2021年9月12日更新会社・事業を売る

M&Aで用いる契約書とは?種類や契約手順、書式フォームもわかりやすく紹介

M&Aの際に作成する契約書には、秘密保持契約書、基本合意契約書、最終契約書があります。基本合意契約書は、項目ごとに法的拘束力を設定でき、独占交渉権に法的拘束を持たせるケースが多いです。この記事では、M&Aの契約書を契約手順に沿って解説します。

目次
  1. M&Aプロセスの手順と契約書の種類
  2. M&Aの機密保持契約書
  3. M&Aの仲介契約書
  4. M&Aのアドバイザリー契約書
  5. M&Aの意向表明書
  6. M&Aの基本合意契約書
  7. M&Aの最終契約書
  8. M&Aの最終契約書のひな形・フォーム
  9. M&Aの契約書を作成する際の注意点
  10. M&Aで用いる契約書のまとめ
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M&Aプロセスの手順と契約書の種類

M&Aプロセスの手順と契約書の種類

まずは、M&Aプロセスの手順と契約書の種類を見ていきましょう。手順と必要な契約書は下記です。
 

①M&A仲介会社の選択と契約 仲介・アドバイザリー契約書
②M&Aの相手候補を選択 機密保持契約書・意向表明書
③交渉と基本合意書の締結 基本合意契約書
④デューデリジェンスを行う ­     _
⑤最終契約を締結 最終契約書
⑥クロージングを行う      _

各契約書について簡単に解説します。

①機密保持契約書

機密保持契約書は、M&Aの検討時点で最初に締結する契約です。スムーズにM&Aの検討を進めるには、公表できるまで関係者以外へM&Aの検討に関して秘密にすることが大切です。

従業員や取引先へ知らせるタイミングなどを間違えると、従業員の退職や取引停止などが生じるリスクがあります。相手の情報をM&A以外に使ったり許可なく情報を開示したりしてはいけません。

②仲介・アドバイザリー契約書

仲介・アドバイザリー契約書は、M&Aの専門家と締結します。

M&Aをサポートするファイナンシャル・アドバイザリーやデューデリジェンスを行う専門家などとの契約金額や業務内容などにおける合意が、この契約書の内容です。

③意向表明書

意向表明書は、交渉を開始する際に買収側が交渉内容に関して提案する書類です。

交渉する前に、当事者間である程度の条件について目線を合わせるために締結します。ただし、必ず締結する必要はありません。

④基本合意契約書

最終契約書の締結にとって重要な条件に関して合意した内容を確認するために締結するのが、基本合意契約書です。ただし、必要に応じて締結される契約書で、常に必要なわけではありません。

⑤最終契約書

最終契約書は、当事者間がM&A案件の実行に対して締結します。スキームにより、株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、総株引受契約書、合併契約書などいろいろです。

この契約書によって、譲渡価格やクロージング条項などが定められます。

【関連】M&Aのクロージング

M&Aの機密保持契約書

M&Aの機密保持契約書

M&Aの契約には欠かせない機密保持契約書についてまとめました。この契約書は、M&Aの初期段階で非常に大切です。

機密保持契約書とは

機密保持契約書では、開示された情報を第三者に漏えいしない、またはM&Aの検討以外で使用しない旨を約束します。秘密保持契約書は、M&Aを行う当事者同士が事業内容や株式情報の非公開情報を開示する目的で締結されます。

M&Aでは、互いに機密情報を開示し合います。そのため、情報漏えいには注意を払う必要があるのです。とりわけ売り手企業にとって、M&Aの検討自体が秘密情報です。M&Aを検討しているのが周囲に知られると、経営に悪影響が生じる恐れがあります。

漏えいリスクを軽減するために、M&Aでは秘密保持契約書を作成します。秘密保持契約書を締結すると、双方企業がM&Aを検討できます。秘密保持契約書は、M&Aの初期段階で非常に重要です。

