2021年4月21日更新会社・事業を売る

M&Aの相場とは?決め方や注意点を紹介【事例付き】

M&Aの相場とは、企業を譲渡・譲受する際にふさわしいとされる金額です。買い手側と売り手側ではM&Aの相場観に差異があるため、折り合いを付ける必要があります。このとき利用されるのが、コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチなどの算定方法です。

目次
  1. M&Aの相場とは
  2. それぞれの立場でのM&Aの相場観
  3. M&Aの買収価格の算出方法
  4. M&A手数料の相場と交渉
  5. M&A仲介会社から相場情報を集める際の注意点
  6. 相場から高くする方法
  7. M&Aの相場10選
  8. まとめ
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M&Aの相場とは

M&Aの相場とは

相場とは、一般的に物が取引される際の金額のことであり、時価の値打ちのことです。M&Aの相場とは、第一義として会社の譲渡・譲受に関する金額を意味します。譲渡・譲受対象会社の現時点における価値を値段にしたものです。

M&Aの相場はあくまでも現時点の条件により算出される金額であり、流動性要素のある金額だという点に注意してください。M&Aの相場は変動しない金額ではないのです。

また、M&Aの相場は、二義的にはM&A仲介会社に支払う手数料を意味するため、M&A仲介会社のサービスやサポートに対する費用をさして、M&Aの相場と呼ぶこともあります。

M&Aにおける相場知識の必要性

M&Aを実行する経営者にとって、最大の関心ごとはM&A取引における譲渡・譲受価格といえます。M&Aによる買収を検討する企業であれば、できるだけ安く買いたいと考えるはずです。その一方、M&Aで売却を検討する企業であれば、できるだけ高く売りたいと考えます。

しかし、双方が考えを変えなければ、いつまでも平行線のままで、M&Aが成立することはありません。このときに、M&Aの価格に対する感覚を是正できる材料が、M&A相場の情報です。有効で有意義なM&Aを成功させるには、M&A相場の知識が必要だといえます。

ただし、M&Aの取引相場をすべて理解するのは簡単ではありません。そのため、適正な予算感を持ってM&Aを検討するには、M&Aの専門家からアドバイスを受けながら進めていくことが得策です。

M&Aを検討されている場合には、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、M&Aを丁寧にフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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それぞれの立場でのM&Aの相場観

それぞれの立場でのM&Aの相場観

M&Aの当事者となるのは、会社を買う側と会社を売る側です。買う側は少しでも安く買いたいと思い、売る側は少しでも高く売りたいと考えます。ここでは、各当事者のM&A相場に寄せる心情をひも解きながら、M&A相場観に潜む注意点について紹介します。

会社を買う側のM&A相場観

M&Aで会社を買収する側は、買収により期待できるメリット・想定されるデメリットを天秤にかけながらM&Aによる買収価格を検討します。メリットとしてはシナジー効果の獲得が代表例です。

とはいえ、買い手側は、一般的にM&A相場を低く見てしまいやすいです。M&A成立後のシナジー効果・将来的なキャッシュフローは目に見えない価値であり、買い手は漠然とした不安感を持ってしまいます。

また、会社を買収すると、売り手側の会社の経営者が交代します。経営者が変わることで、一時的ではあっても業績が落ちるおそれがあるというデメリットがあるのです。こうした観点・心情により、M&Aの買収側は相場を低く見積もってしまいます。

M&A現場における買収側は、予算より高い金額を提示されると値引き交渉をします。しかし、中小企業の場合、ほとんど値引き交渉に応じてもらえないというのが現状です。しかし、決断できずに交渉を保留にすれば、以下のトラブルが生じるおそれがあります。

  • 優良候補であったにもかかわらず、他の会社とのM&Aが決まる
  • さらに高額な金額で取引を要求される

こうした事態を避けるため、ある程度の金額で見切りを付けてM&Aを実施する選択肢も必要です。適切に決断するには対象会社だけではなく業界全体のM&A相場に関する知識が有用となります。加えて、フェアなM&A取引となるよう、対象会社の条件と自社のニーズが合致しているのか意識することも大切です。

