2021年11月28日更新会社・事業を売る

M&A実務とは?手順や内容、契約、クロージング、企業評価算定を解説

M&A実務は、企業評価、買収企業候補の選定、交渉、契約書作成など多岐に渡るため、M&A仲介会社などの専門家に委託するケースが一般的です。この記事では、M&A実務にはどのようなものがあるか、手順や内容、企業価値算定などについて解説します。

目次
  1. M&A実務の手順・フロー
  2. M&A実務における「個別相談」とは
  3. M&A実務におけるアドバイザリーとの提携仲介契約
  4. M&A実務における会社情報の提供
  5. M&A実務における企業評価算定
  6. M&A実務における買収企業候補の選定プロセス
  7. M&A実務における交渉プロセス
  8. M&A実務における基本合意契約書の作成・締結
  9. M&A実務における最終契約とクロージング
  10. M&A実務における経営統合(PMI)
  11. M&A仲介会社が行う実務
  12. M&A実務で用いる契約書・書類一覧
  13. M&A実務の理解に役立つおすすめ本・書籍
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M&A実務の手順・フロー

M&A成立までにはさまざまなプロセスを経ることになります。ここでは一般的なM&A実務の手順をみていきましょう。

  1. 事前の準備
  2. 自社の特徴の洗い出し・業務分析
  3. M&A仲介会社への相談・依頼
  4. 相手企業とのマッチング
  5. 秘密保持契約書の締結
  6. トップ面談・M&Aの条件交渉
  7. 基本合意契約書の締結
  8. デューデリジェンス(買収監査)の実施
  9. 最終契約書の締結
  10. クロージング・経営統合

①事前の準備

M&Aを行う目的は、事業規模の拡大や事業の選択と集中、事業承継など、さまざまなものがあります。自社が売り手・買い手どちらの立場であっても、M&Aを検討している段階で目的や希望条件、何を優先するかなどをまず明確にすることが大切です。

売り手の場合、可能な限り企業価値の向上を図ることも重要であり、企業価値が向上すればよりよい条件で場売却できる可能性が高くなり、また買い手候補企業もみつかりやすくなります。

たとえば、財務内容や組織体制を見直したり、決算書や財務三表(P/L・B/S・C/F)を用意したりなど、自社をより魅力的にみせるための磨き上げをしておくとよいでしょう。

②自社の特徴の洗い出し・業界分析

M&Aは、単純に会社または事業を買い手に引き継げばよいというわけではなく、売り手・買い手双方がシナジー獲得やコスト削減、事業の継続など、より多くのメリットが得られるように行うのが前提です。

そのためには最適な相手先を選ぶことが重要になるので、まず自社の特徴、強みと弱みを洗い出し、どのような相手が適しているかの検討しなければなりません。

また、自社の強みや弱みだけでなく、属している業界の特徴や動向なども分析しておくと実施タイミングを図る際などにも役立ちます。

③M&A仲介会社への相談・依頼

M&Aを進めていくうえでは、まず希望条件に合った相手先候補を探さなければならないので、自社のネットワークだけでは難しいのが実情でしょう。

また、その後の交渉や契約書などの作成などにも専門的な知識や経験が必要となるので、M&Aを行う際はM&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼するのが一般的です。

