合併と仕訳

合併の場合の仕訳は、他のM&Aや組織再編の手法に比べると複雑で、高度な専門知識が必要です。特に吸収合併の仕訳はとても難易度が高いです。今回は合併の仕訳について、通常取得や逆取得の合併仕訳、純資産の引継ぎ方法、専門家へ依頼する場合の注意点などを解説します。

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2020年2月27日更新

目次
  1. 合併と仕訳
  2. 合併の基本知識
  3. 合併の仕訳の注意点
  4. 合併仕訳のプロセス
  5. 合併による純資産の引継ぎ方法
  6. 合併の仕訳を専門家に依頼する場合の注意点
  7. まとめ

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合併と仕訳

合併は、今や一般的に使用されているM&Aの手法であり、大企業・中小企業を問わずさまざまな会社で行われています。ただ、合併は他のM&Aの手法と比べて非常に複雑であり、仕訳を間違えると違法となるリスクも高いため慎重に仕訳に対処していく必要があります。

とりわけ、合併がどういったプロセスで行われたかで仕訳の流れは大きく変化するため、注意が必要です。今回は合併と仕訳の問題を中心に解説します。

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合併の基本知識

まず、合併の仕訳を理解するにあたって必要な合併の基本知識について説明します。

①合併とは

そもそも合併とは、複数の会社同士が合体し、1つの会社になるという手法のことをいいます。

対象の会社を子会社化する株式譲渡といった買収の手法とは違い、複数の会社同士が合体する合併は、いずれかの会社が消滅(消滅会社)し、いずれかの会社が他の会社の事業や従業員、資産などを承継したうえで存続します(存続会社)といいます。

②合併の種類

合併は大きく分けて、吸収合併と新設合併の2種類あります。吸収合併は存続会社が消滅会社を丸ごと吸収する形になります。1つの会社の中に合併に関わる複数の会社が統合されることになります。

これに対し、新設合併は新しく会社を設立し、合併にかかわる全ての会社がそこに吸収されます。新しく設立された会社が存続会社となり、それ以外の会社が消滅会社となります。つまり、吸収合併は既存の会社に、新設会社は新しく設立する会社に合併されるという違いがあります。

③合併の欠点

合併は会社の規模を拡大させるうえで有効的な手法ですが、欠点としては、その手続きが面倒なことと、承継するものを取捨選択できないという点があります。

吸収合併と新設合併のどちらの場合でも登記を行う必要があるなど、手続きが簡単な株式譲渡と比べると、手続きが煩雑になる傾向があります。ただし、承継するものを取捨選択できないことは株式譲渡にも共通した欠点です。

合併も株式譲渡も対象の会社を丸ごと承継することになることから、対象の会社が有する不要な資産や契約、負債も承継します。偶発的債務や簿外債務なども承継の対象になるため、合併や株式譲渡を行った後にトラブルの原因になったり、経営戦略に影響が出るおそれもあります。

実際、M&Aや組織再編において、合併はメジャーな手法の1つではありますが、株式譲渡と比べると使われることが少なく、とりわけ新しい会社の設立が必要な新設合併ではほとんど使われることがありません。

また、合併は完全に会社同士を結合させる手法であるため、異なる企業文化を持つ従業員同士の摩擦を生みやすく、従業員の流出が発生する可能性もあります(ただ、この点はM&A全体に共通するリスクであり、合併特有のリスクではありません)。

さらに、持株会社を有しているグループが行う買収でも合併に近い効果は発揮できるため、会社を消滅させるメリットがない限り、合併という手法はあまり積極的にとられることがないのが現状です。

④M&Aの活用

合併に限らず、近年は、M&Aを会社の規模拡大や組織再編だけでなく、事業承継に使う場合が中小企業を中心に増加しています。このようなM&Aを駆使した事業承継では、後継者不在で経営者が引退しても会社を存続させられるように行うという事例がほとんどです。

そのため、グループを持たない小規模な中小企業でも、合併を行う可能性は十分にあるといっても過言ではありません。合併に限らず、M&A全般の知識や仕訳のプロセスを大まかにでも把握しておくことは、会社の規模に限らず、経営者にとって非常に重要といえます。

M&Aには専門知識が必要となるため、公認会計士などの専門家やM&A仲介会社を利用することをおすすめします。

M&A仲介会社であるM&A総合研究所は、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、幅広い実績により培ったノウハウを活かし、M&Aをフルサポートいたします。

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合併の仕訳の注意点

合併の仕訳においては、主に以下の2つに注意する必要があります。

  1. まずは吸収合併の仕訳のポイントを押さえる
  2. 逆取得に注意する

①まずは吸収合併の仕訳のポイントを押さえる

合併後の仕訳作業は経理や会計士、税理士が中心になって行うのが一般的ですが、合併の仕訳は非常に複雑かつ難易度が高く、会計士などの専門家でさえも判断に困るということがよくあります。

