2023年8月31日更新会社・事業を売る

M&Aアドバイザリーの重要性とは?業務内容やM&A仲介との違い・選び方を解説

M&Aアドバイザリーとは売り手・買い手いずれか片方と契約し、依頼者の利益最大化を目指して支援を行うM&Aを専門に扱う事業者です。この記事では、M&Aアドバイザリーの重要性や業務内容、M&A仲介会社との違いを解説します。

目次
  1. M&Aアドバイザリーとは?
  2. M&Aアドバイザリーの役割
  3. M&Aアドバイザリーの業務内容
  4. M&Aアドバイザリーの手数料
  5. M&AアドバイザリーとM&A仲介会社の違い
  6. M&Aアドバイザリーを活用するメリット
  7. M&Aアドバイザリーを活用するデメリット
  8. M&Aアドバイザリーを選ぶ際のポイント
  9. M&Aアドバイザリーを行う企業の業態
  10. 中小企業向けM&Aアドバイザリーを行っているおすすめのM&A仲介会社
  11. まとめ
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M&Aアドバイザリーとは?

M&Aアドバイザリーとは、売り手あるいは買い手のどちらか一方と契約し、依頼者の利益最大化を目標にM&A支援を行う業態のことです。

M&Aアドバイザリーは、M&A工程のスケジューリング・企業価値評価(バリュエーション)・M&Aスキーム選定のアドバイス・交渉・契約書作成・クロージングなど、M&Aにおける一連のプロセスを管理して取りまとめる役割を担います。

M&Aアドバイザリーの種類

M&Aアドバイザリーには、以下の3種類があります。
 

  1. 財務アドバイザー (Financial Advisor=FA)
  2. 法務アドバイザー (Legal Advisor)
  3. 会計・税務アドバイザー(Accounting Advisor/Tax Advisor)


これら3種類の違いを知って、適切なM&Aアドバイザリーに相談することがポイントです。まず財務アドバイザーは、バリュエーションやクロージングなどM&A業務全般を遂行するM&Aアドバイザリーのことになります。

次に法務アドバイザーとは、株式譲渡契約書などの各種契約書作成に長けたM&Aアドバイザリーです。一般的に、弁護士が就任するケースが多いといえます。最後に会計・税務アドバイザーとは、M&Aの会計・税務分野に関してアドバイスを提供するM&Aアドバイザリーです。一般的には会計士および(または)税理士が就任します。

以上が主なM&Aアドバイザリーの種類です。

M&Aには専門的な知識が必要となるので、複数種類のM&Aアドバイザリーを使い分けることが大切な要素となります。なお基本的には、最も業務範囲の広い財務アドバイザーをさして、M&Aアドバイザリーと呼ぶことが多いです。

M&Aアドバイザリーの業務範囲は広く、幅広い知識と能力が必要とされます。またM&Aアドバイザリーの仕事は、「財務会計・税務・法律のるつぼ」とも表現されます。

また財務会計・税務・法律の他に、交渉やファシリテーションなどのコミュニケーション能力も必要とされます。

M&Aアドバイザリーの重要性

M&Aは、必ずしもM&AアドバイザリーやM&A仲介会社など、専門家による支援を受けなくてはならないわけではありません。

M&Aの当時会社間で直接交渉を進めてM&A取引を完了させることも不可能ではありませんが、M&A実務においては税務・財務・法務などの専門知識が必要となる場面が多々あります。

また、満足度の高いM&Aを実現させるためには交渉力も不可欠です。特に売り手企業は初めてM&Aを行うケースがほとんどですが、専門家を介さずに買い手企業と直接交渉を進めてしまうと、一方的に不利な条件でM&Aが成立してしまったり、相場より安値で売却してしまったりという事態も考えられ、最悪の場合はM&A自体が破談となるおそれもあります。

また、M&Aを進めるうえでは自社の秘密情報を相手企業へ開示しなければなりませんが、その際に結ぶ秘密保持契約はどの範囲とするのか、期間はどのくらいに定めるか、損害賠償はどうするかなどを決め、情報漏洩のリスクに備えておかなければなりません。

もし秘密保持契約を交わさなかったり、範囲が適切でなかったりすれば、自社の重要な情報が外部に漏洩し、企業価値を損ねる恐れもあります。

ですが、交渉や情報漏洩リスクへの対応を当時会社が自身で安全に進めることは非常に難しいのが現実です。リスクを最小限にとどめ、納得のいくM&A成立を目指すことがM&Aアドバイザリーの役割であり、利用する当時会社にとっての大きなメリットといえるでしょう。

【関連】M&Aとは?M&Aの意味から手続きまでをわかりやすく解説!

