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人材派遣・人材紹介の事業譲渡・株式譲渡のメリットとは?【事例あり】

人材派遣・人材紹介業界では、ITの進展やコロナ禍の影響などにより、事業譲渡・株式譲渡が盛んに実施されています。当記事では人材派遣・人材紹介における事業譲渡・株式譲渡のメリットやポイント、事業譲渡・株式譲渡での引き継ぎ手続きを解説します。

目次
  1. 人材派遣・人材紹介の事業譲渡・株式譲渡
  2. 人材派遣・人材紹介業界が直面している問題
  3. 人材派遣・人材紹介業界の今後の動向予測
  4. 人材派遣・人材紹介会社の評価を高めるポイント
  5. 人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡・株式譲渡は人材獲得のノウハウが大切
  6. 人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡のポイント
  7. 人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡のポイント
  8. 人材派遣・人材紹介会社のその他のM&A手法
  9. 人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて
  10. 人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡する際の相談先
  11. 人材派遣・人材紹介の事業譲渡・株式譲渡まとめ
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人材派遣・人材紹介の事業譲渡・株式譲渡

まずは、人材派遣・人材紹介の概要を解説します。事業譲渡・株式譲渡を行う際に把握しておくべき基本知識もまとめました。

人材派遣・人材紹介業とは

人材派遣会社は、自社と契約した社員を他社へ派遣して仕事に従事させることを事業としており、人材派遣業を営むためには厚生労働大臣の許可が必要です。

人材紹介会社は、求職者と企業(求人者)を引き合わせる仲介業者であり、雇用契約が成立した場合は企業(求人者)から人材紹介会社に対して手数料(成功報酬)が支払われます。人材派遣業同様、人材紹介業を営むためにも厚生労働大臣の許可が必要です。

人材派遣会社と人材紹介会社では雇用契約を結ぶ対象が異なり、人材派遣会社の場合は自社と派遣される社員が雇用契約を結びます。

対して、人材紹介会社の場合は求職者と雇用契約は結びません。求職者は企業(求人者)と面談を経て互いの条件などが合致したら直接雇用契約を結びます。

人材派遣・業務請負と人材紹介の違い

人材派遣と業務請負は、人材会社が自社スタッフをクライアント企業に提供するサービスです。

派遣ではスタッフがクライアント企業の指示で働きますが、業務請負では人材会社の指示で働きます。一方、人材紹介は求職者とクライアント企業をマッチングするサービスで、営業許可が必要です。

人材会社は、自社データベースやSNSなどを利用して適切な人材を紹介します。また、退職者の再就職支援も提供されています。最近では、インターネット上のマッチングプラットフォームが増えています。

求人メディアと人材紹介の違い

求人メディアには、求人情報を提供するサービス(求人サイトや求人情報誌など)と、求職者情報を提供するサービス(ダイレクトリクルーティングサービスなど)があります。

ダイレクトリクルーティングサービスは、求職者情報をデータベース化し、企業がデータベースを検索して直接求職者にスカウトやオファーを送ることが可能です。これらのサービスは、法律で「募集情報等提供事業」と呼ばれます。

ただし、サービス提供者が情報を選別・加工し、採用や応募の勧奨や面接日時の調整などを行う場合、有料職業紹介事業に該当します。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社の事業(一部または全部)を第三者へ売却する方法です。譲渡する範囲を細かく決めることができるため、売り手は不採算事業の切り離し、買い手にとっては不要な資産や負債を引き継がなくてよいというメリットがあります。

事業譲渡の対象となるのは、設備・土地建物などといった有形資産のほか、ノウハウやブランドイメージなどの無形資産も含まれます。事業譲渡では。引継ぎに関する手続きは個別に行わなければならないため、手続きが煩雑で時間がかかりやすいというデメリットもあります。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、売り手企業の株式を買い手企業へ譲渡することによって、経営権を移行する方法です。株主が変わるだけなので法人として大きな変化はなく、権利義務・雇用・取引先との関係などはそのまま買い手企業へ引き継がれます。M&A手法のなかでも手続きが簡便なのが特徴であり、中小企業のM&Aで多く用いられています。