サポートを依頼するM&A仲介会社は、仲介実績や取り扱っている案件規模、担当者の知識や対応など、自社に合ったところを選ぶことが大切です。

最近では、ほとんどのM&A仲介会社が無料相談を実施しているので、上手に活用して自社に合ったところを選ぶとよいでしょう。

サポートを依頼するM&A仲介会社が決まったら、アドバイザリー契約を締結し、本格的にM&Aを進めていきます。

④相手側企業とのマッチング

M&A仲介会社とアドバイザリー契約を締結した後は、伝えていた希望条件に近い相手側企業を数社リストアップしてもらえます。

そのなかから、交渉を進めたい相手先を絞り込んだら、M&A仲介会社を通して交渉を打診をします。相手先も交渉に前向きなようであれば、次のステップへ進みます。

⑤秘密保持契約書の締結

相手企業に打診して互いが交渉に前向きであった場合、次は売り手・買い手間で秘密保持契約(NDA)を締結します。

秘密保持契約とは、M&Aに関する情報または知り得た情報を公表まで外部に漏らさない旨を約束するものです。

M&Aでは、企業の財務情報や技術・ノウハウに関する内容など、機密性の高い情報がやり取りされます。もし、これらが外部に漏洩すればM&Aの成否はもちろん、株価やその後経営にも影響を及ぼしかねません。

秘密保持契約はそのようなリスクを回避するために締結し、締結してはじめて具体的な交渉を開始することができます。

⑥トップ面談・M&Aの条件交渉

次は、売り手・買い手の経営者同士が直接顔を合わせるトップ面談の場が設けられます。ここでの目的は金額や条件などの交渉ではなく、互いの人柄や経営理念など書面ではわからない部分を確認し合い、信頼関係を構築することです。

トップ面談で互いがよい感触を得たら、金額や条件などM&A合意に向けて細かな交渉を進めていきます。交渉はM&A仲介会社が間に入り、条件のすり合わせなどをします。

⑦基本合意契約書の締結

売り手・買い手での条件交渉が進み、M&A成約に互いが大筋で合意したら、その時点までの合意内容を基本合意契約書にまとめ締結します。

基本合意契約書は本契約ではないので、それ自体に法的拘束力はなく、締結後に実施されるデューデリジェンスによって条件の変更や追加があったり、場合によっては白紙になったりするケースもあります。

記載される主な内容としては、M&Aのスケジュール・使用スキーム・予定金額・役員の移動・デューデリジェンスの進め方・独占交渉権の付与・善管注意義務などが挙げられます。

また、基本合意書自体に法的拘束力はありませんが、独占交渉権など一部事項は法的拘束力を持たせるケースが一般的です。

⑧デューデリジェンス(買収監査)の実施

基本合意契約書を締結した後は、買い手によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスは「DD」や「買収監査」とも呼ばれ、買い手が売り手企業(または事業)に対し、価格や取引について適切な判断をするために実態を調査することです。

デューデリジェンスを行う理由

買収には多額の費用が伴ううえ、買収後にリスクが発覚すれば買い手はそれを背負わなければなりません。

基本合意の時点までに買い手から情報を得ているとはいえ、客観性や信頼性の面では十分といえず、簿外債務があったり法務や労務にリスクが隠れていることもあったりすることも考えられます。

買い手はこのようなリスクを回避するため、弁護士や会計士などの専門家による調査・評価を行います。

デューデリジェンスの分析内容

デューデリジェンスでは以下のような内容について、弁護士や公認会計など専門家による調査・分析がされます。

  • M&Aの実現性
  • 適正な買収価格
  • 買収後のトラブル発生の可能性
  • 買収先の特殊事情の有無

デューデリジェンスの必須項目

デューデリジェンスの対象となる範囲は非常に広く、どこまで調査するかは買い手によっても違ってきます。しかし、以下の項目はデューデリジェンスでは必須といえるもので、どのケースでも調査されるのが一般的です。

  • 財務
  • 法務
  • 労務
財務デューデリジェンスでは、相手側企業の財務状況を調査します。貸借対象に計上されている資産の実在性、簿外債務や粉飾の有無などを調査するもので、買収金額の妥当性を評価するためにも欠かせない項目です。

法務デューデリジェンスでは、法令を遵守した経営がされているかを調査します。登記内容や契約関係、訴訟の有無などを調べます。

労務デューデリジェンスでは、就業規則、賃金や退職金の規定、有給休暇などを調査します。会社売却の場合は従業員も買い手に引き継がれるケースが大半なので、M&A実行後も継続的に優秀な人材が確保できるかという側面でも必要な項目です。

