2022年9月20日更新会社・事業を売る

M&Aにおける企業価値評価とは?手法ごとに算定方法をわかりやすく解説

M&Aの企業価値評価にはさまざまなアプローチ方法があり、その違いを知ることはM&Aを実施するうえで重要です。本記事では、M&Aの企業価値評価の主な種類を比較して違いを明らかにするとともに、各手法の代表的な算定方法の概要を解説します。

目次
  1. M&Aにおける企業価値評価とは?
  2. M&Aにおける企業価値評価と上場の関係
  3. M&Aにおける企業価値評価の留意点
  4. M&Aにおける企業価値評価の手法
  5. M&Aにおける企業価値評価の算定方法:コストアプローチ
  6. M&Aにおける企業価値評価の算定方法:マーケットアプローチ
  7. M&Aにおける企業価値評価の算定方法:インカムアプローチ
  8. M&Aにおける企業価値評価のポイント
  9. M&Aにおける企業価値評価の相談先
  10. M&Aにおける企業価値評価のまとめ
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M&Aにおける企業価値評価とは?

国内市場の縮小やグローバル化の進展などに伴って、M&Aの実施数は企業規模を問わず上昇傾向にあります。そのような状況の中、M&Aに関して知識装備をしておくこと、またM&A戦略を立案しておくことなどは、今後の企業経営においてますます重要になるといえるでしょう。

この章では、M&Aの取引価額の土台ともいえる企業価値評価とはどのようなもので、M&Aにどのような影響を与えるのかを確認します。

M&Aとは

M&Aとは「Mergers & Acquisitions」の略称で、直訳は合併買収ですが、事業・会社そのものの売買取引や企業間の組織再編行為の総称です。

消費者ニーズの変化や競合の出現など、事業環境の変化が激しい中においてM&Aは有力な経営戦略であり、日本国内でも業界・業種・規模の大小に関わらず、実施数が増加しています。

企業価値評価とは

企業価値評価とは、対象企業が定量的にどれくらいの価値(企業価値)があるのかを算定、評価することです。英語訳であるValuationをそのまま用いて、バリュエーションとも呼ばれます。似た言葉として事業価値評価・事業評価がありますが、ほぼ同義です。

こちらは、エンタープライズバリュー(EV)とも呼ばれます。M&Aは端的にいうと企業売買にあたりますが、企業の価額には、相場や平均値のようなものは存在しません。企業の業績、規模、業界動向、競合他社事情など、さまざまな要素がからまりあって案件ごとに価額が決まります。

M&Aの交渉段階において、買い手企業の「可能な限り安く買いたい」ニーズと売り手企業の「可能な限り高く売りたい」ニーズ、双方の相反する主張をぶつけあっているだけでは、交渉価額が正当なものなのか判断できないので、企業価値評価がその判断のベースになるのです。

M&Aの交渉においては、買い手企業が売り手企業の価値を評価するために実施しますが、M&Aによる出口戦略(イグジット戦略)を検討している企業も、自己採点的な意味合いで、自身の企業価値評価を行います。

M&Aの交渉では、相対的に売り手企業が劣勢な立場に立たされることが多いため、交渉に発展する前に企業価値評価などを行い、理論武装をしておくことは有益といえるでしょう。

企業価値評価における価額とは

価格と価額、同義語と思われるかもしれませんが、厳密には以下のような違いがあります。

  • 価格=Price=値段
  • 価額=Value=値打ち

企業価値評価の英語訳がValuationであることからもわかるように、M&Aにおける企業価値評価とは、対象企業の価値=値打ちを評定することです。したがって、企業価値評価で算定された対象企業の金額は、価格とは言わず「価額」が用いられます。

企業価値と株式価値の相違点

企業価値と類似する言葉に株式価値(Equity Value)があります。企業価値と株式価値は同義ではありません。株式価値は、上場企業でたとえると時価総額のことです。つまり、発行済株式数と株価を掛けた金額ということになります。

企業価値は、時価総額を含めた企業全体の価値であり、株式価値との関係性は以下のとおりです。

  • 企業価値-有利子負債=株式価値

企業価値評価が求められる場面

上場企業であれば、株式市場の株価をベースにして簡単に株式価値(時価総額)が算出できます。しかし、非上場企業の場合は、それができません。そこで、上述したようにM&Aの交渉時における基準値として用いるため、企業価値評価が行われます。

非上場企業では、M&Aの場面以外でも、企業価値評価や株式価値評価が必要になることも把握しておきましょう。それは、事業承継時です。親族内承継であれば、後継者(親族)は自社株式を相続するか贈与を受けます。

