2023年9月8日更新会社・事業を売る

会社売却のメリット・デメリット!会社を売る時の相場や税金と高値で売るコツも紹介!

会社売却には、会社の規模拡大や自社存続などのメリットがありますが、会社売却が必ずしも成功するとは限らないデメリットもあります。本記事では、会社売却のメリット・デメリット、相場や税金、高値で売るコツなどを紹介するので参考にしてください。

目次
  1. 会社売却のメリット
  2. 会社売却のデメリット
  3. 会社売却とは
  4. 会社売却の目的
  5. 会社売却の方法
  6. 会社売却の手続きを行う流れ
  7. 会社売却に潜むリスク
  8. 会社売却のメリットを最大化させるコツ
  9. 会社売却の相場
  10. 会社売却の際の企業価値評価
  11. 会社売却でかかる税金
  12. 会社売却前に実施する準備内容
  13. 会社売却に必要な書類・資料
  14. 会社売却による経営者と社員への影響・処遇
  15. 会社売却の成功に向けたM&A仲介会社を選ぶ基準
  16. 会社売却でかかる税金
  17. 会社売却のメリット・デメリットまとめ
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会社売却のメリット

会社売却と聞くとマイナスイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際にはメリットも多くあり最近では経営戦略のひとつとして行う企業も増えてきました。ここでは、会社売却の代表的なメリットを紹介します。

①会社の規模を拡大できる

大企業に会社を売却しグループ傘下に入ると、会社の規模拡大が実現可能です。特に中小企業の場合は自社のリソースだけでは規模拡大が難しいことも多いですが、大企業に会社売却を実施すれば安定した財務基盤のもとで事業を行うことができます

大企業のノウハウ・販路・顧客を活用によって会社の規模拡大が図れるうえ認知度も向上するなど、中小企業にとって会社売却はさらなる成長の方法として有効な手段です。

②会社の存続が可能になる

経営状態が悪化している会社や後継者不在で事業承継ができない会社にとっては、会社売却が自社存続の有効な手段となります。会社の経営状態が悪化して資金繰りが滞ると会社単体で回復するのは困難になり、最悪の場合は廃業や倒産といった事態にもなりかねません。

会社売却では借り入れや融資などの負債も買い手側へ引き継がれるため、自社の存続が可能です。また後継者がいない場合は買い手企業が事業を引き継ぐことで、従業員の雇用や培ったノウハウや技術を守ることができます。

③廃業の手間が省ける

なんらかの理由により廃業を選択する場合、廃業手続きが必要となります。会社の解散や精算には法律で定められた手続きが必要です。

手間と時間がかかるうえ、登記や法的手続きの費用、施設や設備の処分費用、賃貸物件の場合は原状回復工事費用もかかります。

廃業は想像以上にコストや手間がかかるものですが、会社売却であればこのような手間が省けるうえ、売却利益を得ることも可能です。

④大金を獲得できる

会社売却を行えば対価としてまとまった現金を得ることができます。たとえば新規事業の立ち上げを考えている場合は、会社売却で得た資金を活用すれば事業をスムーズにスタートできます。

また、40〜50代までに会社売却で老後の蓄えを作り、悠々自適に過ごすアーリーリタイヤの実現も可能です。これは、欧米でよく見られるケースで、昨今は日本でもこのライフスタイルを選ぶ方が増加しています。何かと不安な老後の生活を考えると、賢い方法の一つです。

⑤創業者として経営手腕を評価される

会社売却をすると、M&Aを行った創業者として評価される点もメリットです。会社が価値のある事業、伸び代のある事業、今後成長し得る事業として売却された場合、創業者に経営手腕があったと評価されたと言い換えることもできます。

M&Aに消極的な経営者も多いですが、近年は経営戦略の一つとしてM&Aが捉えられるようになってきました。創業者利潤と豊富な事業資金を確保する目的でM&Aを実施する経営者も増えています。

⑥従業員の雇用を維持できる

会社売却の場合はほとんどが株式譲渡によって行われるため、資産や負債、従業員の雇用もそのまま買い手企業に引き継がれます。

従業員の雇用維持を希望条件とする売り手企業経営者が非常に多くみられ、買い手側にとっても優秀な人材をまとめて確保できる点がメリットです。

従業員の雇用継続については、M&A後の処遇の大幅な変更などがないよう、交渉時によく話し合っておくようにしましょう。

⑦経営者の仕事から解放される

経営者の仕事から解放されることも、会社売却のメリットです。会社売却を実施すると、経営者として仕事をする必要がなくなります。会社売却の後は、仕事から解放されて、自分の時間を自由に使えるでしょう。

⑧個人保証・連帯保証から解放される

会社を経営する際、銀行から多額の借入をすることは少なくありません。そして、創業者や役員が保証人になるケースがほとんどです。

会社売却では、一般的に買収側が保証人を引き継ぐため、売却側の経営者は個人保証・連帯保証から解放される点もメリットになります。

会社売却のデメリット

メリットと同様に、デメリットもあります。次は一般的なデメリットについてみていきましょう。

①必ずしも成功するとは限らない

多くのメリットがある会社売却ですが、必ずしも成功するとは限りません。会社売却は立派な取引であり、買収する会社にとっては大きな買い物です。

先方も買収の際は慎重になり、じっくり検討して実施します。会社売却を実行したくても、先方にメリットがなければ取引に失敗する恐れがあり、会社売却が順調に進みません。会社売却の成功率を上げるためには、M&A専門家のサポートを得ることをおすすめします。

②競業避止義務による事業の制限がかかる

競業避止義務とは、買い手側の利益を保護するために、売り手側が負う義務です。わかりやすくいうと、会社売却後の一定期間は売却した事業を行えない決まりであり、多くの場合は会社売却時の契約書に競業避止義務を盛り込みます。

