため、経営者の適性があれば有望な後継者候補となります。

社内承継の問題点は、会社の株式や事業資産を買取るための資金を後継者が用意しなければならないことです。かなりの金額を用意しなければならないため、後継者が融資を得られるように金融機関を仲介するなどの現経営者はフォローが必要でしょう。

事業承継M&A

親族や社内に後継者候補がいない場合の事業承継方法として、近年注目されている「事業承継M&A」です。事業承継M&Aは会社・事業を売却することで、買い手が後継者(新たな経営者)となって事業が継続されます。

従来、M&Aといえば大企業が実施するイメージがありました。しかし、M&Aによる第三者への事業承継を、国や自治体などが積極的にPRしたこともあり、近年は後継者不在の中小企業が会社・事業の存続を目的にM&Aを行うケースが増えています。

事業承継では経営権を移転させるため、オーナー経営者などが所有する自社株式を後継者へ譲渡することが必要です。株式会社の場合、議決権の過半数以上の株式を保有すれば株主総会で普通決議が可決でき、3分の2以上の議決権を保有していれば特別決議が可決できます。

後継者がより安定した経営基盤を持つためには、少なくとも3分の2以上の株式を先代経営者から引継ぐことが必要です。

一方、法人格のない個人事業の場合は事業譲渡という形式で事業承継を行、事業に関連する資産・権利義務などをまとめて後継者に譲渡する契約を締結します。

【参考】清算・廃業

後継者不在のまま経営者が引退時期を迎えれば、会社・事業は廃業するしかありません。基本的に廃業にメリットはなく、以下のようなデメリットが考えられます。
 

  • 従業員は解雇され職を失う
  • 従業員への解雇手当が発生する
  • 借入金や買掛金などの負債を一括支払いしなければならない
  • 負債支払いのために経営者の個人資産を売却しなければならないおそれがある
  • 負債全額を返済できない場合、引退後も分割返済していかねばならない
  • 設備、機械類、在庫などの廃棄コストが発生する
  • 事務所が賃貸物件であれば原状回復工事費が発生する
  • 現金化できる事業資産があっても、廃業のため足元を見られ高額での売却は難しい

事業承継の構成要素

事業承継は株式(経営権)を移転すれば完了というわけではなく、実際には人・資産・知的資産の3要素を後継者へ引き継ぐ必要があります。

人に該当するのは自社の従業員や取引先などです。これらは安定した事業運営に不可欠な要素であるため、事業承継をきっかけに離職したり関係が悪化したりすることのないよう、丁寧に進める必要があります。

2つ目の資産に該当するものは自社株式、不動産や設備、運転資金(現金)などです。これらの引継ぎは方法によって課税も変わるため専門家に相談しながら行うとよいでしょう。

3つ目の知的資産に該当するものは、ブランド力やノウハウ、特許、サービス、経営理念などです。このような無形資産は事業の存続に不可欠な要素ですが、目に見えないので丁寧に引き継がなければ失われてしまう恐れもあります。

事業承継は一般的に5年から10年程度の期間が必要といわれるため、経営者は将来を見据えて事業承継計画を早めに立てておくことが大切です。

中小企業が抱える現状

中小企業庁の発表によると、日本の企業数のうち中小企業が占める割合は、実に99.7%です。大企業数は0.3%に過ぎません。99.7%の内訳は、中規模企業が14.8%、小規模事業者が84.9%です。

企業数ほどの比率ではありませんが、それでも中小企業の従業者数は68.8%にのぼります。中小企業の動向は、地域経済だけでなく日本全体においても、大きな影響を及ぼすといってもよいでしょう。

経営者の高齢化

中小企業庁「 事業承継を知る」

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html

中小企業の実態の1つとして、経営者の高齢化が指摘されています。帝国データバンクの「全国『社長年齢』分析調査(2021年)」によると、約147万社を調査した結果、経営者の平均年齢は60.3歳で過去最高でした。54歳だった1990(平成2)年以降、毎年、上がり続けています。

中小企業庁の「2021年版中小企業白書」によると、中規模企業経営者の平均引退年齢は67歳、小規模事業者経営者は70歳です。事業承継は、後継者教育を含めると5~10年程度を要するとされており、すぐにでも事業承継の準備に取りかからねばならない中小企業が多いことがわかります。

成長・投資意欲の低減

経営者の高齢化に伴う経営上の問題点として挙げられているのが、高齢になるにつれ、会社・事業を成長させようという積極性が薄れてしまい、投資意欲などが低減してしまうという精神状態です。この経営意欲の低減は、会社・事業が停滞していってしまう危険性を秘めています。

