M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2022年5月16日更新会社・事業を売る
M&Aのバリュエーション(企業価値評価)とは?算定方法を解説【動画あり】
M&Aを成功させるうえで、買収価額の基準となるバリュエーションは非常に重要なプロセスです。本記事では、バリュエーションの概要・実施タイミングなどのプロセス、バリュエーションの分類や代表的な算定方法のメリット・デメリットなどを紹介します。
目次
M&Aのバリュエーション(企業価値評価)とは
M&Aにおけるバリュエーション(企業価値評価)とは、事業や資産、収益性などその企業を構成するあらゆる要素を総合的に吟味したうえで評価し、金額換算するものです。したがって、バリュエーションで評価される企業価値=株価ではありません。
バリュエーションで評価された企業価値は、買収価額の基準となる重要なものです。しかし、バリュエーションは、経営だけでなく、会計や税務などさまざまな専門的知識に長けていなければ正確に実施できません。そのため、実際にバリュエーションを実施する際は、専門家に依頼することをおすすめします。
企業価値と類似する言葉
企業価値を語るうえで以下のような類似する用語がありますが、それぞれ企業価値とは意味が異なります。
- 事業価値
- 株主価値
- 時価総額
- 買収価額
混同しないように、各用語の意味を説明します。
事業価値との相違点
事業価値とは、企業が行った事業活動が生み出した価値のことです。つまり、事業価値は企業価値の一部ということになります。具体的に関係性は以下のとおりです。
- 事業価値+非事業用資産=企業価値
非常業用資産とは、事業活動に用いていない不動産などの遊休資産や有価証券などのことです。事業価値と非事業用資産の価値を合算することで企業全体の価値=企業価値を示すことになります。
株主価値との相違点
株主価値とは、株主が所有できる価値のことです。株主とは自己資本のことであり、株主価値とは自己資本に帰属する価値とも言い換えられます。一方、企業価値は、自己資本に帰属する価値(株主価値)だけでなく、他人資本も含むものです。他人資本とは、有利子負債をさします。その関係性は以下のとおりです。
- 株主価値+有利子負債=企業価値
時価総額との相違点
時価総額は、上場企業に限った用語です。具体的には以下のような計算式になります。
- 株価×発行済み株式数=時価総額
なお、当該企業が自己株式(金庫株)を所有している場合は、上記の計算において、発行済み株式数から自己株式数を差し引いて計算します。このように、時価総額とは自己資本の価値を示すものですから、株主価値と同義です。
買収価額との相違点
M&Aでの買収価額は、売り手と買い手の交渉によって最終的に決まります。したがって、企業価値、事業価値、株主価値のいずれとも意味合いが異なるものです。会社を丸ごと売買する株式譲渡では、企業価値をベースにM&A交渉が行われます。
特定の事業の売買である事業譲渡では、対象事業の事業価値が交渉のベースです。つまり、企業価値や事業価値の金額が、買収価額のベースとなります。
クロスボーダーM&Aにおけるバリュエーションの重要性
クロスボーダーM&Aとは、国内企業と海外企業とのM&Aのことです。クロスボーダーM&Aでは、初めから明らかにふさわしくない価額を提示してくるケースが増えています。そこには有利な状況で交渉を進めたいという思惑があり、国内でのM&Aよりも格段に交渉が困難です。
そこで、バリュエーションで算出した公正な企業価値が大切になってきます。公正な価額を算出することで、M&Aの交渉過程をスムーズに進行できる可能性が高まるでしょう。
M&Aでバリュエーションを実施するタイミング
M&Aのプロセスでバリュエーションが実施される可能性があるタイミングには、以下の3つのケースがあります。
- M&A実施の検討~決定時(売り手)
- 売り手・買い手間の秘密保持契約の締結後(買い手)
- デューデリジェンスの実施後(買い手)
M&A実施の検討~決定時(売り手)
売り手がM&A実施を決める際には、どの程度の売却額を希望すべきか判断するために、自社のバリュエーションを専門家に依頼して実施します。一般的に、M&A実施を決定する段階ではM&A仲介会社などと業務委託契約を結んでいるはずです。したがって、バリュエーションもM&A仲介会社が行います。
また、M&A実施決定前のM&A仲介会社などへの相談時に、実施決定の判断材料として簡易的なバリュエーションを行うケースもあるでしょう。
売り手・買い手間の秘密保持契約の締結後(買い手)
M&Aの売り手・買い手間で秘密保持契約が締結されると、売り手側の経営に関する情報が買い手に開示され、交渉が始まります。買い手側が交渉を進めていくためには、売り手から開示された情報を基にしてバリュエーションを行わねばなりません。