事業譲渡を活用して会社売却する場合は、契約書の内容に関係なく、法律により競業避止義務が発生するので注意が必要です。会社売却後に新規事業を始めようと考えている人にとって、大きなデメリットとなるでしょう。

【関連】競業避止義務とは?意味や判例、M&Aでの活用方法を解説

③ロックアップが発生する

ロックアップとは、会社売却後の一定期間は当該事業の中で働くことを約束することです。期間の長さは、相手企業の要望や取引方法によって変動します。

売却後も積極的に働きたい場合は問題ないですが、会社売却後は悠々自適に暮らしたいと考えている場合は、デメリットとなる可能性もあるでしょう。

④経営の意思決定スピードが落ちる

会社を売却する際は、買い手企業と今後における意思決定の食い違いが起きないよう注意が必要です。認識がずれてしまうと、事業に支障をきたしたり、トラブルに見舞われたりするリスクが高くなります。会社売却後の意思決定は、買い手企業に報告しながら行うようにしましょう。

⑤相手企業との関係性が悪化するおそれがある

会社売却後は異なる文化を持つ企業同士が1つになるため、経営陣や従業員同士などがうまくコミュニケーションができければ、相手企業との関係性が悪化する可能性もあります。

事前の契約事項における解釈がきちんと伝わっていないことで、トラブルになる可能性も否定できません。したがって、会社売却をする場合は、売り手企業と買い手企業のコミュニケーションやかかわり方など、さまざまな課題を乗り越えていかなければなりません。

⑥キーマンのモチベーションが低下するおそれがある

ロックアップ中に、キーマンのモチベーションが低下するおそれもデメリットといえます。ロックアップとは、売り手企業のキーマンが抜けることで事業が頓挫しないよう、売却から数年間はキーマンが辞められない規定です。

キーマンは、CEOなど会社の重要な役職に就いている人になります。ロックアップの間は、キーマンのモチベーションを維持するのが難しいでしょう。

⑦経営者は寂しさを感じる

会社を売却して経営から離れるので、経営者が寂しさを感じることもデメリットとして挙げられます。生涯取り組んできた会社経営が終わりとなり、やりがいがなくなったと感じる経営者も少なくないようです。会社売却を機会に、他にやりたかったことを始めてみるのもよいでしょう。

会社売却とは

会社売却とは、会社の経営権を第三者へ売却して対価を受け取る手法です。会社の従業員や取引先なども含め、非常に多くの要素がかかわってきます。会社を売却する経営者にはさまざまな理由があり、たとえば、大企業への傘下に入ることで経営を安定化させるため、主力事業への集中を行うため、売却利益の獲得などです。

昨今は事業承継を理由に会社売却を行う中小企業が増え、前向きな攻めの姿勢で行う会社売却がある一方で、ネガティブな理由として会社売却を選択するケースもあります。

また、経営者が高齢化する一方で、後継者が見つからず結果的に事業承継できずに廃業するケースも少なくありません。そうした状態に陥った会社にとって、会社売却は救いの手となり得る方法でしょう。

会社を売る方法には大きく2つのやり方があります。「会社の株式を売る方法」と「会社の事業そのものを売る方法」です。

「会社の株式を売る方法」では、売る側の会社の株を、買う側の会社が購入します。こうすると、売った会社は買った会社の下で経営される子会社となります。

しかし、売った会社は今までどおりに存在し続け、ただ誰がその経営をコントロールするかが変わるだけです。具体的には、買った会社がどれだけの株を持っているかや、売った会社の経営者がその後どうなるか(会社に残るのか、去るのか)によって、細かい違いが出てきます。

一方、「会社の事業を売る方法」では、売る側の会社が自分たちの事業部門を丸ごと買う側の会社に移します。これには、事業に関連する財産や契約、技術、ブランド名なども含まれます。

売った側はお金や買った側の株式などと交換して、事業を手放します。もし一部の事業だけを売る場合、売った会社は残りの事業で存続します。しかし、全ての事業を売ると、売った会社自体がなくなることもあります。

会社売却が増え続けている理由とは

近年、M&Aを活用して会社売却するケースが増加傾向にあります。以前は、会社売却に対してネガティブなイメージが付きまとっていたため、自ら進んで会社売却を実施するケースは少なく、むしろ「買われた」というイメージが強かったのも事実です。

しかし、大企業同士のM&Aがニュースで頻繁に取り上げられるようになり、M&Aにマイナスな印象を抱く人は少なくなりました。事業承継問題を抱える中小企業の増加も相まって、昨今は会社売却が有効な経営戦略として認知されてきています。

不景気などで経営環境が変化しやすい現代では、会社経営を続けることが必ずしも最善の方法とは限りません。経営を無理に続けた結果、負債が増えてより危うい状態になったり、廃業に追い込まれたりする可能性もあるでしょう。そうした事態を避けるためにも、会社売却を決断する経営者が増加していると考えられます。

会社売却における周囲への影響

多くの人たちを巻き込んで会社は事業活動を行っています。従業員は給料をもらいながら会社活動を行うことで自身の家族を養っているので、こういった状況で会社が売却されると環境の変化に不安を抱くのも当然といえるでしょう。

また、取引先も重要な関係者で、取引している相手が第三者へ売却されると売り上げに対する影響が気になるのは普通です。会社売却は、会社の従業員やその家族、取引先など、周囲へ大きな影響を与えます。