会社・事業の停滞が一定限度を超えれば、経営不振による倒産も危惧され、そうなると事業承継も実現できません。

後継者不在

帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」

出典:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p221105.pdf

従来、日本の中小企業の代表的な事業承継といえば、現経営者の子どもが親の後を継ぐというものでした。しかし、現在の日本は少子化という状況にあり、後を継げる子どもの数自体が大きく減ってしまっています。また、時間の経過の中で日本人の価値感も多様化しました。

必ずしも親の後を継ごうとしない子どもや、子どもに後継ぎを無理強いしない親なども増え、子どもが中小企業の後継者になるケースが減少しています。子どもが後を継がない場合の次善の策として行われてきたのが、社内の従業員や役員が後継者となる事業承継です。

ただし、この場合の後継者は、親族のように相続や贈与で会社の株式を引継げず、買取るしかありません。会社の株式を買取るとなれば相応の金額が必要であり、その資金が用意できないために後継者を辞退する従業員や役員もいます。

以上のような理由で、現在の中小企業では、かつてと比較して、後継者不在に悩む会社・個人事業主が増えています。帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022年)」によると、大きく改善しているものの中小企業の後継者不在率は57.2%という数値です。

事業継承M&Aの増加

帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」

出典:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p221105.pdf

事業承継税制や事業承継・引継ぎ支援センターの設置など、国による支援体制が整ってきたこともあり、近年は事業承継M&Aを活用中小企業が増えてきています。

帝国データバンクが2022年に行った調査(全国・全業種約27万社を対象)によれば、買収や出向など「M&Aほか」によって事業承継を実施した企業割合は20.3%となり、2割を超えたのは2011年の調査開始から初となりました。

また、中小企業庁「中小企業白書」によれば、事業承継・引継ぎ支援センターにおける相談社数と成約件数(第三者承継)は近年増加しており、後継者不在などの理由で事業承継M&Aを行う中小企業が増えていることがうかがえます。

参考:帝国データバンク 全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)
参考: 中小企業庁 2023年版「中小企業白書」第2章:新たな担い手の創出

企業数減少の推移

1999年に485万社あった企業の数は、徐々に減少し続けて、2016年には359万社まで落ち込みました。これは約20年の間に126万社が減ったことを意味しています。特に、2012年から2014年の間の減少は比較的小さく(4万社、約1%の減少)でしたが、2014年から2016年にかけての減少はより顕著に(23万社、約6%の減少)なりました。

企業のサイズ別に見ると、大企業の数はほぼ変わらず、中規模企業は3万社減り、小規模企業は特に大きく20万社減少しました。このことから、小規模企業の減少が全体の減少に大きく影響していることがわかります。

参考:2020年版 中小企業白書・小規模企業白書

M&Aとは

先程、M&Aは事業承継方法のひとつであると述べましたが、ここではM&Aについてもう少し詳しく解説します。

M&Aの概要

M&Aとは企業同士の合併や企業(あるいは事業)を買収することをいい、合併を表す「Mergers」と買収を表す「Acquisitions」の頭文字をとった呼び方です。また、広義の意味において、資本提携や業務資本提携もM&Aに含む場合もあります。

M&Aと聞くと「乗っ取り」というイメージが持たれることもありますが、相手企業の同意なしで行う「敵対的買収」はあまりありません。国内で行われるM&Aの多くは「友好的M&A」と呼ばれる当事者間の合意のもとで行われています。

M&Aのスキーム(手法)

M&Aには企業・事業の成長スピードの加速や業績拡大、事業の存続などさまざまなメリットがあり、近年は大企業だけでなく中小企業でも行われる経営戦略です。M&Aのスキーム(手法)にはいくつかの種類があり、それぞれ違った効果・特長を持っています。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手側企業の発行済み株式を買い手企業へ売却することをいい、売り手側の株主は対価として現金を取得します。

M&Aで株式譲渡を行う場合、買い手企業の多くは経営権の掌握を目的とするため、過半数以上の取得を目指すケースが多いです。

売り手側企業が過半数以上の株式を売却した場合、売却後は買い手側の傘下企業(子会社)となり、全株式を売却した場合は完全子会社となります。

事業譲渡

事業譲渡は、企業が行っている事業の一部または全部を売却する手法です。不採算事業の切り離しや事業再編を目的として行われるケースが多く、買い手企業にとっては不要な資産や負債を引き受けなくてよいというメリットもあります。