また、最近ではIT分野のデューデリジェンスが行われるケースも多くなっています。どの範囲までデューデリジェンスが行われるかは買い手次第ですが、売り手は資料の提出などを求められたら速やかに応じるようにしましょう。

デューデリジェンスを行う主体

デューデリジェンスを行う主体は買い手企業ですが、実際に財務や法務などの調査を行うのは公認会計士や弁護士などの専門家です。

また、在庫管理やIT運用状況など、ビジネスデューデリジェンスが実施される場合は、買い手企業の従業員が行うケースも多くみられます。

デューデリジェンスの結果の使いみち

デューデリジェンスは、買い手が基本合意書の条件や買収金額が妥当か、また発覚していない大きなリスクがあるかを調べるものであり、結果に問題がなければ本契約締結に向けた最終交渉へと進みます。

その際、デューデリジェンスの結果によっては買収価格が引き下げられたり、基本合意の条件が追加または変更されたりします。

もし、デューデリジェンスで重大な問題やあまりにも大きなリスクが発覚した場合、M&Aが白紙に戻る可能性もあります。

デューデリジェンスにおける課題

デューデリジェンスの課題のひとつとして挙げられるのは、売り手企業の従業員にかかる負担です。売り手は調査される側なので、買い手が求めている内容に対して正しい情報を提供しなければなりません。

資料の作成や準備、質疑応答などを通常業務と並行して進めなければならないため、従業員への負担は非常に大きなものとなります。

中小企業の場合、内部管理体制が整備されていないことも多く、買い手が求めている資料を十分に用意できないケースもあります。

資料が不足している内容が重なってしまえば、買収に関する適切に評価ができないためにM&Aを白紙に戻すという判断がなされる可能性もあるでしょう。

そのような事態にならないよう、売り手はM&Aの検討段階から必要な資料を準備しておくことが大切です。なにを用意すればよいか判断に迷う場合は、M&A仲介会社や顧問税理士や弁護士などに相談しながら進めるとよいでしょう。

また、買収価格は買い手が決めるとはいっても、必要であれば売り手は反論や交渉もでき、売却価格の調整も可能です。売り手もしっかり資料を準備しておけば、デューデリジェンスの結果だされた価格の妥当性が判断できるようになります。

⑨最終契約書の締結

最終契約書には、デューデリジェンスの結果をもとにM&Aの最終条件や価格などが記載され、すべての事項に法的拘束力があります。

記載される事項は、M&Aの条件、売却価格と支払い方法、役員および従業員の処遇、退職金の処理方法、連帯保証や担保提供の引受(あるいは解除)、保証債務の処理方法などです。

締結と並行して、スケジュールの調整、株券の準備、M&A後の引継ぎ計画なども進めていきます。

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⑩クロージング・経営統合

クロージングでは、売り手が株式または事業を引き渡し、買い手は代金の決済手続きをします。M&Aの最終契約締結後からクロージングまでは一定期間空けることが一般的です。

クロージングを行うための前提条件が最終契約書で決められているため、これを満たさなければクロージング手続きに移行することはできません。

この条件を満たすための期間として、最終契約締結からクロージングまでに一定期間を空け、クロージングをもってM&Aは完了となります。

クロージングによってM&Aの手続きは完了となりますが、その後は経営統合に向けた業務をしっかり進めなければシナジーを最大限に得ることはできません。

この作業は買い手だけでなく売り手の協力も必要な事項も多いので、どのように進めていくかをよく協議しておくことが大切です。

このようにM&Aが完了するまでには多くの実務があり、専門的な知識が必要な場面もでてきます。計画的かつ抜けや漏れがないように進めるためにも、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けることをおすすめします。

M&A総合研究所には多数の専門知識と豊富な経験を持ったアドバイザーが在籍し、これまでに培ったノウハウを活用しながらM&Aをサポートいたします

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)

