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M&Aにおける公認会計士の役割・業務内容や弁護士との違いや転職に必要な能力を専門家が解説!

公認会計士は、M&Aプロセスのなかで戦略策定・バリュエーション・財務デューデリジェンスなど専門的な役割を果たします。会計に関する専門知識は、M&Aの成功を目指すうえで頼りになる存在です。本記事ではM&Aにおける公認会計士の役割や弁護士との違いを解説します。

目次
  1. M&Aと公認会計士の関係性
  2. M&Aアドバイザーとしての公認会計士の役割・業務内容
  3. M&Aアドバイザーとしての公認会計士と弁護士、税理士の違い
  4. M&A実務を公認会計士に依頼するメリット
  5. M&A実務を公認会計士に依頼する際の費用
  6. M&A実務に公認会計士が携わる際のポイント
  7. M&Aにおける公認会計士の役割・業務内容まとめ
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M&Aと公認会計士の関係性

M&Aと公認会計士の関係性を把握するために、それぞれの定義を解説します。

M&Aとは

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略称です。Mergersが合併、Acquisitionsが買収であり、会社・事業を合併・売買取引する経営戦略手法の総称といえます。最近では企業を取り巻く環境が激しく変化しており、M&Aを活用する企業が増加中です。

大企業において事業規模・範囲の拡大などをスピーディーに図る目的で活用される一方で、中小企業におけるM&A事情は異なる様相を呈しています。これには、中小企業の経営者が直面する、特有の問題が関係しています。

その結果、最近ではM&Aの取引が増えています。法律の改善や税金の割引など、M&Aをサポートする新しい制度も導入されており、今後もM&Aの取引は増え続けることが予想されます。

「我が国企業による海外M&A研究会」報告書

M&Aを活用すれば後継者不足問題も解決できる

中小企業では、経営者の高齢化が進行したことで事業承継のニーズが高まっています。しかし、最適な後継者が見つからず、なかなか事業を引き継げずに悩んでいる経営者は少なくありません。

こうした後継者不足問題を受け、中小企業ではM&Aを活用して第三者に事業承継を図る事例が増加中です。M&Aを利用すれば事業承継問題を解決できるだけでなく、当事者双方が多種多様なメリットを獲得できます。

例えば、売り手側では創業者利益の獲得・経営の安定化などがメリットになります。買い手側ではシナジー効果獲得・コスト削減などが可能です。

ただし、M&Aを成功させて上記のようなメリットを獲得するには、企業価値算定(バリュエーション)・契約書の作成・デューデリジェンス(売り手企業への精密監査)の実施など、専門知識が求められるプロセスを済ませなければなりません。

つまり、自力でM&Aプロセスを完了させることは、非常に難しいといえるでしょう。効率化を図るだけでなくスムーズにM&Aのプロセスを済ませるためにも、M&Aを実施する時は、各分野に精通した専門家に業務を委託するのが理想です。

M&Aの業務を実施する専門家はM&Aアドバイサリーと呼ばれ、弁護士・税理士・公認会計士なども該当します。これらの専門家たちが、それぞれの役割を果たすことで、M&Aは成功に大きく近づきます。

公認会計士とは

公認会計士(英語:Certified public accountant)とは、株式会社などの法人の財務状況を監査して正確性を保証する、いわば会計の専門家です。公認会計士の多くが監査法人に就き、法定監査などの、第三者の立場から企業等の財務情報の適正性を示す業務を行います。

上場企業や会社法上の大会社は、公認会計士による監査が法律により義務付けられているので、監査対象も規模の大きな企業が主になります。M&Aでは、主として買収される企業の財務状況を監査して、売買価額を決定する役割などを担う立場です。

公認会計士は、企業の経営状態を正確に把握するため、会計帳簿のチェックだけでなく、経営者から事業環境や戦略についても直接情報を収集します。企業の将来計画の現実性を様々な角度から評価するため、広範な知識が必要です。財務諸表の監査や内部統制のチェックは、企業の販売活動やコーポレートガバナンスなどにも焦点を当て、組織全体の運営が適切かどうかを検証します。