機密保持契約書のポイント

機密保持契約書を作成する際は、どこまで秘密保持の対象とするかがポイントです。契約書で対象外の事項を漏えいされても、責任を問うのは不可能です。あくまで、機密保持契約書の設定した範囲内で、M&Aの相手に責任を追及できます。

したがって、契約書を作成する際は、秘密保持の範囲を慎重に決定しなくてはいけません。下記の2点がポイントです。

  • 秘密を漏えいされた際の責任も明記する必要がある
  • 機密保契約書に記載しなければ賠償請求が認められない場合がある

契約書の内容に関係なく、相手企業の情報管理は徹底しましょう。M&A取引では、信頼性が大事です。ペナルティがあるからなどの理由ではなく、ビジネスマナーとして最低限のことです。

また、機密情報の範囲に含まない情報を定義して除外することはよくあります。除外となることの多い情報は以下です。

  • 情報開示された時点ですでに公知の情報
  • 情報開示後、自己の責に帰し得ない事由で公知となった情報
  • 情報開示された時点で、すでに保有していた情報
  • 正当な権限を持つ第三者から秘密保持義務を負うことなく開示された情報

機密保持義務の有効期限・その他の取り決め

機密保持義務には有効期限があり、一般的に1年~5年です。また、機密保持契約の契約期間が終わっても、一定期間内は機密保持義務が続くと規定するケースがほとんどです。

稀ですが、相手側から得た技術情報がすでに自社で開発済みの情報であるときは、独自開発の技術なのか否かという問題が起こることもあります。そのため、重要な技術情報などは確定日付・開発結果を保存して、有効期間内に得た情報でないことを明らかにする準備も要ります。

その他の取り決めに関しては以下です。

  • 機密情報の使用と競業の禁止
  • 機密情報の返還・破棄
  • 損害賠償
損害賠償は、契約に違反したときに被る損害を賠償する旨に関して規定します。

【関連】シナジー効果の意味とは?M&A成功事例や多角化戦略、使い方をわかりやすく解説

M&Aの仲介契約書

M&Aの仲介契約書

M&Aの仲介契約書は正式にいうと「M&A仲介業務委託契約書」や「FA契約」と呼ばれ、M&A仲介会社との間で交わす契約書です。M&A仲介会社に仲介業務を行ってもらうときの関係を決めるのがM&A仲介契約書ですが、いくつか注意点があります。

まず、専任の条項を設けるかどうかです。M&A仲介会社に依頼する際、専任の仕事に納得がいかなければ別の会社に依頼したくなるのは当然でしょう。専任条項には、M&A仲介契約書を選任契約にしてしまう作用があります。

そのため、納得のいかないM&A仲介会社でも、専任条項の契約を交わしたM&A仲介会社以外に依頼ができません。他の会社へ依頼すれば、賠償金を支払わなければならい事態も発生します。

通常の専任条項はM&A仲介契約書に設けませんが、専任条項を設けて、クライアントを逃さないM&A仲介会社もあります。

M&A契約における双方代理

双方代理とは、M&A仲介に関わる買い手となる会社と売り手となる会社双方の代理となることを意味する条項です。大手や一般的なM&A仲介会社であれば、M&A仲介契約書に設ける条項で、一見それほど問題があるように見えません。

しかし、M&Aではより安く会社を買収したい買い手と、より高く会社を売却したい売り手双方の利害が衝突し、どちらかが譲歩することで結果が成立します。譲歩することはいくらか利益を損なうことを意味します。

双方代理の立場を取ると、M&A仲介会社は依頼した側の利益より、M&Aの成立を優先できます。その結果、依頼した側を譲歩させ利益を損なわせたうえでM&Aを達成させることもできるのです。

そのため、双方代理はM&A仲介会社と依頼した会社間におけるトラブルの温床になりやすく、訴訟に発展したケースもあります。

専任条項にせよ双方代理にせよ、いずれも依頼する会社の利益を損なわせる恐れがあります。M&A仲介会社と契約を結ぶ際は確認を怠らず、記載された条項をチェックしましょう。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、案件をフルサポートいたします。