無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

M&A実務における「個別相談」とは

M&A実務における「個別相談」とは

M&A実務における個別相談とは、M&Aアドバイザリーと呼ばれる専門家に相談することです。M&Aのプロセスの中で一番初めに行う実務です。個別相談は電話でも可能ですが、M&Aアドバイザリーが現地に赴いて、直接相談に乗ってくれるケースもあります。

しかし、この段階ではまだ自社の情報を開示したくないという経営者もいるでしょうが、その場合は匿名でも相談できる場合があります。一般的な個別相談では、M&Aの基本的な流れ、会社の売却価格、同じ業界におけるM&Aの動向を相談します。  

売却価格について相談した場合、簡易的な企業評価や売却可能性やM&Aの動向などについて、M&Aアドバイザリーが過去のM&Aの事例を踏まえて検討してくれます。なお、個別相談は売り手だけではなく買い手も対応してもらえます。

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M&A実務におけるアドバイザリーとの提携仲介契約

M&Aアドバイザリーとの提携仲介契約

次に、具体的なM&A実務をM&Aアドバイザリーに依頼する場合には、M&Aアドバイザリーと提携仲介契約を締結します。M&Aアドバイザリーとの提携仲介契約では、主に以下の内容を定めます。

  • M&Aアドバイザリーの役割
  • 実務に関する業務内容
  • 実務遂行に要する費用
  • 契約期間

気になる点や不明点は、契約締結の前に質問してクリアにしておきましょう。特にM&A実務の遂行に要する費用は重要です、なぜなら、各M&Aアドバイザリーによって、マイルストーン型や完全成功報酬型などと必要費用(手数料)の体系が異なるからです。

そのため、M&Aに必要なコストにM&Aアドバイザリーへの支払いを含めておくようにしましょう。

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M&A実務における会社情報の提供

M&A実務における会社情報の提供

M&Aアドバイザリーと契約を締結したら、M&A仲介会社に自社の情報を提供します。具体的には、M&A実務を行ううえで必要な膨大な書類を提出します。これは買い手企業に自社の情報を伝える目的があります。

M&A仲介会社はその書類をもとに、買い手側へのプレゼン資料などM&A遂行に必要な書類を作成します。M&A仲介会社から求められた資料は迅速に提出するようにしましょう。なぜなら、買い手候補の企業からの印象が良くなる可能性が高くなるからです。

ただ、最初から必要な書類が全てそろっているケースは珍しく、実際にはなかなか難しいものです。M&Aアドバイザリーとよく話し合いながらしっかり練り上げていきましょう。

また、会社を買収したい会社もM&Aアドバイザリーから情報の提供を受けることができます。この場合、M&Aアドバイザリーに直接相談する以外にも、M&Aプラットフォームを活用するという方法もあります。

M&A総合研究所が運営するM&Aプラットフォームには豊富な案件が掲載されています。独自AIの活用による高精度のマッチングを実現しています。

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M&A実務における企業評価算定

M&Aにおける企業価値とは、事業の将来性や資産並びに負債、収益性、取引先などさまざまな構成要素を総合的に評価したものをいい、バリュエーションと呼ばれることもあります。

企業価値はM&Aの価格を交渉する際のベースとなる重要なものであり、数種類ある算出方法から自社に合った1つまたは複数を組み合わせて求めます。

企業価値評価を行う理由

市場の株価とは違い、M&Aの企業評価では対象企業の強みや弱み、将来性なども加味されます。算定時は、その企業(または事業)の将来性、資産や負債、収益性、どのような取引先を持っているかなど、あらゆる要素を分析して総合的に評価します。

M&Aでは対象企業の将来性やノウハウなどの無形資産(のれん)も対象企業の価値とみなされ、取引価格にも影響するため、専門家による正しい企業価値評価は非常に重要です。