また、事業譲渡は株式譲渡とは違い、経営権は移転しません。法人格はそのまま残るため、M&A後も売り手企業はそのまま会社運営を続けることができます。

会社分割

会社分割とは、企業が行っている事業の一部または全部を切り離して他社へ引き継ぐ方法です。会社分割には吸収分割と新設分割の大きく2種類があり、対象事業が保有する権利・義務はすべて移転先企業の会社へ引き継がれます。

吸収分割と新設分割はどちらも組織再編の手法であり、両者の違いは移転先が既存会社か新設会社かという点です。

吸収分割の場合は既存の他社が移転先となり、新設分割では新たに設立した会社が移転先となり事業を引き継ぎます。

合併

合併とは、2つ以上の法人格(企業)をひとつに統合する手法です。吸収合併と新設合併の2種類があり、どちらの手法においても権利・義務のすべては存続会社へ引き継がれます。

吸収合併は1つの会社(存続会社)が消滅する会社の権利・義務を引き継ぐ方法、新設合併は権利・義務を引き継ぐ法人を新たに設立して事業を承継させる方法です。どちらの合併方式でも、消滅する側の会社は合併後に解散となります。

事業承継M&Aのメリット

事業承継M&Aで得られるメリットは、売り手企業・買い手企業で異なります。実施する際は、どのようなメリットが得られるのかをよく検討することが重要です。

売り手側のメリット

売り手側の主なメリットには、以下が挙げられます。

事業継承先の幅を拡大

後継者を経営者の子などの親族や自社の役員・従業員から探す場合、どうしても範囲が狭くなるため適任者がみつからない可能性もあります。また、役員や従業員の場合は株式の買い取り資金がネックとなり、事業承継が難しいケースもあるでしょう。

事業承継M&Aは買い手企業が後継者となるため資金面でも心配はなく、幅広いなかから探せるため希望条件にあった事業承継先をみつけやすいメリットがあります。

M&Aスキームによって節税

事業承継をせず廃業という選択をとった場合、残余財産を確定した段階で有形財産(不動産や在庫など)を売却して収入が発生すれば法人税の課税対象となります。

そのほかにも土地の価格によっては消費税が課されるなど、事業活動を停止しても税金がかかるケースが大半です。

ですが、事業承継M&Aでは株式譲渡を用いるケースがほとんどなので、その場合にかかる税金は株式譲渡益に対する所得税のみとなります。個々のケースによるため一概に言えませんが、使用スキームなどによっては節税効果が得られることも多いです。

従業員の雇用を守れる

引退を考えても後継者がいなければ最終的に廃業せざるを得ませんが、そのような場合に多くの経営者が心配するのは従業員の今後についてです。

廃業した場合は自社都合により従業員を解雇しなければなりませんが、事業承継M&Aを行えば買い手企業へ従業員の雇用を引き継ぐことができます。

製品やサービスを残せる

長年愛されている自社製品やサービスも、廃業してしまえばすべて失われてしまいます。このような製品やサービスも事業承継M&Aによって買い手企業へ引き継ぐことが可能です。特に地域に根差したサービスなどが継続されることは、地域社会にとってもメリットが大きいといえるでしょう。

創業者利益の獲得

創業者利益を獲得できるのも事業承継M&Aのメリットです。事業承継M&Aはほとんどが株式譲渡によって行われますが、その場合の利益は株主が受け取ることとなります。

中小企業の場合は株式の大半を経営者(オーナー)が保有しているケースが多いため、まとまった額を現金で受け取ることが可能です。

買い手側のメリット

買い手側の主なメリットには、以下が挙げられます。

事業規模の拡大

事業規模を拡大を図るためには、自社の競争力を強化し売り上げを拡大していかなければなりませんが、それには時間やコストも必要です。

事業承継M&Aの買い手企業は、売り手側の事業エリアやシェアをそのまま引き継ぐことができるため、自社単独で事業規模を拡大するよりも時間を大幅に削減することができます。

優秀な人材の獲得

事業承継M&Aでは、売り手企業の優秀な人材を獲得できることも買い手側の大きなメリットです。もちろん自社で新人を育て上げたり、新規採用で即戦力となる人材を募集することもできますが、その場合は時間とコストを見越しておかなければなりません。

有資格者が業務に不可欠な業種の場合は人材獲得競争が厳しくなりやすく、国内の少子化加速を考えると今後はさらに難しくなると予測されます。

事業承継M&Aでは売り手企業が持っている優秀な人材を一度に獲得することが可能です。さらに、優秀な人材がもつノウハウや技術、経験は買い手企業の技術力向上にもつながります。