公認会計士はこれらの活動を通じて、企業の会計や経営に関する深い理解を持っており、その知見を生かして会計や財務に関するコンサルティングサービスも提供しています。これにより、公認会計士の活動範囲は非常に広く、多岐にわたる専門性を有しています。

税理士登録している公認会計士であれば、税理士と同様に税務代理業務を遂行できます。経営戦略の立案・コンサルティング業務などを実施する公認会計士もいます。

単なる会計業務のみならず、高い専門性を生かして幅広い業務を遂行する点が公認会計士の強みです。難関資格であるがゆえ、公認会計士は全国におよそ3万人程度しかおらず、多くの会社から貴重な存在だと捉えられています。報酬は比較的高額になりやすく、キャリアを積むと年収が1,000万円を超える公認会計士も珍しくありません。

公認会計士が在籍するM&A仲介会社もある

M&Aの現場でも公認会計士は重宝される存在です。最近では公認会計士が在籍するM&A仲介会社もあります。在籍していない場合でも、外部の公認会計士と提携しているM&A仲介会社がほとんどなので、どちらにしても心配する必要はないでしょう。

【関連】後継者と事業承継の現状・課題|後継者選びのポイントを解説【国のデータから分析】

M&Aで公認会計士が必要とされる理由

公認会計士が資格を得るにあたって身につけている会計や財務の知識・スキルは、M&Aの多くのプロセスにおいて親和性が高く、どれも有効に機能します。公認会計士1人でM&Aを完遂させることは無理ですが、公認会計士抜きのM&A実施も厳しいでしょう。

これが、M&Aで公認会計士が必要とされる理由ですが、求められる具体的な役割の内容は後述します。

M&Aアドバイザーとしての公認会計士の役割・業務内容

M&Aにおける公認会計士の役割は、以下のとおりです。

  1. M&A戦略・スケジュールの策定
  2. バリュエーション
  3. 財務デューデリジェンス
  4. 税務に関する助言
それぞれの役割を順番に見ていきます。

①M&A戦略・スケジュールの策定

公認会計士の役割の一つに、M&Aにおける戦略・スケジュールの策定がありますが、それぞれ分けてみてみましょう。

M&A戦略の策定

公認会計士がかかわる戦略策定の主要項目は以下の3点です。

  • 業界動向の調査
  • 目的の明確化
  • PMI(Post Merger Integration=M&A後の経営統合プロセス)

業界動向の調査は、これから始めることになる取引相手との交渉や、M&Aの売買条件を見定めるために必要なものです。M&Aを実施するにあたっては、買い手であれ売り手であれ、複数の目的があるでしょう。

それらをしっかりと明確化させておき、なおかつ、交渉を有意義に進めるため一定の優先度をつけておくことも必要になります。この2点は、公認会計士の役割として出てくるものです。

PMIとは、具体的には人事労務制度・業務システムの統合、企業風土の融合などです。コンサル的側面が強い役割となります。したがって、公認会計士の経験次第で、担当する場合としない場合とに分かれるでしょう。

M&Aスケジュールの策定

公認会計士は、M&Aのプロセス全般に携わるケースが多いため、M&Aスケジュールの策定にも重要な役割を担うことが多いです。公認会計士の監修のもとでM&Aスケジュールを策定すれば、M&Aプロセスのスピーディーな完遂につながります。

M&Aプロセス全般に携わる専門家は、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とも呼ばれます。公認会計士をFAとして起用することで、多くの側面からM&Aサポートを受けることが可能です。

②バリュエーション

バリュエーションは、M&Aプロセスの中でも重要視される業務です。バリュエーションとは、M&Aでは売り手の企業価値を評価する行為を指します。ここでいう企業価値とは、M&Aにおける買収価額を算出するための基礎となる数値です。

M&Aでバリュエーションを実施する際は、主として以下のような手法が用いられます。

  • DCF(Discount Cash Flow)法
  • 時価純資産法
  • 類似会社比準法

現在、主として採用されているのはDCF法ですが、いずれにしても高度な会計知識が必要です。公認会計士がバリュエーションを実施する際は、状況に応じて公正かつ利益を最大化させるように企業価値を算定することが求められます。