包括承継なので雇用や取引先との関係も同意なく引き継がれますが、買い手企業は資産だけでなく負債もそのまま引き継がなければならない点がデメリットです。

その他のM&A手法

事業譲渡・株式譲渡だけでなく、M&Aには多くの手法があります。例えば、2つ以上の企業を1つの法人格にまとめる合併、会社を分割して既存または新設会社へ権利義務を譲り渡す会社分割などがあります。

【関連】M&Aの手法とは?分類一覧、選ぶ際のポイント、メリット・デメリット、税金も解説

人材派遣・人材紹介業界が直面している問題

人材派遣・人材紹介業界は、現在どのような問題に直面しているのでしょうか。この章では、人材派遣・人材承継業界が抱える2つの問題について解説します。

  1. 知名度がなく優秀な人材の獲得が難しくなっている
  2. 法改正により義務化された項目への対応が厳しい

①知名度がなく優秀な人材の獲得が難しくなっている

人材派遣・人材紹介会社が優秀な人材を獲得できるかどうかは、会社の知名度に左右される部分もあります。世間一般に知られている人材派遣・人材紹介会社であればスキルの高い人材も集まりやすいですが、知名度がなければ優秀な人材がなかなか集まらないというのが現状です。

人材派遣会社は事業所数が減少傾向にあるため、利用者からみると選択肢が狭まってしまい、人材派遣など別の働き方を選択するケースも考えられます。人材派遣会社の利用者数が少なくなれば、より人材(特に優秀な人材)を集めにくい状況になってしまいます。

②法改正により義務化された項目への対応が厳しい

平成27年に労働者派遣法が改正され、特定労働者派遣と一般労働者派遣事業の区分けがなくなり、労働者派遣事業として一本化されました。

特定労働者派遣事業は、現在得ている許可で平成30年の9月29日までは事業を続けることができ、一般労働者派遣事業も許可の有効期間内であれば事業継続が認められています。

この猶予期間以降、人材派遣・人材紹介会社は新しい基準を満たさなければ労働者派遣事業を続けることはできません。

新基準では、労働者派遣事業はすべて許可制となり、キャリアアップなど教育訓練も義務付けられました。それ以外にも「3年ルール」と呼ばれる派遣期間規制が設けられ、同じ派遣先(組織単位)に対する同一労働者の派遣期間は3年が上限となりました。

法改正によって義務化された項目のなかには、すぐに対応することが厳しいものもあり、新基準をクリアできないために事業の継続を諦めたケースもみられます。

人材派遣・人材紹介業界の今後の動向予測

人材派遣・人材紹介業界で事業譲渡や株式譲渡などのM&Aを検討している場合は、業界動向を把握しておくことが大切です。この章では、人材派遣・人材紹介業界の今後の動向を予測します。

①外国人労働者や高齢労働者の増加

人材派遣・人材紹介業界では、外国人労働者と高齢労働者が増加しています。厚生労働省「外国人雇用状況」によると、外国人労働者は令和元年10月時点でおよそ166万人に達しており、前年の同じ月と比べるとおよそ19.9万人も増えています。

近年は外国人を新卒で採用する企業も増えており、いずれは中途採用も増加していくと予測されているため、人材派遣・人材紹介会社は企業の要望に応えられるよう、外国人労働者の確保も必要になってきています。

高齢労働者の増加による人材派遣・人材紹介会社の変化もあると考えられます。少子高齢化が進むなかでは若手人材の確保に注力しがちですが、限られた若者から必要人材数を確保することは難しい問題もあります。

豊富な経験を有した高齢労働者の採用に積極的に取り組んでいる企業も増えてきているため、人材派遣・人材紹介会社はニーズに対応すべく、高齢労働者の派遣・紹介に注力していくのではないかと考えられます。

②雇用サイクルの長期拡大

現在の高齢者雇用安定法では、定年を65歳未満としている企業は、定年制度の廃止・定年を65歳まで引き上げ・継続雇用制度(65歳まで)の導入、3つのいずれかの措置を講じなければならないとされています。