会社売却の目的

ここでは、会社売却の目的について見て行きましょう。

大手グループの傘下に入る

大手グループの傘下に入ることは、会社売却の目的の一つです。大きな事業基盤を持つ企業の子会社となれば、買収側や他のグループ会社とのシナジーを発揮しながら事業の成長や拡大が期待できます。これは、ベンチャー企業の会社売却でよく見られる目的です。

イグジットの実現

会社売却によるイグジットはIPO(新規株式公開)と比べられます。IPOにより株式を一般投資家へ売り出すことでもイグジットはできますが、IPOを実現できる会社は少なく、実現できても長い時間がかかるでしょう。

かつては、イグジットの手段は日本ではほとんどがIPOでした。しかし、アメリカではIPOよりM&Aが盛んで、日本でも近年はM&Aイグジットが増えています。ベンチャー企業などは起業当初から投資戦略としてイグジットを視野に入れているのです。

事業承継問題の解決

現経営者の引退により行う事業承継を、会社売却で実施するケースです。社内の役員や従業員へ会社売却することもあります。つまり、事業承継問題の解決が会社売却の目的です。

中小企業では親族内承継が大きな比率を占めますが、中小企業経営者の高齢化と後継者不足が進んでいる近年は、会社売却による事業承継も増えている状況です。中小企業のM&Aを取り扱うM&A仲介会社やマッチングプラットフォームも増えています。

事業再生

事業再生も会社売却の目的の一つです。大きな財政基盤を持つ事業会社やファンドなどの傘下に入るケースになります。業績が傾いた状態でも、戦略的な視点において早いタイミングで会社売却を検討すれば、最小限のダメージに抑えながら事業再生につなげられるでしょう。

赤字企業は、会社を優良部分と不良部分に分け、優良部分だけを売却して不良部分は清算する方法もあります。

事業の選択と集中

会社売却の目的に、事業の選択と集中もあります。経営資源の配分を最適化するため、収益性や成長性が低い事業を売却するのです。これは、新規事業の立ち上げや会社買収により事業領域を広げてきた会社が、さらなる拡大を期待して中長期的な視点で事業を整理するときに実施されることもあります。

【関連】M&Aの会社売買は何のため?経営者や社員に与える影響や事例・案件一覧を詳しく解説

会社売却の方法

会社売却にはいくつかの方法があります。どの方法が最適かは状況や目的によって異なるので、自社に合った方法を選択しましょう。ここでは、代表的な会社売却方法を紹介します。

①株式譲渡

株式譲渡は会社売却で用いられる方法の中で、頻繁に活用される方法です。特に中小企業のM&Aで、よく活用されています。株式譲渡とは、売り手側が持っている自社の株式を買い手側に売却する形で、経営権を譲渡する方法です。

株式譲渡では、基本的に契約書の作成のみで完了するので、手間がかからないことが大きなメリットです。株式譲渡を制限している会社では、株主総会もしくは取締役会の承認が必要ですが、それでも他のM&Aと比べると手続きの量が少なく済みます。

株式譲渡では売却益に対して20.315%の所得税が課税されます。ほかの手法では消費税や法人税も課税されるため、株式譲渡は最終的に支払う税金が少ないのもメリットの一つです。デメリットは、買い手側が簿外債務などを引き継ぐリスクがあることです。株式譲渡を用いて会社売却を実施する場合、会社は丸ごと移転します。

したがって、買い手側は不要な資産や簿外債務なども丸ごと引き継ぐことになり、会社全部を売買するのでこのリスクをゼロにするのは不可能です。

会社売却の際、買い手側は「のれん代」を値段に上乗せして買い取ります。「のれん代」とは、購入した金額と買った企業資産の差額です。「のれん代」は毎年減価償却により費用計上する必要があり、減価償却費以上の利益を得なければ、利益は減ってしまいます。

【関連】M&Aの株式譲渡はどんな手法?実例や事業譲渡との違いから種類や方法・注意点まで総まとめ

②事業譲渡

事業譲渡とは、一部の事業または全ての事業を売買するM&Aの方法です。会社を丸ごと売却するのではなく、一部の事業だけ売却したい場合は、事業譲渡が適しています。事業譲渡は不採算事業を切り離したい場合や、事業を売却して資金を獲得したいケースにも適した手法です。

事業譲渡では、買い手側がほしい部分を指定して買収できるメリットがあります。簿外債務や不要な資産などを引き継ぐリスクがありません。この仕組みを有効活用すれば、さまざまな利益が得られます。

例えば、主力事業に集中したいときは、重要性の低い事業を売却して得た資金や浮いた経営資源を主力事業に投入できます。買い手側も自社に必要な事業のみを買収することが可能です。

事業譲渡のデメリットは、手続きが非常に面倒である点です。取引先との契約や行政機関の許認可、雇用契約などの再度締結など必要な手続きが多く、事業の全部譲渡や重要な事業の譲渡を実行する場合は株主総会の特別決議が必要なので非常に手間がかかります。

また、契約関係などの引き継ぎは個別に同意を得なければなりません。ほかの方法よりも手続きが複雑でわかりにくいため、多大な時間とコストがかかってしまいます。

【関連】事業譲渡によるM&Aとは?株式譲渡との違い・メリット・デメリット・手続きの流れを解説!