技術・ノウハウの獲得

企業が新たに事業を始める場合や市場での競争力強化を図る場合、その分野におけるノウハウ・技術が必要です。ノウハウ・技術などの無形資産は企業の成長・発展に不可欠ですが、これらを得とくするには研究や開発などに長い時間を要します。

事業承継M&Aであれば売り手企業の持っているノウハウ・技術も取得することができ、それらに付随する権利や許認可も引き継ぐことが可能です。

新規事業への進出

事業の多角化にはリスク分散というメリットがあり、企業の収益向上を図るためには新規事業参入や多角化展開は不可欠です。ですが、新規事業参入を果たすためには、準備の期間や費用が必要であり失敗するリスクを避けることはできません。

このような場合も、事業承継M&Aを行う売り手企業の事業を取得することで新規事業へのスムーズな進出が可能となります。

取得する事業は売り手企業がすでに収益化しているため、買い手企業は将来的な買収資金回収までの見込みをたてることもでき、自社単独で進めるよりスピーディな事業展開が可能です。

事業承継M&Aのデメリット

前述したように、事業承継M&Aでは売り手企業・買い手企業とも多くのメリット享受に期待できます。その一方で、事業承継M&Aによって生じうるデメリットもあるため、実施前によく検討することが大切です。

売り手側のデメリット

事業承継M&Aで考えられるデメリットには主に以下の2つが挙げられます。

条件に合う事業承継先が必ず見つかるわけではない

業種や譲渡価額など売り手側は希望条件に合った事業承継先を探しますが、希望通りの買い手企業が必ずみつかるという保証はありません。

いくら売り手側が「この企業へ自社を引き継ぎたい」と考えても、買い手側の判断基準は「この会社を買収することでどのような価値(メリット)が得られる」という点なので、経営状態が著しく悪化している場合や安定した利益確保が見込めない場合は買い手が現れなケースもあります。

また、買い手候補が現れた場合も自社の希望条件をすべて満たしていないこともあるでしょう。そのような場合は、希望条件に優先順位をつけておき、どこまでなら譲歩できるかを考えておくと選択の幅が広がる可能性もあります。

買い手を見つけるまでに長い時間がかかることもある

売り手側の業種や地域、事業承継M&Aを行うタイミングによっては買い手がみつかるまでに時間がかかるケースもあります。

M&Aの成立実現には業界動向や実施タイミングも重要となるため、事業承継M&Aの検討を始めたらできるだけ早期から準備をしておき、よい買い手がみつかったら機会を逃さないこともポイントです。

また、早めに準備を行っておけば実施タイミングを逃さないだけでなく、売上を今より伸ばせたり課題の解決・改善したりできるメリットもあります。

事業承継M&Aの注意点

M&Aによる事業承継は、会社や事業そのものの売買取引でありリスクも大きいため、細心の注意が必要です。M&Aによる事業承継の主な注意点やリスクとして、以下の4つがあります。

①不利益も引継ぐ

中小企業のM&Aに多く用いられるスキーム(手法)は、株式譲渡です。株式譲渡は、売り手企業の株式を買収することで買い手はその経営権を取得します。つまり、事業・資産・負債・商圏・人材の全てが包括的に売り手から買い手に移転します。

ここで注意すべきは、売り手企業のプラス面だけではなくマイナス面も引継ぐため、想定以上に買い手の負担が大きくなり得ることです。特に、売り手自身も把握していないような、偶発債務などの簿外債務が潜んでいる場合があります。

買い手としては、慎重な検討と調査に基づく判断が必要です。

②株式購入資金の問題

M&Aによる事業承継では、買い手側は株式購入に相当の資金が必要です。自己資金で足りなければ、金融機関からの借入などによる資金確保の対応が必要となります。

③買い手側の経営者の能力

M&Aによる事業承継を行うと、経営に関する全ての権利が買い手側に移転するため、今後の事業展開は買い手側の経営者に大きく左右されます。売り手側の従業員は、事業承継後の雇用の確保、待遇面の変化などに不安を持つことが多いです。

また、買い手側の経営方針に賛同できず、退職する可能性もあります。売り手側の従業員は、その事業で重要となるスキルやノウハウを持っていますから、買い手側は売り手側従業員のケアにも細心の注意を払うことが肝要です。

④税金対策

M&Aでの事業承継を株式譲渡で実施した場合、株式を売却した売り手には相応の対価が支払われます。対価のうちの利益分は株式譲渡所得とみなされ、所得税の課税対象です。株式譲渡所得税は分離課税で、税率は20.315%(2022⦅令和4⦆年7月現在)となっています。

株式譲渡の対価全てを自由に使えるわけではないので、納税額を把握したうえでM&A後の資金計画を立てるなどの対策が必要です。

【関連】事業承継問題の原因・解決法とは?事業承継のメリット・デメリットを解説!