少子高齢化が進む日本では高齢者も長く働ける環境が必要であるというのが主な理由ですが、高齢者のなかには健康上の理由などからフルタイム勤務や継続雇用を希望しないケースもあります。

そのような場合、働き方の選択肢として人材派遣・人材紹介会社の利用が考えられます。このような現状から、人材派遣・人材紹介業界ではスキルや経験豊富をもつ高齢者人材を確保し、雇用サイクルの長期拡大に対応していくものとみられます。

③人材派遣・人材紹介会社業界の事業譲渡・M&A動向

人材派遣・人材紹介業界では、生き残りをかけた競争が激しくなっています。自社の抱えている人材や対応事業(業種)だけでは競争に打ち勝てない場合、M&Aを行って自社の弱みを補完する動きもある状況です。

人材派遣・人材紹介業は、外国人労働者・高齢労働者の増加や雇用サイクルの長期拡大といった現状への対応を迫られています。このような問題を解決する手段として、株式譲渡や事業譲渡といったM&Aを活用するケースは今後さらに増加すると予測されます。

M&Aが活性化すれば相手先もみつかりやすくなるため、人材派遣・人材紹介業界で事業譲渡・株式譲渡を検討しているのであれば、よいタイミングだといえるでしょう。

人材派遣・人材紹介会社の評価を高めるポイント

人材派遣・人材紹介業界のM&A・事業譲渡・株式譲渡で、買い手企業から高い評価を得ている会社にはどのような特徴があるのでしょうか。この章では、人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業譲渡・株式譲渡で、評価を高める2つのポイントについて解説します。

  1. 様々な業種に対応する人材を保有していること
  2. 介護士・その他有資格者などの人材を保有していること

①様々な業種に対応する人材を保有していること

さまざまな業種に対応できる人材を保有している人材派遣・人材紹介会社は、買い手企業からの評価が高くなる傾向にあります。人材派遣・人材紹介会社を利用する企業によって、対応業種や求められるスキルの程度は異なるため、多様なニーズに応えられるよう人材を確保しておく必要があります。

そのような理由により、さまざまな業種に対応できる人材を保有していることは、M&A・事業譲渡・株式譲渡での評価を高める1つのポイントになります。人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡や事業譲渡を検討している場合は、多様な業種に対応できる人材や高い技術・スキルを有する人材確保へ取り組んでおくことが大切です。

②介護士・その他有資格者などの人材を保有していること

介護福祉士などの有資格者を保有していることも、人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業譲渡・株式譲渡で評価を高めるポイントです。

高齢化が進む日本では介護事業のニーズはさらに高まると予測されるため、介護福祉士や社会福祉士など有資格者を保有している人材派遣・人材紹介会社は高い評価を得られる傾向にあります。

医療や福祉だけでなく、各業種の勤務に欠かせない資格者を保有している人材派遣・人材紹介会社は、高い評価を得られやすくなります。

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡・株式譲渡は人材獲得のノウハウが大切

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡・株式譲渡をよりよい条件で成立させるためには、いかに人材獲得のノウハウを持っているかという点もポイントです。ここでは、今後ニーズが高まると考えられる人材の獲得ノウハウを解説します。

外国人留学生などの人材獲得のノウハウを持っている

近年は国内の人材不足と経済の国際化により、企業は積極的に外国人労働者を雇用するようになっています。

厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」によれば、外国人留学生を含む外国人労働者数は、平成29年は約128万人でしたが、平成30年は約146万人、令和元年は約166万人と年々増加しています。

そのような背景により、外国人労働者の現地採用が可能なスタッフがいたり、日本文化を学べる研修制度などが確立できていたりする人材派遣・人材紹介会社は、事業譲渡・株式譲渡で高い評価を得やすくなります。

介護・医療などの有資格者を獲得するノウハウを持っている

厚生労働省職業安定局「人手不足の現状把握について」をみると、2009~2017年はどの年度でも医療・福祉業の求人数はほかの業種より高くなっており、慢性的な人手不足であることが読み取れます。

