2024年3月4日更新会社・事業を売る

M&Aの課題とは?現状と目的・対策を紹介!中小企業M&Aにおける人事・システム統合の懸念点も

M&Aを実施しようとするとき、それぞれの状況によってさまざまな課題があり、その対策が必要です。本記事では、M&Aのメリット・デメリット、M&Aの現状、M&A共通の課題・対策、M&Aの手法・目的・状況ごとの課題・対策などを解説します。

目次
  1. M&Aとは
  2. M&Aの現状
  3. M&Aの共通課題・対策
  4. M&Aのメリット・デメリット
  5. M&Aの手法別に見られる課題・対策
  6. M&Aの目的・状況別に見られる課題・対策
  7. M&Aの当事者間における課題の違い
  8. M&Aの専門家に依頼する際の課題・対策
  9. M&Aの課題は仲介会社に相談すべし
  10. M&Aの課題まとめ
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M&Aとは

まずは、M&Aの定義と、そのメリット・デメリットを説明します。

M&Aの概要

M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略称ですが、事業や会社そのものの売買取引、企業間の組織再編行為の総称です。具体的なM&Aスキーム(手法)としては、以下のようなものがあります。

資本提携は、買収や組織再編とは異なりますが、資本の移動を伴うことから広義のM&Aとされています。

M&Aの目的

ここからは、企業がM&Aを行う目的について説明します。各企業が何を目指しているのか理解することで、M&Aが成功する道筋が見えてくるでしょう。それでは、一緒に探っていきましょう。

買収側の目的

企業が他社を買収(M&A)することは、大きな投資行為です。この投資の目的はときに「時間を買う」ともいわれており、具体的には以下の7つの利益を見込んでいます。

  • 事業成長の加速や、複数の事業間で相乗効果(シナジー効果)を生むこと
  • 事業の規模や活動地域を拡大すること
  • 新しい事業に、コストを抑えて参入すること
  • 優秀な従業員を得ること
  • 必要な許可や特許を獲得すること
  • 供給チェーン(サプライチェーン)を内部で管理すること
  • 海外への進出をスムーズに行うこと

買収を通じて得られるものは、顧客や取引先、スキルを持つ従業員、技術やノウハウ、販売網、ブランドなど、事業を成長させるために必要な要素すべてです。これらを一度に獲得することで、事業の成長を早められます。売り手企業を適切に選ぶことで、相乗効果を最大限に活用できるのです。

売却側の目的

企業がM&Aで他社に買収される場合、売り手となる企業は、さまざまな目的を達成したいと考えます。その主な目的は以下の7つです。

  • 経営者が高齢化するなどで、後継者を見つけることが難しい場合、事業を円満に引き継ぐ
  • 企業を売ることで、その価格(売却対価)を得る
  • 従業員の雇用を保護する
  • 個人保証や債権、債務を解消する
  • 大手企業の経営資源を利用し、経営を安定させる
  • 利益の出にくい事業(不採算事業)を売却し、主要な事業(コア事業)に注力する
  • 新たな事業を始める

例えば、多くの中小企業では、経営者の高齢化や後継者の不在といった問題が深刻です。親族や社内から後継者を見つけるのが難しい場合でも、他社に買収されることで、事業は新たな経営者に円滑に引き継がれます。

また、売り手となる経営者は、企業を売ることでその価格(売却対価)を得ます。これは、経営者が引退後の生活資金として使うことができる大きな利点です。

M&Aの現状

現在の日本においては、毎年、記録更新するほど、M&Aの実施件数が右肩上がりです。その背景として考えられる主因には、以下の3つがあります。

  • 中小企業における事業承継M&Aニーズの高まり
  • 大企業におけるクロスボーダーM&Aニーズの高まり
  • ベンチャー企業のイグジット戦略としてのM&Aニーズの高まり

中小企業における事業承継M&Aニーズの高まり

帝国データバンクの調査では日本の中小企業の後継者不在率が60%超、つまり、多くの中小企業が廃業危機と背中合わせです。このまま廃業が多発しては、地域経済と日本経済全体にとって大ダメージになります。

