2022年12月19日更新会社・事業を売る

M&Aによる売却の基礎知識!相手先企業探し、取引価格の決め方、手続きの流れを解説

M&Aによる会社・事業の売却を成功させるためには、経営者自身も基本的な知識を学んでおくことが大切です。この記事では、M&Aによる売却の基礎知識、相手先企業探しや取引価格の決め方、手続きの流れを解説します。

目次
  1. M&Aによる売却とは
  2. M&Aによる売却時の取引価格の決め方
  3. M&Aによる売却時の税金
  4. M&Aによる売却手続きの流れ
  5. M&Aによる売却のメリット・デメリット
  6. M&Aによる売却を成功させるポイント
  7. M&Aによる売却のまとめ
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M&Aによる売却とは

M&Aによる売却とは、会社や事業を売る行為のことです。主として、株式譲渡および事業譲渡などの手法を用いて、第三者に対して売却を行います。本章では、M&Aによる売却の実施を検討している経営者の方に向けて、把握しておくべき基礎知識をまとめて取り上げます。

合併と売却の相違点

まずは、合併と売却の相違点を取り上げます。これらの行為はM&A手法に該当する点では共通しているものの、性質は大きく異なっているのです。

合併とは、2つ以上の会社が統合して1つの会社になる行為をさします。合併によって存続会社以外の企業は消滅会社とされて、消滅会社の事業・資産・従業員・権利義務のすべては存続会社に引き継がれる仕組みです。

これに対して、売却とは、株式(会社)譲渡・事業譲渡などの手法を用いて第三者に売却する行為のことです。株式譲渡では、買収側に会社の経営権を譲渡します。外部から見ると会社の経営者(株主)が変更するのみであり、会社組織・運営事業・資産・従業員・権利義務などに変化はみられません。

事業譲渡では、企業が有する事業の全部もしくは一部を切り出して譲渡します。つまり、経営権の譲渡は伴わず、対象事業に関する工場・設備・店舗・特許・ブランド・販路・ノウハウなどを譲渡する仕組みです。

株式譲渡の定義と特徴

株式譲渡の定義と特徴を詳しく取り上げます。株式譲渡とは、保有する会社の株式を第三者に売却し、M&Aを実施する手法です。株式会社の場合、経営に関わる権利である経営権は、株式の保有数によって決まります。保有数が過半数を超える場合、単独で普通決議を採択することが可能です。

取締役の選任・資本金の減額などを単独で決定できます。保有割合が3分の2を超えた場合、経営の根幹に関する意思決定(M&Aの実行や定款の変更)を単独で行うことが可能です。株式譲渡によるM&Aは100%株式の売却が一般的とされており、その結果として会社が実質的に売却されます。

主に、株式譲渡はM&Aにより会社のすべてを売却したい場面で用いられます。このことから、中小企業のM&Aの中で最も多く行われている手法です。中小企業では、事業承継問題の解決・自社の生き残りなどを目的に株式譲渡を活用しています。

この手法のメリットは、簡単な手続きでM&Aを実行できる点にあります。他のM&A手法とは異なり、売却時に特別決議・債権者保護などの手続きを要しません。中小企業のM&Aで株式譲渡が多く行われている理由の1つとして、手続きが簡単であるうえに現金化が早い点が挙げられます。

ただし、非上場企業の場合、株主名簿の書換や取締役会などの承認手続きが必要です。この手続きを行わないと、会社売却の法的効力が発生しないため注意しましょう。

売却側のデメリットは少ないですが、強いて挙げると、M&A後に権利を行使できない点です。M&A後に経営者が完全にリタイアする場合は問題ありませんが、M&A後も買い手企業の傘下として働きたい場合には注意が必要です。

M&Aにより実質的には雇われ経営者となるため、モチベーションが下がるおそれがあります。その一方で、買い手側では簿外債務などを引き継ぐリスクを伴う点がデメリットです。M&A後に発覚した場合、売却側が責任に問われるおそれがあります。M&Aの売却側からすると、簿外債務などのマイナス要素も、正直に伝えましょう。