合併のような組織再編は、簿記や会計、税務の知識を学んでいる人であっても経験がなければミスを犯しやすいといわれており、豊富な経験と知識に長けた専門家と入念に行う必要があります。

先述のとおり、合併には吸収合併と新設合併がありますが、仕訳においてはそれぞれの合併の手法に合わせて行う必要があります。ただし、日本で行われている合併は手間がかかるという点から、ほとんどが吸収合併であり、新設合併はあまり使われません。

そのため、まずは吸収合併に対する仕訳のポイントを押さえておきましょう。合併での仕訳において最初に決めるべきことは、「取得会社」か「被取得会社」であるかを確かめることです。取得会社か被取得会社かを判定するポイントは以下の6つです。

  • 合併・結合後の議決権で大きい比率を占めているのはどちらの会社か
  • 合併・結合後の筆頭株主はどちらの会社か
  • 合併・結合後の取締役会の過半数の人事権を掌握しているのはどちらの会社か
  • 合併・結合後の取締役の構成比はどちらの会社の出身者が多いか
  • 合併対価の支払いの際、どちらの会社がプレミアムを支払ったか
  • 会社としての売上高・純利益・総資産が大きいのはどちらの会社か

②逆取得に注意する

一般的に、取得会社は合併における存続会社、被取得会社は合併における消滅会社に該当するとされていますが、合併において注意しておきたいのは逆取得になっているケースです。

逆取得は、存続会社として残る傾向がある取得会社が消滅し、逆に被取得会社が存続するというパターンであり、事業の許認可の維持などが理由で行われることがあります。

基本的にM&Aや組織再編において逆取得が発生することは極めてまれですが、合併という手法に関しては比較的に逆取得が発生しやすい傾向があり、注意しておくことが必要です。

具体的な内容は後述しますが、当然逆取得が発生すればそれに合わせて仕訳を行っていくことになります。取得会社・被取得会社を確定させた後は、取得会社、被取得会社、取得会社の株主、被取得会社の株主それぞれの当事者に合わせた会計処理を行っていきます。

吸収合併の手法を使っていた場合、会計処理を行う当事者は上記の4者ですが、新設合併であれば、新しく設立した会社も当事者として個別に会計処理を行う必要が出てくるので注意しましょう。

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吸収合併とは?M&Aにおける吸収合併や子会社の吸収合併を解説
新設合併

合併仕訳のプロセス

次に、通常取得と逆取得それぞれの合併仕訳のプロセスを説明します。

①通常取得の場合

通常取得の合併仕訳は、取得会社、被取得会社、双方の会社の株主それぞれを対象に行います。まず、取得会社は被取得会社(消滅会社)の資産や負債を時価で受け入れます。その際、のれんが発生しているようであれば計上します。

被取得会社に関しては、合併する前日を最終営業日としたうえで決算を行い(この際の決算は通常の決算と同じです)、最終的な財務諸表を作成しておきます。この際の貸借対照表は時価ではなく、適正な簿価で作成します。

そして、取得会社、被取得会社それぞれの株主に関しては、合併差損益が認識できる株主がいるかどうかで仕訳が変わります。合併は、消滅会社の株式が消滅し、存続会社が交付されて置き換わる形になりますが、その際に合併後の株式の持分が変動することによって、取得会社・被取得会社の株主いずれかに、合併差損益が発生する可能性があります。

取得会社、つまりは存続会社の株主であったり、合併する対象の会社が子会社である場合などは合併差損益が発生する可能性は少ない。合併差損益が発生している株主が認められた際は、それに応じて仕訳を行っていく必要があります。

②逆取得の場合

逆取得の場合の合併仕訳のプロセスは、通常取得の逆であると意識しておくとわかりやすくなります。全体的なプロセス自体はそこまで大きく変わらないため、通常取得の合併仕訳を理解していれば対応しやすくなります。

まず、逆取得の場合は、取得会社が消滅する形になるため、通常取得における被取得会社の場合と同じように合併の前日を営業最終日として通常の決算を行っていきます。

そして、被取得会社に対しては、通常取得の際の取得会社の仕訳と同じようなプロセスを行いますが、逆取得の場合、このプロセスが微妙に変わりますので注意しましょう。

通常取得と同じように、取得会社の資産や負債を受け入れていきますが、通常取得の仕訳であると時価で受け入れるのに対し、逆取得の場合には簿価で受け入れます。

さらに、資産や負債の差額に関しては消滅する取得会社の株主資本相当額については資本金・資本剰余金として計上していく必要があります。この際、取得会社が債務超過になっているようであればその他利益剰余金のマイナスとして、債務超過相当額を計上していきます。