また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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M&Aのアドバイザリー契約書

M&Aのアドバイザリー契約書

M&A取引における当事者間の契約書だけでなく、M&Aのサポートを委託するM&Aアドバイザーとの間で結ぶ契約書(アドバイザリー契約書)についても触れます。

アドバイザリー契約書とは

アドバイザリーは、いい換えるとM&A仲介会社の意です。そのため、アドバイザリー契約書とは、M&AアドバイザーとM&Aの実施を目指す企業または個人との間で締結する契約書のことです。

M&Aを実施する場合、数多くあるプロセスのほとんど全てに専門的な知識と経験が必要です。経営者個人や社内の人員だけで、それを賄うのは厳しいといえます。

中小企業の場合は、恐らく初めてのM&A取引となるため、事態への対処自体難しいでしょう。M&Aの専門知識を有して各プロセスをサポートし、助言もしてくれるM&Aアドバイザーの存在は不可欠です。

M&Aに関して全面的に補助を得るための契約書がアドバイザリー契約書といえます。

アドバイザリー契約書の内容

アドバイザリー契約書でよく確認しておきたい内容は、M&Aアドバイザーが担う業務の中身です。一般的なM&Aアドバイザーの業務内容は、以下です。

  • 業務依頼企業におけるM&A戦略の考察・提案・策定
  • 業務依頼企業が売却側の場合、企業価値算定と売却目標価額決め
  • 業務依頼企業が買収側の場合、デューデリジェンスの実施
  • 各種資料や契約書ドラフト作成
  • M&Aに関わる他の専門家との各種調整
  • M&A取引候補探しと、その調査
  • M&A取引候補との条件交渉
  • 各プロセスにおけるアドバイス

アドバイザリー契約書のドラフトに記載してあるM&Aアドバイザーの提供業務で、上記に含まれていないものがあれば締結前に確認しましょう。

業務依頼企業が買収側の場合、M&A仲介会社によっては、M&A後の経営統合プロセス(PMI=Post Merger Integration)のサポートも行う会社があり、別途依頼が可能です。PMIサポートを依頼する場合は、M&Aの成約報酬とは別報酬です。

アドバイザリー契約書のポイント

アドバイザリー契約書の中でM&Aアドバイザーの業務内容とともにポイントとなるのは、報酬に関する取り決めです。

M&A仲介会社それぞれで報酬体系は異なるものの、手数料の名目やその意味合いは共通ですので、以下にそれらをまとめて掲示します。

M&Aアドバイザーの報酬体系

M&A仲介会社へ業務依頼する場合に発生し得る手数料は、以下の5種類です。

相談料 アドバイザリー契約締結以前における相談段階での手数料。現在、多くのM&A仲介会社では無料のケースが多い。
着手金 アドバイザリー契約の締結時に発生し得る手数料。完全成功報酬制の会社では発生しない。
リテイナーフィー コンサルタント料などとも表現される。アドバイザリー契約締結後、毎月定額を支払う。完全成功報酬制の会社では発生しない。
中間報酬 M&A当事者間で基本合意契約を締結した時点で発生する手数料。基本的に成功報酬額の一部前払いとなるケースが多い。完全成功報酬制の会社では発生しない。
成功報酬 M&Aが成約しクロージングとなった際の手数料。レーマン方式により報酬額が計算されることがほとんどだが、最低成功報酬額を設定している会社もある。

レーマン方式

M&Aの成功報酬額は、レーマン方式と呼ばれる計算方法が用いられます。具体的には、下表のとおり基準額に対して定められた手数料率を掛け合わせて金額帯ごとに手数料を計算します。

基準額 手数料率
5億円以下の部分 5%
5億円超~10億円以下の部分 4%
10億円超~50億円以下の部分 3%
50億円超~100億円以下の部分 2%
100億円超の部分 1%