会社を売る側のM&A相場観

M&Aで会社を売却する側は、可能な限り会社を高く売りたいと考えます。これは、経営に関する苦労・従業員の努力に対する思い・将来的なキャッシュフローを信じる気持ちなどから来る心情です。

また、同業他社がM&Aで高額な取引を実現したという情報を耳にすると、自社も高く売れるに違いないと考えて、結果的にM&Aで高額な売却希望金額を提示するケースが多いです。仮に買収側から希望売却金額を大幅に下回る金額を提示されたとしても、M&A成約には至らないでしょう。

しかし、買収側のケースと同様に、ある程度の金額で売却しなければいつまでもM&Aが実現できなくなるケースが想定されます。M&Aにおいて適切な判断を下すには、業界の相場・自社の価値を十分に認識しておく必要があります。

【関連】M&A戦略の目的とは?M&A戦略の事例や策定方法、注意点をご紹介

M&Aの買収価格の算出方法

M&Aの買収価格の算出方法

買収側と売却側では、M&A相場に対する思惑に相違があります。ここには、目に見えない売却側企業の歴史や売却後の会社の未来など目に見えない要素も大きく関係しているのです。価値として考えるのは非常に難しいですが、見えない利益価値をできるだけ数字に換算しなければM&Aは実行できません

動画でも概要を解説しておりますので、より理解を深めるために併せてご覧ください。

M&Aの買収価格算出の基礎知識

M&Aの現場では、利害が一致しづらい買収側と売却側の双方が納得できる相場を算出するために特有の計算方法を用います。このときの計算では、M&A相場となる譲渡・譲受金額の基礎として、会社の純資産額と営業権を足した金額を用います。

純資産とは、現在その会社が所有する資産を時価で換算したものから、時価換算した負債を引いた金額をさします。また、営業権とは、これまで企業が生み出してきた利益の3年分程度を見込んだ金額のことです。

上記をいいかえると、将来的なキャッシュフローと現在所持している資産の総額をさします。M&Aでは、この金額を基準にしながら、具体的な相場を考察していきます。

具体的な買収価格の算出方法

M&A相場を算出する際は、その過程の中で目に見えない要素も考慮します。すなわち、M&A相場を算出するには、会社の価値(企業価値)を理解しなければなりません。企業価値とは、企業が生み出す利益に、企業が獲得している評価を含んだものです。

企業価値を明確にするには株価の明示が求められますが、株価を利用した企業価値の計算手法には、以下の3つがあります。

  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ

ここからは、それぞれの計算手法を順番に見ていきましょう。

コストアプローチ

コストアプローチとは、簡単にいうと、企業の純資産における時価評価額などを基準にしながら、企業価値を算定する手法のことです。コストアプローチは、「簿価純資産法」と「時価純資産法」の2種類に大きく分かれます。

1つ目の簿価純資産法とは、「企業価値は帳簿上の純資産価額で示される」という考えの元で計算を行う手法です。計算式は、下記になります。

  • 簿価純資産価額÷発行済株式総数

簿価純資産価額は、帳簿上の資産から負債を差し引くことで求められます。簿価純資産法は帳簿資産の合計値を企業価値とする計算方法ですが、簿価純資産価額は実質的な数値とかけ離れているケースもあるため、現在のM&Aシーンで利用されることは少ないです。

2つ目の時価純資産法とは、評価時点において企業が保有する資産の時価合計額から、負債の総額を差し引いた金額を企業価値とする計算手法です。これにより、会社の価値が株価となって明示されます。

ここからは架空の企業「A社」を想定し、具体的な計算例を紹介します。想定するA社の貸借対照表上の数値は、以下のとおりです。

  種類 価格:百万円(時価に換算したもの)
資産 営業債権 (売掛金、受取手形、貸付金等) 2,100
有価証券、子会社・関連会社株式 600
棚卸資産 350
有形固定資産 1,100
知的財産権 150
資産合計   4,300
負債 買掛金、未払金など 900
退職給与引当金、退職給付会計 200
賞与引当金 200
未払税金 400
負債合計   1,700
株主資本価値   2,600