そして、売り手・買い手の双方が行ったバリュエーション結果を基に、お互いの希望売買価額が提示され交渉が進められます。
デューデリジェンスの実施後(買い手)
基本合意書締結後、買い手はデューデリジェンス(買収監査)を実施します。デューデリジェンスの結果、売り手から開示されている情報よりも精細な内容が得られる可能性があり、その場合、買い手は、このタイミングで再度、バリュエーションを行うのです。
デューデリジェンスで得られる結果は、良い情報もあれば悪い情報の可能性もあります。最終交渉では、良い情報であれば基本合意書よりも金額が上がり、悪い情報であれば下がってしまうのは、やむを得ません。
M&Aのバリュエーションから買収価額決定までのプロセス
ここでは、買い手側の観点で、買収価額決定までのプロセスについて説明します。
- バリュエーションを行う
- バイヤーズバリューを計算する
- 買収価額を決定する
①バリュエーションを行う
前章で述べたタイミング、つまり秘密保持契約締結後、売り手から開示された各種の経営情報を使って、バリュエーションを行います。この売り手の企業価値が、買収価額決定までの第1歩です。
②バイヤーズバリューを計算する
バイヤーズバリューとは、買い手側が妥当と考える買収価額のことです。バイヤーズバリューの計算方法は、バリュエーションによって算出した企業価値に、デューデリジェンスの結果を加味することで算出します。
デューデリジェンスの結果には、売り手企業の潜在的なリスクや想定できるシナジー効果などが含まれるので、前者の要素は価額を下げる効果、後者は価額を上げる効果が加わるのです。
③買収価額を決定する
最終交渉で、算出されたバイヤーズバリューに売り手が了承すれば、M&Aの買収価額が決定します。一方、了承できない場合には、交渉よって調整を行うしかありません。いずれにしろ、この最終交渉によってM&Aの買収価額が決定します。
この買収価額決定のプロセスでもわかるとおり、バリュエーションはM&Aに必要不可欠なプロセスです。そして、バリュエーションは、専門的な知識がなければ算定できません。バリュエーションやM&Aの相談先をお探しでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。
M&A総合研究所では、バリュエーションも含めたM&Aの豊富な知識と経験を持つアドバイザーが、フルサポートいたします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
随時、無料相談をお受けしていますので、M&Aを検討される際には、お気軽にお問い合わせください。
M&Aにおけるバリュエーションの種類
バリュエーションで使用する計算方法は、さまざまなものが確立されていますが、それらは以下の3系統に分類されます。
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
- コストアプローチ
ここでは、それぞれの系統の概要を説明します。
インカムアプローチ
インカムアプローチは、対象企業の中期事業計画(3年分程度)をベースにして、将来、獲得が期待できる収益性に重点をおく評価方法の総称です。
インカムアプローチのメリット・デメリット
インカムアプローチのメリットは、以下のとおりです。
- 現在の資産価値だけでなく将来の収益も評価しているためM&Aのバリュエーションに適している。
- 資産や事業・設備投資の評価、貸倒引当金などM&A以外の用途でも適用できる。
インカムアプローチのデメリットは、以下のとおりです。
- 事業計画書策定者の恣意性を排除できないため、客観性が担保されていない。
- 将来の収益性に重点が置かれているため、清算する場合の会社の評価はできない。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、対象企業と業種・事業規模が類似する上場企業の株価や、類似するM&Aの取引価額などを参照して評価結果を導き出す方法の総称です。
マーケットアプローチのメリット・デメリット
マーケットアプローチのメリットは、以下のとおりです。
- 株価や取引価額など公開されている情報を評価のベースとするため客観性が高い。
- 現実的な需要性や市場の動向などを評価に取り込める。
マーケットアプローチのデメリットは、以下のとおりです。
- 類似する上場企業やM&A取引が見つからなければ評価そのものを行えない。
- 株式市場が乱高下状態などの場合は適切な評価結果とはならない。
- 対象企業の個別の特徴などを評価に織り込めない。
コストアプローチ
コストアプローチは、対象企業の貸借対照表に記載されている資産と負債に着目して評価を行う方法の総称です。