その際、相続税・贈与税が課されますから、株式価値を算出しなければなりません。社内承継であれば、後継者(従業員・役員)は株式を買取る必要があります。そのためには、自社の株式価値評価や企業価値評価を行って、株式の売却額を決めなければなりません。

このように非上場の中小企業においては、M&A時のみならず事業承継でも企業価値評価が必要になります。

M&Aにおいて企業価値評価を行うタイミング

M&A取引において、企業価値評価は取引価額を決定する際の交渉材料として使われるものです。したがって、M&Aのプロセスでは、基本的に秘密保持契約締結後~最終交渉の間に企業価値評価が行われます。

対象企業にどれくらい価値があるのかを算定し、それをベースに実際の価額交渉がなされるのです。また、M&Aでの出口戦略を検討する場合には、売却側においてM&Aの具体的な交渉に入る前段階で自社の企業価値評価を実施し、どの程度の売却価額がつくかシミュレーションします。

さらに、M&Aとは関係なく、中長期的な経営戦略を検討するうえでの判断材料として、企業価値評価が用いられるようにもなってきました。

【関連】企業価値と株式価値の違い| M&A・事業承継の理解を深める
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M&Aにおける企業価値評価と上場の関係

企業価値評価をするうえで、簡単に時価総額が算出できる上場企業と、それが行えない非上場企業では算定プロセスに違いがあります。それぞれの概要をみていきましょう。

上場企業の企業価値評価

上場企業の企業価値評価を最もシンプルに計算する方法は、前章で紹介した以下の計算式です。

  • 企業価値=株式の時価総額+有利子負債


補足すると、上場企業が売り手の場合のM&A取引において、その取引価額は時価総額よりも大きな金額になります。実際には必ずしも上の計算が行われるわけではなく、時価総額以外の部分について企業価値評価を行い、交渉のうえ金額が上積みされるのが実態です。

M&Aでの最終取引価額のポイントは「交渉で決まる」という点にあり、企業価値評価で算定された金額をベースとして売り手側のアピール、買い手側の思惑・評価を踏まえた交渉によって、最終的な取引価額が決まります。

非上場企業の企業価値評価

時価総額の算定ができない非上場企業の場合、一から企業価値評価を行います。そして、その金額をベースに売り手・買い手で交渉が行われ最終取引価額が決まりますが、その決め手となるのは無形資産への評価です。無形資産とは以下のようなものをさします。

  • 特許、商標、著作権、意匠権などの知的財産
  • 営業ノウハウ、製造工程など会社独自に培われたノウハウ
  • 販売ネットワーク、営業ネットワークなど長年の積み重ねで構築された販売システム
  • ブランド力
  • 顧客、取引先リスト
  • 社内の人材が有する資格や免許
  • 事業の許認可

このような無形資産の評価は当事者ごとに異なるため、いわゆる相場のようなものがM&Aでは存在しない理由です。非上場企業が売り手のM&Aでの最終取引価額のイメージは、以下のようなものになります。
  • 最終取引価額=企業価値+無形資産への評価額

【関連】​上場とは?上場の種類や目的、上場廃止のメリット・デメリットも解説| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aにおける企業価値評価の留意点

ここでは、M&Aにおける企業価値評価の留意点について、譲渡側・譲受側に分けて紹介します。

譲渡側の留意点

M&Aの売り手企業において、以下のような財務状態だと高い企業価値評価を得られます。

  • 正常収益(事業そのものが生み出す売上高)ベースで高い収益力がある
  • 有利子負債額が少なく純資産額が高い
  • 含み益のある資産(有価証券、土地、保険積立金など)を多数、持っている

M&Aでは、単に企業価値評価が高ければいいとはなりません。企業価値評価の結果が同等の金額だったとしても、その内容を買い手がどう評価するかしっておくことが肝要です。上記の例で言えば、高い収益力がある売り手を、買い手はより買収したいと考えます。

所有する資産価値により、良い企業価値評価を得ても、買い手は必ずしも買収意欲を持たないことを覚えておきましょう。

譲受側の留意点

M&Aにおける企業価値評価に関連する譲受側の留意点の1つは、投資の判断基準を明確にしておくことです。譲渡側の留意点で示したように、同等額の企業価値評価であっても、その内実は異なります。買収にあたって何を重視するか決めておかないと、誤った売り手の選択をしてしまうかもしれません。

もう1つの留意点は、買収額の判断基準です。現在、日本でのM&Aは売り手市場ともいわれています。したがって、買収額が高くなりがちです。買収を決める際には、その金額(買収額)について、以下の観点で検討し可否を決める必要があります。