M&Aアドバイザリーの役割

M&Aにおいて、M&Aアドバイザリーはどのような役割を担うのでしょうか。ここでは、買収側・売却側それぞれの立場から、M&Aアドバイザリーが担う役割を解説します。

買収側の利益最大化

買収側の支援を行うM&Aアドバイザリーが担う役割には、主に以下の2つです。

適正な買収価額

適正な買収価額の提示や助言を行うことは、M&Aアドバイザリーが担う重要な役割です。M&Aアドバイザーは依頼者の利益最大化を目指してM&Aを支援しますが、適正な買収価額でM&Aが成立しなければ買い手の利益最大化を見込むことはできません。

「高値掴み」と呼ばれる評価額以上での買収は、投資額を回収できないおそれもあります。そのため、売り手企業の事業計画や将来の収益性、市場環境や競合他社の存在、過去のM&A実績など、さまざまな要素を加味して適正な買収価額範囲を提案することがM&Aアドバイザリーの重要な役割です。

買収後のシナジー効果

M&Aはクロージング後に想定していたシナジーが十分発揮され、事業(企業)が成長して初めて成功したといえるものです。そのためには、よりシナジー効果が見込める企業を買収対象に選ぶ必要があります。

買い手企業の有する技術・ノウハウなどを考慮したうえで、買収後により大きなシナジー効果に期待できる企業を選定しマッチングを行うのもM&Aアドバイザリーが担う役割です。また、想定されるシナジーを発揮させるための具体的な助言を行います。

売却側の利益最大化

売却側の支援を行うM&Aアドバイザリーが担う役割には、主に以下の2つがあります。

高い売却金額

高い売却価額でのM&A成立は、売り手企業の利益最大化で最も重視されることが多い点です。この場合に重要なのは成立したM&A価額ではなく、税金がひかれた後の手取額であるケースが大半ですが、使用スキームによって税金の種類や税率が変わります。

たとえ高い売却価額が実現できても、税負担が大きく手取り額が少なくなるスキームを用いていれば、売り手側の利益が最大化されたとはいえません。

M&Aアドバイザリーは、M&A後の手取り額も考慮したうえでより有利となるスキーム選定の助言をしたり、交渉を進めたりする役割を担っています。

希望条件の実現

従業員の雇用継続や事業の拡大・成長など、M&Aに希望する条件は売り手企業によって違います。M&Aアドバイザリーは、依頼者である売り手企業の希望条件が交渉できる買い手候補企業を探し、M&A成立に向けて交渉を進めることも重要な役割です。

M&Aアドバイザリーの業務内容

M&Aアドバイザリーの代表的な業務内容には、以下のようなものがあります。

M&A戦略の策定・スケジュール立案

M&Aを成功させるためには戦略策定が重要ですが、そのためには「M&Aで実現したいことはなにか」「会社をどのように成長させたいのか」の明確化することが必要です。

M&Aアドバイザリーは経営者(あるいは経営陣)と同じ視点にたち、経営戦略との整合性や買収対象となる企業の選定基準を検討し、M&A戦略を策定します。

その際に、もしM&Aが最善策でないと判断した場合は、M&Aアドバイザリーがほかの方法を提案することもあるでしょう。そして、M&Aを実施すると決まったら、M&Aアドバイザリーは全体のスケジュールを策定してM&A成約に向けて立案し、プロジェクトを管理・進行します。

M&A相手探し

M&Aアドバイザリーの業務内容としてまず挙げられるのが、M&Aの相手探しです。M&Aの当時会社が自身で候補先を探すことは範囲が限定されてしまい難しいケースが多いため、ほとんどのケースでM&Aアドバイザリー・M&A仲介会社・M&A支援を手掛ける金融機関などに依頼して候補先を探します。

依頼者(契約した売り手・買い手のいずれか)の希望条件や想定されるシナジー効果を考慮し、自社に蓄積されている買収先あるいは売却先リストなどから候補先企業をリストアップし、候補先が決まったら相手先へ交渉を打診するのはM&Aアドバイザリーが担う役割のひとつです。