コストアプローチコストアプローチ
コストアプローチのメリットは、以下のとおりです。
- 貸借対照表に確定されている情報をベースにしているため客観性に優れている。
- 計算方法が比較的、簡易である。
コストアプローチのデメリットは、以下のとおりです。
- 貸借対照表に誤りがあった場合、正しい評価とならない。
- 企業の現在の価値のみの評価=将来の収益性を考慮していないためM&Aのバリュエーションには適さない。
- 市場の状況も考慮に入っていない。
各アプローチに関して、以下の動画でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。
インカムアプローチの代表的な算定方法
インカムアプローチは、M&Aを実施することで想定される利益を基にしたバリュエーションです。ここでは代表的な2つの手法を紹介します。
- DCF(Discounted Cash Flow)法
- 配当還元法
上記の手法を使用すると、対象企業や対象事業の想定される将来的な収益性を考慮に入れた企業価値を算出できます。本来、M&Aは将来的なシナジー効果や利益を期待して実施されるため、M&Aの実務上、最も理にかなったバリュエーションと言えるでしょう。
DCF法
DCF法は、フリーキャッシュフロー(FCF)を基に算出するバリュエーションです。ここで言うフリーキャッシュフロー(FCF)は、M&Aによって将来的に獲得できると想定されるものを使用します。DCF法は、最も合理的で広く使用されている手法です。
DCF法のメリット・デメリット
DCF法のメリットは、以下のとおりです。
- 将来の具体的な収益額が評価できるので買収のメリットや妥当性を明確に判断できる。
- 期待値に合理性がある。
DCF法のデメリットは、以下のとおりです。
- 評価のベースとする事業計画書に恣意性がある場合、評価結果は適正とはいえない。
- 事業計画書の公正さや精度を第三者が判断するのが難しい。
DCF法によるバリュエーションの流れ
ここで、DCF法の計算過程を解説します。
- 予測期間中の各年FCF(フリーキャッシュフロー)を算出する
- ターミナルバリュー(継続価値)を算出する
- WACC(割引率)を計算する
- 予測期間中の各年FCFとターミナルバリューを現在価値に割り引く
- 計算した数値を足し合わせる
①予測期間中の各年FCF(フリーキャッシュフロー)を算出する
はじめに、予測期間中におけるそ各年のFCF(フリーキャッシュフロー)を計算します。FCFとは、株主と債権者の双方に分配できるキャッシュのことです。
- FCF=税引後営業利益+減価償却費−運転資本増加額−設備投資額
②ターミナルバリュー(継続価値)を算出する
ターミナルバリューとは、キャッシュフローを計算できない期間に得られるキャッシュの合計(継続価値)のことです。その企業が今後も永久に続いていくものであると仮定して企業価値を計算します。
- ターミナルバリュー=予測期間最終年度の次年度FCF÷(割引率-永久成長率)
③WACC(割引率)を計算する
次に、WACCと呼ばれる割引率を計算します。WACCとは加重平均資本コストのことで、株主にとっての資本コストと債権者にとっての資本コストを加味した割引率です。WACCを用いることで、FCFの現在価値を算出できます。
- WACC ={株主資本総額×資本コスト+負債総額×負債利子率×(1−実効税率)}÷株主資本総額+負債総額
④予測期間中の各年FCFとターミナルバリューを現在価値に割り引く
現在価値は、各年のFCFをWACC(割引率)を用いて除算して求めます。
- 現在価値=FCF÷(1+割引率)
2年目以降は、(1+割引率)の部分に年数と同じ数を乗じます。
⑤計算した数値を足し合わせる
最後は、各年全てのFCFにおける現在価値とターミナルバリューの現在価値を加算します。このように、DCF法によるバリュエーションは、非常に合理的で広く活用されている一方、大変複雑な算出方法です。DCF法によるバリュエーションを実施したい場合は、専門家に依頼することをおすすめします。
配当還元法
配当還元法は、配当金額を基に算出するバリュエーションです。ここで言う配当金額は、M&Aによって将来的に獲得できると想定されるものを使用します。配当還元法は、配当金額が変動しやすい上場企業のM&Aには不向きな手法です。一方、未上場企業のM&Aや事業承継においては広く用いられています。
配当還元法のメリット・デメリット
配当還元法のメリットは、以下のとおりです。
- 計算が簡単。
配当還元法のデメリットは、以下のとおりです。
- 配当を出していない会社に対しては評価を行えない。
- 経営者の配当政策に左右される。
配当還元法によるバリュエーションの方法
配当還元法では、以下の計算式を用いて株価を算定します。