  • 投資回収年数:買収額の回収にかかる年数から買収の可否を判断する
  • 投資利益率(ROI: Return On Investment):買収額に対する利益の割合から買収の可否を判断する

M&Aにおける企業価値評価の手法

M&Aにおける企業価値評価の算定方法は、さまざまものがあるのが特徴です。それらは以下の3系統に分類されます。

  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ

コストアプローチとは

貸借対照表の純資産価値に着目して評価を行う手法が、コストアプローチです。「ストックアプローチ」や「ネットアセットアプローチ」とも呼ばれ、中小企業のM&Aで多用されています。

具体的な評価額算出方法は、簿価純資産法、時価純資産法、営業権を加えた時価純資産法(年買法)などです。詳細は後述しますが、資産の時価評価を行わない簿価純資産法は、M&Aの現場で使われることはほとんどありません。

マーケットアプローチとは

類似企業や類似業種の株価に着目した評価方法が、マーケットアプローチです。市場で売買されている類似企業(業種)の株価をベースとして、対象企業の評価額を算出します。ただし、類似企業が見つからない場合は、算定方法自体が成立しません。

対象企業との類似性が高いほど、評価の精度は上がりますが、一方で類似性が低ければ評価額の妥当性にも疑義が生じる方法であり、いかに類似性が高い企業・業種を選択するかがポイントです。具体的な評価額算出方法としては、類似業種比較法、類似取引比較法などがあります。

インカムアプローチとは

企業が将来、生み出すと予測される利益・キャッシュフローに着目した評価手法が、インカムアプローチです。具体的な評価額算出方法としては、DCF(Discounted cash flow=ディスカウントキャッシュフロー)法、収益還元法、配当還元法などがあります。

なお、企業価値評価について説明している以下の動画も参考までご覧ください。

【関連】企業価値評価とは?評価方法を知って企業価値を高めよう| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aにおける企業価値評価の算定方法:コストアプローチ

コストアプローチの代表的な算定方法として以下の3つを説明します。

  • 簿価純資産法
  • 時価純資産法
  • 営業権を加えた時価純資産法(年買法)

簿価純資産法

対象企業の貸借対照表に基づいて、評価額を算出する方法が簿価純資産法です。貸借対照表の簿価額のみを基準にして計算する簡易的な方法で、純資産額=企業価値評価額となります。

客観性と簡便性に優れた算定方法ですが、資産の時価評価を行わないため含み損益が考慮されず、実態とかけ離れた評価になる可能性が高いです。

時価純資産法

対象企業の貸借対照表をベースに、資産および負債の時価評価を行って実質自己資本を算出する方法が時価純資産法です。実質自己資本(時価修正考慮後の純資産)=企業価値評価額となります。簿価純資産法の欠点を補う算出方法であり、より実態に即した評価額の算定です。

時価評価をする代表的な勘定科目は、資産項目では売上債権や棚卸資産、有形固定資産など、負債項目では、買掛金や未払給与、さらに偶発債務などの簿外債務があります。

時価純資産法でも貸借対照表という過去の実績のみに着目して評価をするため、企業が有する将来の収益力や帳簿には表れないブランド力などは一切、反映されません。M&Aは先行投資の意味合いが強いので、将来性などを考慮しない評価方法とM&Aとの相性はよくないといえます。

営業権を加えた時価純資産法(年買法)

営業権(のれん)とは、ブランド力や人材資源、将来の収益力といった帳簿では考慮されない無形の財産価値のことをさします。時価純資産法では帳簿外の事項は未考慮という欠点があるため、時価純資産に営業権(のれん)を加えることでその欠点を解消するものです。

コストアプローチの中では、中小企業のM&Aで最も採用されています。

コストアプローチのメリット

財務諸表の数字をベースに企業価値を算定するため、客観性に優れている点がコストアプローチを採用する最大のメリットです。

貸借対照表を見れば簿価純資産の価額はすぐにわかりますし、最新の業界動向や競合他社の事情といった複雑な要素は基本的に考慮されないため、客観性という面だけ考えれば十分であるといえます。

コストアプローチの注意点

コストアプローチのデメリットは、企業の将来性が評価に反映されず、足元の収益性なども考慮されづらいという点です。純資産とは、創業以来の積み上げによってできた実績なので、評価時点で業績好調、収益率拡大中だったとしても、それは純資産評価の一部にしかなりません。

また、将来性に至っては、評価に反映されておらず、 M&Aは将来の企業経営や事業拡大に向けた投資という意味合いが強いことから、将来性が考慮されていない点には注意が必要です。