事業承継M&Aの適正を知るためのチェックポイント

事業承継M&Aの実施を検討していても、自社に買い手がつくのかと思うかもしれません。事業承継M&Aが適しているかを知るためには、以下のポイントをチェックすると判断の目安になります。

売上高

買い手企業はM&Aによって自社や事業を成長させ、売上を拡大することが目的です。そのため、売り手企業は自社の売上高をしっかり確認しておく必要があります。

事業承継M&Aを検討している場合は、自社の売上高を最低限維持していることが求められますが、M&Aの相場としては年間売上が5億円を下回ってしまうと事業地盤が弱いと判断されやすく、買い手企業がなかなかみつからないケースも多いです。

利益

売上高だけでなく、利益をどの程度あげているかもポイントのひとつとなります。近年は利益が出ていない企業のM&A成約率は非常に低くなっており、買い手探しに難航するケースが多いです。

買収後、買い手企業が損失分を充填する必要がでてくれば、倒産のリスクにもつながるためM&Aはなかなか成立しません。そのため、事業の利益がでているかどうかも判断基準と考えられます。

従業員数

従業員数が多いほど運営体制が健全であることを示しています。反対に従業員数が少ないまま利益が大きく出ている場合、M&A後に離脱する社員が1人でもいれば大きな影響を及ぼす可能性が高いということです。従業員も大事な企業資産としてみておきましょう。

組織

オーナー企業のように社長・経営者一族が切り盛りしている企業を買収すると、健全な経営を継続させることが難しくなります。

社長や経営者が日々の業務に多く携わっていれば、組織化がうまくできていないケースもあるでしょう。社長・経営者が企業の重要な意思決定の判断だけを行い、社員は自分の業務を担当するなどしっかりと組織化ができている企業のほうが事業承継M&Aに適しています。

ブランド力・技術力

売り手企業が有しているブランド力・技術力も指標の1つです。ブランド力・技術力はその企業しか持っていないノウハウ・資産として大きな価値となります。

M&A市場においても、ブランド力・技術力を多く有する企業は高い評価を受けることが多いです。買い手として売り手企業を探している場合はブランド力・技術力を有しているか、売り手として買い手を探している場合は自社のブランド力・技術力はなにかを言語化できるようにしましょう。

取引先数

取引先が豊富かどうかも、M&Aにおいては重視されるポイントです。取引先が1社だけだとM&Aを行った後に契約打ち切りになってしまう可能性が高くなり、リスクが大きくなります。

できれば取引先が豊富にあり、複数社が契約打ち切りになったとしても経営の基盤が傾かないような企業を探しておくべきです。

事業承継M&A成功のポイント

事業承継M&Aを成功させるためには、ポイントを意識して進めていく必要があります。売り手企業が意識すべき点は、以下の4点です。

企業価値の向上

買い手企業がM&A実施を検討する大きなポイントは、売り手企業の価値です。「企業価値」と呼ばれるもので、事業活動によって得られる事業価値に非事業価値を合わせた額が目安となります。

事業価値には特許や商標権、技術力、ノウハウなどの「のれん」と呼ばれる無形資産も含まれ、非事業用価値に含まれる主なものは遊休資産や投資有価証券などです。

事業承継M&Aは、買い手側からみた魅力が高いほどが成功しやすくなります。そのため、売り手企業はM&A前に自社の強みを明確にし、企業価値向上に努めることがポイントです。

株主理解

中小企業の場合、オーナー経営者やその親族が株式を保有しているケースが多いです。全株式をオーナー経営者が保有している場合は問題ありませんが、分散している場合は事業承継M&Aを行うことに対して理解を得ておく必要があります。

というのは、株式が分散している場合、株式保有率(議決権)によっては反対株主がいるとM&Aが不成立になる可能性があるためです。また、事業承継M&Aについて話す際は情報漏洩のリスクを最小化するための配慮も行っておく必要があります。

タイミング

事業承継M&Aを成功させるためには、実施タイミングも重要です。市場動向によってはなかなかよい買い手に巡り合えない可能性もあるため、タイミングを逃さないよう早めに準備をしておく必要があります。

また、事業が好調なうちは売却の決心がつかないケースも少なくありませんが、もし業績が悪化して廃業寸前に追い込まれるようなことがあれば、事業承継M&Aが難しくなることが多いです。