それぞれを詳しく解説しましょう。

DCF法

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)とは、「インカムアプローチ」と呼ばれる企業価値評価法の一つです。インカムアプローチでは、将来見込まれる利益や予想キャッシュフローを基に企業価値を算定します。

DCF法は、事業計画書などからその企業の将来期待される利益や予想キャッシュフローを求め、その額を適切な割引率で現在価値に割り引き企業価値を算定する方法です。

割引率は将来起こり得るリスクを考慮したうえで求めます。専門的な知識と複雑な計算が必要なため、公認会計士などの専門家でなければ算出が難しい方法です。

DCF法のように、

時価純資産法

時価純資産法とは、「コストアプローチ」という企業価値評価法の一つです。時価純資産法では、企業が保有する資産の時価総額から、負債の時価総額を差し引いて企業価値を算出します。

特徴は、有形資産だけでなく、無形資産も時価評価する点です。貸借対照表を基に算定するため、比較的簡単に算出でき、個人の主観は入りにくい点がメリットといえるでしょう。

類似会社比準法

類似会社比準法とは、「マーケットアプローチ」という企業評価方法の一つです。明確な市場価値がない非上場企業の株価を算出する際に用られ、対象となる企業と類似する上場企業の株価など複数要素から批准割合を求め、企業価値を算出します。 

しかし、対象の企業と類似する上場企業を探すのはなかなか難しく、そもそも類似した企業がないといった場合は類似会社比準法を用いることはできません。

③財務デューデリジェンス

デューデリジェンスもバリュエーションと同じように、M&Aにおける非常に大切なプロセスになります。デューデリジェンスとは、M&Aによって売却する企業の実態を詳細に調査する、買収側の行為です。

デューデリジェンスの対象分野は財務・税務・法務・人事労務などがあり、各専門家がそれぞれ調査します。会計の専門家である公認会計士は、財務デューデリジェンスが担当です。

財務デューデリジェンスは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を調査しつつ、売却企業の財務状況を確認します。収益性の確認はもちろんのこと、ここでは簿外債務や偶発債務といったリスクを洗い出すことが特に大切です。

簿外債務は貸借対照表に載っていない債務、偶発債務は将来的に債務となることが予想される要素を指します。これらの債務がM&A実施後に判明すれば、買い手企業の経営に大きな損害を与える可能性があります。極力、デューデリジェンスで洗い出さなければなりません。

財務デューデリジェンスのもう一つの目的は、売却企業の適切な売買価額を見極めることです。この点でも、公認会計士は大きな役割を担っています。

財務デューデリジェンスは高度な専門知識と経験を要するため、通常はM&Aを専門に扱うファイナンシャルアドバイザリーや会計事務所に委託されます。買収額が自社の規模に対して比較的小さい場合や自社内に買収を専門に扱う部署があり、その中に公認会計士がいる場合には内部スタッフが財務DDを行うこともありますが、これは稀なケースです。

④M&Aプロセス全体の支援

M&Aには、株式譲渡事業譲渡株式交換など、さまざまなスキーム(手法)があり、どのスキームを用いるかによって、課税対象や課税方法、課税額も変わってきます。場合によっては、有効な節税方法があるかもしれません。

本来、税理士の専門分野ではありますが、公認会計士もこれに対する助言を行える知識も十分、兼ね備えており、有用なアドバイスを与えてくれるでしょう。

【関連】M&Aのデューデリジェンスとは?目的や注意点、費用、種類、進め方を解説
【関連】M&Aの税金に関する知識!買い手・売り手の節税対策・税務を徹底解説【2024年最新】