企業価値評価の方法

企業価値を評価する方法には、大きく以下の3つがあります。ここでは、各方法にどのような特徴があるのかをみていきましょう。

  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ
  • コストアプローチ

マーケットアプローチ

マーケットアプローチでは、株式市場での時価をベースとして企業価値を評価します。市場価値を基本にしているので客観的かつ構成に評価ができる方法です。

マーケットアプローチの主な評価方法は、市場株価平均法・類似会社比較法・類似取引比較法の3つがありますが、類似取引非核法は実務上あまり用いられることはありません。

評価をする際は、対象企業が上場していれば株式市場の時価、非上場の場合は業種や形態が類似している企業の株価をベースに算出します。

ただし、株価市場では一時的に株価が異常に値上がりまたは値下がりすることもあるので、一時的な要因を除外できるよう一定期間の平均値をとるなどが必要になります。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、売り手企業の収益力を基本に、企業価値を評価する方法です。DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法・収益還元法配当還元法があり、なかでもDCF法は多く用いられる方法です。

DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法では、売り手企業に期待される将来のキャッシュフローを、一定の割引率を使って現在の価値に減額修正して株価を算出します。

詳細なキャッシュフロー計画に基づくいて算出するため、変動要素の影響を加味したシミュレーションをするなど評価が柔軟にできるのが特徴ですが、将来的なキャッシュフローには少なからず主観要素が入る点が注意点として挙げられます。

コストアプローチ

コストアプローチとは、売り手企業の純資産を基本に企業価値を評価する方法です。賃借対照表に基づき資産や負債の価値を算定し、企業価値として評価します。

時価純資産法と簿価純資産法の2種類があり、実務においてよく用いられるのは時価純資産法です。賃借対照表をベースとするため将来の収益力は加味されません。

そのため、対象企業が永続することを前提とする場合は、ほかの算出方法も併用しないと合理的な数値にはなりにくいことが注意点です。

企業価値評価を成功させるポイント

前述した3つの方法によって得られる評価結果は、必ず一致するとは限りません。

というのは、コスト・アプローチは将来価値が加味されないため評価額としては最も低くなり、マーケットアプローチは株式市場での価格をベースとするので本当の企業価値とはかけ離れた数値になるケースも考えられます。

また、インカムアプローチでは主観的要素が入りやすく恣意的な評価になることもあります。それぞれのアプローチで算出した結果で生じた差には合理的な説明が必要であり、もしその説明が難しい場合は算出過程に誤りがあることも考えられます。

企業価値評価を担う専門家

企業価値評価には複数の方法がありますが、どの方法を用いればよいかを判断するためには専門的な見解が必要です。

また、算出をするうえでも高度な知識が必要となる場面があるため、適性な評価をするために専門家に依頼するのが一般的です。企業価値評価を担う専門家としては、公認会計士、M&A仲介会社や証券会社などがあります。

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M&A実務における買収企業候補の選定プロセス

M&A実務における買収企業候補の選定プロセス

次に、企業評価や特性や業界の動向をもとに、買い手候補となる企業を選定します。買い手候補選定のプロセスを大まかにいうと以下のとおりです。

  1. 買い手候補企業の絞り込み
  2. 提案の優先度のランク付け
  3. 買い手候補企業への提案
  4. 買い手候補企業との秘密保持契約の締結

①買い手候補企業の絞り込み

買い手先への交渉にあたって、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーは、データベースや金融機関や会計事務所の推薦などのさまざまなエビデンスをもとに、買い手候補の企業を絞り込みます。

なお、最初の段階で希望の条件を伝えておけば、それらを考慮した絞り込みを実施できるため、できる限り早く希望条件を固めるようにしましょう。

②提案の優先度のランク付け

次に、絞り込んだ買い手候補に提案する優先度をつけたリストを作成します。一般的な実務では、シナジー効果、マッチングの成立のしやすさなどM&Aの成功に重要な要素を総合的に判断したうえで優先度を付けます。 これによって、買い手候補の交渉を効率的に進めやすくなります。

③買い手候補企業への提案

②で作成した優先度リストを用いて、実際に買い手候補へ提案を行います。買い手候補への提案を行う際は、匿名で資料を提出することも可能です。M&Aの提案に用いられる匿名資料は、「ノンネームシート」と呼ばれます。