満足度の高い事業承継M&Aを実現するためには実施タイミングも大きなポイントとなるため、早い段階で専門家に相談しておくとよいでしょう。

公的支援を活用

事業承継M&Aを行う場合、ほとんどのケースでM&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼しますが、その費用は決して安くないため資金面で不安があるというケースもあるでしょう。

そのような場合は公的支援を上手に活用するとM&Aにかかる費用負担を軽減することが可能です。国は事業承継M&Aを支援するために、補助金や税制優遇措置、支援機関の設置などを行っています。

また、中小企業庁は事業承継M&Aを検討している経営者に向けて「中小M&Aハンドブック」を策定しているので、一度読んでみるのもよいでしょう。

事業承継M&Aで活用できる補助金・融資・税制

M&Aによる事業承継では、譲渡費用以外にアドバイザーへの報酬など多くの資金が必要になり、資金面の問題からハードルが高いと思われがちです。

しかし、少子高齢化を背景とした事業承継ニーズの高まりを受けて、国の施策として行われる補助金制度や融資を利用するという選択肢もあり、これらの補助金や融資をうまく利用することで事業承継をスムーズに実行できます。

①事業承継・引継ぎ補助金

中小企業庁管轄で実施されている中小企業の事業承継関連補助金制度が、「事業承継・引継ぎ補助金」です。具体的には3パターンの補助金があり、以下のような中小企業・小規模事業者(個人事業主含む)が対象者となっています。

  • 経営革新補助金:事業承継・M&Aを契機に新規事業などの経営革新を計画している事業者
  • 専門家活用補助金:M&Aによる事業承継を行う予定の事業者(売り手・買い手の双方)
  • 廃業・再チャレンジ補助金:現在の事業を廃業し新事業に挑む予定の事業者

各補助金ごとの具体的な金額規模や対象経費は以下のとおりです。
補助金名目 上限金額 対象経費
経営革新 600万円 設備投資費用、人件費、店舗・事務所の改築工事費用など
専門家活用 600万円 M&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用など
廃業・再チャレンジ 150万円 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費など

※上限金額はいずれも実費の3分の2までです。
※M&A手数料は、M&A支援機関登録制度に登録されたファイナンシャルアドバイザーまたはM&A仲介会社の手数料限定です。

なお、この補助金の場合、用意する資料や応募できる期間などが厳密に定められています。専用ホームページが開設されているので、そちらで詳細を確認してください。

②低利融資

金融機関からの融資を低利で受ける方法があります。よく利用されるものは、日本政策金融公庫が実施している「事業承継・集約・活性化支援資金」という低利融資です。

通常、金融機関から事業資金の融資を受ける場合、リスクフリーレートにリスクプレミアムという信用リスクを加味した利率が適用されるため、相当程度の利息負担が生じます。

一方、この制度では、利率上限が3%となっており、非常に低利な条件で融資を受けられるのです。ただし、事業計画策定などの一定の条件があるため、各金融機関に詳細を確認しましょう。

③経営承継円滑化法に基づく信用保証

経営承継円滑化法に基づく認定を得た会社、または個人事業主に対して、事業承継に関する資金を金融機関から借り入れる場合に、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が与えられる制度です。

実質的には保証枠が2倍になる制度であり、資金調達を行う際に有利になります。ただし、一定の要件を満たすことと、都道府県への申請が必要です。必要な要件については中小企業庁のホームページなどを確認しましょう。

④事業承継税制

事業承継税制とは、企業や個人事業の後継者が事業承継によって取得した資産(要件を満たすことが前提)について、相続税や贈与税の納税猶予が受けられる制度です。また、事業承継後の一定期間要件を満たした場合は、猶予された相続税や贈与税は免除されます。

この制度は、事業承継にかかる相続税や贈与税は高額となるケースも多く、円滑な事業承継の妨げになりうるとして、その解決策として設けられました。

優遇措置を受けられれば円滑な事業承継が可能となりますが、対象となるのは2027年12月31日までに事業承継M&Aを行った場合(個人事業の場合は2028年12月31日)であり、かつ2024年3月31日までに「特例承継計画」を提出が必要です。

なお、税制改正大綱による改正点は中小企業庁のホームページに最新情報が載っています。実施前はよく確認するととも、専門家と一緒に進めると安心です。

参考:国税庁「法人版事業承継税制」
参考:法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類

【関連】事業承継と経営承継円滑化法

事業承継M&Aの相談先・専門家

事業承継は経営上の意思決定として重要度が高く、家族や従業員にも大きな影響を及ぼす非常にセンシティブな内容を含みます。それに加えて専門知識も必要になるため、事業承継の専門家のサポートを受けながら進めるのがおすすめです。