また、交渉先が決まったら企業名や詳細な事業内容などの情報開示へ進みますが、その際に行う秘密保持契約締結の書面作成などの支援もM&Aアドバイザリーが担います。

企業価値算定・買収金額に関する助言

M&Aアドバイザリーの依頼者が買い手側である場合、適正な買収金額でなけれな利益最大化が見込めないため、売り手企業に対する企業価値算定(バリュエーション)が非常に重要です。

企業価値の算定方法にはいくつかの種類があり、どの方法を選択するのかによって評価額が大きく変わることもあります。もし企業価値に見合わない高額買収を行えば、上場企業の場合は株主から善管注意義務違反などで損害賠償請求されるおそれもあるでしょう。

このような理由から専門家による企業価値算定は不可欠であり、企業価値算定や買収価額に関する助言はM&Aアドバイザリーが担う役割のなかでも重要なものです。

デューデリジェンスのサポート

デューデリジェンスとは、調査対象企業を財務・税務・法務・人事などのさまざまな面から調査し、事前に提出された資料の正確性や潜在リスクの有無および程度などを把握するために行われます。

一般的には買い手企業が売り手企業に対して調査を行い、買収の可否や価額の妥当性などを判断することが目的です。各分野の調査は専門家によって行われ、調査範囲により弁護士・会計士・税理士などに依頼をします。

M&Aアドバイザリーは、デューデリジェンスがスムーズに進むよう、各専門家の手配やスケジュール調整などを行ういわば全体のまとめ役です。

そのほかにも、調査結果を基に交渉時のポイントとなる点を整理し、自身の依頼者へわかりやすく伝える役割も担います。

交渉のサポート

M&Aの交渉は、売り手側と買い手側の当事者同士が行うことが原則です。交渉の代理人を務めることが公的に認められているのは弁護士のみであるため、弁護士以外の者が代理人としてM&A交渉を行うことは、非弁行為(弁護士法72条)にあたるという考えもあります。

そのため、M&Aアドバイザリーは代理人として交渉にあたるのではなく、依頼者の利益最大化とスムーズなM&A進行ができるようサポートを行うのが役割です。

M&Aアドバイザリーは常に依頼者の意思を確認しながら、M&Aに必要な情報収集、買収価額の適正範囲やその他条件に関する助言、交渉相手の反応に応じた次の行動に関する助言などを行い交渉をサポートします。

契約書作成

M&Aにおける契約書は非常に複雑であり、正しく作成しなければ将来のトラブルにもつながりかねません。そのため、通常はM&Aに精通した弁護士に依頼して作成しますが、小規模案件の場合はM&Aアドバイザリー会社が契約書のドラフトを用意するケースも実務上は多いです。

弁護士が作成する契約書には、デューデリジェンスの結果や交渉で合意した事項が反映されます。万一、契約書に漏れや抜けがあるとトラブルが生じた場合に損害賠償請求ができないなどのリスクもあるため、自社で契約書を作成したいというケースであっても必ず弁護士に確認を依頼するようにしましょう。

クロージングの支援

クロージングの支援を行うのもM&Aアドバイザリーの重要な役割です。なかでも、クロージングを迎えるための前提条件や表明保証に関する条項には、M&A後に想定されるリスク要因を事前に洗い出し、それらを漏れなくつぶせるような条項とするための助言を行います。

また、依頼者が買い手側である場合は、買収資金の調達方法に関する助言やIR・株主総会への対応(上場企業の場合)など、M&A契約締結までに必要な業務のサポートを行うのもM&Aアドバイザリーが担う役割のひとつです。

統合プロセス(PMI)

統合プロセスとは、自社の既存事業と相手側企業の事業との運営方法の違いを埋めつつ、新たな事業体として構築する作業であり、PMI(Post Merger Intergration)とも言われます。その作業範囲は、時に国境を超え、事業全般にわたるのです。

M&Aにおいて統合プロセスを怠れば、すり合わせに失敗してしまいます。このプロセスでの失敗により、日々流れている事業に大きな支障が生じ、ひいては企業経営に大きな悪影響を与えることもあるため、慎重に進めることが要求されるのです。

このように、統合プロセスは複雑であり失敗できないものであり、もはや統合プロセスの成否がM&Aの成否を決めるといっても過言ではありません。そこで統合プロセスを円滑に済ませるために、M&Aアドバイザリーが起用されます