医療や福祉(特に介護)は、精神・肉体的な負担が大きいなどの理由から離職率も高く、人材の確保が難しい業種といわれています。

介護事業は今後の成長が見込まれている市場であるため、新規参入する企業がさらに増加すれば、有資格者の確保は今よりも厳しい状況になると考えられます。

そのため、人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡・株式譲渡では、介護・医療などの有資格者確保のノウハウを持っていればよりよい条件で成立する可能性が高まると考えられます。

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡のポイント

人材派遣・人材紹介会社のM&Aでは、株式譲渡や事業譲渡がスキームとして用いられることが多いですが、それぞれどのようなポイントを意識して進めればよいのでしょうか。この章では、人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡を行う際のポイントを解説します。

人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡する際の注目点

人材派遣・人材紹介会社のM&Aで事業譲渡を用いる場合は、現在の労働者派遣法で定められている雇用条件や就業規定が自社の状況が適合しているかをよく確認しておくことが重要です。

前述したように、労働者派遣法は2015年に大きく改正されているため、派遣期間(同じ事業への派遣は3年まで)、有期労働契約社員(同じ事業に5年以上派遣されている)に対する無期雇用契約への移行対応など、さまざまな条件が加わっています。

見直しが必要な場合は法律に関する専門知識が必要となるため、弁護士あるいは弁護士が在籍しているM&A仲介会社へ相談しながら進めましょう。

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡事例

ここでは、実際に行われた人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡事例を紹介します。

①クリエアナブキによるライクスタッフィングへの事業譲渡

株式会社クリエアナブキによるライクスタッフィング株式会社への事業譲渡です。中国・四国地方などで人材派遣・人材紹介事業などを営むクリエアナブキは、2018年3月、ライクスタッフィングに大阪支店の人材派遣事業を事業譲渡しました。

クリエアナブキはUIターンへの就職・採用支援への注力するため、人材派遣事業の事業譲渡を選択しています。当事例の事業譲渡価額は1,500万円です。

②ジェイテックがベンチャー総研グループから事業譲受

株式会社ジェイテックがベンチャー総研グループからヒューマンリソース事業とポスティング事業を事業譲受した事例です。この事業譲渡の価額は6,220万円となっています。

2015年6月、ベンチャー総研グループから、ジェイテックへの事業譲渡が行われました。ジェイテックの子会社が一般派遣事業を手掛けており、ベンチャー総研グループから2つの事業を譲受することで人材派遣業における人材不足への対応とサービス拡大を進めるとしています。

③ネプロジャパンの子会社がEPコンサルティングサービスより事業譲受

株式会社ネプロジャパン(現・株式会社エヌジェイホールディングス)の子会社による、EPコンサルティングサービスからの事業譲受です。2015年1月、人材派遣事業などを手掛けるネプロジャパンは、子会社であるシーズプロモーションを介して、EPコンサルティングサービスからIT・バイリンガルの人材派遣事業を事業譲受しました。

この事業譲渡が行われた主な目的は、ネプロジャパン子会社の人材派遣事業領域拡、事業運営の国際化・社員の多国籍化に対応していくためです。この事業譲渡の価額は1.2億円となっています。

事業譲渡に適した人材派遣・人材紹介会社とは

事業譲渡の場合は法人格はそのまま残せるため、複数の事業を営んでいる人材派遣・人材紹介会社に向いています。人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡では、買い手側企業は自社では人材確保が難しい業種の人材派遣・人材紹介事業に強みを持っている会社を高く評価する傾向にあります。

自社にそのような強みがあったり採用ノウハウを有していたりする場合や、ほかに注力したい事業がある場合は、事業譲渡が適しているといえるでしょう。事業譲渡の手続きや注意点などは、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連】事業譲渡・売却はなぜ必要?目的や手続きの流れと期間・実施するタイミングを解説

人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡のポイント

人材派遣・人材紹介会社のM&Aでは、事業譲渡ではなく株式譲渡が用いられることもあります。この章では、人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡を行う際のポイントを解説します。