M&Aの実務では、まずノンネームシートで買い手候補に提案することが一般的です。

④買い手候補企業との秘密保持契約の締結

③の提案の結果、買い手候補がM&Aの検討を進めたいということになれば、売り手・買い手企業同士で秘密保持契約を締結します。秘密保持契約とは、M&Aに関して知り得た相手の情報を、外部に漏らさない旨を約束する契約です。

M&Aでは、非常に機密性の高い情報のやり取りが頻繁に発生します。仮にそのような情報の漏えいが起こると、M&Aの交渉の決裂や株価や経営そのものに悪影響が及ぶおそれもあります。

そのようなリスクを防ぐために事前に秘密保持契約を締結します。これを締結して初めて、M&Aの交渉実務を開始できます。

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M&A実務における交渉プロセス

M&A実務における交渉プロセス

売り手・買い手間で秘密保持契約を締結したら、いよいよ本格的にM&Aの交渉が始まります。まず、互いの経営者による面談を行います。この面談では互いの価値観や経営ビジョンなどを確認します。その後、買収価格や従業員の処遇など具体的な部分を詰めていきます。

買収価格の算出は売り手側だけでなく買い手側でも改めて実施するのが一般的です。基本的な部分に合意できたら、基本合意契約を締結します。

基本合意契約の締結後、M&Aでも特に重要となるデューデリジェンスと呼ばれる実務を行います。デューデリジェンスとは、売り手企業を買い手企業が詳細に調査する実務です。デューデリジェンスでは、財務やビジネス、法務などさまざまな角度から調査を行います。

デューデリジェンスの実施によって、潜在的なリスクや期待できるシナジー効果を明確化できます。デューデリジェンスには高度な専門知識が必要になるため、税理士や弁護士など各分野の専門家に任せましょう。

デューデリジェンスをいかに徹底的にやるかでM&Aの成功は左右されるため、M&Aを成功させたい場合、時間をかけて丁寧に行いましょう。

買い手企業は、デューデリジェンスの結果をもとに、M&Aの取引価格を正式に決定します。そして売り手企業が合意すれば、晴れて最終契約を締結する流れになります。

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M&A実務における基本合意契約書の作成・締結

M&Aの交渉が進み、売り手・買い手がM&Aの条件や価格で大筋合意した段階で、基本合意契約書を作成し締結します。

この章では、M&A実務における基本合意契約書の作成・締結について、主な目的な記載内容などをみていきましょう。

基本合意契約書を作成する理由

基本合意契約書は、買い手企業から提示された買収の基本条件などを含め、売り手企業も了解済の事項を確認する目的で作成・締結されます。

また、基本合意契約書自体に法的拘束力はありませんが、独占交渉権など一部内容のみ法的拘束力を持たせるのが一般的です。

基本合意契約書の記載内容

基本合意契約書に記載する主な内容には以下のようなものがあります。先に述べたように、基本合意契約書そのものに法的拘束力はありませんが、独占交渉権の付与などの一部事項には法的拘束力を持たせるケースがほとんどです。

  • 法的拘束力
  • 双方が合意した基本条件
  • スケジュール
  • デューデリジェンスへの実施・協力義務
  • 費用分担
  • 独占交渉権の付与
  • 有効期間
  • 準拠法並びに管轄

基本合意契約書の作成を支援する専門家

基本合意契約書は、M&A工程のなかで最終契約の前段階に取り交わす重要なものです。独占交渉権への法的拘束力や、その拘束力の範囲をどこまでとするかなど、法律の知識が必要な部分も含まれます。