- 配当還元価額=(年間配当金額÷10%)×(一株あたり資本金÷50円)
マーケットアプローチの代表的な算定方法
マーケットアプローチは、市場の取引価額を基に算出するバリュエーションです。マーケットアプローチには、代表的な以下の手法があります。
- 市場株価法
- 類似会社比準法(マルチプル法)
- 類似取引比準法
マーケットアプローチは、他の手法と比べると客観的なバリュエーション結果になることが利点です。一方で、市場の短期的な変化に影響を受けやすいという難点もあります。つまり、類似するM&Aであっても、市場次第で買収価額に大幅な変動があるということです。
市場株価法
市場株価法は、過去1カ月~6カ月程度の平均株価を基にしたバリュエーションです。短期的に算出してしまうと、外部要因などにより企業価値とは関係なく株価が変動する場合があります。そのため、市場株価法では中長期的な平均株価をベースに算出するのです。上場企業のM&Aでよく活用されます。
市場株価法のメリット・デメリット
市場株価法のメリットは、以下のとおりです。
- 客観性に優れている。
市場株価法のデメリットは、以下のとおりです。
- 上場会社専用のバリュエーション方法であるため未上場企業では使用できない。
市場株価法によるバリュエーションの方法
対象の上場企業の株式市場における株価を、最低でも1カ月間以上、最長でも6カ月以内で平均値を計算します。その平均値に発行済み株式数を掛け合わせることで算定できるのが株式価値(=時価総額)です。注意点は、災害や経済状況の急変などで株価の動きが通常時と異なる時期に用いるのは適しません。
類似会社比準法(マルチプル法)
類似会社比準法(マルチプル法)は、評価対象会社と事業内容などが似通っている上場企業の株価を基準にしたバリュエーションです。類似会社比準法は、未上場企業がM&Aを行う際に用いられます。
類似会社比準法のメリット・デメリット
類似会社比準法のメリットは、以下のとおりです。
- 客観性に優れ、信頼性も高い。
- 比較的、計算も簡単に行える。
類似会社比準法のデメリットは、以下のとおりです。
- 類似する上場企業が見つからなければ算定できない。
- 評価対象企業が独自に有する要素(独自の設備や製法など)が加味されない。
バリュエーションに用いられる倍率
類似会社比準法では、類似会社のPERやEBITDAなどの指標を用いますが、M&Aで多用されるのはEV/EBITDA倍率です。EV/EBITDA倍率は、EV(企業価値)はEBITDA(営業利益+減価償却費)の何倍であるべきかを表します。
類似会社比準法によるバリュエーションの方法
類似会社比準法では、評価対象会社のEBITDAに対して、類似企業のEV/EBITDA倍率を乗算して算出します。以下の動画で、弊社M&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法(類似会社比準法)について解説しておりますので、ぜひご覧ください。
類似取引比準法
類似取引比準法は、これまでに実施されてきた過去のM&A事例と比較するバリュエーションです。しかし、類似するM&A事例を探すのが難しいため、M&Aの現場ではほとんど用いられていません。
類似取引比準法のメリット・デメリット
類似取引比準法のメリットは、以下のとおりです。
- 実際に行われた類似するM&A取引事例を参考にするため客観性・信頼性が高い。
類似取引比準法のデメリットは、以下のとおりです。
- 類似するM&A事例を見つけるには膨大な時間と手間がかかる。
- 日本では取引価額を公表しないM&A事例が多く、さらに未上場企業間のM&Aは基本的に取引自体を公表しないため、類似事例が見つかる可能性が低い。
- 類似するM&A事例が見つからなければ評価を行えない。
類似取引比準法によるバリュエーションの方法
類似するM&A事例の取引価額に対し、EBITDAなどの係数を用いて乗じ、企業価値を導き出します。
コストアプローチの代表的な算定方法
コストアプローチは、貸借対照表に載っている純資産(=資産-負債)を基にしたバリュエーションです。ここでは、コストアプローチの代表的な3つの方法を解説します。
- 簿価純資産価額法
- 時価純資産価額法
- 再調達原価法
簿価純資産価額法
簿価純資産価額法は、貸借対照表に載っている純資産を基にしたバリュエーションです。
簿価純資産価額法のメリット・デメリット
類似取引比準法のメリットは、以下のとおりです。
- 極めて簡単に計算できる。
- 客観性は高い。
類似取引比準法のデメリットは、以下のとおりです。
- 将来的な収益性について全く考慮していないため、M&Aのバリュエーションには不向き。
- 簿価であるため、帳簿に載ったときの評価=過去に対する評価で現実的な評価ではない。
