2021年4月21日更新会社・事業を売る

事業譲渡で発生するのれん

M&Aで事業譲渡・譲受を実施すると、のれんという金額が発生します。軒先の暖簾(のれん)と同音である、こののれんという言葉が事業譲渡の現場で使われる意味と、企業会計や税務でのれんをどう取り扱えばよいのかについてレクチャーします。

目次
  1. 事業譲渡で発生するのれん
  2. のれんの評価基準
  3. のれんの算出方法
  4. 事業譲渡で発生したのれんの会計上の扱い
  5. 事業譲渡で発生したのれんの税務上の扱い
  6. まとめ
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事業譲渡で発生するのれん

事業譲渡で発生するのれん

日本の伝統的文化の1つである暖簾(のれん)という言葉が、M&Aにおける事業譲渡の場面で使われています。布である実際の暖簾と直接的な意味の繋がりはないため、事業譲渡で使われるのは平仮名の"のれん"です。

のれんは、事業譲渡の成立後、企業の会計でも税務でも取り扱いに注意を要する金額になります。残念ながら、いつ誰が、こののれんという言葉を当てはめ使うようになったのかは定かではありません。

その代わりと言ってはなんですが、のれんの意味するところ、使われ方、算出方法、金額の取り扱い方などを詳しく見ていきましょう。

事業譲渡で発生するのれんとは?

事業譲渡で発生する金額であるのれんとは、事業譲渡を実施した際の買取価格が、譲渡された事業の時価純資産価額を上回り、その超過した分の金額を意味しています。

したがって、買収される事業の時価純資産価額と買収価格が同額であれば、のれんは発生しません。しかしながら、事業譲渡が実施されるということは、買い手はそこに価値を見い出して実行しています。

つまり、事業譲渡のほとんどの場合、時価純資産価額に対してプレミアムを付加して買収価格が決定されていると言っていいでしょう。

当然ながら、買い手側の該当事業への評価と期待が大きければ大きいほど、買取価格は高騰します。それを受けて、のれんもその金額が高くなります。

「のれん」という言葉が用いられるようになった意味合いですが、商店の軒先に掲揚されるのれん(暖簾)と無関係ではありません。

のれんの機能的な用途はさておいて、商店にとってのれんとはプライドやアイデンティティーの象徴です。これを外部から見た表現で言えば、のれんは店の顔であり、ブランドそのものと言ってもいいでしょう。

そして、事業譲渡の現場におけるブランド力とは、数字的な資産価値だけでなく、その企業が持つ開発力・技術力・営業力・販売力など蓄積されたノウハウの価値と言えます。

しかし、のれんは抽象的な概念でもあり、専門的な知識がなければ算定は難しいものになります。のれんへの対応・対策も充分考慮したM&Aをお考えの際は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

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負ののれんとは?

事業譲渡の際の買取価格が、その事業の時価純資産価額を下回ることも起こり得ます。そのようなケースでは、その差額を「負ののれん」と呼んでいます。負ののれんは理論上だけでなく、現実に発生する事態です。

その主たる理由としては、譲渡側企業に帳簿上に反映されていない簿外債務があったり、事業資産の大きさと比べた時に現在の収益性が低いケースや、また、当該事業が何らかの損害賠償請求リスクをはらんでいる等によって発生します。

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負ののれんとは?のれんとの違いや発生原因、事例をご紹介

 

のれんの評価基準

のれんの評価基準

のれんとは、結局のところ、譲渡事業の潜在的な価値に対する価額ということになります。それでは、どのようなケースにおいて、その潜在的な価値が評価されるのでしょうか。一般的に考えられる、のれんの評価にとって有益なポイントと、評価されにくい点について見ていきます。

のれんの評価が上がるポイント

のれんの評価が高まる事業の潜在的な価値とは、資産として数字には現われていない部分です。事業のジャンルにもよりますが、多くの事例として実証されているものは、以下の要素のいずれかが該当しています。

  • ブランド力
  • 開発力・技術力・営業力・販売力などで培われてきたノウハウ
  • 上記を実行し得る人員や組織力を有していること
  • 特許などのIP(intellectual property=知的財産)を所有していること

のれんの評価に影響しないこと

一方で、残念ながらのれんの評価を押し上げるポイントにはなり得ないものもあります。その最たるものとしては、事業売却側の企業の経営歴や、該当事業の事業歴の長さです。

確かに、廃業や倒産していく会社も多い中、長くその事業を行ってきたことや会社を経営してきたことは称賛に値します。しかし、称賛と会社の価値基準とは全くの別物です。

経営は数字の世界ですから、50年続いてきた赤字会社よりも、充分に黒字を出している新興企業の方が評価を得るのは止むを得ないと言わざるを得ません。もう1つ注意しておきたいのは、上の評価ポイントで挙げた特許についてです。

特許は出願し認可が下りれば取得することができます。実は、この段階までであれば、それほど難易度が高いわけではありません。のれんで評価を受ける特許というのは、その技術なりシステムなりを応用して実用化がなされているのです。

それに反して、死蔵特許と呼ばれている特許があります。この死蔵特許は実用化などが全くなされていない、言わばただの紙切れ同然の状態にあるものです。死蔵特許をいくらたくさん所有していても、のれんの評価には全く繋がりません。