人材派遣・人材紹介会社を株式譲渡する際の注目点

事業譲渡とは違い、株式譲渡では会社の経営権を移行します。株式譲渡は包括承継となるため、権利や義務だけでなく負債や不要な資産も、買い手企業はそのまま引き継ぐことになります。

株式譲渡の場合、買い手側企業は簿外債務の有無や負債状況などを事前によく調査しておくことが重要であるため、デューディリジェンスを徹底して行う必要があります。

デューディリジェンスは財務だけでなく、法務などあらゆる分野に渡りますが、専門家に依頼して行うため時間だけでなく費用も当然掛かります。すべてのデューディリジェンスを行うのは現実的に難しいため、M&A仲介会社などと相談しながら範囲を決めるとよいでしょう。

【関連】簿外債務とは?リスク、買い手の注意点をわかりやすく解説

人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡事例

ここでは、実際に行われた人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡事例を紹介します。

①戸田建設がグリーン・サポート・システムズの全株式を譲受

2023年12月、戸田建設はグリーン・サポート・システムズのすべての株式を取得し、子会社化しました。

戸田建設は、建築・土木、地域開発・都市開発事業、不動産事業、再生可能エネルギーなどによる発電事業を行う企業です。グリーン・サポート・システムズは、人材派遣業、人材紹介業を行う企業です。

今回のM&Aにより、グリーン・サポート・システムズのノウハウを活用し、優秀な人材獲得、人材派遣事業の拡大を目指します。

②UTグループが水戸エンジニアリングサービスの全株式を譲受

UTグループ株式会社が水戸エンジニアリングサービス株式会社の全株式を譲受し、完全子会社化した事例です。

製造業向け人材派遣業などを手掛けるUTグループは、2020年7月、エレベーター関連のエンジニア派遣・請負事業を営む水戸エンジニアリングサービスの株式をすべて取得しました。水戸エンジニアリングサービスは日立グループの子会社です。

この株式譲渡は、UTグループと日立グループとの関係強化、技術者派遣の領域を広げた企業価値向上を目的として行われました。なお、株式譲渡価額は非公開となっています。

③アルプス技研がデジタル・スパイスの全株式を譲受

2020年6月、株式会社アルプス技研は、株式会社デジタル・スパイスの全株式を取得すると発表しました。

アルプス技研は技術者の派遣事業などを手掛けており、デジタル・スパイスはソフトウエア開発・技術者派遣事業などを手掛けています。

この株式譲渡は、アルプス技研がデジタル・スパイスを傘下に加えることで、ノウハウ共有などのシナジー効果獲得、企業価値の向上を目的として行われました。なお、株式譲渡の価額は非公表となっています。

④トラスト・テックが人材派遣会社など3社を株式譲受により子会社化

株式会社トラスト・テック(現・株式会社ビーネックスグループ)が人材派遣会社を含む3社の株式を譲受して子会社化した事例です。

製造業への請負・受託・派遣事業などを手掛けるトラスト・テックは、2019年11月、アクシス・クリエイト、フェイス、アクシスヒューマンデベロップメント3社の全株式を取得して完全子会社化しました。

この株式譲渡は、トラスト・テックは「IT技術分野の拡張」を中期経営計画で掲げており、3社を子会社とすることでIT領域の拡張を進めていくことを目的として行われました。なお、株式譲渡の価額は15.56億円となっています。

株式譲渡に適した人材派遣・人材紹介会社とは

株式譲渡は会社の経営権を移行する手法であるため、現経営者が引退したい場合などに適しています。

前述のように株式譲渡は包括承継であるため、後継者がいないために事業承継ができない場合や自社の経営資源だけでは成長と発展が難しい場合などにも、有効な方法です。

自社の従業員の雇用も維持されるうえ、経営者は売却益を得られるのも株式譲渡のメリットです。なお、株式譲渡の手続きや注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連】株式譲渡の手続きの流れ!手順、必要書類、注意点も徹底解説