そこで、国や自治体は、数年前からM&Aによる事業承継の奨励や支援を積極的に行う施策を始めました。その効果もあり、現在、後継者不在の中小企業が売り手となるM&Aが年々、増加しています。

コンサルティング会社である日本総合研究所の推計によると、日本の中小企業数の約40%に該当する138万8千社の売却候補予備軍がいるとされており、今後もM&Aの増加傾向は継続するでしょう。

大企業におけるクロスボーダーM&Aニーズの高まり

少子化で人口減少が続く日本では、どの産業においても市場縮小は避けられない事態です。そこで、資本力のある大手企業を中心に、今後の業績向上を目指して、積極的に海外市場に目を向ける動きが加速しています。

一から現地に進出するケースもありますが、手っ取り早い戦略として、海外の現地企業を買収するM&A(クロスボーダーM&A)が、以前にも増して数多く行われているのが現状です。

ベンチャー企業のイグジット戦略としてのM&Aニーズの高まり

これまでの日本では、ベンチャー企業が投資資金を回収する手段(イグジット戦略)としては、IPO(Initial Public Offering=新規株式公開)が主流でした。しかし、IPOは準備・実行に手間と時間がかかるという難点があります。

そこで、昨今のベンチャー企業やスタートアップでは、アメリカの企業などと同様に、イグジット戦略としてM&Aでの売却を選択するケースが増えてきているのです。

【関連】クロスボーダーM&Aとは?海外企業の買収メリットや手法と事例を解説!
【関連】イグジットとは?イグジットの種類とメリット・デメリット

M&Aの共通課題・対策

ここでは、M&Aにおける共通の課題・対策を掲示します。

  1. M&A先が見つからない
  2. 企業評価がうまくいかない
  3. 売り手企業の心理的問題
  4. M&Aに精通する人材の不足
  5. 既存の顧客・取引先との関係性
  6. 従業員の流出・人事評価に関する課題
  7. システム統合に関する課題
  8. 費用・キャッシュフローに関する課題

①M&A先が見つからない

上場企業と比べると、中小企業は知名度や他社との関連性が薄いため、M&Aの相手を見つけるのに難しいものがあります。M&Aの相手を見つける目的で仲介会社やマッチングサイトを利用しても、業種の限定性や収益性を理由に希望どおりの相手はなかなか見つかりません。

小規模な企業の場合、アドバイザリー起用の採算が取れないことを理由に、M&A仲介を断られるケースもあります。また、業界によってはM&A市場が売り手市場になることもあり、買い手が苦労する状況も少なくありません。

②企業評価がうまくいかない

大企業とは違い非上場の中小企業には市場株価がないため、企業評価の算定が困難です。DCF法や類似会社比準法などの専門的な方法を用いてM&A価額を算定しても、売り手の中小企業には満足いかない価額となるケースが多く、M&A交渉が白紙に戻ることが少なくありません。

また、中小企業には企業評価の知識を持つ人材がおらず、妥当なM&A価額を把握しにくいのが実情です。中小企業のM&Aでは、企業評価の課題にいかに取り組むかが重要になります。

課題を解決する手段としては、買い手と売り手の綿密なコミュニケーションや公平な第三者による企業評価が有効です。中小企業の経営者が企業評価の知識を習得することも、M&Aの課題を解決するうえで大切といえるでしょう。

③売り手企業の心理的問題

中小企業のM&Aでは、売り手企業がM&Aにネガティブなイメージを持つケースがよくあります。身売りや負け犬などのイメージをM&Aに抱く中小企業経営者は多く、M&Aの実行をためらうのです。

中小企業経営者に特有の課題を解決するには、仲介会社や商工会議所などがM&Aのマイナスイメージを払拭するようなキャンペーン実施が望まれます。M&Aのイメージを改善すれば課題は解決され、中小企業のM&Aは促進されるでしょう。