注意が必要なのは、基準額が何になるかがM&A仲介会社によって違う点です。大別すると、以下の3タイプがあります。

  • M&A成約額
  • 移動総資産(株式価額+負債総額)
  • 企業価値(株式価額+有利子負債)

基準額がどれになるかで大きく成功報酬額が変わるケースもあるので、アドバイザリー契約時は細かく確認し納得したうえで締結しましょう。

M&Aの意向表明書

M&Aの意向表明書

意向表明書は「LOI(Letter Of Intent)」とも呼ばれ、基本的に買い手となる会社が売り手となる会社に提出する書類のことをさします。

意向表明書には相手の会社を買収する意志や買収の目的、買収価格、資金調達法、M&Aのスケジュール、M&Aスキームなどが記載されます。

売り手会社にとって、意向表明書は買い手となる会社を選ぶ際の目安であり、複数の買い手候補がいる場合は意向表明書の内容を判断材料にして買い手となる会社を選びます。

この点を踏まえると意向表明書は単純にM&Aの意向を表明するだけでなく、M&Aをスタートさせるうえで重要な指標といえます。

①譲受側の概要

最初に会社紹介として、譲受主体と企業の概要を意向証明書に記載します。

子会社が得るケースなどでは、譲受主体と企業概要、グループの大要など、譲受先がわかる情報が記載されます。主に以下の項目が会社の基礎となる情報です。

  • 会社名と本社の所在地
  • 事業内容
  • 従業員数
  • 過年度損益 など

②M&Aによる買収の目的

M&Aを進める際、買収の目的を記載してもらいます。

シナジーの創出や事業拡大など、企業により目的はいろいろです。そのため、買収の目的をはっきりさせてもらうのです。

③M&A手法・スキーム

M&Aを進める際、取得割合や取得スキーム、株式譲渡、合併、事業譲渡など、希望のスキームを記載します。

取得割合などは、希望の割合に対する整合性を確かめるために欠かせない情報です。

④M&Aの取引条件・価格

スキームを記載すると、スキームから対象となる企業や事業などがはっきりします。対象となる企業・事業へ計算した希望金額を記載します。

株式価値だけでなく、その前提となった事業価値など計算の根拠なども記載します。現時点の価値なので、デューデリジェンスで見つかった項目などが考慮され、変更の可能性があることも記載します。

⑤資金調達の方法・手段

次に、資金調達の方法や手段について記載します。「手元資金で取得する」あるいは「金融機関から資金を調達する」など、現時点で考えている方法を記載します。

⑥今後のM&Aスケジュール・計画

意向表明提出後のスケジュールを記載します。デューデリジェンスや契約書交渉、社内手続き、最終契約の締結予定日やクロージング日などです。

社内決裁の時期やかかる時間はスケジュールに影響するため、記載が必要です。また、全体のスケジュールが希望と合うか確認します。

⑦デューデリジェンス(買収監査)実施・費用負担

デューデリジェンスの実施範囲や費用なども記載します。

財務税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、人事デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンス、システムデューデリジェンスなどが対象です。専門家に依頼するので、依頼先の記載も必要となるケースがあります。

⑧M&A後の経営方針

M&A後の経営方針などは、売却側へ多大な影響を与えます。従業員の引き継ぎなどは、従業員を守りたい経営陣にとって重要です。そのため、M&A後の経営方針を記載するのです。