  メリット デメリット
公認会計士・税理士 ・自社株承継時の税金に関するアドバイスが得られる
・節税対策の具体的なアドバイス・提案が得られる
 
・事業承継に詳しいとは限らない
・サポート範囲が限定されやすい
金融機関 ・融資が必要な場合にサポートが受けられる
・取引銀行であれば財務状況をよく把握している
・融資を中心とした案が提案されやすい
・士業などへの依頼は外注になるケースが多い
M&A仲介会社 ・事業承継者先を幅広く探せる
・相談~クロージングまでの一貫支援が受けられる
・M&A以外の事業承継の相談には向かないこともある
M&Aプラットフォーム ・時間や場所を気にせず気軽に利用できる
・費用が安く済む
・M&Aについての知識が必要となる
事業承継・引継ぎセンター ・利害関係がなく公平な助言が得られる ・スピード感のある支援は難しい
商工会・商工会議所 ・経営者に寄り添った支援が期待できる ・会員でなければ利用できない

①公認会計士・税理士

事業承継に関する手続き・会計・税務面に精通し、交渉先の選定や今後の計画、事業承継によるメリットの検討など、多くの局面でサポートが期待できる存在です。また、会社の顧問先であることも多く、気軽に相談しやすいという側面もあります。

中小企業庁が発行している中小企業白書でも、中小企業が考える事業承継時の相談先として、公認会計士・税理士が相談したい相手のトップです。ただし、全ての公認会計士・税理士が事業承継に精通しているわけではありません。

仮に専門外であった場合は、同業者間での連携が強いため、事業承継に精通した別の専門家を紹介してもらうようにしましょう。

②金融機関

幅広いネットワークを持っているため、事業承継の相手先の選定や専門家の紹介など有利な提案を受けられる可能性があります。

金融機関としては、融資先からの資金回収が滞る事態は避けたいため、事業承継でもできるだけ財務面でメリットが大きい選択肢をとってほしいのが本音にあるためです。

すでに融資を受けている場合は、特に早い段階で相談しておいたほうが、スムーズな事業承継の実現につながる可能性が高いでしょう。

③M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&Aを通じた事業承継に特化しており、幅広い情報ネットワークで最適な候補先とのマッチングや手続き面でのフォローなどを行います。

事業承継時に親族・社内以外の第三者を後継者候補とするケースでは、より慎重に事業承継を検討する必要があるため、M&A仲介会社を利用して複数の候補と交渉を行うことが重要です。

M&A仲介会社選びでお困りの場合には、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーが専任となって、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしておりますので、M&Aによる事業承継をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

M&Aプラットフォーム

M&Aプラットフォームは、インターネットを利用したM&Aのマッチングサービスです。ほとんどのM&AプラットフォームはM&A仲介会社が運営しており、利用者(売り手側・買い手側)は利用登録をすることで案件を探すことができます。

マッチングの場を提供することが主な目的であるため、相手先への打診や交渉などは基本的に自身で進める形式のプラットフォームが多いですが、運営会社によってはM&Aアドバイザーに別途支援を依頼することができるサービスも行っています。

M&Aプラットフォームは、時間や場所を気にせず気軽に利用できる点や、M&A仲介会社へ依頼した場合よりも費用が安く済む点がメリットです。その一方で、情報漏洩対策や交渉などM&Aについての知識が必要となる点がデメリットといえるでしょう。

事業承継・引継ぎセンター

事業承継・引継ぎセンターは、後継者不在の中小企業あるいは小規模事業者を対象として、相談・アドバイス・マッチングなどを行う国の設置機関です。

47都道府県に窓口が設置されており、事業承継M&Aだけでなく親族内承継など事業承継全般に関する相談を無料で行っています。

公的機関であり利害関係がないため公平な助言が得られ、士業や仲介会社などの専門家と連携しているので必要に応じて紹介してもらうことも可能です。

商工会・商工会議所

商工会や商工会議所でも、事業承継M&Aに関する相談を行っています。町村部にある商工会や市や特別区にある商工会議所は、どちらも会員制ですが、会員になっている場合は無料で相談でき内容によって事業承継・引継ぎ支援センターなどへ繋げてもらうこともできます