事業譲渡の定義と特徴

事業譲渡とは、会社の全部もしくは一部の事業・資産を売却するM&A手法です。株式譲渡とは異なり、株式を売却するわけではありません。事業・資産単位で売却するため、権利の移転のみが生じます。

事業譲渡を用いる場合、売却する側は20年間の「競業避止義務」を負います。競業避止義務とは、M&Aで売却した事業を再び行わない旨を約束する義務のことです。この義務は、買い手側の権利を保証するために課されます。

事業譲渡は、主にM&Aにより特定の事業売却を行いたい場面で用いられます。事業のみを売却できるため、不採算の事業やメインではない事業を切り離すことが可能です。主力事業への集中・資金調達などを目的に利用されています。

株式譲渡とは違い、事業譲渡は買い手側にとってもメリットの多い手法です。買い手側は、簿外債務を引き継がずにM&Aを遂行できます。その一方で、売り手側では、経営権を維持したまま資金を得られる点がメリットです。経営権を維持できるため、M&A後も引き続き事業運営に携われます。

事業譲渡の最も大きなデメリットは、手続きが多い点です。特別決議・債権者保護手続きなど、煩雑な手続きが必要とされます。個別の資産・契約ごとに再度契約を締結する必要があるため、M&Aの実行に多大な時間と労力がかかりやすいです。

M&Aによる売却時の取引価格の決め方

M&Aを行う場合、売却価格を決定する方法の理解が大切です。M&Aの最終的な売却価格は、当事会社の交渉で決定します。しかし、交渉前には、企業価値を算定しなければなりません。企業価値の算出方法は、大きく分けて以下の3つが存在します。

  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • コストアプローチ

それぞれの算出方法を順番に詳しく紹介します。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業の将来的な収益力をもとにバリュエーションを実行する手法のことです。M&Aでは、インカムアプローチをもとに売却金額を決定するケースが多いです。企業価値の算出精度を上げるには、事業計画の念入りな策定が必要不可欠とされています。業界・市場に対する精密な予測も重要です。

メリット・デメリット

インカムアプローチ最も大きなメリットは、将来性を加味した企業価値を算出できる点です。今後成長が見込める企業とのM&Aで非常に使い勝手が良いとされています。

加えて、一方の売却側にとっても、メリットがあります。将来的に高い収益が見込まれる場合は企業価値が高くなるため、現在利益が出ていなくても有利な価格で会社売却できる可能性が高いです。

ただし、将来的な予測は、あくまでも算出する側の主観に依存します。さらに、参考にする事業計画次第で企業価値が大幅に変動するため、企業価値に売却する側の恣意や主観が入りやすいです。買い手側が算出した企業価値に納得しないおそれがあります。

なぜなら、買い手側は、M&Aをできるだけ安く済ませたいと考えるためです。以上のことから、売却側では、算出した企業価値に説得力を持たせる必要があります。ここでは、交渉時に相手にとってメリットとなるシナジー効果などを最大限に伝えることが大切です。

代表的な手法

細かく分けると、フリーキャッシュフローを用いるDCF(Discounted Cash Flow)法・配当額を用いる配当還元法などの手法があります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチでは、市場の取引を基準にバリュエーションを実行する手法のことです。マーケットアプローチは、一般的にベンチャー企業のM&Aで用いられる手法です。この手法を用いる際、なるべく自社と類似している会社・M&A事例を選定する必要があります。

メリット・デメリット

マーケットアプローチのメリットは、市場取引を参考にするために、客観性・説得力の高い企業価値を算出できる点にあります。利益が出ていないベンチャー企業でも、バリュエーションを実施できる点もメリットです。

さらに、売却側企業が成長性の高い業界に属している場合、高い値段でM&Aを実施できる可能性があります。ベンチャー企業がM&Aを実施する場合に非常に使い勝手の良い手法です。