また、経営陣の体制や事業戦略などを記載するケースもあります。

⑨法的拘束力がない旨

意向表明書は、基本的に法的拘束力がありません。そのため、法的拘束力がないことをはっきりさせる目的で、法的拘束力がないことを記載することがあります。

しかし、記載した項目が今後の交渉における前提となることもあるので、記載内容は留意しましょう。

⑩その他の注意事項

意向表明書は、他社より有利な条件を示すことがポイントです。そのため、補完できる項目を記載すると入札などで有利です。

意向表明書で特に重要なのが価格です。他社の条件よりもよく見えるよう価格をサポートできる情報を記載してください。

M&Aの基本合意契約書

M&Aの基本合意契約書

次に、M&Aの契約に必要な基本合意契約書について説明します。基本合意契約書に明記すべき事柄をまとめました。

基本合意契約書とは

双方の企業が納得した際、M&Aの最終契約に向けて締結する契約書です。M&Aの実務上、基本合意契約書の作成は必須ではありません。しかし、基本的に法的拘束力を持たないM&Aでは、双方の認識に相違が生じないよう締結するのが一般的です。

売り手企業と買い手企業双方に、M&Aの流れで1つの区切りを意味する契約書です。 また、M&Aで生じ得るトラブルを回避するうえでも、基本合意契約書は重要です。基本合意契約書が締結されると、買い手側によるデューデリジェンスが実施されます。

基本合意契約書の内容

基本合意契約書は、主に下記事項を記載します。

  • 大まかな条件 
  • M&A契約予定日 
  • 買収監査に関する事項 
  • 独占交渉権 
  • 有効期限 
  • 法的拘束の範囲 

M&Aの事例によっては、上記以外の項目を加える場合もあります。

①採用するM&A手法

採用するM&A手法は、合意の手法を記載します。交渉段階なので、1つ以上の手法を記載することもあります。

事業譲渡などを想定するときでは、対象となる資産や負債が必要です。しかし、基本合意書では、おおよその資産や負債などのみ記載することがよくあります。

②取引の条件

金額は取引の条件で重要な内容です。しかし、基本合意書締結の段階では金額が定まっていないため、一般的に一定の幅を持って記載されます。

また、算定の考え方のみ記載することもあります。

③クロージングの前提条件・その他の条件

取引を進めるとき、最終契約を締結する際に前提となる条件があれば記載します。従業員の引き継ぎなど、その他の条件となることが考えられる条件も記載します。

基本合意書は売り手と買い手が合意した項目なので、合意した重要な条件が記載されるのです。

④今後のM&Aスケジュール

最終契約締結へ向けたこれからのスケジュールを記載します。デューデリジェンスの時期、最終契約書の締結、クロージングなどのスケジュールです。

⑤デューデリジェンスの協力義務・費用負担

デューデリジェンスの義務が記載されることもあります。相手の協力がないと効率的に進まないからです。

デューデリジェンスの費用も記載されます。各当事者の負担が一般的ですが、独禁法対応などがあれば負担関係が記載されることもあるのです。

⑥独占交渉権

基本合意契約書締結の時期によりますが、独占交渉権は売り手側と買い手側の力関係で決められます

基本項目が合意となった時期なので、基本合意契約書に独占交渉権が付与されることはよくあります。期間は、3ヶ月~6ヶ月が多いです。

⑦有効期間

デューデリジェンスや契約交渉、最終契約締結を考えて、有効期間は余裕のある期間で設けます。独占交渉権の項目があれば、その期間と調整します。

⑧準拠法・管轄の規定

売り手側と買い手側が日本企業であるM&Aでは、準拠法は日本法です。管轄の裁判所も日本の裁判所で、一般的に当事者の本社がある地域の裁判所です。

海外企業との場合は、基本合意契約書に違反したときの法的措置を考えて、準拠法や管轄を規定しましょう。

基本合意契約書のポイント

基本合意契約書では、独占交渉権と法的拘束の範囲がポイントです。独占交渉権とは、ある一社が売り手企業と、独占的にM&Aの交渉を進められる権利です。売り手企業側は、独占交渉権が有効である限り、他社とM&Aの交渉を実行できません

複数の買い手候補が存在するM&Aの場合、独占交渉権は非常に効果的です。独占交渉権を設定すれば、買い手側は他社にだし抜かれずにM&Aを実行できます。しかし売り手側は、より有利な条件でのM&Aを破棄することになります。