人材派遣・人材紹介会社のその他のM&A手法

人材派遣・人材紹介会社のM&Aでは事業譲渡や株式譲渡が用いられることが多いですが、それ以外の手法で行われるケースもあります。

例えば、会社分割・第三者割当増資・株式交換などの方法を用いて、人材派遣・人材紹介会社のM&Aが行われたケースも見られます。

M&Aを行う際にどの手法を用いるのが最適なのかは自社の状況や目的などによっても違ってくるため、M&A仲介会社など専門家に相談しながら進めていくことがおすすめです。

人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡または株式譲渡する際は、どちらの手法を選択するかによって、必要な引き継ぎや手続きが変わってきます。

どのような手続きが必要になるかを事前に把握しておくことで、事業譲渡・株式譲渡後の経営をスムーズに進めることが可能です。ここでは、事業譲渡・株式譲渡それぞれの引継ぎや手続きのポイントを解説します。

事業譲渡の引き継ぎと手続き

事業譲渡は個別承継であるため、契約や権利がそのまま引き継がれることはありません。従業員の雇用契約や取引先との契約の場合、相手の同意を得たうえで個別に契約を再度結ぶ必要があります。

権利や許認可も引き継ぐことはできないため、事業に必要な許認可がある場合は、買い手企業が保有していなければ取得が求められます。

人材派遣・人材紹介業を営むためには、労働者派遣事業許可が必要です。取得が必要な場合は申請にかかる時間を考慮しておかないと、事業譲渡後にスムーズな事業運営ができないため注意しましょう。

【関連】事業譲渡・売却はなぜ必要?目的や手続きの流れと期間・実施するタイミングを解説

株式譲渡の引き継ぎと手続き

株式譲渡は権利・義務もそのまま引き継ぐ包括承継であるため、特別な引継ぎ手続きは基本的に不要です。

従業員の雇用契約や取引先との関係も株式譲渡では維持されるため、買い手側企業が改めて契約を結ぶ必要もありません。株式譲渡の流れや株主名簿書き換えなどの必要な手続きは、以下の記事でわかりやすく紹介しています。

【関連】株式譲渡の手続きの流れ!手順、必要書類、注意点も徹底解説

人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡する際の相談先

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡や株式譲渡を成功させるためには、M&A仲介会社など専門家のアドバイス・サポートが有効です。

M&A総合研究所は、中堅・中小規模の案件を主に扱うM&A仲介会社です。人材派遣・人材紹介会社のM&Aを、豊富な支援実績を有するアドバイザーが、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談はお電話またはメールよりお受けしておりますので、人材派遣・人材紹介会社のM&Aをご検討の際は、お気軽にご連絡ください。

人材派遣会社のM&A・事業承継ならM&A総合研究所

人材派遣・人材紹介の事業譲渡・株式譲渡まとめ

人材派遣・人材紹介業界は、人材確保の難しさや法改正で義務化された項目への対応が難しいなどの問題を抱えています。今後は、外国人労働者や高齢労働者への対応強化もますます必要になることから、解決手段としてM&Aが活用されるケースは増加すると考えられます。

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡・株式譲渡を検討している場合は、よりよい条件・タイミングで行えるよう、計画的に準備を進めておくことが大切です。

【人材派遣・人材紹介業界が直面している問題】

  1. 知名度がなく優秀な人材の獲得が難しくなっている
  2. 法改正により義務化された項目への対応が厳しい

【人材派遣・人材紹介業界の今後の動向予測】

  1. 外国人労働者や高齢労働者の増加
  2. 雇用サイクルの長期拡大

【人材派遣・人材紹介会社の評価を高めるポイント】

  1. 様々な業種に対応する人材を保有している
  2. 介護士・その他有資格者などの人材を保有している

【人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡・株式譲渡で有利となり得る要素】

  1. 外国人留学生などの人材獲得のノウハウを持っている
  2. 介護・医療などの有資格者を獲得するノウハウを持っている

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出版業界は、電子書籍の普及と紙媒体の衰退といった大きな変化の渦中にあり、業界再編などを目的としたM&Aが活発です。本記事では、出版業界の最新M&A事例9選を紹介するとともに、出版...

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