③会社分割

会社分割は、会社の一部または全部を他社に移転する方法です。基本的には、組織再編の方法として活用されていますが、事業売却の際にも活用されるケースもあります。

事業譲渡と似ていますが、会社分割は資産や債務、雇用契約をまとめて引き継ぐ包括承継です。行政機関の許認可も基本的にはそのまま引き継げるので、会社売却後すぐに事業活動を始められます。

また、会社分割は事業承継と異なり消費税が課税されません。所定の条件を満たせば所得税も軽減されるため、ほかのM&A方法と比べて税金の負担が軽くなるメリットもあります。

会社分割のデメリットは、買い手側が不要資産や簿外債務を引き継いでしまうことです。不必要になる契約条項まで引き継ぐ可能性があることも理解しておきましょう。

【関連】会社分割とは?新設分割・吸収分割についてや手続き、メリット・デメリット、事業譲渡との違いを解説

④合併

会社売却の方法に、合併の方法もあります。2つ以上の異なる会社が一つになるのが合併です。合併には、一方の会社が吸収するもの、異なる第3の会社を設けるものがあります。

【関連】合併の意味とは?種類・メリット・デメリット・事例・会計処理も紹介

会社売却の手続きを行う流れ

会社売却の手続きは、おおむね以下の流れで進めていきます。

①会社売却に向けた準備

まずは、なぜ会社売却を行うのかといった目的を明確にし、M&A後に自社がどうありたいかなどビジョンを定めます。目的やビジョンを明確にすることは、相手先の選定や交渉時に譲歩が必要となった場面で判断基準となる重要な要素です。

次に相手先に希望する条件を決定し、優先順位をつけておきます。「従業員の雇用維持」「事業の成長」「売却価額」など希望条件は会社によって違いますが、必ずしもすべての条件に見合う相手先がみつかるとは限らないため、優先順位をつけておくと選定しやすくなるでしょう。

また、会社概要や決算資料、自社の強みをアピールできる資料など用意しておくと、やM&A仲介会社など専門家の相談時に役立ちます。

②M&A仲介会社への相談・依頼

M&A仲介会社によって、得意とする業種や地域、取引規模などが異なります。自社の規模や状況に合ったM&A仲介会社を選ぶことが大切です。

M&A仲介会社によって、手数料やM&A成立までの期間も違います。M&A仲介会社を選ぶ際は、複数のM&A仲介会社を比較しましょう。

③相手企業探し(マッチング)

M&A仲介会社と契約した後は、買い手となる企業の候補を探します。たくさんのネットワークを持つM&A仲介会社であれば、自社に最適な相手企業をみつけてもらえるでしょう。気に入った買い手企業候補をピックアップした後、打診し、相手企業が関心を示せば面談に進みます。

④トップ面談

トップ面談は、M&Aにおけるプロセスの一つです。売り手企業と買い手企業における双方のトップ同士が直接話し合います。主に相互の理解を深めるため、以下を話し合います。
 

  • 経営方針
  • 経営理念
  • 企業文化
  • M&Aへの方向性
  • 将来のビジョン

互いの会社を知るために、相手企業や工場に出向くケースもあるでしょう。トップ面談後に、このまま会社売却を進めたいと思えば、本格的な交渉です。交渉は、M&A仲介会社などの専門家に同席してもらって行います。

⑤基本合意契約

双方が交渉した内容に大筋で合意したら、基本合意契約を締結します。基本合意書に記載するのは、取引の基本的条件、譲渡価額、売買までのスケジュール、契約予定日、デューデリジェンスに関する事項、独占交渉権、当該基本合意文書の有効期限や法的拘束力の範囲など、その時点までに取り決めた内容です。

基本合意契約は最終契約に先立って取り交わされますが、それ自体に法的拘束力はありません。その後のデューデリジェンスによって、基本合意契約の内容がそのまま最終契約書になる場合もあれば、条件や価額が変更になる場合もあります。

また、買い手企業へ独占的交渉権が付与する場合はと、売り手企業は基本合意契約締結後に買い手企業以外の相手と売買交渉できなくなるので注意しましょう。

⑥デューデリジェンス(買収監査)

基本合意書を締結した後は、買い手企業によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスを行う目的は、売り手企業が抱えているリスクを把握するためです。

デューデリジェンスの結果は、最終交渉時に反映されます。買い手主体で行われるため売り手企業に費用負担などはありませんが、資料の提出など協力を求められた場合は誠実に対応することが大切です。

⑦最終契約・クロージング

デューデリジェンスが終わり、買い手企業が買収を決めたらいよいよ最終交渉です。最終交渉はデューデリジェンスの結果を踏まえて行われ、互いが価額・条件などM&Aの実施内容に合意すれば最終契約を締結しM&Aが成立します。

最終契約はすべての事項に法的拘束力があり、締結以降に特段の理由なく契約を破棄すれば損害賠償請求をされることもあるため、内容をよく確認することが重要です。その後、譲渡が実行され入金が行われてクロージングすればM&Aは完了となります。

【関連】M&Aスケジュールとは?M&Aにおける売り手・買い手スケジュール(流れ)を解説します

会社売却に潜むリスク

会社売却に潜むリスクは、時間がかかる、大幅なコストがかかる、情報漏えいに関するリスクがある、などが挙げられます。会社売却をスムーズに進めるためには、事前に入念なリサーチや準備が必要です。多大な時間や費用がかかるのは当然ですが、会社売却をする相手先が見つからない可能性や交渉がうまく進まずに撤回される可能性もあります。

それまでにかかったコストや時間が無駄になってしまうと、企業にとっては大きな損失です。M&Aでの交渉は、企業の内部事情を説明する必要があるため、破談になった際に情報漏えいにつながる可能性もあります。会社売却をする際は、こうしたリスクを理解したうえで検討しましょう。

会社売却のメリットを最大化させるコツ

会社売却を成功させるには、いくつかのポイントを抑える必要があります。ここでは、そのポイントを見ていきましょう。

①会社売却のタイミングを見計らう

会社売却のタイミングは、成功率を上げるために何より重要な要素です。会社売却のタイミングをある程度固めておけば、スケジュールを組みやすくなります。自社の業界内でM&Aが盛んになっているタイミングを見極めれば、成功率を上げられるのです。