しかし、類似する会社や過去のM&A事例がみつからないと、この手法は活用できません。例えば、ビジネスモデルが異なる場合や同様の事業で上場企業がない場合などでは、反映が算出不可能です。市場の短期的な変化に売却価格が左右されやすい点も、デメリットとされています。

代表的な手法

細かく分けると、自社と類似する会社を用いる類似会社比準法・過去のM&A事例を用いる類似取引比準法などが存在します。

コストアプローチ

コストアプローチとは、貸借対照表に記された純資産をもとにバリュエーションを実行する手法のことです。状況に応じて、簿価もしくは時価から、用いる手法を決定します。

メリット・デメリット

コストアプローチでは、他の手法と比べて簡単に売却金額の目安を把握できます。純資産額を参考にするため、公平な価格の算定が可能である点もメリットです。

とはいえ、売却する側にとってメリットの少ない手法であり、むしろデメリットの方が多いとされています。コストアプローチでは会社の将来性を全く加味しないため、売却側の価値算定にはそれほど向いていない手法です。

算出される企業価値が低くなる傾向にあることから、この手法を用いると、低い売却価格となる可能性が高いです。以上のことから、あくまでもM&Aの実行可否の判断を行う目的で用いると良いでしょう。

代表的な手法

簿価純資産法では、帳簿価額を企業価値とします。しかし、実態からかけ離れた価格となる場合もあるため、一般的には活用されていません。

一方で、時価純資産法は、時価資産から債務を差し引いた数値を企業価値としたうえで、有利子負債を除いた数値を株式価値とします。一般的には、小規模M&Aや廃業企業のバリュエーションなどで用いられる手法です。簡易的にM&Aの実行可否を判断する際にも活用されます。

【関連】企業価値の算定方法は?企業価値を高めるポイントも解説| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aによる売却時の税金

ここからは、M&Aを用いて会社・事業を売却する際の税金を取り上げます。株式譲渡・事業譲渡ごとに発生する税金が異なる点を把握しておきましょう。

株式譲渡の税金

株式譲渡によってM&Aを実施する場合、売却金額から諸費用を差し引いた部分に税金が課されます。具体的には、所得税などで合計20.315%が課税される決まりです。売却時にかかる税額は、以下の数式に当てはめて算出します。

  • 税金=(売却金額ー諸費用)✕20.315%

諸費用とは、設立時やM&A実行時に要した費用のことです。ただし、上記は個人が株式を売却するケースの説明であり、法人が株式を売却する場合は会社側に法人税が課されます。M&Aを実行する際は、誰が株式を売却するのか確認しましょう。

【関連】株式譲渡したときの税金は?種類、節税方法、計算方法を解説| M&A・事業承継の理解を深める

事業譲渡の税金

事業譲渡によってM&Aを実施する場合、会社が売却利益を得るため、会社側に法人税が課されます。資産価値のあるものを売却するため、消費税も課される決まりです。ここでは、課税される資産と課税されない資産がある点に注意しましょう。消費税が課税される資産は、主に下記のとおりです。

  • 有形固定資産(土地を除く)
  • 無形固定資産
  • 棚卸資産
  • のれん代(営業権)

売却する金額のうち課税資産が多くを占める場合、多額の税金が課されます。その場合、他のM&A手法を用いた方が、税負担を抑えられる可能性が高いです。

【関連】事業譲渡・事業売却の費用や手数料、税金まとめ【仕訳/勘定科目】| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aによる売却手続きの流れ