【関連】コストアプローチ| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aにおける企業価値評価の算定方法:マーケットアプローチ

マーケットアプローチの代表的な算定方法として、以下の4つを説明します。

  • 市場株価法
  • 類似企業比較法
  • 類似取引比較法
  • 類似業種比較法

市場株価法

上場企業限定のマーケットアプローチが、市場株価法です。対象企業の株式市場での株価の終値を、直近1~3カ月の期間の平均値を計算します。その平均値を企業価値として用いるものです。

類似企業比較法

評価対象企業と似た上場企業の「株価」を指標にして企業価値を算定する方法が、類似企業比較法です。評価対象企業が非上場の場合によく採用されます。

業種、企業規模、収益率、ビジネスモデル、財務状況などのさまざまな項目に照らし合わせ、対象企業と類似する上場企業を選択し、比準割合から対象企業の評価額を割り出す手法です。

評価額の客観的な妥当性は十分といえますが、類似企業が存在するのか、また類似性は十分なのかといった検証が必要になります。類似性が十分でない場合は、実態と評価額がかけ離れてしまうでしょう。

類似取引比較法

評価対象企業と似た「上場企業のM&Aの取引額」を指標にして、株式価値を算定する方法が類似取引比較法です。類似企業比較法の指標が「株価」であるのに対し、類似取引比較法は「M&Aの取引額」に着目している点に違いがあります。

M&A事例の取引額に各種倍率を掛け合わせて評価額を算出するのですが、買収プレミアムが多額に加味されることがあるため、類似企業比較法に比べて評価額の妥当性が不透明になりやすい点は留意が必要です。

類似業種比較法

類似業種比較法は、国税庁が資産(財産)評価のために採用している方法です。したがって、M&Aの現場での使用には向いていません。対象企業と事業内容が類似する複数の上場企業の株価の平均値に対し、定められている係数を掛け合わせて金額を算出する方法です。

マーケットアプローチのメリット

マーケットアプローチのメリットとしては、株式市場の価額が評価額に直結するため客観性に優れていること、また最新の株価が評価額に反映されやすいことなどが挙げられます。M&Aの際には、ステークホルダーの同意を得られやすい手法でしょう。

マーケットアプローチの注意点

マーケットアプローチの注意点は、株式市場の混乱・歪みによって株価が乱高下している場合、適切な企業価値評価ができないおそれがあることです。

自社でコントロールできない同業他社の不祥事や倒産、天災や感染症拡大などの予期せぬ事象は、いつ起きるか全くわかりません。マーケットアプローチの場合は、その影響をダイレクトに受けてしまうかもしれないということです。

また、企業評価に適切な類似企業があるのかどうか、どの程度の類似性が求められるかなどの確認が必要になる点もデメリットといえます。特にベンチャー・中小企業などは、類似する企業が存在しないケースも多いでしょう。

【関連】マーケットアプローチとは?企業価値の計算方法やメリットを解説【事例付】| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aにおける企業価値評価の算定方法:インカムアプローチ

インカムアプローチの代表的な算定方法として、以下の2つを説明します。

  • DCF法
  • 配当還元法

DCF法

M&Aにおける企業価値算定の代表的な手法の1つがDCF法です。企業が「将来」生み出す収益(キャッシュフロー)を現在の価値に割り引いて企業価値評価を算出するので、割引キャッシュフロー法と称されることもあります。企業の将来の収益力に着目して評価額を計算する方法です。

DCF法による算定の流れ

DCF法による算定の流れを簡略化して説明します。

  1. フリーキャッシュフローの予測計算:税引き後営業利益+減価償却費-運転資本増加額-設備投資額
  2. 残存価値の算定:フリーキャッシュフロー×(1+永久成長率)÷(割引率-永久成長率)
  3. 割引率の算出:株主資本コストと負債資本コストを加重平均した加重平均資本コストWACC(Weighted Average Cost of Capital=ウェイテッド・アベレージ・コスト・オブ・キャピタル)を割引率とする
  4. 事業価値の算定:フリーキャッシュフローと残存価値をWACCによって現在価値に割り引く
  5. 企業価値の算定:遊休資産や有価証券などの非事業用資産額を事業価値に加算する
  6. 株式価値も算定:企業価値-有利子負債

配当還元法

企業が、将来、払い出す株主への配当金を現在の価値に割り引いて企業価値評価を行う方法が、配当還元法になります。

将来の価値を割り引くという意味ではDCF法と共通していますが、DCF法が将来の収益を指標にしていたのに対し、配当還元法は将来の配当金に着目している点が大きな違いです。