上記の資産合計から負債合計を差し引いた株主資本価値(=純資産)は2,600百万円となり、これが時価純資産法で算出された企業価値です。

なお、時価純資産法は簿価純資産法と比べて使用頻度の高い計算手法ですが、将来的なキャッシュフローが加味されないというデメリットもあります。そのため、時価純資産法で算出された相場に不満を持つ企業も少なくありません。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、上場している類似企業を比較対象として企業価値を計算する手法です。対象企業の決算書上の数値を、一定割合の係数で調整することで価値を算出します。マーケットアプローチは、「類似企業比較法(マルチプル法)」と「類似取引比較法」の2種類に大きく分かれます。

1つ目のマルチプル法とは、買収対象となる企業と同一業界に属している類似企業の企業価値・株式価値・各種財務指標などと比較して相場を計算します。市場価値・需要に沿った企業価値が計算できる点がメリットです。

また、対象企業の価値がそれほど高くなくても、企業の属する業界次第では相場が上がる可能性もあります。類似企業比較法を利用して企業価値評価を行う場合、一般的に用いられる指標は以下のとおりです。

  • EV/EBIT倍率(企業価値÷利払い前・税引前の利益)
  • EV/EBITDA倍率(企業価値÷利払い前・税引前・減価償却前・その他の償却前利益)
  • PER(株価÷1株あたりの利益)
  • PBR(株価÷1株あたりの純資産)

以下の動画で弊社M&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法について解説しておりますので、是非ご覧ください。

2つ目の類似取引比較法とは、自社のM&Aと類似する取引で成立した売買価格を基準にしながら、企業価値を評価する手法のことです。過去に取引された案件において各種倍率を算出し、評価対象となる企業に適用して企業価値・株式価値などを算出します。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業の将来の収益やキャッシュフローの予想を指標としながら企業価値を評価する計算手法のことです。インカムアプローチは、「DCF法」と「配当還元法」の2種類に大きく分かれます。

1つ目のDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法とは、将来的に生み出すキャッシュフローを加味しながら企業価値を明確に算出する手法です。将来的に生じる価値に着目するため、売却する会社側からすると喜ばしい計算方法といえます。DCF法の計算式は、以下のとおりです。

  • FCF(フリーキャッシュフロー)÷割引率

上記のように、評価対象となる企業の将来におけるフリーキャッシュフローをリスクが考慮された割引率で調整することで、企業価値を求めます。なお、フリーキャッシュフローを求める計算式は、以下のとおりです。

  • EBIT×(1-法人税率)+減価償却費-設備投資等-Δ運転資本

上記のEBITとは法人税によって割り引かれる前の企業利益のことであり、一般的には営業利益と受取配当金を足した数値をさします。

2つ目の配当還元法とは、将来的な配当額の予測値を元に企業価値を算出する計算手法です。この方法では、配当額を利率で割り元本の株式を求めることで企業価値が算出されます。

しかし、配当額は企業が設定する配当政策により変動するため、配当額の確定的な値を出すことは困難です。そのため、大企業のM&Aではそれほど活用されない計算手法ですが、配当政策が変動しにくい非上場企業や株主数が少ない企業で利用されるケースは多く見られます。

のれん代

最終的なM&Aの買収価格は、これまで紹介した計算手法で求められた数値に「のれん代」を足すことで算出されます。のれん代とは、M&Aにおいて生じる「無形資産の価値」のことです。

いいかえると、「M&Aにおける買収企業側が支払った買収金額のうち、売却企業側の純資産を上回った差額の部分」をさします。

のれん代の代表例としては、企業の特許・技術およびノウハウ・ブランドイメージなど売り手企業の持つ将来性や、買取企業側が売却企業側にかける期待値などが挙げられます。

【関連】M&Aにおけるのれん

M&A手数料の相場と交渉

M&A手数料の相場と交渉

これまで紹介したように、M&Aでは複雑な計算手法により買収価格が決定されるため、ほとんどのケースで仲介会社が起用されます。M&A仲介会社の起用では手数料が発生し、これにも相場が存在するのです。