ここでは、M&A(株式譲渡・事業譲渡)を用いて売却を行う際に必要な手続きの流れを取り上げます。手法ごとに必要な手続きは異なるため、比較しながら確認しましょう。

株式譲渡の手続きの流れ

株式譲渡の手続きは、大まかに以下の流れで進められます(会社の定款に譲渡制限がある非公開会社のケース)。

①M&Aの準備 売却に向けた戦略の策定、売却相手の選定、ノンネームシートやインフォメーション・メモランダムなどの作成。
②交渉・基本合意契約書の締結 ケースによっては意向表明書の提出も行われる。
③買い手側企業によるデューデリジェンスの実施 デューデリジェンスとは、買収対象企業の経営環境・事業内容などを調査し、法務面の問題点・リスク・財務状況・収益力を分析する行為のこと。
④株式譲渡承認請求の実施 株式取得に際して、対象企業から承認を受けるための手続き。書式や手続きに細かな規定はないものの、企業に対して譲渡承認承諾書を提出する方法が一般的とされている。
⑤取締役会の開催 取締役会非設置会社では株主総会による決議が行われる。
⑥株式譲渡契約の締結 株式譲渡契約には、株式数や対価などの内容を盛り込む決まり。
⑦株主名義の書換 対価の支払いおよび株主名義の書換を行うと、手続きは終了する。株主帳簿に新たな株主名が記載されることで、譲受側が正式に株主とされる。

事業譲渡の手続きの流れ

事業譲渡の手続きは、大まかに以下の流れで進行します。

①M&A準備〜デューデリジェンス 売却に向けた戦略の策定、売却相手の選定、ノンネームシートやインフォメーション・メモランダムなどの作成。
②取締役会の開催 取締役会非設置会社では株主総会による決議が行われる。
③事業譲渡契約の締結 事業譲渡では、個別の資産や負債、契約、許認可など事業譲渡に際して譲渡するものを詳細に決める。
④株主への通知・公告 反対株主の買取請求手続きが求められる。
⑤株主総会の特別決議 事業譲渡では原則として株主総会の特別決議が必要。
⑥名義変更・許認可手続き 各種資産や契約、許認可などは個別に名義変更や申請が必要。

株式譲渡と一部の手続き内容が似ているものの、株主総会の特別決議および名義変更・許認可手続きなどで多くの手間・時間がかかりやすい点に特徴が見られます。手続きをスムーズかつ確実に進めていくためにも、M&A仲介会社などの専門家に相談しサポートを得ると良いでしょう。

【関連】デューデリジェンスとは?M&Aでの流れ・役割、必要な資料・期間・費用、注意点をわかりやすく解説| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aによる売却のメリット・デメリット

本章では、M&Aを用いて会社・事業を売却する際に生じるメリット・デメリットを順番に詳しく取り上げます。合わせて、デメリットを軽減させるための対策も紹介しているので、M&A戦略策定に役立てましょう。

M&Aによる売却のメリット

M&Aによる売却のメリットは、主に以下のとおりです。

  • 事業承継問題の解決
  • 売却資金の獲得
  • 従業員の雇用継続
  • 事業規模の維持・拡大
  • 事業承継コストの低減

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

事業承継問題の解決

M&Aを用いると、事業承継問題を解決できます。具体的にいうと、M&Aを利用すれば、全国から買い手(後継者)を探すことが可能です。これにより、従来は後継者不足で廃業の選択肢しかなかった会社を、経営者自身が信頼できる相手に譲渡できます。

売却資金の獲得

M&Aによる売却の大きなメリットは、多額の利益を確保できる点です。規模にもよりますが、数百万円〜数億円規模の資金を獲得できる可能性があります。これまでに、M&Aによって得た売却資金でハッピーリタイアを実現した経営者は少なくありません。

売却資金を新規事業・主力事業拡大に活用するケースも増加しています。新たな人生を歩むうえで、M&Aによる売却は非常にメリットが大きいです。

従業員の雇用継続

経営者であれば、従業員の労働条件や従業員家族の生活の勘案が求められます。万が一に廃業した場合、雇用を継続できず、再就職が容易でない従業員などは生活資金に苦しむ可能性が高いです。

しかし、M&Aによる事業売却を行えば、会社を存続させられます。M&Aの活用によって、従業員の雇用環境も維持できる点は大きなメリットです。

事業規模の維持・拡大

最近では、大企業の傘下に入る形でM&Aによる売却を行う事例も増加しています。こうしたケースでは、これまで積み上げてきたノウハウや技術を継続・伝承させることが可能です。