もし被取得会社が株式を発行する際、新株のみを発行しているようなケースでは、取得会社の従前の株主資本の内訳をそのまま引き継げるようになっています。消滅する取得会社の評価換算差額等相当額に関しては、こちらも適正な簿価で引き継ぎます。

ただし、連結財務諸表を作成しないような場合は、もし通常の取得の取引を行っていた場合はどのような会計処理となったのかを試算しておき、逆取得となっている実際の会計処理の間にどれだけ差額が発生しているのかを注記しておく必要があります。

逆取得の仕訳が通常取得の仕訳と異なっている点は上記の点だけで、それ以外の取得会社・被取得会社の株主それぞれの仕訳に関しては、通常取得の仕訳と同じ要領で構いません。

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合併による純資産の引継ぎ方法

合併による純資産の引継ぎはどのように行われるのでしょうか。合併の際にはさまざまな会計処理が必要となりますが、純資産の引継ぎに関しては、主にグループ内取引とグループ外取引の会計処理がメインとなる傾向があります。

グループ内取引を会計処理する場合は持分プーリング法を用いて簿価という形で、そして、グループ外取引の会計処理の場合はパーチェス法を用いて時価という形で、それぞれ合併される会社の資産を引き継ぐことになります。

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合併における資本金の決定

合併の仕訳を専門家に依頼する場合の注意点

合併の仕訳を専門家に依頼する場合、主に以下の2つに注意する必要があります。

  1. 経験豊富な専門家を利用する
  2. 別の専門家のセカンドオピニオンをもらう

①経験豊富な専門家を利用する

冒頭でお伝えしたように、合併の仕訳は非常に複雑になりやすく、また逆取得のような珍しいケースも発生しやすいため、経験を積んでいなければ、必要知識に長けた専門家でもミスをしてしまうリスクが高いものです。

とはいえ、それだけ複雑な会計処理を会社の経営陣や既存の経理だけで行うのは、専門家以上にさらに難しいため、できる限り確実に合併の仕訳を行うためには、やはり専門家の協力が必要といえます。

今回お伝えした吸収合併の仕訳は、簿記2級の問題としてよく出ます。実際の合併仕訳は、たとえ吸収合併でも教科書どおりに進むケースはほとんどなく、実際の個別の事例ごとに緻密に精査する必要があり、税理士やか会計士などの専門家でも判断に困ることもあります。

また、合併のようなM&Aにおいてはある程度の税金が発生する可能性もあり、専門家の腕が確かでなければ、余分な税金を支払ってしまうというおそれもあります。

従って、合併の仕訳については、できる限り多くの事例に対応することによって専門家の必要知識のレベルが上がりノウハウも培われるため、できる限り経験豊富な専門家に相談することをおすすめします。

②別の専門家のセカンドオピニオンをもらう

合併仕訳を行う際には普段依頼している専門家だけでなく、他の専門家にも合併の実情をチェックしてもらい、どういった合併仕訳になるのか、セカンドオピニオンやアドバイスを得ておくことをおすすめします。

特定の専門家がいるからといって、合併仕訳が適切かつ正確に行われるとは限らないからです。もちろん、セカンドオピニオンを依頼する専門家は税理士・会計士だけでなく、M&Aや組織再編の経験が豊富なコンサルティング会社などといった機関も使う方法もあります。

とりわけ、認定支援機関に選定されているような機関は税理士や会計士も在籍しているケースが多く、多角的な観点から分析、アドバイスをしてくれる可能性が高いのでおすすめです。

より正確な合併仕訳を行ううえでも、セカンドオピニオンは非常に重要なプロセスになるといっても過言ではありません。余裕がある限り、より多くの意見を取り入れて正確性を高めておきましょう。

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合併の手続きについて解説します

まとめ

合併の仕訳は、他のM&Aや組織再編の手法に比べると複雑で、高度な専門知識が必要となるため、経験豊富な専門家に協力してもらうことが重要です。今回の内容をまとめると以下となります。

・合併には2種類ある
→既存の会社に合併させる吸収合併、新しく設立した会社に合併させる新設合併

・合併と株式譲渡の違い
→合併では存続する会社と消滅する会社が発生すること

・合併の仕訳のポイントと注意点
→吸収合併か新設合併かでプロセスが変わる、取得会社か被取得会社かを確認する、合併ではレアケースである逆取得が発生しやすい、通常取得と逆取得は取得会社と被取得会社の会計処理が微妙に異なっている、純資産の引継ぎは主グループ内取引とグループ外取引がメイン

・専門家に依頼する際の注意点
→合併の仕訳の経験豊富な専門家に依頼する、別の専門家からセカンドオピニオンをもらう

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