M&Aは常時実施されていません。タイミングによっては、その業界で全く実施されていない時期もあります。会社売却の実行タイミングを逃してしまうと、買い手が見つからないまま時間だけが過ぎ去る恐れがあるのです。

②会社の強みを把握し強化する

自社の強みや弱みをしっかり理解しておくことも重要です。買収する側の会社に買収のメリットを正確に伝えなければ、会社売却はスムーズにいきません。自社の強みと弱みを今一度精査し、自社の価値を把握しましょう。

また、把握するだけではなく、自社の強みをさらに強化する必要があります。優れた人材やノウハウ、ブランド力があると、M&Aの際に高評価を受ける可能性が高まるので、会社売却を考え始めた段階で会社の「磨き上げ」を始めましょう。磨き上げを実施すれば、買い手先が見つかりやすくなります。

磨き上げは、すぐにできません。M&Aを考えた段階で、取り組む必要があります。M&A前の磨き上げに自信がなければ、専門家のアドバイスをもらうことも有効です。

③会社の実態を把握し身辺整理をする

会社売却を決断したら、自社の実態を正確に把握し、必要があれば身辺整理をしましょう。会社売却の際に、買収する会社が一番嫌がるのは不要な資産や契約、債務です。

特に買収する会社は、簿外債務などの公表されない債務を嫌います。会社売却が成功した後に簿外債務の存在が発覚して、トラブルに発展するケースも少なくありません。自社の実態を正確に把握し、会社売却に支障が出る可能性があれば、先方と協議したうえで不要なものを整理しましょう。

会社売却の成功率を上げるためにも、会社の実態精査や身辺整理をおろそかにしてはいけません。

④買い手は入念に探す

会社売却を実施する際、買い手によって条件が変わるのは珍しくありません。より良い条件で会社売却を成功させるためにも、買い手を探す際は、慎重に行いましょう。会社売却を実行する際は、M&A仲介会社から買い手候補を紹介してもらう手もあります。手広く会社を紹介してくれるので、会社売却を実行する際に便利です。

⑤魅力的な経営資源をそろえる

買い手企業が売り手企業を買収する目的の1つが、自社にない強みを手に入れることです。売り手側は売却前に魅力的な経営資源をそろえましょう。

その際、魅力的な経営資源だけでなく、弱みも明確にしてください。弱みを明確にするのは売り手企業の評価を下げるわけではなく、魅力を際立たせる説得力にもつながります。意思決定や事業計画へのヒントにもつながるでしょう。

⑥信頼できるM&A仲介会社に依頼する

会社売却に関するさまざまな手続きや準備は、自社のみで行うのは非常に難しいです。専門的な知識や経験、相手先との調整が必要なので、M&A仲介会社などの専門家に依頼するのがベストといえます。

自社の抱える案件と相性の良いM&A仲介会社を見つけることは非常に大切です。M&A仲介会社によって、得意な売却方法、業界などが分かれています。業務の範囲も異なるため、自社に適したM&A仲介会社を見つけましょう。

M&A仲介会社をお探しの際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A仲介会社であるM&A総合研究所は、M&Aに精通したM&Aアドバイザーが、培ったノウハウを生かして会社売却をフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

⑦高値で売却される会社のポイントを把握する

高値で会社を売却するには、自社が有する事業や技術、人材、文化が高く評価されなければなりません。そのためには、まず誠実であることが大切です。企業売買の際は、デューデリジェンスといった企業価値を判断するための調査が行われます。これは、法務、財務、ビジネスモデル、人事、環境などの切り口から実施されます。

会社売却では、自社の強みと弱みを明確にすることがポイントですが、強みと弱みはこのデューデリジェンスで明らかになるのです。ネガティブな要素を隠していてそれが判明すれば、買収側に悪い印象を与えてしまい信用を失う可能性もあります。以上のことも踏まえて、下記のポイントを意識して会社をより高く売却しましょう。

  • 誠実な対応
  • 特許や技術を持っている
  • 業界が成長している
  • シェアを有している
  • 優秀な従業員が定着している
  • 取引先など顧客リストが充実している

上記のポイントを押さえた会社は、買収側に対して非常に魅力的に映るでしょう。

会社売却の相場

会社売却を検討する際、「価格の相場」も気になるところですが、会社売却の相場は、それぞれのケースで異なるので一概に「これが価格相場です」と断言できません。

実際に会社売却をする場合は、互いが納得できる価格を決定する必要があります。そのため、おおよその価格相場を決定する算出方法があるのです。今回は、会社売却における相場をつかむための代表的な方法をいくつか紹介します。

会社売却の手法による相場の違い

会社の売却額における相場は、どのM&A手法を取るかによって異なります。例を挙げると、株式譲渡と事業譲渡の場合、株式譲渡のほうが売却額が高いです。株式譲渡では、売却側が買収側の傘下に入りますが、売却側が有する取引先からの信用力やブランドが保たれるため売却額が高くなります。

事業譲渡は、経営者が交代することが多いです。買収側の意向で事業方針が変わることも少なくないので、将来生まれるキャッシュフローが少なく見積もられます。

会社売却の際の企業価値評価

会社売却を行う際は、価格交渉時のベースにもなる「企業価値」の評価が必要です。企業価値の評価方法は大別すると以下の3種類があります。

  特徴 メリット デメリット
コスト
アプローチ
評価時点の正味財産に着目 ・比較的簡単に算出でき客観的
・資産・負債価値の明確化
・株式相場が反映されない
・収益性を加味しにくい
マーケット
アプローチ
類似会社の株式市場相場に着目 ・取引相場に近い
・トレンドが反映される
・類似会社の選定が難しい
インカム
アプローチ
将来の収益性に着目 ・会社の収益力を反映できる
・会社の固有性質を加味できる
・恣意性が入りやすい
・評価方法が複雑

