M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2022年6月6日更新会社・事業を売る
合併と株式交換の違いとは?メリット・デメリットや事例を紹介
合併と株式交換は、どちらも経営統合や組織再編の効果的な手段として、多くの企業によって実施されています。では、合併と株式交換にはどのような違いがあるのでしょうか。本記事では、合併と株式交換の違いや、両者を比べた場合のメリット・デメリットなどを解説します。
合併と株式交換の違いとは?
合併や株式交換はM&Aスキームの一種で、組織再編や経営統合などを目的に実施されています。どちらもノウハウや技術の共有や事業の拡大を目的とするケースが多いですが、合併と株式交換ではどのような違いがあるのでしょうか。
本章では、合併と株式交換の概要や目的、利用シーンなどを解説し、更に、合併と株式交換の違いについてみていきます。
合併とは
合併とは、2社以上の会社が1社(1つの法人格)に統合されるM&A手法です。既存の会社を存続させ、その会社に他社が合流する形の合併を吸収合併、新しく会社を立ち上げてそこに全ての会社が合流する形の合併を新設合併といいます。
新設合併では、新しい法人を作るための手続きなどが煩雑であるため、日本で実施されている合併のほとんどが吸収合併です。
合併は、売上規模の拡大やノウハウ・技術・人材の相互活用、スケールメリットによるコスト削減などを目的として、事業シナジーを強く発揮させるために実施されています。
株式交換とは
株式交換とは、既存の2社が親子関係を築くために、親会社となる側が子会社となる側の株式を100%取得することです。親会社となる側の株式を対価とするケースが多く、経済的な負担が少ないことが特徴です。
例えば、A社が51%の株式を保有しているB社があるとします。A社はB社の残りの49%の株式を取得し、完全子会社とすることが株式交換です。もともとのB社の株主には、対価としてA社の株式を交付します。金銭や社債、新株予約権も対価となりえます。
株式交換は、完全子会社化による経営効率の向上や関係強化などを目的に行われることが多く、経営統合や組織再編を加速させるために実施されます。
合併と株式交換の違い
完全な経営統合の手段として利用されている合併や株式交換ですが、最大の違いは統合される側の法人が消滅するかしないかにあります。
合併の場合は存続会社以外の企業は消滅しますが、株式交換では完全子会社となるだけで法人格は維持されます。
ただし、合併と株式交換は類似点も多く、例統合に伴う税金の優遇や統合に必要なキャッシュが不要などの共通の特徴があります。
【合併と株式交換の違いや類似点】
合併 | 株式交換 | |
吸収される側の法人格 | 消滅 | 完全子会社として法人格は維持 |
統合のための手続き | 複雑 | 簡単 |
優遇税制 | あり | あり |
統合に必要な費用 | 存続会社の株式を対価とすれば不要 | 親会社の株価を対価とすれば不要 |
合併と株式交換のメリット・デメリット
合併と株式交換にはそれぞれ異なるメリットやデメリットがあり、それらは法人が消滅するかしないかによって生じる場合がほとんどです。
本章では、法人格が消滅する合併と法人格が維持される株式交換を比較したときに、生じるメリット・デメリットについて解説します。
合併のメリット・デメリット
下表は合併のメリット・デメリットをまとめたものです。既に述べたように、合併では吸収される会社の法人格が消滅し、それによってさまざまなメリットが発生します。
【合併のメリット・デメリット】
合併のメリット | 合併のデメリット |
・一体感が強い ・人材移動や資金融通の自由度が高い |
・統合の手続きが煩雑 ・従業員の精神的負担が大きい |
合併のメリット
合併における最大のメリットは、一体感を得ることができる点にあります。2社以上の会社が1社の法人組織になるので、組織内の一体感を作りやすくなります。
また、同じ会社になるため人材の移動や資金融通も容易に行うことができます。実際、親会社の経営資源を活用して子会社の経営を立て直すことを目的に合併されたケースもあります。
人材の移動も自由に行えるので、熟練した技術やノウハウなどの共有もしやすく、シナジー効果を得やすいこともメリットです。
合併のデメリット
一方で、合併のデメリットとしては、合併までの手続きが煩雑な点があります。例えば、従業員の労務手続きや、会社名変更に伴う取引先の口座変更や銀行口座の変更手続きなど、法人格が維持される株式交換では不要な手続きを行う必要があります。