そもそも中小企業の経営者を対象にサポートを行っているので、公的な支援制度(税制優遇措置など)にも詳しい点がメリットです。

ですが、M&Aの専門家が在籍しているとは限らないためサポート範囲は限定され、専門的な支援が必要な場合は外部へ依頼する必要があります。

事業承継M&Aの流れ

事業承継M&Aの流れを8つのステップに沿って紹介します。

コンサルタントの選定

中小企業が事業承継M&Aを行う場合は、一貫支援が受けられるM&A仲介会社へ依頼するケースが多いです。M&Aは成立までに少なくとも半年から1年程度かかるといわれているため、M&Aアドバイザーとは長い付き合いになります。

仲介会社を選ぶ際は得意とする業種や成約実績のほか、アドバイザーの人柄も判断の目安とするとスムーズにM&Aを進めていくことができるでしょう。

相手先を探す

次は、自社の希望条件をM&Aアドバイザーへ伝え、買い手先候補となる企業を探してもらいます。相手先を探す際は業種や地域などの範囲を狭めすぎてしまうとよい買い手企業を見過ごしてしまう可能性もあるため、最初の段階ではある程度の幅を持たせておくのもよい方法です。

紹介された企業のなかに交渉したい相手先がみつかったらM&Aアドバイザーを通して打診をし、買い手候補の企業がM&Aに前向きであればトップ面談へと進みます。

トップ面談

トップ面談では、売り手・買い手の経営者(オーナー)が直接会い、経営理念や人間性などを互いに確認します。

トップ面談の目的は信頼関係の構築なので、M&A価額(売却価格)や従業員の処遇など具体的な交渉は行わないのが一般的です。

そして、トップ面談後に互いがM&A成立に向けて前向きであれば、条件や価額、譲渡時期や使用スキームなど細かな交渉を進めていきます。

基本合意書の締結

価額や条件などM&Aの内容に売り手側・買い手側が大筋で合意した段階で、基本合意書を作成して締結します。基本合意書はあくまでも締結時点での内容をまとめたものです。

そのため、基本合意書そのものに法的な拘束力はなく、M&A成立が約束されたわけではありません。ただし、秘密保持に関する事項や独占交渉権付与に関する事項などに限り、法的拘束力を持たせるケースが多いです。

デューデリジェンス

基本合意を結んだ後は、買い手企業によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスの目的は、買収価格の妥当性やリスクの有無を確認することです。

財務・法務・人事・ITなどさまざまな分野のデューデリジェンスがありますが、どの分野を調査するかはケースによって異なります。売り手企業はデューデリジェンスにおいて協力を求められた場合は誠実に対応することが重要です。

最終契約の締結

デューデリジェンスの結果、買い手側がM&Aの実行を判断したら最終交渉へと進みますが、デューデリジェンスの結果によってはM&A価額(売却価格)や条件に変更が生じる可能性もあります。

また、この時に作成する最終契約書は記載されたすべての内容に法的拘束力があるので、締結前によく確認することが重要です。万一不明点や疑問点がある場合は、締結前に解消しておくようにしましょう。

最終契約を締結したらM&Aは成立です。なお、最終契約締結後は原則として一方的な破棄は認められず(解除条件に該当するなど特別な場合を除く)、違反した場合は損害賠償請求されるおそれもあります。

クロージング

M&Aが成立したら、譲渡対象の引渡し手続きと対価の支払い手続きを行います。この工程をクロージングといいますが、クロージング条件を満たしていなければ行えないため、通常はM&A成立から一定期間空けて行うことが多いです。

クロージング手続きは使用スキームによって変わり、株式譲渡の場合は株券の引き渡しと決済手続を行い、経営権を買い手企業へ移転させます。

PMI(経営統合)

クロージングが終わればM&Aは完了となりますが、M&A後は異なる企業同士がともに事業を進めていくため、経営面だけでなくシステムや人事体制などの統合作業を行わなければなりません。

この工程をPMI(経営統合)といい、M&Aが成功するかどうかはPMI(経営統合)の成否にかかっているといわれるほど重要なものです。PMI(経営統合)は経営・業務・意識の3要素から成り、シナジー効果などM&Aのメリットを最大化するために行います。

特に意識面の統合は時間を要するといわれており、丁寧に進めなければ従業員の反発や離職を招く要因ともなりかねません。また、PMI(経営統合)は売り手・買い手が協力して進めなければ、M&Aの効果を最大化することは難しくなります。

M&Aは統合後に事業(企業)が成長・発展してこそ成功したといえるものです。そのため、M&A後のPMI(経営統合)をどのように進めていくかを、売り手・買い手でよく話し合っておく必要があります。

事業承継によるM&Aのまとめ

事業承継は、経営上、非常に重要な事項であるため、事前にしっかりと内容を把握したうえで、専門家や補助金制度などを活用しながら、時間に余裕を持って適切に進めることが重要です。

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