M&Aの統合作業に精通しているM&Aアドバイザリーを選べば、M&A後でも速やかに事業運営を再開可能です。統合プロセス成功に向けて、M&Aアドバイザリーが議論をリードしながら自社と相手側企業の担当責任者の間で統合案を詰めていくケースも多々あります。

【関連】M&Aの契約書とは?契約手順に沿って意向表明、基本合意書、最終契約書を解説します

M&Aアドバイザリーの手数料

M&Aアドバイザリーに支援業務を委託した場合、どのような費用がかかるのでしょうか。ここでは、M&Aアドバイザリーに支払う主な手数料を紹介します。

着手金

着手金とは、M&Aアドバイザリーに支援業務を正式依頼した時点で生じる手数料です。着手金の相場は、M&A案件の難易度や企業規模などによって変わりますが、M&Aアドバイザりの場合は数百万円~1000万円程度が相場だといわれています。

なお、着手金は支援業務を行うチーム組成にかかる対価という位置づけであり、M&Aが不成立に終わった場合でも返還されません。

中間金

中間金とは、M&A交渉が特定の段階に達した時点で生じる手数料のことです。中間報酬と呼ばれることもあり、各社の手数料体系で定められた成果達成時点で手数料が発生します。

中間金(中間報酬)が生じるタイミングとして多いのは、基本合意締結時、意向表明の受理時、トップ面談後などです。

最も一般的なのは基本合意締結時ですが、どのタイミングで中間金(中間報酬)が発生するかを事前に確認しておくと慌てずに済みます。また、着手金同様、中間金(中間報酬)もM&Aの成否によらず返還されることはありません。

成功報酬

成功報酬とはM&Aが成立した時点で発生する手数料のことです。成功報酬は依頼者(M&A当時会社)が支払う手数料のなかで最も高額になり、ほとんどM&Aアドバイザリーが算出方法にレーマン方式を用いています。

また、M&Aアドバイザリー会社によっては、すでに支払った中間金などが成功報酬の一部に充当されることも多いです。

レーマン方式

レーマン方式とはM&A案件の取引金額に比例して料率が変わる算出方法をいい、算出時のベースは各社の料金体系によって異なります。以下はレーマン方式の一般的な料率です。

  • 5億円以下の部分:5%
  • 5億円超から10億円以下の部分:4%
  • 10億円超から50億円以下の部分:3%
  • 50億円超から100億円以下の部分:2%
  • 100億円超の部分:1%

また、レーマン方式の場合、算出ベースによって支払う成功報酬が変わり、たとえば株式譲渡の対価のみで算定する会社と純資産・有利子負債を合わせた金額を算出ベースとする会社とでは、成立時のM&A価額が同じであっても成功報酬額に差が生じます。

M&Aは高額取引なので、レーマン方式の算定ベースによって支払う手数料に大きな差が生じるケースもあるため、必ずなにを算定ベースとするかを確認しておきましょう。

【関連】レーマン方式とは?成果報酬の設定や計算方法、種類、契約書を解説

リテイナーフィー

リテイナーフィーとはM&Aが完了するまでの期間、継続して発生する定額顧問料のことです。本来は成功報酬以外の手数料を指すものですが、M&A実務においては月額報酬を指すケースが一般的であり、手数料額の相場は案件規模によって変わります。

M&Aアドバイザリーの設定額は個々によるため一概にはいえませんが、大型M&A案件であれば1000~1500万円/月額、中型M&A案件では数十万円/月額が相場といえるでしょう。

リテイナーフィーは、M&A取引が完了するまで継続的に発生する費用なので、交渉が難航するなどで長期化すればその分だけ費用負担は大きくなります。

M&AアドバイザリーとM&A仲介会社の違い

M&AアドバイザリーとM&A仲介会社は、どちらもM&A成立に向けた支援業務を手掛けますが、両者は業務の目的・支援を行う立ち位置・契約形態(報酬の受け取り)において違いがあります。

M&Aアドバイザリーは依頼者(売り手・買い手のいずれか)の利益最大化を目的として業務を行うため、相手先候補を探す際に重視するのは「利益最大化が見込めるか」という点です。

また、交渉時の支援は依頼者側に立つかたちとなり、売り手側と買い手側のそれぞれにM&Aアドバイザリーがつきます。アドバイザリー契約も支援を行う売り手・買い手のいずれか一方とのみ交わすため、依頼者の費用負担はM&A仲介会社よりも割高となるケースがほとんどです。