M&Aアドバイザーとしての公認会計士と弁護士、税理士の違い

M&A実務に携わる公認会計士以外の専門家として、以下の2士業があります。

  1. 弁護士
  2. 税理士
公認会計士との違いを、それぞれ順番に見ていきます。

弁護士の役割・業務内容との違い

弁護士は、公認会計士と同じように難関資格といわれ、M&Aでも必要不可欠な役割を果たしています。公認会計士は会計の専門家ですが、弁護士は法律の専門家です。

M&Aにおける弁護士の主な役割は、M&Aの法務全般に関する業務を担います。具体的には、各種契約書作成支援や法務デューデリジェンスなどです。

M&Aプロセスでは、秘密保持契約・基本合意契約・最終契約と当事者間で多くの契約を交わします。その際、法的リスクを鑑みてM&A当事者間の利害を調整する必要があるため、弁護士の関与が重要な場面です。

特に最終契約は、用いるM&Aスキームにより記載しなければならない事項が法律で決まっているため、それらを適正に漏れなく含ませる必要があります。

デューデリジェンスとは、M&A取引の過程で行われる買収監査のことです。対象企業(基本的には売り手企業)の問題点や将来発生しうるリスクの抽出などを行います。

そのなかで、法的リスクにフォーカスして行われるものが法務デューデリジェンスです。調査対象の株式発行や取引契約書の有効性から、労働法関係のコンプライアンス、紛争・訴訟リスクに至るまで細かく調査します。

法務デューデリジェンスの項目それぞれが専門的な判断を要するため、弁護士の担う重要な業務の一つです。M&Aの手法によっては、法律・契約・許認可などの側面から規制が複雑化するケースもあるため、弁護士もまたM&Aに欠かせない存在といえます。

税理士の役割・業務内容との違い

税理士は、M&Aプロセスの中でも税務に関する業務を実施する専門家です。M&Aにおいて税理士は、主として税務デューデリジェンスの役割が顕著です。税務の専門家であることから、M&Aでの節税対策などのアドバイスも期待できます。

公認会計士の試験では税金科目が必須であり、会計監査(公認会計士の主な業務)の際も税金の知識が要求されるため、公認会計士も税制の知識はあります。しかし、税務デューデリジェンスを含む実務での税金計算や、その申告事務などは税理士の専門領域です。

中小企業がM&Aを実施する場合は特に節税対策が重要視されるため、税理士は心強い存在です。M&Aでは、取引額が大きくなりやすく、その規模により多額の税金が発生するため、税理士の協力のもと税金対策を行い手続きを進めていくことは非常に重要といえます。税理士も状況に応じて、M&Aの戦略策定といったコンサルタント業務も手掛けます。

税理士は、コストや業務の幅広さを考えると、公認会計士と比較しても頼りになる専門家です。特に、普段からビジネスで関わりのある顧問税理士がいる場合、彼らはM&Aの効率的な進行をサポートする貴重な資源になり得ます。もしM&Aを考えているなら、まずは自社の顧問税理士に相談することをおすすめします。

【関連】M&Aにおける弁護士の役割
【関連】M&Aには税理士が必要?M&Aにおける税理士の役割・報酬相場・依頼時の注意点まで詳しく解説

M&A実務を公認会計士に依頼するメリット

M&A実務を公認会計士に依頼することで得られるメリットは、以下のとおりです。

  1. 公正な買収価額を算定できる
  2. M&A専門家とのネットワークを活用できる
  3. 会計・税務について専門的見地からアドバイスを受けられる
それぞれのメリットを順番に見ていきます。

①公正な買収価額を算定できる

M&Aは売買取引である以上、買収価額を決定するときには利益相反が問題となることがあります。買い手側はできるだけ安い価額でM&Aを実施したいと思う一方で、売り手側としては高値で会社を売却したいと考えるものです。

両者の利益が異なるため、一方の意見によって買収価額が決定すれば、他方にとって不利なM&A取引となってしまいます。M&Aの買収価額を決めるときには、財務諸表ではわからない価値(のれん代)も加味しなければなりません。

そこで、会計の専門家である公認会計士がM&A取引に介在し買収価額の算定を実施すれば、公正な立場からM&Aの買収価額が適切に算定されます。

②M&A専門家とのネットワークを活用できる

M&Aに携わる公認会計士は、ほかの士業の専門家とのネットワークを持っているケースもあります。したがって、公認会計士にM&A業務を依頼すれば、弁護士や税理士などほかのM&Aに携わる専門家を紹介してもらえる可能性があります