計算方法はさらに細分化され、過去の配当実績を使用して算出する「実績配当還元法」、同一業界内の標準的な配当性向を使用して算出する「標準配当還元法」、過去の配当実績を資本還元率10%で割引いて算出する「相続税法上(国税庁)配当還元法」などがあります。

いずれの方法においても、配当を行なっていない企業(中小企業など)には適用不可であること、企業の資産およびキャッシュフローは全く考慮されないことには留意が必要です。

インカムアプローチのメリット

インカムアプローチを採用する最大のメリットは、企業の将来性やM&A後のシナジー効果などを評価額に反映させられる点です。先行投資の意味合いが強いM&Aにおいては、インカムアプローチは企業価値評価額の算出に最も適していると考えられています。

インカムアプローチの注意点

他の2つのアプローチと比べて、評価額の客観性が欠けてしまう点は、インカムアプローチのデメリットです。

コストアプローチでいう貸借対照表、マーケットアプローチでいう株価のような客観的な数字ではなく、事業計画・将来性・シナジー効果といった不確定要素への依存度が高いため、評価額の妥当性には検証が必要でしょう。

ステークホルダーへの説明も十分に行うことが肝要です。企業の永続が前提になっているので、清算などを行う場合には採用できない点も覚えておきましょう。

【関連】インカムアプローチ| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aにおける企業価値評価のポイント

M&Aにおける企業価値評価には、以下のようなポイントがあります。

  1. キャッシュフローに注目する
  2. いくつかの手法を併用する
  3. 事業計画を入念に確認する

①キャッシュフローに注目する

企業経営において、キャッシュフロー(資金繰り)は何よりも重要な要素です。黒字倒産(黒字決算で一見、順調と思われる企業が倒産すること)という事象があるように、資金繰りがしっかりと回っていなければ企業としての価値を評価できないおそれがあります。

経営と資金繰りは一体不可分であり、決算状況の優劣に関わらず、企業価値評価においては対象企業の資金繰り状況を必ず確認しましょう。

②いくつかの手法を併用する

企業価値評価にはさまざまな算出方法があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。どの手法が良くてどの手法が悪いかを断定的に決めるのではなく、複数の手法を併用することで、より実態に即した評価ができるのです。

企業の決算状況や規模、業界動向によっても、最適な算出手法は変わります。また、どのような目的でM&Aを実施するかによっても、算出方法の適切度は異なるものです。

M&Aにおいては、企業価値評価は取引価額を決める重要な材料なので、M&Aを成功に導くためにも、妥当性のある企業価値評価ができるよう努めることが肝要になります。

③事業計画を入念に確認する

事業計画は、企業にとっては今後、進もうとしている道が記されているロードマップであり、将来の対象企業の姿を判断する材料となり得るものです。事業計画の内容を分析できなければ、それは対象企業の行く末を分析できないことと同義といえます。

対象企業がどのような将来を見据えて事業をしているのか、そのために足元ではどんな取り組みをしているのか、事業計画を通してしっかりと確認し、投資判断の可否を検討しましょう。

【関連】企業価値の評価方法とは?代表的な3つのアプローチを解説| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aにおける企業価値評価の相談先

事業承継や出口戦略としてなどのM&Aをご検討されている場合は、ぜひ、M&A総合研究所までご相談ください。M&A総合研究所は、全国の中小・中堅規模企業のM&Aを主にサポートしており、さまざまな業種で成約実績を積み重ねてきました。

支援実績豊富なアドバイザーが専任となり、相談時からクロージングまで丁寧にM&Aをサポートいたします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

随時、無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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M&Aにおける企業価値評価のまとめ

企業価値評価は、M&Aの取引価額を決定する大変重要な情報なので、抜かりなく取り組むことが必要です。コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの3系統に分かれる企業価値評価方法には、数多くの算定方法があります。

各算定方法の概要や特徴を理解しておくことが大切です。スムーズな交渉と適切な取引価額の決定、そしてM&Aを成功に導くためにも企業価値評価をしっかりと行いましょう。本記事の概要は以下のとおりです。

・コストアプローチ
→時価純資産法、簿価純資産法、営業権を加えた時価純資産法(年買法)など

・マーケットアプローチ
→市場株価法、類似企業比較法、類似取引比較法、類似業種比較法など

・インカムアプローチ
→DCF法、配当還元法など

・M&Aにおける企業価値評価のポイント
→キャッシュフローに注目する、いくつかの手法を併用する、事業計画を入念に確認する

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