経営者からすると、自身が積み上げてきた資産を消滅させることなく残せます。大企業は中小企業と比べて経営資源の量が豊富にあるため、M&A後にさらなる事業規模の拡大も見込めます。

事業承継コストの低減

会社をたたむ際は、廃業コストがかかります。清算・登記費用などで、合計して数十万円程度の費用がかかってしまいます。しかし、M&Aによる売却では、コストをかけず経営からリタイア可能です。

中小企業の場合、経営者が個人保証を負ったうえで資金を借り入れているケースがほとんどです。ところが、M&Aにより企業を売却すれば、こうした経営者個人の保証から解放される可能性があります。

【関連】M&Aのメリット・デメリットとは?買い手・売り手別、M&A戦略策定、手法別の効果を紹介| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aによる売却のデメリットと対策

次に取り上げるのは、M&Aによる売却時に問題となるデメリットです。

  • 顧客・取引先離れ
  • 想定外の条件による売却
  • 従業員のモチベーション低下

デメリットは顕在化しなければリスクに留まるため、リスクを軽減してデメリット化させない対策も合わせて把握しましょう。

顧客・取引先離れ

M&Aによる売却の事実を取引先や顧客が知った場合、反発を招くおそれがあります。M&Aによる売却を実行すると、経営者や組織が大きく変わる可能性が高いです。その結果として、これまでの契約内容を維持できない場合もあります。

もともと、顧客や取引先は、サービス内容自体ではなく既存の企業や担当者を好意に契約しているケースも珍しくありません。もしも売却の影響で担当者や契約内容が変化した場合は、不信感を抱く可能性があります。

最悪の場合は、ビジネス関係を維持できなくなる可能性もあります。反発を軽減するためにも、M&A前後は顧客や取引先に真摯な対応を見せることが必要不可欠です。とはいえ、顧客や取引先との関係は信頼が第一であるため、過渡期であっても信頼を勝ち取ればその後のビジネスを継続できる可能性は高いです。

想定外の条件による売却

M&Aの実行に際して、希望の条件を実現できないケースも存在します。例えば、想定していた売却金額より価格が低いケースなどです。M&Aの売却価格は、最終的に買い手の評価と交渉により決定されます。

買い手の評価・交渉次第では、想定よりも売却金額が低くなる可能性があります。少しでも高い値段で売却するには、M&Aを始める前に「磨き上げ」を実施しましょう。磨き上げとは、企業価値を高めるための対策のことです。M&Aで有効な磨き上げの詳細は後述します。

従業員のモチベーション低下

M&Aの実施後は、ほとんどのケースで買い手側の組織や制度に従います。特に労働条件・環境が変化する場合、従業員が環境変化に即座に適応できず、モチベーションが低下するおそれがあります。

最悪の場合、優秀な人材が流出してしまいかねません。M&A後の業績を維持・向上させるには、優秀な人材が欠かせません。従業員が離職したりモチベーションが低下したりすれば、業績は悪化します。

上記のデメリットを回避するには、統合プロセス(PMI)の念入りな実行が必要不可欠です。PMIとは、M&A後に効率的かつ迅速な統合を実施するための諸活動をさします。PMIを遂行すると、上記のデメリットを軽減させることが可能です。

そのほか、会社売却前に従業員と綿密にコミュニケーションを取るなど、モチベーションを下げないための対策を講じましょう。

【関連】M&Aのデメリットとは?海外M&Aにおけるデメリットも解説| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aによる売却を成功させるポイント

最後に、M&Aによる会社・事業の売却を成功させるためのポイントを5つ取り上げます。

  1. 早期からM&Aに向けて対策する
  2. 売却に必要な書類を把握する
  3. 相手企業の探し方を把握する
  4. 相手側の目的を把握する
  5. 信頼できるM&Aの専門家を選ぶ