M&Aでは専門家同士が連携してプロセスを進めていくケースが多いです。専門家同士のネットワークを活用できれば、スムーズなM&Aの完遂にもつながることでしょう。

③会計・税務について専門的見地からアドバイスを受けられる

公認会計士は会計分野の専門家であるため、M&Aの当事会社では気づけない見地からアドバイスを実施できます。M&Aの実施に行き詰まったときなどは、特に公認会計士から有益なアドバイスを受けられる可能性が高いでしょう。

M&Aの相談先は公認会計士もしくは仲介会社がおすすめ

M&Aの成功確率を高めるためには、公認会計士やM&A仲介会社のサポート・アドバイスが有用です。M&Aをご検討されている経営者様は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。

当社は全国の中小企業のM&A・事業売却に数多く携わっており、M&Aに精通したアドバイザーが専任となって、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートいたします。

通常は10カ月~1年以上かかるとされるM&Aを、成約まで最短3カ月の実績を有しており、成約までのスピードを重視してサポートしてまいります。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受けつけておりますので、M&Aをご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

④他分野の専門家を紹介してもらえる

M&Aにより決定される事項は企業価値だけでなく、以下のような事項があります。

  • 会計面
  • ビジネス面
  • 労務面
  • 法務面
  • 税務面
あらゆるシーンで専門家が必要になりますが、公認会計士はそういった専門家とのネットワークを持っていることが多いです。依頼をすれば、他分野の専門家を紹介してくれるでしょう。

M&A実務を公認会計士に依頼する際の費用

M&A実務を公認会計士に依頼する際の具体的な費用は、請け負う公認会計士によってケースバイケースです。ここでは、一般的なM&A仲介業務の相場について、各プロセスごとに紹介します。

名目 費用額 内容
相談料 0~10万円 委託契約前の相談費だが無料の場合が多い
着手金 0~100万円 委託契約時に発生するが無料の場合もあり
中間金 0~300万円 基本合意契約書締結時に発生するが無料の場合もあり
成功報酬 案件により変動 成約時に発生するがレーマン方式で計算される
バリュエーション 50万~100万円 企業価値算定時の費用
デューデリジェンス 50万~100万円 デューデリジェンス実施時の費用※買収側のみ発生
リテイナーフィー 0~数十万円 委託契約締結で発生する月額顧問料だが無料の場合が多い

近年は、完全成功報酬制の料金システムのM&A仲介会社が増えています。その場合、M&Aが成約するまで手数料は発生しません。仮にM&Aが成立しなかった場合でも、手数料は請求されません。

レーマン方式とは

ほとんどのM&A仲介会社では、M&A成約時に発生する成功報酬はレーマン方式という費用算出方法が用いられます。レーマン方式とは、基準額に対して一定の料率を掛け合わせて手数料を算定する方式です。会社によって、基準額は以下の3種類あります。

  • M&Aの成約額(≒株式価額)
  • 企業価値(株式価額+有利子負債)
  • 移動総資産(株式価額+負債総額)

基準となる額次第で手数料が変わる点には注意が必要です。一般的なレーマン方式の手数料率は以下のようになっています。

基準額 手数料率
5億円までの部分 5%
5億円超~10億円までの部分 4%
10億円超~50億円までの部分 3%
50億円超~100億円までの部分 2%
100億円超の部分 1%

【関連】レーマン方式とは?成果報酬の設定や計算方法、種類、契約書を解説

M&A実務に公認会計士が携わる際のポイント

公認会計士が一般的な公認会計士としての業務よりも、M&Aに関する業務に深くかかわりたい場合を想定し、以下3つの項目を掲示します。

  1. M&A実務に公認会計士が携わる機関
  2. 転職に求められるスキル・経験
  3. M&Aに携わる際の待遇・働き方

M&A実務に公認会計士が携わる機関

ここでは、公認会計士事務所以外に、公認会計士が在籍しM&A実務を行っている企業を見てみましょう。主に以下5種類があります。

  1. M&Aアドバイザリー・仲介会社
  2. 投資銀行
  3. 経営コンサルティングファーム
  4. 監査法人
  5. 企業の財務部門

①M&Aアドバイザリー・仲介会社

M&AアドバイザリーとM&A仲介会社の違いは、かつては、その契約形態でしたが、現状は、ほぼ同義語となっています。ちなみに、アドバイザリー契約とは、売り手か買い手のどちらかとのみ契約し、委託者の最大限の利益実現を目指すものです。