基本合意契約書作成の際は、独占交渉権の設定を巡り、互いの希望が相反します。法的拘束の範囲も重要なポイントです。基本合意契約書には、項目ごとに法的拘束力を設定できます。M&Aの現場では、独占交渉権に法的拘束を持たせるケースが多いです。

独占交渉権を設定しても、拘束力がなければ裏切るインセンティブが働く恐れがあります。そこで法的拘束を設定し、相手企業に守らせる必要があるのです。

その一方で買収価格など、法的拘束を設定すべきではない項目もあります。どこまで法的拘束を設定するのかは、基本合意契約書を作成するうえで特に重要なポイントです。これらの点を踏まえ、基本合意契約書を作成する際はM&A専門家の協力を得ましょう。

【関連】デューデリジェンスとは?目的・方法・種類
【関連】M&Aで基本合意書を締結する目的

M&Aの最終契約書

M&Aの最終契約書

M&Aの契約における最終契約書について解説します。

最終契約書とは

M&Aの当事者同士が完全に合意したら、最終契約書を締結します。最終契約書を締結し、対価を支払った時点でM&Aの手続きが終わります。最終契約書は、用いるM&A手法によって正式な名称が異なります。

M&Aの現場では、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などが用いられます。

最終契約書の内容

最終契約書の内容は、M&Aの手法によって異なります。買収の場合、買収当事者間で法的に取り決められている項目が存在しません。したがって、当事者間で契約書の内容を決めます。合併の場合は、組織再編のM&Aです。

会社法に基づいて契約書の内容が決まります。また、法定契約とは別に最終契約が締結されるケースもあります。M&Aで締結する最終契約書は、一般的に下記項目が記載されます。 

  • 売買条件 
  • 手続条項 
  • 前提条件 
  • 表明保証 
  • 順守事項
  • 補償条項 
  • 解除条項 
  • 一般条項  

上記以外にも場合によっては項目を付け加えます。

最終契約書のポイント

最終契約書のポイントを紹介します。いずれのポイントも、要となるのは法的拘束力のあり方です。売り手と買い手双方が最終的に合意し約定を交わすため、必然的に法的拘束力が存在します。

したがって、仮に最終契約書の締結後にどちらかが契約を解除したり破棄したりするなど約定を違える行為をした場合、もう一方の当事者は、解約違約金の支払いや損害賠償請求を行うことが可能です。

①取引対象物の特定・M&Aの合意

株式譲渡契約書では、取引対象物は株式で株式数も記載し、事業譲渡契約書では、事業譲渡対象の資産・負債を記載します。

譲渡価格は譲渡代金を記載し、手法により一部退職慰労金で支払うケースは、その旨も記載します。譲渡条件は、価格の調整条項、アーンアウト条項、エスクロー条項などがあるときに記載する必要があります。

②表明保証事項

契約にあたり、双方企業の一定事項が真実である証明をする事項です。M&Aで起こるトラブルの多くは、表明保証事項を巡って発生します。表明保証事項により、買い手企業の調査だけでは発見できないリスクを開示できます。

表明保証事項の内容に相違があれば後日、損害賠償を請求できると定めます。その結果、買い手のリスクを減少できます。買い手企業は最終契約で、表明保証条項を入れない手はありません。表明保証事項は、基本的に数十項目に渡ります。

③順守・誓約条項

双方の企業が契約内容を順守する約束です。順守事項は、主に下記内容を定めます。

  • 最終契約書締結日からクロージング日までに、売り手企業が重要な資産を処分しない
  • 最終契約書締結日からクロージング日までに、会社が変わる経営判断を行わない
  • 競合禁止条項
  • クロージング開始後すぐに業務を遂行する