④M&Aに精通する人材の不足

M&Aに関する知識やスキルを持つ人材不足も、中小企業のM&Aの課題です。ほとんどの中小企業は、業務遂行の技術やノウハウを重視し、M&Aに対する認識や知識を持つ人材は雇用していません。

中小企業がM&Aを行う際は、知識不足の課題を認識し、経営者と担当従業員が一体となってM&Aに取り組む必要があります。

⑤既存の顧客・取引先との関係性

多くの中小企業では、経営者の人望や能力で経営が成り立っているため、M&Aで経営者が変われば取引先が契約を解除する恐れがあります。取引先を失う可能性は、中小企業が回避したいM&Aの課題です。

この課題を解決するには、取引先に不安や不信感を抱かせないように、M&Aの事由について丁寧な説明を行い、理解を得るしかありません。

⑥従業員の流出・人事評価に関する課題

M&Aの人事における課題には以下の3つがあります。

  • 人事面での融和
  • 中核人材のリテンション
  • 人事面における処遇や評価

人事面での融和

M&Aのメリットを発揮するには、売り手・買い手双方の企業の人材を融和することが不可欠です。M&Aでは、異なる組織文化にいた従業員を統合するため、人事面での融和を図りにくいという課題が存在します。

人事面での融和がうまくいかなければ、従業員のモチベーション低下や人材の流出が生じてしまうでしょう。この課題を解決するには、買い手企業が売り手側従業員に十分なオリエンテーションを行い、双方従業員の交流を図ることが有効です。

中核人材のリテンション

M&Aの成功には、売り手側の経営陣や優秀な幹部従業員など、中核人材の存在が欠かせません。M&A後に起こり得る最大の課題に、中核人材の離職があります。M&Aの成功には、中核人材の離職阻止(リテンション)をいかに実行するかが鍵です。

この課題を解決するには、中核人材の待遇を良くしたり大幅に権限を委譲したりするなどの施策が有効となります。

人事面における処遇や評価

M&Aの際、売り手側従業員の処遇や評価に関する課題が発生しやすいです。M&A前よりも処遇や評価が悪化すれば、モチベーション低下や離職が生じるおそれがあります。M&Aの買い手は、売り手側従業員に対して適切な評価や処遇を行い、統合過程で課題が生じないように努めましょう。

⑦システム統合に関する課題

昨今、クラウドシステムが一般化している中、システムの統合は重要です。M&Aにおけるシステム統合では課題が3つあります。

  • 経営陣がシステム統合の重要性を理解していない
  • IT部門責任者のリーダーシップが欠如している
  • システム統合に費やす時間が少ない

経営陣がシステム統合の重要性を理解していない

M&A後のシステム統合がうまくいかない背景には、経営陣に課題がある可能性があります。経営陣に情報システムへの知見がない場合、営業や人事面での統合ばかり重視してシステム統合を軽視しがちです。

システム統合を後回しにすれば、M&A後のシステム統合がうまくいかず、業務全体に支障をきたしてしまいます。M&A後の事業運営を円滑にするには、経営陣が課題を認識しシステム統合に主体的に乗り出すことが必要です。

IT部門責任者のリーダーシップが欠如している

M&Aのシステム統合上の課題には、IT部門責任者のリーダーシップ欠如もあります。ITに関する知識やスキルがあっても、チームをまとめるリーダーシップやコミュニケーション能力がなければ、システム統合を円滑に進められません

IT部門の責任者は、主体的にリーダーシップを発揮し、M&Aの課題解決に取り組む姿勢が肝要です。

システム統合に費やす時間が少ない

システム統合には多大な時間が必要ですが、後回しにされる傾向があります。つまり、システム統合に費やす時間が少ないことが、M&Aの課題です。システム統合が後回しになると、業務に支障が生じます。M&Aでは、システム統合も重要な課題の1つという認識を持たなくてはいけません。