一方のM&A仲介会社は、売り手・買い手の間に同一のM&Aアドバイザーが入り、中立的な立場から交渉を進めM&A成立を目指します。

どちらか片方の利益が大きくなるような支援・助言はせず、双方にメリットがあるよう妥協点を探しながら交渉を進める
のが特徴です。また、売り手・買い手双方と契約を結んで両者から報酬を得るため、依頼者の費用負担はM&Aアドバイザリーよりも安くなります。

M&Aアドバイザリーを活用するメリット

M&Aアドバイザリーを活用する最大のメリットは自社の利益最大化を目指せることです。同じM&A支援業務でも仲介方式の場合は、売り手・買い手双方が折り合える点を探して交渉を進めるため、譲歩が必要な場面も多くなります。

一方でM&Aアドバイザリーは依頼者の利益(メリット)の最大化を目標に交渉を進めるため、より希望条件に近い形でのM&A実現が可能です。

そのほか、M&Aプロセスを幅広くサポートしてくれるため円滑にM&Aを進められる点もメリットとして挙げられ、自社の通常業務に支障をきたすことなくM&Aを行うことができます。

M&Aアドバイザリーを活用するデメリット

ここまでメリットを紹介しましたが、M&Aアドバイザリーを活用するときにはデメリットもあるため注意が必要です。ここではM&Aアドバイザリーを活用するデメリットには、主に以下の6つがあります。

(1)依頼料金が高くなりやすい

M&Aアドバイザリーは「片手取引」と呼ばれる契約形態であり、売り手側・買い手側のどちらかと契約し報酬を受け取ります。

同じM&A支援を手掛けるM&A仲介会社は「両手取引」といわれる契約形態であり、売り手・買い手双方と契約して報酬も双方から得るため、M&A仲介会社と比べるとM&Aアドバイザリーへの支払い手数料が高くなりやすい点がデメリットです。

(2)M&Aが長期化しやすい

M&Aアドバイザリーに支援業務を依頼した場合、交渉相手の企業にも別のM&Aアドバイザリーがサポートにつきます。

M&Aアドバイザリーは依頼者の利益最大化を目指してM&Aを進めていくため、互いが希望価額・条件の面で主張するかたちとなり、交渉がまとまるまでに時間を要するケースも多いです。

自社の利益が最大化できるというメリットがある一方で、M&Aが長期化しやすい点はM&Aアドバイザリーを活用するデメリットといえるでしょう。

(3)悪質な業者に対応されてしまう可能性がある

M&Aアドバイザリーのデメリットのひとつは、自社と相性の悪いM&Aアドバイザリーに対応されてしまう可能性がある点です。M&Aアドバイザリー契約の中には、双方代理が契約事項として盛り込まれることがあります。

双方代理とは、M&Aの買い手と売り手双方の利益を尊重するものです。しかし中には悪意を持ってこの事項を盛り込んで、クライアントの不利益を承知の上でM&A成約を優先する悪質な業者が存在します。M&Aアドバイザリーを受けるときには、あらかじめ契約内容に注意することが大切です。

(4)適任でない業者を選んでしまう可能性がある

適任でないM&Aアドバイザリーを選んでしまえば、M&Aがスムーズに進行しなくなります。前述のとおり、M&Aアドバイザリーには様々な種類が存在するのです。満足度の高いM&Aとするためには、M&Aアドバイザリーを適材適所で活用することが大切な要素となります。

たとえば、法務デューデリジェンスを行うときには、弁護士をM&Aアドバイザリーとして起用すると良いです。税理士や会計士なら、法律分野のM&Aアドバイザリー業務は遂行できないことも進めることができます。業務ごとに、最適なM&Aアドバイザリーを選任することが大切です。

(5)想定外の手数料額を請求されてしまうおそれがある

M&Aアドバイザリーの手数料は、事前に確認しておくべきです。M&Aアドバイザリーを起用する際には、手数料の支払いが発生します。全分野のアドバイザリーを取り揃えるとなると、費用は莫大な金額となるのです。

M&A仲介会社を利用する場合、着手金や成功報酬などの様々なアドバイザリー費用がかかります。たとえば、デューデリジェンス担当のM&Aアドバイザリーを起用する場合には、数千万円規模の費用がかかることもあることから、全分野でM&Aアドバイザリーを起用することは現実的ではありません。