一方、仲介契約とは、売り手と買い手双方と契約し、文字どおり、その仲介役として最大公約数的に交渉をまとめる役割をします。戦略立案、バリュエーション、財務デューデリジェンスなどが主な業務です。

②投資銀行

投資銀行でもM&Aを担当する部門があります。業務形態はM&Aアドバイザリー・仲介会社と違った独特のものです。

まずは、ジュニアバンカーと呼ばれるポジションに就きます。上司であるシニアバンカーがM&A案件を獲得するための提案資料を作成します。それに付随して各種調査や分析業務などを行いながら、シニアバンカーになった暁にはM&Aプロジェクト全体のマネジメントができるようになるのです。

③経営コンサルティングファーム

経営コンサルティングファームがM&A仲介を行う際には、通常の仲介業務もさることながら、その比重は、M&Aの戦略立案やビジネスデューデリジェンス、M&A成約後のPMIサポートに重きが置かれている傾向があります。

したがって、M&Aアドバイザリー・仲介会社と比較すれば、公認会計士の知識・経験を生かした経営へのアドバイスができることが必須です。

④監査法人

監査法人とは、公認会計士法に基づき公認会計士5人以上が共同して設立する法人です。財務書類の監査又は証明を組織的に行うことを目的としています。M&Aでは、売り手企業の財務デューデリジェンスを主に担当します。

公認会計士試験に合格しても、それだけでは公認会計士を名乗れません。その後、実務経験2年と、補修所の単位取得、修了考査の合格の3つが完了してはじめて、公認会計士として登録できます。

この登録要件の実務経験2年を満たすため、多くの公認会計士試験合格者は監査法人に就職するのが一般的です。雇用形態は問われないので、非常勤でも登録要件の実務経験2年を満たせます。

⑤企業の財務部門

M&Aを有効活用し事業拡大を図っている中~大企業の財務部門は、M&A実務に関与できます。その場合、インハウス会計士として勤め、M&Aの際は当事者としてかかわることが可能です。

転職に求められるスキル・経験

バリュエーションやデューデリジェンスでは、ダイレクトに公認会計士のスキル・知識が役立ちます。それだけでも十分といえますが、さらに可能性を高めるための資格がMBA(Master of Business Administration=経営学修士)です。

国内での取得ではなく海外に留学してMBAを取得した場合には、英語などの語学力も身につけられて一石二鳥となります。それは、外資系企業の数が増えM&Aも盛んであることと、日本企業と海外企業とのクロスボーダーM&Aが増えているからです。

国内でのMBA取得の場合でも、何らかの方法で英語の語学力だけは上げておくとよいでしょう。

M&Aに携わる際の待遇・働き方

M&Aアドバイザリー・仲介会社で働く場合、大手や上場企業ではなくても年収1,000万円超の年収は難しくありません。当然、仕事もそれに見合った取引に立ち会い、担当するわけですから、充実感も得られるでしょう。ただし、激務であるため覚悟が必要です。

【関連】M&Aの依頼は誰にすれば良い?仲介会社/銀行/税理士の特徴を解説
【関連】M&Aコンサルタントとは?アドバイザリーとの違い・資格・業務内容・専門家選びのコツも解説

キャリアパスの一例

ここでは、公認会計士のキャリアパスの成功事例をご紹介しましょう。

大手監査法人から外資系投資銀行への転職
大手監査法人で、国内・米国基準の法定監査に従事。英語が堪能で、主に海外を中心としたSPCスキームの検討やデリバティブ取引の評価を担当。TOEIC800点という英語力や会計スキル、高い将来性が評価され、大手の外資系投資銀行への転職を実現。