M&Aで発生する手数料には数種類あり、金額は仲介会社により異なります。仲介会社によっては請求しない手数料もあるため、念入りに調べたうえで相談先を選びましょう。ここでは、仲介会社に支払う可能性がある手数料を列記します。

  • 相談料
  • 着手金
  • デューデリジェンス関連費用
  • 月額のコンサルタント料
  • 中間報酬
  • 成功報酬

まず、M&A検討の初期段階で発生するのが相談料です。相談後、正式にM&Aの仲介業務を委託する場合は着手金が請求されるケースがあります。

M&A交渉委託契約の内容次第では、買収候補企業の調査料または売却企業の価値算定料などいわゆるデューデリジェンス関連費用および、月額のコンサルタント料が発生するケースもあります。さらにM&Aの基本合意までたどり着いた際に、中間報酬を請求する会社も少なくありません。

最終的に、M&Aがクロージングした際に支払うことになる手数料が成功報酬です。成功報酬の相場は、M&Aの成約金額をベースに決定されます。大まかな基準値は、成約金額の1%から10%ほどです。成約金額次第で変動するため、成功報酬には具体的な金額の相場がありません。

基本的には、成約金額が大きくなるほど手数料の割合は小さくなります。支払う手数料を事前に吟味したうえで、M&A仲介会社の利用を検討しましょう。

とはいえ、M&Aでは、算出だけではなく金額を調整する交渉のプロセスも必要です。交渉のプロセスも専門的かつ手間がかかるため、M&A仲介会社からサポートを得ると良いでしょう。

M&A交渉には、「個別交渉」と「オークション(入札)」の2種類のタイプが存在します。それぞれの特徴を順番にまとめました。

個別交渉

個別交渉を行う場合、M&Aの相手候補となる企業を対象に、取引条件を交渉します。M&A当事会社の双方が合意に至れば取引成立ですが、合意に至らない場合には別の相手候補を探したうえで交渉に移るという段取りです。

M&A交渉に関する専門知識・能力が乏しい場合、希望どおりの価格で取引を成立させられなかったり、自社に不利な条件で契約を締結してしまったりするおそれがあるため、M&Aの専門家である仲介会社にサポートを依頼するのがおすすめです。

オークション(入札)

M&Aにおけるオークションでは、はじめに、売り手側企業に関する情報を匿名状態で公開して買い手企業を募集します。これにより集まった買い手候補のうち、自社が興味を持った数社を対象として取引条件を提示してもらったうえで最終的な相手企業を選ぶという段取りです。

なるべく高い価格での売却を望む場合には、オークションでのM&Aをおすすめします。ただし、オークションにより選ばれた相手企業とは基本的に取引を破談できないという大きなデメリットもあります。そのため、M&A仲介会社のサポートを得ながら、慎重に相手候補の選択・交渉を進めましょう。

M&Aを行ううえで交渉は欠かせないプロセスですが、円滑に進めるためにはM&A仲介会社など専門家のサポートが有用です。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aの知識・支援実績豊富なアドバイザーが在籍しており、クロージングまでフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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M&A仲介会社から相場情報を集める際の注意点

M&A仲介会社から相場情報を集める際の注意点

M&Aの検討を始める段階でM&A仲介会社と接触する際は、下記の点に注意して相場情報を得ると良いでしょう。

  • 複数のM&A仲介会社から情報を得る
  • 複数のM&A仲介会社にじかに会わない
  • M&A仲介会社は話を盛ることを知っておく

それぞれの注意点を順番に見ていきます。

複数のM&A仲介会社から情報を得る

情報を得るときは、必ず複数のM&A仲介会社に意見を聞きましょう。なぜなら、対象業種のM&Aに関して、M&Aアドバイザーの理解が不足している場合も少なくないためです。そのため、複数のM&Aアドバイザーから意見を聞いたうえで、最も説得力がある仲介会社を選びましょう。