また、消滅会社にとっては従業員に転籍を強いることになるため、従業員の精神的負担が生じやすいことも合併のデメリットです。
株式交換のメリット・デメリット
株式交換のメリットおよびデメリットは下表のとおりです。合併とは異なり、株式交換では子会社の法人格は維持されることが特徴です。法人格が消滅しないことで生じるメリットも多く、合併とは相反するメリット・デメリットがあります。
【株式交換のメリット・デメリット】
株式交換のメリット | 株式交換のデメリット |
・統合の手続きが少ない ・株式交換契約までの期間が短い ・不要な統合は避けられる |
・非効率的な法人税の支払い ・従業員の士気が下がる |
株式交換のメリット
株式交換の大きなメリットとして、合併と比較して手続きが容易で、株式交換契約の完了までの期間が短いという点があります。
子会社の法人が維持される株式交換では、合併の際には必要であった口座名義の変更や従業員の労務手続きがないためです。
また、子会社の就業規則や従業員の処遇などは統合する必要がない点も、株式交換のメリットです。
合併の場合、消滅会社の従業員の給与テーブルや処遇を存続会社と合わせる必要があり、会社として負担となるケースもあります。
株式交換のデメリット
株式交換の税金面でのデメリットは、例えば親会社が黒字で子会社が赤字である場合、トータルでは赤字であったとしても親会社の黒字分には税金が課せられる点にあります。
ただし、親子で連結納税をしていれば赤字で計上できるので、デメリットとはなりません。
また、長期的にみれば、株式交換で完全子会社となる会社の従業員の士気が下がりやすい点も株式交換のデメリットといえます。
特に同業間での株式交換では、大企業の子会社で働くよりも、大企業の一員として働きたいという従業員の心理が影響して、子会社の従業員は劣等感や不満を感じるケースもあります。
合併と株式交換が活用されるケース
合併や株式交換は経営統合や組織再編のために活用されていますが、具体的にはどのように合併と株式交換が使い分けられているのでしょうか。本章では、合併と株式交換が活用されるケースについて、具体的な状況を交えて解説していきます。
合併が活用されるケース
複数社が1社に統合される合併で大きなシナジー効果を得るためには、それぞれの会社の持つ文化や理念、社内ルールを理解しあうことが重要です。
合併する会社同士が持つ企業文化や社内ルールなどが全く異なれば、合併後の従業員の精神的負担は大きくなり、士気の低下や離職などを招く可能性もあります。
そのため、親子関係や資本関係がない会社同士が合併するというケースはほとんどありません。
すでに親子関係などがあり、会社同士で企業文化を理解し合える場合に、更なる関係性の強化や管理部門の一本化などを目的に合併が実施されるケースが多いです。
関係性のない会社同士が将来的な合併を目指す場合は、まずは株式交換などにより完全子会社とし、両社の経営や体制などが安定した後に合併するケースが一般的です。
株式交換が活用されるケース
株式交換は、組織再編を目的として、親子関係のある100%子会社ではない会社を完全子会社化するために実施されるケースが多いです。
例えば、M&AなどによりA社が業績不振に悩むB社の51%の株式を取得し親子関係となったものの、M&A後もB社の業績不振が解消されない場合に株式交換が行われることがあります。
このケースでは、株式交換により完全子会社にすることで関係性が強固になり、一体的で安定的な経営がなされ、業績不振の解消を期待することができます。
合併と株式交換の手続き
合併と株式交換の手続きの流れは非常によく似ています。手続きに関しての大きな違いは、合併の場合は債権者への個別催告や、官報に合併広告の掲載が必要である点です。
さらに、法人格が維持される株式交換では、従業員の処遇や就業規則などを変更しなくてもよいなど、合併と比べて手続きが簡単なことも特徴です。
合併の手続き
合併には複雑な手続きもあるため、平均2~3ヶ月程度かかります。効率よく合併を完了させるためには、手続き内容をしっかりと把握することが重要です。
【合併の手続き】
① | 合併の準備 | 合併契約などの作成、債権者の確認などを行います。 |
② | 取締役会決議 | 取締役会にて合併に関する合意を得ます。 |
③ | 合併契約の締結 | 存続会社・消滅会社の商号・住所、合併の対価と割当てに関する事項、効力発生日を記載した契約書を締結します。 |
④ | 合併広告の掲載・債権者への個別催告 | 官報に合併広告の掲載をするとともに、債権者保護を目的として債権者に個別に通知します。 |