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のれんの算出方法

のれんの算出方法

上述してきたとおり、のれんは潜在的な価値に対する価額ですが、イメージや思惑だけで金額を決めているわけではありません。事業譲渡の際には、その数字を導き出す、いくつかの算出方法が用いられています。

それら算出方法を紹介していきますが、専門的で難解な部分もあるため、説明は概略だけにとどめます。実際の算出には公認会計士やM&Aの専門家に相談するのがおすすめです。

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⑴簿価純資産法

貸借対照表の純資産額そのままの数値を用いて、一株あたりの株価を計算する方法が、簿価純資産法です。コストアプローチと呼ばれる手法の1つになります。

特に中小企業の場合に、資産の価値が簿価どおりであることは少ないとされています。したがって、事業譲渡の現場では現在、ほとんど使われなくなっている算出方法です。

⑵時価純資産法

時価純資産法もコストアプローチ手法の1つです。こちらは簿価純資産法と違って、貸借対照表の純資産を時価で算定し直します。そのうえで、一株あたりの株価を計算する方法となるのです。

この時価純資産法であれば、該当事業の実態を反映した金額が導き出せるとされています。したがって、現在、コストアプローチとしては専ら時価純資産法が用いられています。

⑶類似業種比較法

マーケットアプローチという手法もあります。その1つが類似業種比較法です。これは、事業譲渡する会社と同業種の他社とを比較して評価を行います。

具体的には、国税庁発表の業種別月平均株価をもって、その会社や事業の評価を試みる方法です。しかし、ひとくちに同業種といっても規模、事業方針および影響力のあるマーケットなどが多様であることから、M&Aにおいては、現在ほとんど使われておりません。

⑷類似企業比較法

マーケットアプローチにはもう1つ手法があります。それが類似企業比較法です。これは、事業譲渡する会社と類似している他社の平均株価をベースとして用います。

そして、事業譲渡する会社の貸借対照表を精査し直し、類似会社の株価を参考にしながら、事業譲渡する会社の株価を算出して評価する方法です。スピーディーに算出ができるという利点があります。

⑸インカムアプローチ

より専門性の高いのれんの評価方法がインカムアプローチです。これにも複数の手法があります。インカムアプローチは総じて、譲渡される事業が将来計上すると思われる収入や利益を予想し、現在価値に換算する方法のことです。

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事業譲渡で発生したのれんの会計上の扱い

事業譲渡で発生したのれんの会計上の扱い

のれんは、会計上では資産として扱われます。2019(令和元)年12月現在、施行されている日本の会計基準では、資産として計上したのれんは最大20年間、その効果が及んでいる期間内に償却処理することとされています。

こののれん償却額は、販売管理費に区分します。なお、のれんが重要でないと判断できる時は、償却ではなく、発生した年度に一括計上することが認められています。

大企業のM&Aでは、のれんが高額化することが多く、償却しないことはほぼあり得ません。しかし、中小企業同士の事業譲渡の場合には、そこまでのれんが高騰しないため、一括計上する会計処理が多いのが現実です。

また、負ののれんの会計上の扱いですが、これはその年度に発生した特別利益として計上することになっています。

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のれん償却とは?会計処理や期間、メリット・デメリットを解説

営業権の償却

事業譲渡で発生したのれんの税務上の扱い

事業譲渡で発生したのれんの税務上の扱い

元来、実は税務上でのれんに該当する概念がありませんでした。そこで2006(平成18)年の税制改正で、のれんへの対応として資産調整勘定および差額負債調整勘定が取り入れられたのです。

資産調整勘定が通常ののれんの処理に用いられ、差額負債調整勘定が負ののれん向けの処理として使います。どちらの場合ものれんが発生した、その月から60ヶ月(5年間)にわたって均等償却することとされています。

つまり、年度途中であれば月割り額を算出して該当月数分の償却をするということです。この場合の償却とは、資産調整勘定であれば損金算入、差額負債調整勘定であれば益金算入することになります。

前項で述べたように、会計上でののれんは最大20年間での償却ですが、資産調整勘定は5年間です。会計上と税務上で償却期間が違うことには充分留意する必要があります。

いずれにしても、負債のある会社との事業譲渡は判断、手続き共に大変な点があります。そのようなケースをを避けたい場合は、M&A総合研究所にご相談ください。

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※関連記事

のれん償却期間とは?会計基準と税務

 

まとめ

まとめ

事業譲渡でのれんが発生することは、まず間違いありません。のれんの概念だけは把握しておきましょう。また、今後の税制改正等によって、のれんの扱い方が変わる可能性もあります。

事業譲渡を実施する際には、専門家にのれんに関する最新情報を確認するようにしましょう。本記事の要点は下記のとおりです。 

  • 事業譲渡で発生するのれんとは 

→事業譲渡を実施した際の買取価格が譲渡された事業の時価純資産価額を上回り、その超過した分の金額。 

  • 事業譲渡で発生したのれんの会計上の扱い

→通常ののれんは資産に分類され最大20年の間に償却処理する。負ののれんはその年度に特別利益として計上する。 

  • 事業譲渡で発生したのれんの税務上の扱い

 →5年(60ヶ月)にわたっての均等償却で資産調整勘定(のれん)は損金に算入し、差額負債調整勘定(負ののれん)は益金に算入する。

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