⑧費用・キャッシュフローに関する課題

M&Aの買い手にとって、発生するコストは買収費用だけではありません。M&Aに直接かかわる費用としては、M&A仲介会社への手数料、デューデリジェンス(買収監査)やバリュエーション(企業価値評価)、契約書作成などで起用する士業事務所などへの手数料があります。

社内のM&A担当者の人件費、契約書の印紙税、登記変更費用、スキームや売り手・買い手の立場で内容は異なりますが、各種税金も無視できません。これらの発生費用に対処するには、買い手側のみならず、売却側の将来のキャッシュフローの把握も必要になります。

M&Aの全体費用の適切な把握、客観的な売却側のキャッシュフロー評価などを行うには、実績・知識を持つM&Aアドバイザーを起用するのが得策です。

【関連】M&A・買収後の社員モチベーションを保つには【注意点/対策方法】

M&Aのメリット・デメリット

ここからは、買収側・売却側ごとにM&Aのメリット・デメリットを順番に解説します。

M&Aの買収側のメリット

まずはM&Aの買収側のメリットです。

①経営戦略のスピード化

M&Aにより他社や事業を買収することで、経営戦略をスピーディーに遂行できます。事業規模の拡大や多角化など、すでに存在する会社や事業を買収すれば、自社で一から作り上げる労力や時間が不要です。また、時代やトレンドに乗り遅れるリスクも低減します。

買い手側にとって、時間をお金で買うM&Aは効果的な経営戦略です。

②経営資源・事業の吸収

買い手側にとってもう1つのメリットは、経営資源をまとめて獲得できることです。M&Aでの獲得が考えられる経営資源としては、以下のようなものがあります。

  • 設備・機械類
  • ブランド力
  • ノウハウ
  • 技術
  • 知的財産
  • 顧客・取引先リスト
  • 商品・サービス
  • 人材
  • 許認可

なお、上記のうち許認可については、事業譲渡など一部のM&Aスキームでは引継げないので注意が必要です。

③企業の成長・発展

一般にM&Aでは、売り手よりも買い手企業の方が規模が大きく、経営基盤も安定しています。したがって、売り手企業がそのような大手企業の傘下になることで、親会社の資本力を得て財務的に安定した経営を行えるようになるのです。

さらに、親会社やグループ会社のブランド力や技術・ノウハウなどを活用することによって、今までは実施できなかったさまざまな経営施策が可能となり、業績向上も期待できます。

M&Aの売却側のメリット

続いて、M&Aの売却側のメリットを紹介します。

①売却資金の獲得

売り手側は、M&Aにより会社や事業を売却することで、現金を得られます。多額の現金を用いて新規事業のスタート、あるいはアーリーリタイアを実現できるのです。まとまった現金を獲得できる点は、売り手側にとって大きなM&Aのメリットになります。

②中小企業の存続

中小企業の後継者不在問題を解決するために、M&Aを通じた第三者への事業承継が増加しています。後継者が不在であれば、企業の選択肢は上場、廃業、あるいはM&Aによる事業承継のいずれかです。しかし、上場は、後継者不足に悩むような規模と経営状態の企業には現実的ではありません。

廃業を選べば、社員の失業、その企業が培った技術や顧客の喪失、地域経済への悪影響などが生じます。M&Aによる事業承継は、メリットも多く現実的な選択肢です。

③従業員の雇用維持

後継者不在の中小企業の経営者がそのまま引退時期を迎えれば廃業となり、従業員は解雇となります。しかし、M&Aによる事業承継が実現すれば会社は存続するので、従業員の雇用も継続され職を失うことはありません。さらに、買い手による雇用条件の改善も期待できます。

M&Aの買収側のデメリット

次に、M&Aの買収側のデメリットを紹介します。

①のれん代に関するリスク

のれん代とは、M&Aでの売却額と売り手企業の純資産額との差額を意味します。知的財産、ノウハウやスキル、業界・会社の将来性などの無形資産への評価額を、のれん代として加味したものです。買い手は、連結財務諸表において、のれんを計上し減価償却しなければなりません。