コストアプローチ

会社における財務諸表の情報を用いて、会社売却の相場を計算する方法です。財務諸表とは「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つをさします。中小企業の会社売却で頻繁に活用される方法で、比較的簡単に相場を計算できます。

しかし、この方法で算出した相場には、将来の収益性が加味されていないデメリットがあるため、将来性が考慮されていない会社売却相場が算出されるのです。純資産法は、「簿価純資産法」と「時価純資産法」の2種類があり、「時価純資産法」が時価を用いている分、正確に価格相場を計算できます。

時価純資産価額法

時価純資産価額法の計算式は「時価純資産額=時価資産額-時価負債額」と非常に簡単です。計算式の資産と負債には、それぞれ時価に換算した数字を用います。

計算方法は簡単ですが客観性があり、同じコストアプローチの簿価純資産価額法よりも現実的な評価となるのがメリットです。その一方でデメリットとして、正しく時価へ換算できていなければ評価が適正とならないことや、将来の収益性は考慮されない点が挙げられます。

マーケットアプローチ

よく似た企業を選んでその企業と評価対象の企業を比べて企業価値を評価する方法が、マーケットアプローチです。類似企業の企業価値が特定の指標(当期利益や一株当たりの利益など)の何倍かを計算して平均を出し、評価対象の企業にその倍率をかけて企業価値を評価します。

マーケットアプローチで算出すると偏った評価にならず、客観性のある算定ができるメリットがあります。公平な価格相場を示せるので、信頼度が高い相場算出手法です。ただし、市場の状態次第で算出する相場が変動しやすいデメリットもあります。

また、この方法は類似企業のピックアップがポイントです。異なった業種や財務体質の場合、倍率の計算に狂いが出るため、慎重に選ばなければなりません。

類似会社比準法(マルチプル法)

「類似会社比準法(マルチプル法)」は、事業内容が類似する上場企業選び、両社を比較して企業価値を評価する方法です。実際の評価では、始めに比較対象する上場企業の価値が特定指標の何倍なのかを求めて平均(倍率)をだし、評価対象企業にその倍率をかけて企業価値を算出します。

重要となるのは比較対象する上場企業の選定で、財務体質や業種に違いがあると倍率に狂いが生じ、適正な評価を行うことができません。算出方法はかなり複雑ですが、一般的に企業価値の目安と考えられるのは経常利益の5倍程度です。

類似業種比準法

評価対象の会社と類似している「業種」の会社を比較する方法を「類似業種比準法」と呼びます。類似業種比準法は、純資産法を活用すると相続税の負担が大きくなるケースで効果を発揮します。

インカムアプローチ

インカムアプローチは「買収額(投資額)に対して将来どれくらいの額を回収できるか」という将来の期待値に基づく評価方法です。M&A実務においては、将来のキャッシュフロー予測や期待収益をもとに企業価値を算出します。

DCF法や配当還元法が代表的であり、会社特有の価値や将来の収益力が加味できる点がメリットであり、中小企業のM&Aや事業承継の場面で用いられている方法です。

その一方で、事業計画などから将来を予測するため恣意性や主観が入りやすい点がデメリットとして挙げられます。また、将来の期待値から企業評価を行うため、清算を考えている場合は使用できない方法です。

DCF法

将来的なフリーキャッシュフロー(FCF)を基準に相場を算定します。配当還元法と同じく企業の将来的な収益獲得力を加味して、会社売却相場を計算する方法です。

フリーキャッシュフローとは、企業が事業活動から獲得した資金のうち、自由に使える資金を意味します。M&Aをはじめ、多くの場面で用いられています。

会社売却でかかる税金

会社売却では仲介会社の手数料だけでなく、税金を支払う必要があります。具体的にどのような税金がかかるかは、使用するM&Aの方法によって変わります。ここでは、会社売却でかかる代表的な税金を見ていきましょう。

  税金 税率 課税方式 納税者
株式譲渡(株主=個人) 所得税、住民税 20.315%
※所得税:15.315%
※住民税:5%
分離課税 株主
株式譲渡(株主=法人) 法人税など 約30% 総合課税 法人
事業譲渡 法人税、消費税など 法人税:約30%
消費税:10%
総合課税 法人

株式譲渡の売却額に課される税金

株式譲渡の場合は所得税や住民税がかかり、税率は所得税が15%で住民税が5%です。役員報酬へかかる税金がだいたい40%なので、それに比べると税金も安くなります。

株式譲渡を実施する際の株主が個人のケースでは、売却値段から譲渡費用などの諸経費を差し引いた譲渡所得が所得税が課税対象です。

そのほかに住民税が課されますが、所得税と住民税では納税時期が異なるため、あらかじめタイミングを確認しておくとよいでしょう。

株式譲渡を行った株主が法人の場合は、法人税がかかります。というのは、法人が株式譲渡(株主が法人の場合)や事業譲渡を行った場合は利益が会社に入るためです。法人税は会社の規模によって異なりますが、譲渡所得に対して約30%の法人税が課されます。

事業譲渡の売却額に課される税金

事業譲渡を活用する場合は、譲渡した資産全てに課税されるわけではありません。譲渡資産を「課税資産」と「非課税資産」に分け、課税資産にのみ消費税が課税されます。主な課税資産は、有形固定資産・無形固定資産・営業権(のれん代)・棚卸資産です。

そのほかに、法人税も課されます。事業譲渡を利用する場合に注意すべきポイントは、まずのれん代が高額になると課税される税金も高額になる点です。のれん代が高額になる場合は状況によってほかの会社売却方法を用いたほうがよいケースもあります。

