2021年5月3日更新節税

相続税免除の条件と方法とは?相続財産引き継ぎにおける納税猶予と基礎控除

相続税を免除する方法にはさまざまなものがあり、各方法ごとに条件や特徴が異なります。相続税免除の条件と基礎控除の関係、農地・事業承継・相続財産寄付における相続税免除と納税猶予、孫への生前贈与による相続税免除について解説します。

目次
  1. 相続税の免除
  2. 相続税の概要と税率
  3. 相続税免除の条件と基礎控除の関係
  4. 農地引き継ぎにおける相続税免除と納税猶予
  5. 事業承継における相続税免除と納税猶予
  6. 相続財産寄付による相続税免除と注意点
  7. 孫への生前贈与による相続税免除
  8. まとめ
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相続税の免除

相続する遺産が多額である場合、相続税が課される可能性があります。相続税は数百万円~数千万円の現金が手元から出て行く場合もあるため、遺産が多額であるほどその負担は重くなります。

そのため相続税には、いくつかの免除制度が存在します。この記事では、相続税免除の条件と基礎控除の関係、農地・事業承継・相続財産寄付における相続税免除と納税猶予についてわかりやすく解説していきます。

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相続税の概要と税率

まずはじめに、相続税における基礎知識と課税対象を説明していきます。相続税には課税の対象になる財産と、対象にならない財産があるのでしっかり把握しておきましょう。

①相続税とは

相続税とは、亡くなった方から一定金額以上の遺産を受け継いだ際に課税される税金です。全ての方に相続税の納税義務があるわけではなく、一定金額以上の相続を行なった場合にのみ相続税が発生します。

②相続税の税率

課税財産が1,000万円以下の場合には税率10%と低いものの、6億円を超えると55%にまで税率が上がります。相続する資産額が大きくなるほど相続税率も高くなる仕組みであり、資産を多く保有する方にとっては不利です。

そして、相続税が免除されるか課されるかは、基礎控除を基に判断します。自身の財産を守るためにも、相続税の免除などは最大限活用しましょう。

③相続税の課税対象

それでは、相続税において課税対象となる財産と課税対象にならない財産を分けて以下に説明していきます。

課税の対象になる財産

相続によって被相続人から受け継ぐ財産は、お金以外にもさまざまなものが考えられます。

  • 金融資産(現金・預貯金・有価証券・公社債など)
  • 不動産(家屋・宅地・倉庫・農地・山林・地上権など)
  • 動産(車・骨董品・貴金属・宝石など)
  • 各種権利(特許権・著作権・商標権・ゴルフ会員権など)
  • みなし相続財産(死亡保険金・死亡退職金など)
  • 事業用財産(商品・原材料・機械・備品・農産物など)

相続開始から3年以内の贈与も相続税の課税対象となるので注意が必要です。

課税の対象にならない財産

法令によって定められている、相続税において課税の対象にならない財産は以下のとおりです。

  • 仏具や礼拝道具
  • 相続税の申告までに特定の法人に寄付した財産
  • 慈善事業や宗教など公益事業に使用するお金
  • 心身障害者共済制度によって支給される給付金を受ける権利
  • 個人立の幼稚園経営等の事業用財産(建物・土地など)
  • 死亡保険金(一定額まで)
  • 死亡退職金(一定額まで)

上記に示した7つの財産は、相続税の課税対象にはなりません。しかし、この7種類の中に含まれる死亡保険金と死亡退職金については、「500万円×法定相続人の数」までは課税されないという決まりになっています。

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相続税の節税

相続税免除の条件と基礎控除の関係

次に基礎控除と相続税の関係について解説します。相続税が免除される条件は「正味相続財産が基礎控除を下回る」ことですが、正味相続財産とはプラスの相続財産からマイナスの相続財産(借金等)を差し引いた金額をいいます。

この金額が基礎控除を下回れば相続税は免除され、上回れば相続税が課税される仕組みです。そして、相続税免除の判断基準となる基礎控除は、下記計算式により算出します。

  • 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数


例えば相続人が5人いる場合には、3,000万円+600万円×5=6,000万円が基礎控除となります。たとえ相続人が1人しかいない場合でも、最低3,600万円の基礎控除が発生します。

つまり、正味相続財産が3,600万円を下回る場合には、原則相続税は免除になる計算になります。

農地引き継ぎにおける相続税免除と納税猶予

相続税の納税猶予や免除を受けられる特例はいくつかありますが、農地を引き継ぐ際も特例があります。この項では、農地の引き継ぎにおける相続税免除と納税猶予について説明していきます。

①制度の概要

農地における相続税の猶予・免除とは、相続もしくは贈与により農地を承継した際に、相続税もしくは贈与税の納税を猶予・免除する制度です。この制度が設立する前は、相続税の負担を理由に農地を売却せざるを得ない人が後をたちませんでした。

この制度の利用により相続税が納税猶予(免除)されるようになり、引き継いだ農地を活用し農業を続けることが可能になりました。

②相続税の納税猶予条件

農地における相続税の納税猶予を受けるためには、相続人と被相続人がそれぞれ条件を満たす必要があります。以下に、それぞれの条件を紹介していきます。

相続人

農地を受け継ぐ相続人は、主に下記要件のうちいずれかを満たす必要があります。

  • 相続税申告の期限までに農地を引き継いで農業を始め、その後も農業を行う
  • 農地を生前一括贈与されており、贈与税の納税猶予特例を適用していた
  • 相続税申告の期限までに特定貸付を実施した