つまりM&Aアドバイザリーの起用タイミングは、慎重に決める必要があります。とはいえ中小企業の場合では、M&A仲介会社にM&Aアドバイザリーに付いてもらうのが一般的です。

(6)情報漏洩のリスクがある

M&Aを行うときには、情報漏洩にも気をつけなければなりません。M&Aアドバイザリーに依頼すると、自社の情報を提供する必要があるためです。このときに企業側から提出された資料をもとに、M&Aアドバイザリーは相手探しやデューデリジェンスを実行します。

ただしそのとき提出する資料には、会社の根幹に関わる情報が含まれています。万が一情報漏洩してしまえば、今後の事業経営に支障をきたすおそれがあるのです。そのためM&Aアドバイザリーに情報を提供する前に、必ず秘密保持契約を締結することが大切でしょう。

秘密保持契約とは、提供する情報を外部に漏らさない旨を約束する契約をさします。M&Aアドバイザリーと関わるときは、怠らずに秘密保持契約を結ぶことを心がけると良いです。

以下の記事ではM&Aのデメリットについて解説しています。売り手・買い手の双方からみたデメリットを紹介しているので、こちらも併せてご確認ください。

【関連】M&Aのデメリットとは?売り手・買い手、海外M&Aにおけるデメリットを解説

M&Aアドバイザリーを選ぶ際のポイント

M&Aアドバイザリー選びは、M&A成功のカギともなる重要な要素です。この章ではでM&Aアドバイザリーを選ぶ際のポイントについて解説します。

手数料の体系

M&Aを行う当時会社にとってM&Aアドバイザリーへ支払う費用負担は決して小さくないため、手数料体系は選ぶ際に重要となる要素のひとつです。

ですが、M&Aアドバイザリーの手数料体系は会社によって異なり、単純に費用が安ければよいというものでもありません。

反対に高い手数料体系であれば必ず成功するというものでもないため、M&Aアドバイザリーへ支払う手数料に見合った利益がM&Aによって得られるかを判断基準にすることが重要です。

また、着手金や中間金(中間報酬)はM&Aの成否によらず返還されないため、費用対効果が感じられるかどうかもポイントのひとつといえるでしょう。

M&Aアドバイザリーの手数料体系を比較する場合は、手数料額に見合った利益がM&Aによって見込めるか、出口戦略をよく考えたうえで検討することが必要です。

強みとする専門分野

M&Aアドバイザリーの中でも、強みとする専門分野は異なります。

例えば、士業事務所の場合だと特定の分野の強みを持つM&Aアドバイザリーに依頼をすべきだといえます。相手探しや交渉サポートなどの面でも強みを発揮してくれるM&Aアドバイザリーに依頼をしましょう。

得意とする業種や事業規模

M&Aアドバイザリーの中でも、得意とする業種や事業規模が異なることもあります。

例えば、大規模な事業を専門的に扱っているM&Aアドバイザリーもいれば、小規模の事業を専門的に扱っているM&Aアドバイザリーもいます。また、業種においても得意・不得意があるため「どのM&Aアドバイザリーでもいい」と比較・検討を怠らないようにしましょう。

実績・実務能力

実際にM&Aアドバイザリーとしてどれだけの実績があるのかも確認しておきましょう。

実績が多くあるM&Aアドバイザリーは臨機応変に手続きに対応してくれることが多いです。しかし、実績がない場合は臨機応変に対応してくれることが少ないため、依頼することはリスクになりかねません。スムーズにM&Aを成功させたい場合は実績・実務能力に長けているM&Aアドバイザリーに依頼をしましょう。

情報管理

M&Aを進めるうえで最も注意しなければならないのは、自社の秘密情報などが第三者へ漏洩することです。M&Aはそれ自体が秘密事項として進められるため、特に譲渡側はM&A成立前にM&Aを進めていることが従業員や取引先などへ知られてしまうと離職や取引先との契約中止になるおそれもあります。

また、M&Aでは自社の技術やノウハウなどの情報も開示しますが、M&Aは必ず成立するというものではないため、万一これらの情報が競合他社へ漏れれば企業価値を大きく損なうことになりかねません。