2つ目は、棚卸資産の不確実性です。棚卸資産は帳簿の値段が日々変動するため、実際に会社売却するまでどれくらいの税金が必要か確定できません。

3つ目は、消費税率が変動した場合は支払う税金額も増加する点です。事業譲渡を行う際は、税率変動がないか(予定も含め)を確認しておくとよいでしょう。

会社売却で講じておくべき節税対策

会社売却を行うと大きな金額が手に入るケースが多いですが、税金も当然かかります。課される税金は会社売却の手法によって異なるため、事前に確認したうえで節税対策も講じておくも重要です。

前述したように、株式を譲渡する場合は所得税が15%と住民税が5%です。株式譲渡の場合は、役員報酬を低めに設定しておけば節税効果を見込むことができます。

そのほか、株式譲渡で得た金額を退職金(役員退職慰労金)として受け取る方法もあり、この場合は譲渡所得と退職金で異なる税金がかかるので金額を調整することで節税が可能です。

節税対策はいろいろな方法があるので、専門家に相談して自社の状況に合わせたものを用いることをおすすめします。

会社売却前に実施する準備内容

会社売却前に実施する準備内容はどういったものが挙げられるのでしょうか。会社をできるだけ高く売却するためにも、付加価値のある企業にしなければなりません。

実際に売却を進めるにあたって、売却条件や会社の身辺整理など、以下に挙げる項目をしっかりと準備しましょう。

会社売却の進行スケジュールを定める

スケジュールを定めることは大切で、会社を売却するときも例外ではありません。会社売却は大変な作業であるからこそ、きちんとしたスケジュールのもとで進行しましょう。

短すぎるスケジュールを組むと、調整するのが忙しくなってしまいますが、長いスケジュールにすると業界を取り巻く状況が変わるリスクが高まるため、好条件で売却するのが難しくなる可能性があります。成立までの時間が早いことを強みとするM&A仲介会社もあるため、早く成立させたい場合はこの観点から仲介会社を選ぶとよいでしょう。

自社の業績と取引先を整理しておく

自社の業績、どれくらいの売り上げや純資産があるのかを整理して、デューデリジェンスや交渉に備えてください。整理した内容を、買収側は一番にチェックします。3期以上の赤字が続かない財務体質と、過度な税金対策を行わないことが理想的です。利益を重視した経営を実施して、利益が伸びる状況を作れば、成長できる会社として高く評価されるでしょう。

中長期的にしっかり売り上げを作れる状態を整えれば、売却後もある程度の稼ぎを出せる会社として評価されます。会社の価格には、将来的なキャッシュフローが大きく影響するので、この時点で準備しましょう。

不透明な取引を洗い出しておく

不透明な取引があれば、整理しましょう。詳細がよくわからない取引、税務上における問題のある取引、反社会的なかかわりがある取引先などをまとめて整理するのです。こういった取引が交渉段階で明らかになると、印象が悪くなり最悪の場合は売却の話がなくなります。

前もって詳細を明確にするために、税理士や会計士などにアドバイスを求めるとよいでしょう。税制面や法律面で不透明な取引が行われていた場合は、買収側に前もって伝えてください。

会社売却を行う条件を明確にしておく

交渉ごとでは、どこまで譲歩できてどこからは譲歩できないのか前もってはっきりさせなければなりません。売却後にどういった事業を進めたいのか、考えておきましょう。

売却の金額、ロックアップ、雇用条件は、熟考してください。売却額は、デューデリジェンスによってある程度決まりますが、算段をつけておくと交渉しやすいです。ロックアップの期間は、許容できる範囲を明確にし、従業員の待遇や雇用も売却条件にする場合は整理しましょう。

会社売却に必要な書類・資料

会社売却する際に必要な書類・資料は、会社の状況によっても異なりますが、主に必要な書類は以下のとおりです。

  • 自社をPRする資料や材料
  • 事業計画書(今後3年程度の売上・利益の見とおし)
  • 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や定款、株主名簿
  • 会社案内
  • 財務資料や決算書関係一式
  • 事業ごとの月次試算表
  • 組織図や役員・部門長の経歴書、従業員名簿
  • 規則をまとめた各種規定
  • 取引先や賃貸借、リース、保険などの契約書
  • 許認可などの写し

手配できる書類も多いですが、一から作成しなければならない書類・資料もあります。こうした書類・資料作成には、専門家の協力を得るのがおすすめです。M&A仲介会社や税理士、弁護士など、専門家のアドバイスをもらいながら進めましょう。

【関連】会社を売りたい人が絶対に読むべき会社売却マニュアル!

会社売却による経営者と社員への影響・処遇

この章では、会社売却による経営者と社員への影響・処遇について見ていきましょう。

経営者への影響・処遇

会社売却に伴って引退を選ぶ経営者は少なくありません。しかし、経営者は、会社売却と同時に必ずしも引退する必要はないのです。中小企業は経営者が株主を兼ねることが多く、大手企業は株主と経営者は別であることがほとんどです。株式を売却すれば株主ではなくなりますが、役員交代の登記をするまで経営者の地位は続きます。

長い引継ぎ期間にするほうが円滑にM&Aが行えるケースも事業によってはあるので、買収側と話し合って、一定期間は経営者が役員として残ることもあるのです。

社員への処遇

社員に対する給与などの処遇は、会社を売却する前と後では、基本的に変わりません。用いる手法に関係なく、雇用条件は交渉において同じ条件で引き継ぐことが前提で進められるからです。ただし、基本的に条件は引き継がれますが、事業譲渡の手法では契約を新しく巻き直すので、条件が変わることもあり得ます。