④前提条項・クロージング条項

これまでの契約に関する反すうを行わなければ、M&Aを実施しないと定める条項です。多くのケースでは、表明保証条項や順守事項に違反がない旨を確認します。

官公庁に届けが必要な場合や、独占禁止法の届けを提出する必要があるときは、届け出自体が前提条項です。つまり、表現保証条項や順守条項を改めて強調する条項です。 

⑤賠償・補償条項

表明保証条項や順守条項に違反する際に損害賠償を請求するための条項です。M&Aでは、買い手企業側にどの程度損害が発生したのか明確にならないケースが多いです。そのため、損害の程度を証明するのは、買い手企業の立証責任です。

買い手側はさまざまな事態を予測したうえで、規定を掲載する必要があります。売り手企業側は、損害賠償を請求される事態が起きると大きな損失につながります。損害賠償は、株式譲渡代金の一定額を超えないものと記載するのがベストです。

また、損害買収請求を行える期間を設定するのも重要です。期間は決算時期を考慮し、1年以内とするのが一般的です。

⑥解除条件

クロージングまでに一定事由が起こったときに解除できる旨が記載されます。

株式譲渡契約書の締結からクロージングまでは、一般的に一定の期間があります。その間にクロージング条項を満たすなどの行動が予定されるため、株式譲渡契約を締結したときに考えられなかったことが生じるケースに備えて規定されるのです。

⑦その他の条項

その他の条項として、競業の禁止や秘密保持義務、準拠法などが記載されます。原本の取り扱い、契約当事者の名前、住所などは最後に記載されます。

ちなみに、後ろに別紙として詳細な内容が添付されます。

【関連】表明保証とは?M&A契約における違反や事例、表明保証保険について解説
【関連】表明保証条項とM&A

M&Aの最終契約書のひな形・フォーム

M&Aの最終契約書のひな形・フォーム

この章では、M&Aにおける最終契約書のひな形・フォームを見ていきましょう。

株式譲渡契約書のひな形・フォーム

株式譲渡契約書のひな形・フォームは、以下です。

出典:ビズリサーチ・サクシード「M&Aで使用する契約書をわかりやすく解説【ひな型付き】」

事業譲渡契約書のひな形・フォーム

事業譲渡契約書のひな形・フォームは、以下です。

出典:ビズリサーチ・サクシード「M&Aで使用する契約書をわかりやすく解説【ひな型付き】」

M&Aの契約書を作成する際の注意点

M&Aの契約書を作成する際の注意点

M&Aの契約における注意点は、専門家のチェックを受ける点が挙げられます。M&Aの契約はお互いの交渉の結実ですが、表明保証条項や順守条項など今後の立ち回りや経営に関する制約も含められます。

そのため、買い手と売り手がお互いにフェアな関係でいられる内容が設定できるよう注意する必要があります。また、M&A契約における書式の参考として、インターネット上のひな型やサンプルを使う経営者も多いです。

しかし、そのまま流用するのはあまりおすすめできません。インターネット上のひな型やサンプルは信頼できるものであれば使用に問題ありませんが、その中身が実際に行っているM&Aと合っているかどうかはまた別の問題です。

中には実際に行うM&Aの内容に合っておらず、達成できない条件が盛り込まれてしまう恐れがあります。M&A契約の際は、M&Aの内容や契約書を専門家にチェックしてもらいましょう。

弁護士や司法書士などのプロフェッショナルは、契約内容や契約書の問題点をしっかりチェックしてくれます。

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M&Aで用いる契約書のまとめ

M&Aで用いる契約書のまとめ

今回は、M&Aの契約書について詳しく解説しました。契約書には多くの専門的な用語が記載されており、困惑するかもしれません。しかし、契約内容の多くは「うそをつきません」「約束は守ります」「違反をしたらお金を払ってもらいます」といっているだけです。

M&Aの契約書は、売り手・買い手企業の双方にとって良いM&Aにするために作成します。M&Aを成功させるためにも、契約書はしっかりと作成する必要があります。そのため、M&AアドバイザリーにM&A契約書の作成をサポートしてもらいましょう。

豊富な経験や専門知識のもとで進めれば、売り手・買い手企業にとって良いM&Aになるはずです。

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