簿価純資産価額法によるバリュエーションの方法
簿価純資産価額法の計算方法は、以下のとおりです。
- 簿価純資産額=簿価資産額-簿価負債額
時価純資産価額法
時価純資産価額法では、資産と負債を時価に換算して純資産額を算出します。時価を基にバリュエーションを実施するため、簿価純資産価額法よりも現実的な評価を得られることが特徴です。
時価純資産価額法のメリット・デメリット
類似取引比準法のメリットは、以下のとおりです。
- 計算そのものは簡単。
- 客観性がある。
- 簿価純資産価額法よりも現実的な評価が得られる。
類似取引比準法のデメリットは、以下のとおりです。
- 将来的な収益性を考慮していない点は簿価純資産価額法と変わらない。
- 時価への換算が誰が正しく行えるかという問題がある。
時価純資産価額法によるバリュエーションの方法
時価純資産価額法の計算方法は、以下のとおりです。
- 時価純資産額=時価資産額-時価負債額
再調達原価法
再調達原価法は、主に不動産鑑定に用いられる評価方法です。M&Aで用いるのであれば、対象会社が所有する不動産に対して行いますが、これは企業価値全体を示すものではありません。したがって、M&Aではほとんど用いられません。なお、単に原価法とも呼ばれます。
上場・未上場・ベンチャー企業におけるM&Aのバリュエーション方法を比較
M&Aのバリュエーションを行う際、対象企業が上場企業か未上場企業かベンチャー企業かによって、用いられるバリュエーション方法が異なります。それぞれのバリュエーションの概要を確認しましょう。
上場企業におけるバリュエーション
上場企業には株式市場での株価という客観的数値がありますから、バリュエーションで中心的に用いられるのは市場株価法です。ただし、M&Aの現場では、複数のバリュエーション方法を組み合わせて用います。
上場企業が対象のバリュエーションで市場株価法を補完する目的で用いられる方法は、DCF法と類似会社比準法です。これは、上場企業であればDCF法で必要となる中期計画は策定されており、また、類似会社が見つかりやすいという特徴によります。
未上場企業におけるバリュエーション
上場企業のような株価情報がない未上場企業がバリュエーションの対象である場合、中心的に用いられるのはDCF法でになります。もし、類似会社が見つかるのであれば、類似会社比準法も有力なバリュエーション方法です。
なお、未上場企業の中でも規模が小さい会社に対しては、以下のような簡易的な計算方法もあります。
- 企業価値評価額=時価純資産額+直近3年間の営業利益の平均額×3~5年
営業利益に掛け合わせる年数が変数となっているのは、対象企業の希少性や業種の特殊性が高い場合、大きい変数を掛けることになっています。
ベンチャー企業におけるバリュエーション
ベンチャー企業も未上場企業ですから、中心的に用いられるのはDCF法になります。ただし、注意点として、ベンチャー企業の場合、DCF法で算定の基となる事業計画書が、野心的な内容であることが多いことです。その場合、バリュエーション結果が本来より高くなります。
この点を考慮し補完する方法として、投資案件を評価する指標の1つであるIRR(Internal Rate of Return=内部収益率)を用いて、ベンチャー企業の評価を総合的に行うのです。
また、一般の中小企業と比べて、ベンチャー企業は類似会社や取引が見つかる可能性もあるため、その場合は類似会社比準法や類似取引比準法も用いられます。
M&Aのバリュエーションまとめ
買収価額の基準となるバリュエーションは、M&Aにおいて非常に重要なプロセスです。バリュエーションには、さまざまな手法があり、用いられる場面や特徴が異なります。また、中小企業と大企業ではM&Aの意味合いが大きく異なるため、自社に合ったバリュエーションの活用が必要です。
そして、場面に応じて複数のバリュエーションを併用することも考慮に入れなければなりませんが、M&Aのバリュエーションには専門知識が欠かせません。したがって、バリュエーションでは、M&Aの専門家に依頼して実行するのが得策になります。本記事の要点は以下のとおりです。
・バリュエーションとは?
→企業価値評価のことで、事業や資産、収益性などその企業を構成するあらゆる要素を総合的に吟味したうえで評価し金額換算する
・買収価額決定までの流れ
→企業価値を算出、バイヤーズバリューの計算、買収価額決定
・バリュエーション手法の種類
→インカムアプローチ:DCF法、配当還元法など
→マーケットアプローチ:市場株価法、類似会社比準法(マルチプル法)、類似取引比準法など
→コストアプローチ:簿価純資産価額法、時価純資産価額法、再調達原価法など
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。