大手BIG4監査法人から大手財務アドバイザリーファームへ転職
BIG4監査法人で、幅広い業界の企業監査に従事。ファイナンスの見識、高度な数値分析力、卓越した戦略志向などが評価され、結果的に大手の財務アドバイザリーファームへの転職を実現。

上記以外にも、以下のような成功事例があります。

  • 大手監査法人から証券会社のM&Aアドバイザリー部門への転職(30歳)
  • 大手監査法人から外資系証券会社の投資銀行部門への転職(29歳)
  • 大手監査法人から独立系M&AブティックファームのM&Aアドバイザリー部門への転職(28歳)
  • 中堅監査法人から大手総合系ファームのM&Aコンサルティング部門への転職(25歳)

M&Aにおける公認会計士の役割・業務内容まとめ

公認会計士は、戦略策定・バリュエーション・デューデリジェンスといった、M&Aの中でも重要なプロセスの役割を担っています。会計の高度な知識を持つ専門家であるため、M&Aを実施する上で頼りになる存在です。

M&Aを実施するときに公認会計士をM&Aアドバイザリーとして起用するメリットは多いため、大いに活用することをおすすめします。本記事の概要は、以下のとおりです。

〇M&Aとは
 →会社・事業を合併・売買する経営戦略手法の総称

〇公認会計士とは
 →高度な会計知識を持った国家資格者

〇M&Aにおける公認会計士の役割
 →M&A戦略やスケジュール策定・バリュエーション・財務デューデリジェンス・税務に関する助言

〇M&A実務を公認会計士に依頼するメリット
 →公正な買収価額算定・M&A専門家とのネットワーク・専門的な見地からのアドバイス

〇M&A実務に携わる公認会計士以外の専門家
 →弁護士・税理士

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トップ面談は、M&Aの条件交渉を始める前に行われる重要なプロセスです。当記事では、M&Aにおける役割や基本的な進め方を確認しながらトップ面談の具体的な内容と知識を解説します。トッ...

ディスクロージャーとは?M&Aにおける意味やメリット・デメリットまで解説!

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ディスクロージャーは、自社イメージの向上や株価の上昇を実現する目的として実施されることが多いです。 本記事では、そんなディスクロージャーの意味や種類、メリットとデメリット、実施のタイミングなど...

連結会計とは?連結財務諸表の作成方法から修正・おすすめ管理システムまで紹介!

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対象の財務諸表を連結修正を行って正しい金額(連結会計)に再計算をする必要があります。ここでは、そもそも連結会計とはどういうものなのか、連結決算には絶対必要な連結財務諸表の作成方法から連結修正の方...

【2021年最新】webメディア売却の事例25選!動向や相場も解説

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webメディアの売却・買収は、売買専門サイトの増加などの背景もあり年々活発化してきています。本記事では、webメディア売却の最新事例を25選紹介するとともに、売却・買収動向やメリット・デメリット...

会社売却でかかる税金はいくら?計算方法・税金対策をわかりやすく解説

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会社売却にかかる税金は、株式譲渡・事業譲渡といったスキームによっても違い、株式譲渡の場合は株主が個人か法人かによっても違います。この記事では、会社売却にかかる税金に関して計算方法を解説するととも...

株式譲渡と事業譲渡の違いは?税金、手続き、メリットについて解説【図解】

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M&Aの主な手法は株式譲渡と事業譲渡ですが、両者は手続き・税金・メリット・デメリットなどあらゆる点で違います。本記事では、株式譲渡と事業譲渡の違いについて図解も交えながら解説しています。...

会社を売るタイミングはいつ?業績から最適な売り時を考えて売却しよう!

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M&Aによる会社売却はタイミングが重要で、同じ会社でもタイミングの違いによって売却価格が大きく変わる可能性があります。この記事では、会社売却の適切なタイミング、会社売却のメリットや利益を...

【2021】出版業界のM&A動向と事例9選!会社売却・買収の実績を解説!

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出版業界は、電子書籍の普及と紙媒体の衰退といった大きな変化の渦中にあり、業界再編などを目的としたM&Aが活発です。本記事では、出版業界の最新M&A事例9選を紹介するとともに、出版...

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