被相続人

農地を引き継がせる被相続人は、主に下記要件のうちいずれかを満たす必要があります。相続人と同様に、どれか一つの要件を満たせば問題ありません。

  • 死亡した日まで農業を営んでいた
  • 生前に農地を一括贈与した
  • 死亡日まで営農困難時貸付や特定貸付を実施していた

③相続税の免除条件

下記いずれかの要件を満たせば、納税猶予していた相続税を免除できます。農地を引き継いだ後、亡くなるまで農業を続けたり、後継者に農地を引き継いだりした場合に相続税が免除となるので、該当する場合は活用していきましょう。

  • 農地を引き継いだ相続人が死亡
  • 農地を引き継いだ相続人が後継者に生前一括贈与を行う
  • 農地を引き継いだ相続人が20年間農業を継続した(三大都市圏特定市以外の市街化区域内農地の場合)


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事業承継における相続税免除と納税猶予

事業承継で非上場株式を承継する場合も、相続税の納税猶予や免除を受けられる特例があります。この特例はメリットの大きい制度なので、該当する場合は積極的に利用していきましょう。

①制度の概要

事業承継における相続税の納税猶予・免除とは、非上場自社株式を相続や贈与により取得した際に、相続税や贈与税の納税を猶予・免除する制度です。この制度は、事業承継税制とも呼ばれています。

承継する全株式について相続税の全額を猶予または免除できるため、非常にメリットの大きい制度です。

②相続税の納税猶予条件

事業承継税制を活用するためには、「人の要件」「会社の要件」「事業継続要件」の三条件をそれぞれクリアしなくてはいけません。人の要件とは先代経営者と後継者が満たすべき条件であり、株式の保有数などに関する条件が設定されています。

会社の要件とは相続税の納税猶予を受ける会社が満たすべき条件であり、中小企業であることが条件となります。事業継続要件では、5年間に渡り株式を継続保有することや経営者で居続けることが条件となっています。

③相続税の免除条件

事業承継税制では、下記のような一定要件に該当すれば相続税が免除されます。納税猶予していた相続人が死亡したり、後継者に対して事業承継税制を用いて事業承継したりする場合に相続税が免除されます。

  • 相続人の死亡
  • 相続人が事業承継税制を用いて後継者に贈与する

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事業承継税制とは?事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説

相続財産寄付による相続税免除と注意点

相続した財産を特定の相手に寄付する場合、相続税を免除できます。この項では、相続財産寄付による相続税免除と注意点に関して紹介していきます。

①制度の概要

国や地方公共団体、特定の公益法人に対して相続した財産を寄付した場合、その財産に関する相続税を免除できます。寄付により当該相続人および親族などの相続税や、贈与税負担が不当に減少すると見なされる場合には、相続税の免除が認められないのでご注意ください。

「特定の公益法人」とは教育や科学の振興、文化の向上など、公益の増進に著しく貢献する法人をさします。具体的には国立大学法人や社会福祉法人、認定NPO法人などが、特定の公益法人に該当します。

②寄付による相続税免除の注意点

国や地方公共団体への寄付は問題ないものの、特定の公益法人に寄付する場合には二点注意が必要です。まず一つ目の注意点は、特定公益法人の設立費用に対する寄付の場合、相続税の免除が認められない点です。

二つ目の注意点は、寄付から2年以内に寄付先が特定公益法人ではなくなった場合や、寄付した財産を2年以内に公益目的事業に活用しない場合、相続税が免除されない点です。一つ目は回避しやすいものの、二つ目は自身では回避できないので特に注意しましょう。

③免除を受けるための手続き

寄付による相続税免除を受けるためには、所定の手続きを経る必要があります。相続税申告書に「措置法70条特例の適用を受ける旨」を記載し、寄付先に応じて所定の書類を添付して提出します。

孫への生前贈与による相続税免除

孫がいる場合は相続税を節税できる可能性があります。ここからは孫への生前贈与による相続税免除について詳しく解説します。

①孫への生前贈与によるメリット

孫に対して教育資金を生前贈与する場合、1,500万円までは非課税となり、それに加えて生前贈与した分だけ相続財産が少なくなるため相続税が減少します。相続税の節税となるだけでなく、孫に対して非課税で生前贈与できるので一石二鳥です。

学校の授業料や入学金が教育資金と認められ、非課税の対象となることを覚えておきましょう。

②生前贈与された孫側の注意点

非課税で生前贈与された財産に関して、孫側は30歳になるまでに使い切る必要があります。使い切れなかった場合には、余った金額がその年度の贈与税計算に算入されるため、孫は30歳までに生前贈与された資産を使い切らなくてはいけません。

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生前贈与のメリットとデメリット

まとめ

相続税を免除する方法はさまざまあり、方法ごとに条件や特徴が異なるため、自身の状況に照らし合わせて相続税の免除を積極的に狙いましょう。それでは最後に、今回の記事をまとめると下記になります。

・相続税とは
→亡くなった方から一定金額以上の遺産を受け継いだ際に課税される税金

・基礎控除と相続税免除
→正味相続財産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を下回れば相続税免除

・農地における相続税の猶予・免除 
→相続・贈与により農地を受け継いだ際に、相続税または贈与税の納税が猶予・免除

・事業承継における相続税の猶予・免除
→非上場の自社株式を相続や贈与により取得した際に、相続税や贈与税の納税を猶予・免除する

・寄付による相続税免除
→国や地方公共団体、特定の公益法人に対して寄付した財産に関して相続税を免除

・孫への生前贈与による相続税免除
→教育資金であれば1,500万円まで非課税で生前贈与できて、相続税免除につながる

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