この評価が想定どおりでなかった場合、価値の修正のため、のれんの減損処理を行うことになります。決算において減損処理は損失ですから、経営に与えるダメージは大きく、買い手としてはのれんのリスクを把握しておくことが肝要です。

②売却側の従業員が流出するおそれ

売却側の従業員によく見られる精神的な傾向として、M&Aに関する不安や買収側に対する反発などがあります。

買い手としては、M&A後の経営統合プロセス(PMI=Post Merger Integration)において、そのような売却側従業員のデリケートな心情を理解したうえで接しないと、離職が発生してしまうかもしれません。

売却側事業のキーとなる人物の離職や、大量の離職者が出た場合、事業が機能しなくなるおそれがあり、M&Aで想定した成果を得るのが困難となるでしょう。

③買収時に費用が求められる

中小企業が売り手となるM&Aの場合、よく用いられるM&Aスキーム(手法)は株式譲渡や事業譲渡です。この2つのスキームの場合、買収対価は現金が用いられます。事業譲渡では、譲渡内容に消費税課税資産が含まれていれば消費税も納付しなければなりません。

したがって、買収側としては、M&Aを実施するために相応の資金が必要です。手持ち資金で足りなければ融資などで調達するしかなく、多額の資金調達が必要なM&Aはリスクがある点も忘れてはなりません。

④想定したメリット・シナジーが獲得できるとは限らない

買い手にとってM&Aの成功とは、M&Aの成約・クロージング後、経営統合プロセス(PMI)を経て、想定した事業拡大や業績向上が達成できることです。しかし、想定したメリットやシナジー効果が創出されるかどうかは、経営統合がうまくいったうえで、市場状況などにも左右されます。

つまり、必ずしも想定したとおりの業績向上が約束されているわけではなく、その点はリスクであると言わざるを得ません。

M&Aの売却側のデメリット

最後に、M&Aの売却側のデメリットを紹介します。

①経営権の喪失

株式譲渡の場合、売り手会社の経営者は株式を売り、売却利益を獲得する代わりに経営者の権限を失います。これまで仕事や経営に生きがいを見いだしてきていた場合、喪失感から来る精神的な落ち込みは、1つのデメリットといえるでしょう。

②情報漏えいにより契約が不成立になる可能性

秘密保持契約を締結してから交渉を進めるM&Aは、基本的にM&Aが成約するまで公表しません(上場企業の場合、基本合意書締結で公表する場合があります)。M&A成約の前段階で締結する基本合意書とは、その時点での合意内容確認書であり法的拘束力がありません。

つまり、M&Aの成約は決まっていないのです。M&Aに不慣れな中小企業の場合、基本合意書締結で安心してしまい、従業員にM&Aのことを伝えてしまうケースがあります。そこから取引先など外部に情報が漏れ、それを知った買収側が激怒し、取引が破談になったケースもあるのです。

M&A実施時の情報管理を徹底しなければ、大きなリスクとなります。

【関連】エムアンドエー(M&A)とは何かを徹底解説!

M&Aの手法別に見られる課題・対策

中小企業のM&Aで用いられることの多いM&A手法に、株式譲渡と事業譲渡があります。この2つのM&A手法それぞれにおける、課題と対策を確認しましょう。なお、株式譲渡とは、売り手企業の株式を取得することで買い手がその経営権を取得するM&A手法です。

一方、事業譲渡は、売り手企業の事業、資産、権利などを選別して売買するM&A手法になります。

株式譲渡の課題・対策

株式譲渡に制限が設けられている場合、株主総会もしくは取締役会での承認がないと、株式譲渡を実施できないのでご注意ください。株式譲渡を行った場合、譲渡した株式について株式名簿を書き換える必要があります。

株主名簿の書き換えは、登記事項に含まれないため、法務局への申請を必要としません。手続きに不備があっても、M&Aは進行してしまうため、注意が必要です。手続きに不安がある場合は、M&Aアドバイザリーをはじめとする専門家へ相談するとよいでしょう。