⑤ | 反対株主等への通知 | 反対株主に対する株式買取請求通知・公告を行います。 |
⑥ | 契約書等の事前備置 | 合併に関する書類などをまとめて一定期間備置します。 |
⑦ | 株主総会決議 | 合併の効力が発生する前日までに株主総会での決議が必要です。 |
⑧ | 合併の効力発生 | 合併契約書により定められた日から合併の効力が発生します。 |
⑨ | 合併の登記申請・合併に関する書類の事後備置 | 合併後2週間以内に登記申請を行います。 合併に関する書類は合併後6ヶ月間備置します。 |
株式交換の手続き
契約内容にもよりますが、株式交換完了までには平均1.5~2ヶ月程度かかります。合併よりも手続きが簡単であるため、契約完了までの期間も短くなる傾向にあります。
また、株式交換において親会社と子会社それぞれの財産に変動を生じない場合は、債権者への催告や官報公告の必要がないことも合併とは異なる点です。
【株式交換の手続き】
① | 株式交換の準備 | 契約書の作成、株主への通知・広告を行います。 |
② | 取締役会決議 | 取締役会にて株式交換の合意を得ます。 |
③ | 株式交換契約の締結 | 親会社・子会社の商号・住所、対価と割当てに関する事項、効力発生日を記載した契約書を締結します。 |
④ | 契約書などの事前備置 | 株式交換に関する書類などをまとめて一定期間備置します。 |
⑤ | 反対株主などへの通知 | 反対株主に対する株式買取請求通知を行います。 |
⑥ | 株主総会決議 | 株式交換の効力発生日までに株主総会で決議します。 |
⑦ | 株式交換の効力発生 | 株式交換契約書により定められた日から効力が発生します。 |
⑧ | 登記申請および書類の事後備置 | 株式交換後2週間以内に親会社と子会社の登記変更を同時に申請します。また、株式交換に関する書類は株式交換後6ヶ月間備置します。 |
株式交換に関する税務上の注意
株式交換で課税対象となるのは、株式取得に対する法人税(親会社・子会社)と株式譲渡益に対する法人税または所得税(親会社の株主・子会社の株主)です。
株式交換の対価が株式の場合は適格株式交換に該当し、誰に対しても税金が課せられません。一方で、非適格株式交換となった場合は、子会社と子会社の株主に法人税や所得税が課せられる可能性があります。
株式交換や合併の税務は非常に複雑であるため、ミスや申告漏れが無いように専門家に相談することが重要です。
M&Aをご検討の際はM&A総合研究所へご相談ください
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まとめ
本記事では、合併と株式交換の違いや、メリット・デメリット、手続きの流れなどについて解説してきました。
M&Aの一種である合併や株式交換は、経営統合や組織再編の有効な手段として多くの企業によって利用されています。ともにノウハウや技術の共有や事業の拡大を目的に実施されています。
【合併と株式交換の違いや類似点】
合併 | 株式交換 | |
吸収される側の法人格 | 消滅 | 完全子会社として法人格は維持 |
統合のための手続き | 複雑 | 簡単 |
優遇税制 | あり | あり |
統合に必要な費用 | 存続会社の株式を対価とすれば不要 | 親会社の株価を対価とすれば不要 |
【合併のメリット・デメリット】
合併のメリット | 合併のデメリット |
・一体感が強い ・人材移動や資金融通の自由度が高い |
・統合の手続きが煩雑 ・従業員の精神的負担が大きい |
【株式交換のメリット・デメリット】
株式交換のメリット | 株式交換のデメリット |
・統合の手続きが少ない ・株式交換契約までの期間が短い ・不要な統合は避けられる |
・非効率的な法人税の支払い ・従業員の士気が下がる |
【合併および株式交換の手続き】
合併の手続き | 株式交換の手続き | |
① | 合併の準備 | 株式交換の準備 |
② | 取締役会決議 | 取締役会決議 |
③ | 合併契約の締結 | 株式交換契約の締結 |
④ | 合併広告の掲載・債権者への個別催告 | 株式交換契約書などの事前備置 |
⑤ | 反対株主等への通知 | 反対株主などへの通知 |
⑥ | 合併契約書などの事前備置 | 株主総会決議 |
⑦ | 株主総会決議 | 株式交換の効力発生 |
⑧ | 合併の効力発生 | 株式交換の登記申請・株式交換に関する書類の事後備置 |
⑨ | 合併の登記申請・合併に関する書類の事後備置 | ‐ |
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。