そのため、基本契約書を作成する際は、弁護士など専門家のサポート下で進めていくこととなります。

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M&A実務における最終契約とクロージング

M&A実務における最終契約とクロージング

デューデリジェンスの結果を確認し、M&Aの条件や細目に問題がなければ最終契約書を作成し、経営権の移転を完了させる手続きであるクロージングを実施します。

最終契約書の記載内容

売り手側と買い手側が本契約にあたり条件に合意すると、最終契約書を作成・締結します。最終契約書には以下のような内容が記載されるのが一般的です。

  • M&Aの対象となる権利やモノ
  • M&Aの売却価格
  • 退職金の処理について
  • 役員並びに従業員の処遇について
  • M&A取引金額の支払方法
  • 連帯保証並びに担保提供の引き受けと解除方法
  • 保証債務の処理について
上記の内容が記載された最終契約書の締結によって譲渡価格並びに条件、クロージング条項が規定されます。また最終契約書には「株式譲渡契約書」「事業譲渡契約書」「総株引き受け契約書」「合併契約書」などの種類があります。

最終契約書の締結を支援する専門家

M&Aにおける最終契約書いは、法的拘束力があります。また記載事項の中に補償条項が加えられるため、M&A仲介会社だけでなく、弁護士などの専門家に支援を受けて進めていくものです。
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M&Aのクロージング

M&A実務における経営統合(PMI)

M&A完了後に気を付けておきたいのがアフターM&A(PMI)です。アフターM&AはM&A案件が成約した後に具体的な経営統合を進めていく実務ですが、意外とおろそかにされやすいものです。

そもそもM&Aはこなすべき実務が多く、手法によって手順が変わることもあり、より煩雑になることもあります。

そのため、実務をこなすことで精いっぱいになってしまい、アフターM&Aをやる気力や体力がなくなってしまったり、適当に片づけてしまったりすることも珍しくありません。

アフターM&Aは、M&Aで得られるシナジー効果を最大限発揮するうえで重要な実務であり、決しておろそかにできるものではありません。

アフターM&Aに失敗してM&Aが台無しになってしまうことも珍しくないため、M&A完了後も油断しないように注意しておきましょう。

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M&A仲介会社が行う実務

M&A仲介会社が行う実務

提携仲介契約の締結後、M&A仲介会社はクライアントのために実務に取り掛かりますが、具体的にどのような実務を行うかは、提携仲介契約の内容によります。

マッチングを行う契約であれば、クライアントである会社に見合った会社を探し出し、M&Aの交渉を行うベースを固めてくれます。また、具体的な交渉なども行うM&Aアドバイザリー業務が契約の範囲であれば、M&A仲介会社は交渉のサポートまたは代理で交渉をしていきます。

さらに、デューデリジェンスやアフターM&Aなど、M&A周りの実務を全般的に請け負ってくれるM&A仲介会社もあります。

M&Aの実務は、M&A仲介会社に全て任せてしまった方が安心といえますが、任せきりにしてしまうと、依頼主の意向に沿わないような交渉を進めてしまうことがあります。

M&A仲介会社のサポートを得る際には、しっかりと自分の意思や目的を伝えて必要なコミュニケーションを怠らないようにし、交渉の手綱を取るようにしましょう。もちろん、実績と報酬が釣り合っており、信頼性も高いM&A仲介会社を選ぶことも重要なポイントです。

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M&A実務で用いる契約書・書類一覧

M&A実務で用いる契約書や書類はたくさんありますが、主なものには以下が挙げられます。いずれもスムーズにM&Aを進めるために必要となるものなので、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けて作成・締結しましょう。

  • 秘密保持契約書
  • アドバイザリー契約書
  • ロングリスト
  • ショートリスト
  • 企業概要書
  • デューデリジェンス関連の書類
  • 最終契約書
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M&Aで必要な契約書について徹底解説【ひな形サンプルあり】