株式譲渡は、M&A手法の中でも手続きが最も簡易である点がメリットです。しかし、そのために専門家の確認を受けずに手続きを行ってしまい、後日、ミスが発覚し、トラブルになる課題があります。

これについては、たとえ小規模なM&A取引であっても、M&A仲介会社など専門家を介して行う対策を取りましょう。

また、買い手の場合、株式譲渡は包括承継であるため、偶発債務などの簿外債務や訴訟リスクなどの経営上、ダメージを受ける事象を引継いでしまう可能性があるのが課題です。この対策としては、十分な時間を取って徹底したデューデリジェンスを行うしかありません。

事業譲渡の課題・対策

事業譲渡は、株式譲渡のように包括承継ではないため、事業に必要な許認可を取得し直したり、取引先との契約や移籍する従業員との労働契約などを全て個別に締結し直したりしなければならない点が課題です。

また、買い手が消費税課税資産も譲受する場合、事業譲渡対価以外に消費税負担も発生します。有効な対策としては、M&A手法を会社分割(吸収分割)に切り換えることです。会社分割では、売り手企業の事業部門を丸ごと買い手が承継します。

包括承継であるため、許認可も契約もそのまま引継げて、消費税も発生しないのです(一部の事業の許認可には、会社分割でも引継げないものがあります)。また、会社分割では対価として自社の株式交付が可能なため、その場合、現金を用意する必要がありません。

【関連】株式譲渡と事業譲渡の違いは?税金、手続き、メリットについて解説【図解】

M&Aの目的・状況別に見られる課題・対策

ここでは、事業承継を目的とするM&A、個人が行うスモールM&A(小規模なM&A)、知人を相手とするM&Aでの課題と対策を掲示します。

事業承継M&Aの課題・対策

後継者不在の中小企業が行うM&Aによる事業承継の課題は、実施のタイミングです。事業承継の重要性は認識しながらも、目の前の業務を優先して後回しにしてしまい、ぎりぎりのタイミングで慌ててM&A仲介会社などに駆け込むケースがよくあります。

その場合、余裕もないため、思ったとおりのM&Aが実現しないことも多いでしょう。この対策としては、とにかく、早めにM&Aの準備に着手し、余裕を持ってM&Aに臨むことです。業績の良い方がM&Aの成約確度も上がりますから、そのタイミングでのM&Aが条件面もよいものとなるでしょう。

個人によるスモールM&Aの課題・対策

スモールM&Aの金額規模に厳密な定義はなく、一般には取引金額が1億円未満程度のM&Aとされています。また、特に個人が行うような1千万円未満のM&AはマイクロM&Aとも呼ばれますが、これも厳密な定義ではありません。

スモールM&Aの課題は、個人であるため資金的余裕がなく、M&A仲介会社などの手数料負担が大きいことです。この対策としては、無料会員登録などで利用ができるM&Aマッチングサイトの活用があります。

現在、多くのM&Aマッチングサイトが運営されており、自分で使いやすいものを探してみましょう。また、M&A仲介会社の中にはスモールM&A用の手数料設定をして仲介サービスを行っている会社もあります。

ホームページなどで情報収集すれば、個人でも大きな負担とならないM&A仲介会社が見つかるかもしれません。

知人相手にM&Aを行う際の課題・対策

知人を相手とするM&Aの場合、大体は直接交渉をします。その際、知人との関係性にもよりますが、精神的に遠慮してしまう傾向があり、買い手であれ売り手であれ、思ったような交渉結果にならないことが多いようです。

その対策としては、知人が相手であるようなときこそ、M&A仲介会社を起用しましょう。M&A仲介会社を起用すれば、交渉は全てM&A仲介会社が行うので遠慮や気苦労をする必要がありません。

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M&Aの当事者間における課題の違い

M&Aする際、その過程で直面する課題は、買い手と売り手の立場によって異なります。しかし、一部の課題は共通しています。例えば、企業の価値評価(バリュエーション)や入念な事前調査(デューデリジェンス)、M&A実現後の統合作業(PMI)などです。