複数のM&A仲介会社にじかに会わない

意見は聞くべきですが、情報流出の危険性が高まるため、複数のM&Aアドバイザーに直接会うことは避けましょう。そのため、M&A価格の目安を形成する意味では多少精度が下がるものの、代理人を立てながら匿名での情報収集をおすすめします。

M&A仲介会社は話を盛ることを知っておく

基本的にM&Aアドバイザーは、接触してきた経営者にM&Aを依頼してもらいたいと考えるものです。そのため、ときには膨らました価格でM&A提示し、経営者を誘惑してくるケースもあります。

例えば、4億円から6億円という相場観を提示してきた場合、上限である6億円は現実的な価格ではないケースがほとんどです。

とはいえ、上記の話を持ちかけられた売り手側企業の経営者からすると、4億円未満では売却しないという考えに至るのが自然です。これを受けて、取引を成立させたいM&Aアドバイザーとしては、何とか4億円以上の買い手を探すことでしょう。

以上の事情を踏まえると、M&Aアドバイザーが依頼前に取引価格として4億円から6億円という相場観を示してきたケースでは、結果的には4.5億円ほどの取引価格が落とし所となる可能性が高いといえます。

このように、M&Aアドバイザーの思惑を考慮したうえで仲介会社を利用すると、予想外の価格で取引しなければならないトラブルを避けることが可能です。

【関連】M&Aのリスクとは?売り手・買い手のリスクやリスクマネジメント方法を解説

相場から高くする方法

相場から高くする方法

M&Aによる売却価格を高めたい場合には、以下の施策を実行すると良いでしょう。

  • 複数の買い手候補と交渉する
  • 自社に魅力を感じる企業を買い手に選ぶ
  • アピールポイントを伝えて買い手に刺激を与える
  • M&A直前まで収益力を高め続ける

自社の買収価格を最終的に決めるのは、買い手側企業の判断です。買い手が高い将来性を感じる企業の買収価格は相場よりも高くなる一方で、価値を低く見積もられた企業には相場よりも低い価格が提示されます。

買い手候補の企業はそれぞれ異なる考え方や価値観のもとで判断を下すため、なるべく多くの買い手と交渉しながら、特に自社に強い魅力を感じている企業を最終的な買い手に選ぶと良いでしょう。

交渉の際には、自社のアピールポイントを積極的に伝えて、買い手の買収意欲をあおることをおすすめします。アピールポイントを伝える際は、正確かつ具体的な数値を用いると効果的です。なお、このプロセスは企業概要書という書類を用いて行うため、仲介会社に作成を依頼することをおすすめします。

合わせて、売上を落とさないよう、M&Aの直前まで収益を上げる努力を怠らないようにしましょう。M&A直前に業績が上がり買い手から評価されたことで、売却価格を高められた事例も報告されています。M&Aプロセスは長いと1年ほどかかりますが、気を抜くことなく努力を重ねるとよいでしょう。

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M&Aの相場10選

M&Aの相場10選

最後に、実際に行われたM&Aの相場を把握するために、M&A事例およびその取引価格を紹介します。今回取り上げる10のM&A事例から、実際の相場観を身に付けましょう。

①ひろぎんホールディングスによるマイティネットへのM&Aの相場

ひろぎんホールディングスは、2021年1月4日付でIT関連事業を手掛けるマイティネットが会社分割により設立する「ひろぎんITソリューションズ」を買収すると発表しました。本件M&Aの相場(買収価格)は8,000万円です。

M&Aの目的は、デジタルトランスフォーメーションが急速に進展するIT分野において顧客ニーズへの対応力を強化することです。ITコンサルティングを通じた最適なソリューションの提供・経営課題の解決支援などが図れるとして株式取得を決めています。

買い手:ひろぎんホールディングス ・資本金:6,000億円
・事業内容:
銀行その他銀行法により子会社とできる会社の経営管理・付帯関連する一切の業務
売り手:マイティネット ・資本金:2,000万円
・売上高:39億7,100万円
・事業内容:IT関連事業