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①早期からM&Aに向けて対策する

M&Aを成功させるには、早期から対策を講じなければなりません。もともとM&Aは、買い手探しからクロージングに至るまで1年程度(長期化すれば2年以上)と多大な時間を要します。なるべく高額で売却するには、企業価値の向上が必要不可欠です。

これを成し遂げるには当然ながら多くの時間がかかるため、M&Aの手続きを開始する前から企業価値の向上に努めなければなりません。

相手企業が魅力的に感じるよう磨き上げる

企業価値を向上させるには、以下のような具体策を講じることをおすすめします。

  • 収益性を高める
  • 有力な取引先を集める
  • 会社や事業の特徴・強みを明確化させる
  • ノウハウや技術力を強化する
  • 訴訟などのトラブルを解消する
  • 未払い給与を支払う
  • 簿外債務や借入金を削減する
  • 資産管理を徹底させる
  • 株式を経営者に集中させる

株式が経営者に集まっている企業は、買い手側からすると経営権を100%取得しやすいです。その一方で、少数株主がいる場合、それぞれの株主と交渉する手間が発生します。少数株主がおらず、経営者のみが株主である企業には高い魅力があります。

②売却に必要な書類を把握する

M&Aによる売却では、非常に多くの書類の作成・提出が求められます。代表的な書類は、以下のとおりです。

  • 自社をアピールするための書類
  • 自社の概要を示す書類
  • 自社の財務を示す書類
  • 自社の人事を示す書類
  • 自社が締結している契約に関する書類

M&A取引を行う際は、「秘密保持契約書」「基本合意契約書」「最終譲渡契約書」といった契約書の作成・締結も求められます。契約をスムーズに締結する際は、M&Aの専門知識が必要となるため、M&A仲介会社などの専門家にサポートを求めると良いでしょう。

M&A仲介会社に依頼すれば、M&A取引で求められる書類全般の準備をサポートしてもらえます。

③相手企業の探し方を把握する

M&Aによる売却を行う際は、当然ながら相手先の存在が必要不可欠です。とはいえ、自社のみで最適な相手先を見つけるのは非常に多くの手間がかかるため、「商工会議所・公的機関」「マッチングサイト」「M&A仲介会社」などの専門機関およびサービスに依頼すると良いでしょう。

ここからは、それぞれの依頼先に見られる特徴を順番に詳しく紹介します。

商工会議所・公的機関

商工会議所に依頼すれば、地域に根ざした情報や地元の企業のネットワークを活用しながら、M&Aによる売却相手を探してもらえます。商工会議所は全都道府県に存在しており、地元企業の情報を豊富にそろえている公的機関です。

なかには経営者の事業承継をサポートしている機関も存在するため、後継者不在に悩んでいる場合にも積極的な活用をおすすめします。とはいえ、M&A業務の専門家ではなく、M&A交渉・登記・税務処理などの手続きに対応していないケースが多いため要注意です。

マッチングサイト

M&Aによる売却ニーズの高まりを受けて、最近ではマッチングサイトも数多く登場しています。マッチングサイトを活用すれば、時間や場所に縛られずにサイト上で売却相手を探すことが可能です。無料登録で利用できるサービスが多く、非常に豊富な案件を取り扱うサイトも存在します。

とはいえ、M&Aの交渉および各種手続きのサポートには対応していないケースが多いため注意しましょう。

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M&A仲介会社

最後に紹介するのは、M&A仲介会社からサポートを受けて、自社にふさわしい売却相手を探す選択肢です。一般的に、M&A仲介会社は売却側の希望をくみ取ったうえで買収希望の企業に打診を行います。M&A仲介会社に依頼すれば、自社の希望に沿った形でマッチングを図ってもらえるのです。

M&A仲介会社では必要な手続きのフルサポートを手掛けている機関も多く、M&A相手が見つかった後も安心してプロセスを進行させられます。

④相手側の目的を把握する

M&Aでは、相手側が掲げる目的を把握しておくことも非常に重要です。もともと買い手側企業は、自身の目的に応じて買収先の企業を選定します。これを受けて、売却側では、相手の選択肢に自社が入るように強み・アピールポイントなどを打ち出すと、希望する条件を受け入れてくれる相手先が見つかりやすいです。