売り手となる企業が直面する主な課題の一つは、情報の漏洩を防ぐことです。もし合併や買収の情報が企業内外に漏れた場合、取引先が不安を感じて取引を停止してしまう可能性があります。

一方、買い手となる企業の主な課題は、適切な売り手企業を見つけることです。目指す目標や成果を得るためには、買い手企業の目的に合った売り手企業を選ぶ必要があります。このマッチングが非常に重要です。

M&Aの専門家に依頼する際の課題・対策

ここでは、M&Aの専門家に依頼する場合と依頼しない場合の課題と対策を紹介します。なお、M&Aの専門家については、一般的なM&A仲介会社(売り手・買い手の双方と契約してM&A仲介業務を行う)と、M&Aアドバイザリー(売り手・買い手のどちらか一方とのみ契約して交渉を行う)とに分けました。

M&A仲介会社に依頼する際の課題・対策

M&A仲介会社の場合、売り手・買い手の間に入って仲介を行うため、交渉がスムーズに進みやすいのが特徴です。しかし、その分、双方に妥協を求めることになり、その点が課題となります。

この妥協への対策としては、事前に条件面の優先事項を明確化し、譲れないものははっきりと告げておきましょう。

M&Aアドバイザリー会社に依頼する際の課題・対策

M&A当事者一方とのみ契約するアドバイザリーは、契約者の利益の最大化を目標に交渉を進めます。M&Aの売り手と買い手では利害が対立しますから、M&Aアドバイザリー会社の場合、M&A仲介会社よりも交渉期間が長くなりやすいのが課題です。

この対策としては、まず、全幅して任せられるM&Aアドバイザリーに依頼することとなります。また、時間がかかって焦らないように、事前に交渉期間の見通しなども聞いておきましょう。

M&Aの専門家に依頼しない場合の課題・対策

専門的な知識・経験が求められるM&Aの各プロセスを、専門家抜きで行うとする場合、それら専門的プロセスにいかに対処するかが課題です。取り得る対策としては、以下のようなものがあります。

  • 経営者自身がM&Aの知識を習得する
  • 顧問税理士などの助けを得る
  • M&Aに習熟した人物を雇用する

正直にいえば上の対策は、どれもあまり現実的ではありません。手続き上のミスなどもなく安心してM&Aを実施するには、専門家であるM&A仲介会社に依頼するのが得策だからです。

【関連】M&Aアドバイザリー契約の記載内容・締結タイミングは?契約形態、確認すべき注意点も解説

M&Aの課題は仲介会社に相談すべし

M&Aで発生する課題は、専門家であるM&A仲介会社に相談するのが最善の対策です。相談先となるM&A仲介会社選びでお困りでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。

M&A総合研究所では、専門知識・経験ともに豊富なM&Aアドバイザーが専任となり、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

随時、無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討される際には、お気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

M&Aの課題まとめ

M&Aには多くの課題があり、課題ごとに解決方法が異なります。自社の抱える課題を認識し、課題解決に向けて行動する必要があります。M&Aの課題を1つずつ解決し、最大限のメリットを得られるように努めましょう。本記事の概要は以下のとおりです。

・M&Aとは?
→事業や会社そのものの売買取引、企業間の組織再編行為の総称

・M&Aのメリットは?
→経営戦略のスピード化、経営資源・事業の吸収、売却資金の獲得、中小企業の存続、従業員の雇用維持、企業の成長・発展

・M&Aのデメリットは?
→のれん代に関するリスク、売却側の従業員が流出するおそれ、買収時に費用が求められる、想定したメリット・シナジーが獲得できるとは限らない、経営権の喪失、情報漏えいにより契約が不成立になる可能性

・中小企業M&Aの課題とは?
→M&Aの相手が見つからない、企業評価がうまくいかない、売り手企業の心理的問題、M&Aを活用できる人材の不足、既存取引先との関係性、従業員の流出・人事評価に関する課題、システム統合に関する課題、費用・キャッシュフローに関する課題

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