②クロスキャットによるアクティブへのM&Aの相場

クロスキャットは、2020年11月2日付でアクティブを買収すると発表しました。本件M&Aの相場(買収価格)はアドバイザリー費用などを含めておよそ4億9,000万円です。

M&Aの目的は、事業を成長・企業価値を向上させることでした。経営資源の相互活用による既存ユーザー層への利便性向上および、新規ユーザー層の取込み強化によるシナジー創出などが図れるとして株式取得を決めています。

買い手:クロスキャット ・資本金:10億円
・売上高(連結):96億7,400万円
・事業内容:システムソリューション・スタッフサービス事業
売り手:アクティブ ・資本金:364万円
・売上高:11億7,600万円
・事業内容:情報処理サービス・システム開発の受託

③ピー・シー・エーによるドリームホップへのM&Aの相場

ピー・シー・エーは、2020年10月26日付でドリームホップを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)は1億811万円です。

M&Aの目的は、メンタルヘルス・健康経営領域におけるHRソリューションを強化することでした。製品開発・営業分野をさらに強化できるとして株式を取得しています。

買い手:ピー・シー・エー ・資本金:8億9,040万円
・売上高(連結):142億6,600万円
・事業内容:PCソフトの開発・販売
売り手:ドリームホップ ・資本金:1,650万円
・売上高:1億2,929万円
・事業内容:メンタルヘルス関連事業

④安江工務店によるMIMAへのM&Aの相場

安江工務店は、2020年10月14日付でMIMAを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)はアドバイザリー費用などを含めて2億6,500万円です。

M&Aの目的は、経営資源の融合によりシナジー効果を獲得することおよび、競争力の強化・シェアの拡大です。グループ全体で持続的な成長が図れると判断して、株式を取得しています。

買い手:安江工務店 ・資本金:2億4,590万円
・売上高(連結):50億5,900万円
・事業内容:
一般建築、住宅リフォーム・リノベーション
不動産の仲介・買取再販
売り手:MIMA ・資本金:1,000万円
・売上高:8億6,200万円
・事業内容:
リフォーム・リノベーション事業
不動産の売買・仲介・買取

⑤ランサーズによるイリテクへのM&Aの相場

ランサーズは、2020年10月8日付でイリテクを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)はアドバイザリー費用などを含めて2億2,600万円です。

M&Aの目的は、事業シナジー獲得により企業価値をさらに向上させることでした。運営するプラットフォーム「Lancers」において仕事を獲得できるランサー数の拡大を図れるとして株式を取得しています。

買い手:ランサーズ ・資本金:14億3,100万円
・売上高(連結):34億7,400万円
・事業内容:フリーランス・タレント・プラットフォーム事業
売り手:イリテク ・資本金:200万円
・売上高:4,400万円
・事業内容:Webサービスの開発・運営

⑥ソラストによる日本エルダリーケアサービスへのM&Aの相場

ソラストは、2020年10月1日付で日本エルダリーケアサービスを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)は23億7,500円です。

M&Aの目的は、ソラストが展開している介護サービスにおける事業所数を増加させることでした。グループ全体の事業所数をM&A前の481から600超にまで増やせるとして子会社化を決めています。

買い手:ソラスト ・資本金:5億8,300万円
・売上高(連結):957億円(2020年3月期)
・事業内容:医療関連受託事業・介護/保育事業など
売り手:日本エルダリーケアサービス ・資本金:1億円
・売上高:46億3,000万円
・事業内容:介護サービス事業

⑦じげんによるPCHホールディングスへのM&Aの相場

じげんは、2020年9月30日付でPCHホールディングスを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)は1億8,800万円です。

M&Aの目的は、介護・保育分野における事業展開を実現させることでした。人材領域における事業成長の加速化・顧客基盤の拡充などを推進できるとして株式を取得しています。

買い手:じげん ・資本金:25億5,200万円
・売上高(連結):131億9,900万円
・事業内容:ライフメディアプラットフォーム事業
売り手:PCHホールディングス ・資本金:9,000万円
・売上高:22億円(キャリアサポート)
・事業内容:キャリアサポートの事業を管理