⑤信頼できるM&Aの専門家を選ぶ

ほとんどのM&Aでは、M&A仲介会社にサポートを依頼し、M&Aアドバイザーの力を借ります。なぜなら、M&A当事会社のみでM&A実務を行うことは、非常に困難かつ非効率であるためです。

M&Aによる売却をスムーズに成功させるためにも、信頼できるM&A仲介会社・M&Aアドバイザーを選ぶことが重要です。ここからは、M&A仲介会社・M&Aアドバイザーを見極めるポイントを取り上げます。

得意業種・得意なM&Aの種類

M&A仲介会社・M&Aアドバイザーごとに、得意とする業種やM&Aの種類は異なっています。例えば、スモールM&Aに特化しているM&A仲介会社もあれば、事業承継型のM&Aに特化しているM&A仲介会社もあるのです。

調剤薬局などの医療業界や飲食店など、特定の業界に強みを持つM&A仲介会社も存在します。これを踏まえて、自社の業界に合ったM&A仲介業者・M&Aアドバイザーを選ぶと、M&Aによる売却の成功に近づきます。

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売却先へのアプローチ方法

M&Aによる売却時には、買い手側へのアプローチ(交渉)方法も重要です。交渉方法には、大きく分けて2種類が存在します。

1つ目は、1社ずつ交渉を進める方式です。契約に至らなかった場合、次の買い手候補と交渉を開始します。この方法は、相手候補をじっくり探せる一方で、多くの時間がかかる点はデメリットです。

2つ目は、同時進行で多数の買い手候補と交渉する方式です。こちらは短期間で相手候補を見つけられるメリットがあるものの、同時に多くの手続きを進行させなければなりません。いずれの方法も一長一短であるため、状況に合ったサポートをしてくれるM&A仲介会社を選びましょう。

手数料のシステム

M&Aのアドバイザーを利用するには、手数料を支払わなければなりません。手数料体系は業者ごとに異なりますが、M&A仲介会社が求める手数料の一例は以下のとおりです。

  • 着手金
  • 最低手数料
  • リテイナーフィー
  • 中間金
  • 成功報酬

なかには、着手金が無料のM&A仲介会社や、リテイナーフィーが安い会社なども存在します。M&A仲介会社の選び方次第で、M&Aに要する費用は大きく変動するため要注意です。

M&A仲介会社選びにお悩みの際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

また、M&A総合研究所では、知識・経験ともに豊富なM&Aアドバイザーが、クロージングまで丁寧にフルサポートしております。ご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

仲介とアドバイザリーの相違点

M&A仲介会社の手掛けるサポートは、大きく分けて仲介方式とアドバイザリー方式の2種類が存在します。仲介方式の場合、売却側と買収側の双方と契約を締結する仕組みです。当事会社の間に立って、客観的かつ中立的な立場のもとで交渉などのプロセスを仲介します。

これに対して、アドバイザリー方式では、売却側・買収側のいずれか一方とのみ契約を締結します。アドバイザリー方式のメリットは、自社の利益を最大化するために努力してもらえる点です。

手数料面でも相違がみられます。仲介方式では売却側・買収側の双方から手数料を得るため、費用が比較的安価です。その一方で、アドバイザリー方式の場合、売却側・買収側のいずれかのみから手数料を受けるため、費用が高額に及ぶ傾向にあります。

【関連】M&A仲介会社の比較!特徴・実績・仲介手数料、選び方も徹底解説| M&A・事業承継の理解を深める

M&Aによる売却のまとめ

近年、M&Aによる売却件数が増加傾向にあります。M&Aによる売却を成功させるには、手法・売却価格の決定プロセスなどを把握しておかなければなりません。M&Aの理解を深めると、売却の成功可能性を高められます。

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