M&A実務の理解に役立つおすすめ本・書籍

M&A実務のおすすめ書籍

M&Aの実務についてしっかり学んでおきたいという方は、M&Aの実務について説明した書籍を購入しておいてもいいでしょう。おすすめの書籍は以下のとおりです。

  1. Q&Aでよくわかる 中小企業のためのM&Aの教科書
  2. M&A実務のすべて
  3. 企業買収の実務プロセス
  4. M&A実務ハンドブック
  5. M&A実務の基礎

①Q&Aでよくわかる 中小企業のためのM&Aの教科書

「Q&Aでよくわかる 中小企業のためのM&Aの教科書(篠田康人〔著〕)(2016年)」は中小企業の経営者の方におすすめです。

新品でも1,600円程度で購入できるうえに、具体的な体験談に基づいて簡潔にまとめられているため、非常に読みやすい構成になっています。中小企業の経営者の方がM&Aの知識や実務に関する情報を知る入門書としてちょうどいいレベルのものといえます。

②最新版 M&A実務のすべて(2019年)

もう少しM&Aの実務について踏み込んだ情報が欲しければ、本書がおすすめです。

監査法人トーマツの会計士による共著で、財務や税務など専門的な知識を踏まえた内容になっており、M&Aの実務についてより詳しく学べます。

③企業買収の実務プロセス〔第2版〕(2017年)

買い手企業の担当者の目線でM&Aを行うポイントを時系列で解説しているのが本書です。

市場環境の変化や裁判判例なども踏まえており、見落としがちなM&Aの実務に影響を与える法改正をフォローしているので、最新の実務を学べます。

④M&A実務ハンドブック〔第8版〕(2019年)

初版が2000年で、それ以降もM&Aの実務を解説した本の中でもとりわけ長く読み継がれているタイトルです。版を重ねるごとにしっかりと最新の情報を取り入れており、M&Aの実務を広く網羅しています。

そのため、500ページを超えるボリュームになっていますが、図解を用いてわかりやすく実務を解説してくれています。

⑤M&A実務の基礎〔第2版〕

本書は主に法律の面からM&Aの実務を解説していて、法務担当者におすすめです。M&Aにはさまざまな法律が関わっているので、全て把握するのはなかなか困難です。本書は契約条項だけにとどまらず、労働法、独禁法、金商法なども網羅し、丁寧に説明されています。

今回ご紹介した書籍以外にも自分に合った書籍を探してみることもおすすめです。また、書籍だけでなく、M&Aアドバイザリーや税理士事務所、公認会計士事務所などのWebサイトでもM&Aの実務や手法ごとの内容などをわかりやすく解説しているケースがあります。

自分に合った方法で、M&Aに必要な知識を的確に学んでおきましょう。

※関連記事
M&Aおすすめの本・書籍とは?本・書籍で学びたい内容、勉強方法もご紹介
M&A勉強方法とは?勉強方法の種類や注意点、メリット・デメリットをご紹介

まとめ

M&Aに至るまでにはさまざまなプロセスがあり、それに伴う実務も多岐にわたります。M&Aを円滑並びに抜け漏れなく進めるうえで、M&A仲介会社や各種専門家の支援は欠かせません。
しかしM&A実務を進めるにあたり任せきりにするのではなく、会社が深くかかわる内容や手順を知っておくことは大切です。
【M&Aの実務の手順・フローのまとめ】

  1. 事前の準備
  2. 自社の特徴の洗い出し・業界分析
  3. M&A仲介会社への相談・依頼
  4. 相手先企業とのマッチング
  5. 秘密保持契約書の締結
  6. トップ面談・M&Aの条件交渉
  7. 基本合意契約書の締結
  8. デューデリジェンス(買収監査)の実施
  9. 最終契約書の締結
  10. クロージング・経営統合

【M&Aにおける契約とは】

  • 基本合意契約とはM&Aを進める仮契約
  • 最終契約とはM&Aの本契約

【M&Aにおけるクロージングとは】

  • 株式または事業の譲渡並びにそれに伴う代金決済などの手続きのこと

【M&Aにおけつ企業評価算定とは】

  • 売り手側の売却価格の算定のベースとなる企業評価を行うこと
  • 現況だけでなく、将来性も加味しながら、さまざまな方法で総合的に評価する

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