会社売却の成功に向けたM&A仲介会社を選ぶ基準

この章では、会社売却の成功に向けたM&A仲介会社を選ぶ基準について見ていきましょう。

相談料・手数料・報酬を明確に伝えてくれること

M&A仲介会社には、複雑な料金体系を採用している仲介会社もあります。相談料・手数料・報酬を明確に伝えてくれる仲介会社を選びましょう。着手金、中間金を取るM&A仲介会社も少なくありません。これらはM&Aが成立しなくても、返却されないので注意してください。M&A仲介会社に依頼する前に、料金体系をしっかりと確認しましょう。

多種多様な業種の取り扱い実績を持っていること

M&A仲介会社を選ぶ基準として、多種多様な業種の取り扱い実績を持っていることを確認しましょう。自社と同じ規模・業種の実績があるかもチェックしてください。M&Aはこれからの経営に大きな影響を与えるイベントなので、安心してサポートしてもらえるM&A仲介会社を見つけるためにも、実績を確認して自社に適切なM&A仲介会社か見極めましょう。

専門分野に関するM&A実績を備えていること

自社の事業と相手の業種に関する専門性が高くその実績を備えているM&A仲介会社か確認してください。専門性の高い仲介会社は、自分たちでは気がつかないリスクを発見したり、業種特有の悩みに対応したりしてくれます。

例えば、IT業界のM&Aを得意とするなど、特定業種における専門性の有無を判断しましょう。前もってM&Aターゲットの業種・地域などを絞り込めば、自社の条件に合う相談先が見つけやすくなります。

M&A実務に関する総合的な知識を持っていること

会社売却の成功に向けたM&A仲介会社を選ぶ基準として、M&A実務に関する総合的な知識を持っていることも大切です。M&Aに関する総合的な専門知識を有する仲介会社であれば、M&Aによる利益を最大化するための助言をしてくれます。

相談時に親身になって寄り添ってくれること

相談時に親身になって寄り添ってくれることは、M&A仲介会社選びにおいて非常に重要です。M&Aの依頼は、相手を信頼しなければ任せられません。信頼関係は交渉のスピードや成果につながります。言葉遣いや仕事に対する姿勢など、信頼に足る相手かどうかを見定めましょう。

会社売却でかかる税金

会社売却では仲介会社の手数料だけでなく、税金を支払う必要があります。具体的にどのような税金がかかるかは、使用するM&Aの方法によって変わります。ここでは、会社売却でかかる代表的な税金を見ていきましょう。

株式譲渡の売却額に課される税金

株式譲渡の場合、最も大きいのが所得税や住民税で、税率は所得税が15%で住民税が5%です。役員報酬へかかる税金がだいたい40%となるのを考えると、20%は安いといえます。売却値段から譲渡費用などの諸経費を差し引いた譲渡所得に対して、所得税が課税されますが、これは株式譲渡を実施する際の株主が個人のケースです。

所得税と住民税は税金を納める時期が異なる点にも注意が必要です。後になって「住民税が支払えなくなった」とならないように気をつけましょう。

法人税は、主に株式譲渡(株主が法人)と事業譲渡で課税される税金です。法人が株主の場合に株式譲渡を実施すると、利益は会社に入ります。そのため、所得税ではなく法人税が会社に対して課税されるのです。

法人税は各会社によって異なり、平均的には、譲渡所得に対して約30%の法人税が課税されます。法人税は、事業譲渡を活用する場合にも発生します。

事業譲渡の売却額に課される税金

事業譲渡を活用する場合は、譲渡した資産全てに課税されるわけではありません。譲渡資産を「課税資産」と「非課税資産」に分け、課税資産にのみ消費税が課税されます。主な課税資産は、有形固定資産・無形固定資産・営業権(のれん代)・棚卸資産です。上述のとおり、法人税も課されます。

事業譲渡を利用する場合は、注意すべきポイントがあります。1つ目は、のれん代が高額になると課税される税金も高額になる点です。のれん代が高額になる場合、他の会社売却方法を用いることをおすすめします。

2つ目は、棚卸資産の不確実性です。棚卸資産は日々、帳簿の値段が変動します。実際に会社売却するまで、どれくらいの税金が必要か確定できません。3つ目は、消費税率が変動すると支払う税金額も増加する点です。事業譲渡を利用する際は、上記の点に注意しましょう。

会社分割では、消費税が課税されません。支払う税金の額が大幅に減少するのは大きなメリットです。さまざまなケースを想定して、最善の策を実践しましょう。

会社売却で講じておくべき節税対策

会社売却を行うと、大きな金額が手に入るケースが多いですが、ほとんどの場合で税金が発生します。納める必要がある税金は、売却手法によって異なります。

上記でも述べたとおり、株式を譲渡する場合は、所得税が15%と住民税が5%です。最初から会社売却を目指す場合は、役員報酬を低めに設ければ最終的に節税となるでしょう。

退職金(役員退職慰労金)で節税もできます。株式を譲渡してから譲受する金額を退職金として受け取るのです。譲渡所得と退職金で異なる税金がかかるので、金額を調整すると節税につながります。

会社を分割して課税される所得を減らすことも可能です。会社を分割して売却対象でない資産を移し、必要資産を持った会社のみを売却すれば、課税額の圧縮と節税になります。節税対策はいろいろな方法があるので、自社の状況に合わせたものを用いてください。

会社売却のメリット・デメリットまとめ

今回は、会社売却に必要な情報を紹介しました。会社売却は簡単に実施できません。会社売却を成功させるためには、事前の準備を丁寧に行う必要があります。ここで紹介した情報を活用し、会社売却を成功させましょう。

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