⑧SHIFTによるホープスへのM&Aの相場

SHIFTは、2020年9月30日付でホープスを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)は30億5,800万円です。

M&Aの目的は、グループとしての成長を加速化させることでした。近年のIT業界を取り巻く「デジタルトランスフォーメーション」の流れにおいて需要が高まりつつある「ERP関連サービス」の体制強化が図れるとして株式を取得しています。

買い手:SHIFT ・資本金:4,700万円
・売上高(連結):287億1,200万円
・事業内容:ソフトウェアの品質保証・テスト事業
売り手:ホープス ・資本金:5,000万円
・売上高:50億6,900万円
・事業内容:
企業における生産・物流の機能改善
基幹情報システムの分析・改善
情報システム設計・開発・運用

⑨オークネットによるギャラリーレアへのM&Aの相場

オークネットは、2020年9月15日付でギャラリーレアを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)は5億9,900万円です。

M&Aの目的は、オークネットグループにおいてさらに収益力を向上・競争力を強化させることでした。ブランド品のグローバルな総合流通プラットフォームとして事業拡大が図れるだけでなく、投資金額の回収も十分可能であると判断して株式を取得しています。

買い手:オークネット ・資本金:17億2,900万円
・売上高(連結):196億7,200万円
・事業内容:ブランド品の買取・小売事業など
売り手:ギャラリーレア ・資本金:4,000万円
・売上高:55億300万円
・事業内容:海外ブランド雑貨や服飾雑貨の輸入・販売

⑩ブシロードによるソーシャルインフォへのM&Aの相場

ブシロードは、2020年9月1日付でソーシャルインフォを買収しました。本件M&Aの相場(買収価格)は約6,183万円です。

M&Aの目的は、ブシロードグループにおいてオンライン宣伝機能を拡充させることでした。ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、ますます重要度が増すデジタル領域のさらなる強化が図れるとして株式を取得しています。

買い手:ブシロード 資本金:約31億円
売上高(連結):330億円
事業内容:
TCG(トレーディングカードゲーム)部門
MOG(モバイルオンラインゲーム)部門
MD(マーチャンダイジング)部門
メディア部門(委員会収入管理等)
IPの企画・開発・プロデュース
売り手:ソーシャルインフォ ・資本金:1,960万円
・事業内容:Web・メディア事業

【関連】M&A成功事例とは?大手・中小企業、スタートアップやベンチャー企業のM&A成功事例を解説

まとめ

まとめ

M&Aでは多額の資金が必要になりますが、具体的な相場は取引により大きく異なります。M&Aの実施前に相場を理解することが非常に重要であることから、仲介会社などを利用して取引相場をスムーズに把握しましょう。

やみくもにM&Aの手続きを進めるのは危険です。M&Aの相場がわからなければ、買収で非常に高額な費用を要求されるおそれがあります。また、売却時には、低い金額での取引を要求される可能性があるのです。

そのため、満足できるM&Aを実現するには、相場に関する知識を身に付けることは必須といえるでしょう。M&Aの相場を理解することは、市場や自社について改めて知識知見を深める良い機会にもなります。M&Aを検討する場合は、積極的に相場情報の収集に努めましょう。

本記事の要点は下記のとおりです。

・M&Aの相場とは
→会社の譲渡・譲受に関する金額、M&A仲介会社に支払う手数料

・それぞれの立場でのM&Aの相場観
→買収側と売却側で相場に対する考え方は異なる

・M&Aの相場算出方法は?
→コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチがある

・M&A仲介会社から相場情報を集める際の注意点
→複数のM&A仲介会社から情報を得る、複数のM&A仲介会社にじかに会わない、M&A仲介会社は話を盛ることを知っておく

・相場から高くする方法
→複数の買い手候補と交渉する、自社に魅力を感じる企業を買い手に選ぶ、アピールポイントを伝えて買い手に刺激を与える、M&A直前まで収益力を高め続ける

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