M&Aアドバイザリーや相手先企業とは秘密保持契約を交わしたうえで情報開示を行いますが、同時にM&Aアドバイザリーの情報管理体制が万全であるかの見極めも重要なポイントです。

対応の誠実さ

M&Aを成功させるためには、M&Aアドバイザリーの誠実さや担当アドバイザーとの相性も重要な要素です。もし自社の利益のみを優先させるM&Aアドバイザリーに支援を依頼すれば、M&A自体が成立しても満足するM&Aが実現する可能性は低くなるでしょう。

また、担当アドバイザーはM&Aが完了するまでの間パートナーとして相談や連絡を行うため、相性が悪ければ信頼関係が構築できなかったり、意思疎通がうまくいかなかったりする可能性もあります。

担当アドバイザーとの相性は実績や経験年数、口コミなどだけで判断することができないため、もし自身(自社)と合わないと感じた場合は担当者の変更を申し出るようにしましょう。

M&Aアドバイザリーを行う企業の業態

M&Aを成功させるためには、自社の行う案件に合ったM&Aアドバイザリーの起用が大切です。ここからは、代表的なM&Aアドバイザリーを業界別に紹介します。

(1)外資系投資銀行

外資系投資銀行は、株式などの金融資産の売買や資産運用などを主な業務としており、M&Aや財務コンサルタントなども行っていることが多いです。

M&A支援においてはクロスボーダー案件や超大型案件を扱うケースが多く、1000億円以上でM&Aが成立するケースも多くみられます。そのため手数料も高額となり、数十億円となるケースも珍しくありません。

※関連記事

クロスボーダーM&Aを成功させるには

(2)大手金融機関

多くの大手金融機関ではM&Aアドバイザリー業務も行っており、主に比較的大規模なM&A案件を支援しています。

主に手掛けるのは自社をメインバンクとしている企業同士のM&A支援であり、手数料体系にもよりますが成功報酬の最低報酬額を数千万円程度に設定しているケースが多いです。

(3)大手証券会社

大手証券会社の多くは、M&A専門の部署を持っています。M&Aアドバイザリーとしての特徴は、上場企業が実行するTOBを取り扱う点です。

大型案件を中心に支援業務を行っており、手数料も高額となるケースが多く、数億円となるケースも珍しくありません。

(4)独立系M&Aアドバイザリー

独立系M&Aアドバイザリーとは、税理士事務所・会計事務所や金融機関のようなファイナンス機能は持たず、母体(税理士事務所・会計事務所など)が手掛けるサービスやM&Aのマッチングを強みとする事業者を指します。

手数料相場は数百万〜数千万円程度であり、M&A戦略の立案からPMIまでM&Aプロセスを幅広く支援する事業者が多いです。

中小企業向けM&Aアドバイザリーを行っているおすすめのM&A仲介会社

ここまで様々なM&Aアドバイザリーをみてきましたが、中小企業のM&Aでは費用負担や成約までの期間などを考えると、M&A仲介会社を活用することをおすすめします。

M&A総合研究所は主に中小・中堅規模の案件を取り扱う仲介会社です。案件ごとにM&Aの実績と経験が豊富なアドバイザーが専任につき、フルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を実施しているので、お気軽にお問い合わせください。

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まとめ

M&Aは完了までのプロセスは非常に複雑であり、容易に成功するものではありません。そのためまずは、M&Aアドバイザリーの専門分野をしっかりと認識したうえで、予算と相談しながら起用する分野を絞り込むことが大切です。

M&Aアドバイザリーに相談しつつ、適切なM&Aアドバイザリーを適切なタイミングで起用することもできます。M&Aアドバイザリーごとに、特色や取り扱う案件が異なるためです。

大企業の場合はFAを専門的に行う企業や証券会社をM&Aアドバイザリーとして起用するケースが一般的ですが、中小企業の場合はほとんどのケースでM&A仲介会社が活用されています。

多くのM&A仲介会社は、マッチングのみならずM&Aアドバイザーとしての業務も行っているため、各分野のM&Aアドバイザーをそれぞれ起用するより手間も費用も少なくて済む点がメリットのひとつです。また、M&Aの全体観を把握しながら個々の業務を進めるため、きめ細やかなサポートやアドバイスに期待できます。

M&Aを納得し得る結果で終わらせるうえで、M&A実務の鍵となる統合プロセスなどをサポートしてくれるM&Aアドバイザリーの存在は非常に心強いといえるでしょう

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