2022年6月6日更新資金調達

匿名組合とは?メリット・デメリット、匿名組合契約によるファンド設立をご紹介

匿名組合とは出資の際に交わされる契約のことであり、「匿名組合契約」とも呼ばれます。匿名組合契約によるファンド設立にはメリットだけでなくデメリットもあります。この記事では、匿名組合のメリット・デメリット、匿名組合契約によるファンド設立について解説します。

目次
  1. 匿名組合
  2. 匿名組合とは?意味をわかりやすく解説
  3. 匿名組合のメリット・デメリット
  4. 匿名組合を活用した事例
  5. 匿名組合契約によるファンド設立
  6. 匿名組合契約書と注意点
  7. まとめ

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匿名組合

匿名組合という言葉をご存知でしょうか?匿名組合は略して「TK」とも呼ばれますが、近頃ではソーシャルレンディングのシーンで見かけることも多いです。

端的にいうと匿名組合は投資に関する言葉ですが、そのジャンルの知識に明るくなければ聞き慣れない言葉の代表格といえます。

そこで今回は、匿名組合の意味やメリット・デメリット、実際に匿名組合を利用した事例などについてわかりやすくお伝えします。

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匿名組合とは?意味をわかりやすく解説

まずは匿名組合の意味についてわかりやすくお伝えします。匿名組合は「組合」という言葉が入っているため、何らかの団体のようなイメージを持っている経営者の方もいるかと思いますが、実際は全く異なるものです。ここでは、まず匿名契約の概要について、2項目に分けて解説します。

匿名組合は商法に規定されている契約の一種

匿名組合とは出資の際に交わされる契約のことであり、商法第535条に定められた契約形態のひとつです。「匿名組合契約」とも呼ばれており、出資者が事業者に対して出資を行い、事業者は生み出した利益を出資者に対して分配するという契約をさします。

具体的な条文(第535条)は、以下のとおりです。

  • 匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる

大きな特徴としては、その名のとおり出資者が匿名で出資を行う点にあります。このときに、匿名組合契約を交わして出資する者は、匿名組合員と呼ばれるのです。

いうなれば、匿名組合は事業を経営できる者と資金を提供する者同士が協力し合う関係を創出する契約です。基本的に匿名組合員は、出資を行った事業者からの利益分配を匿名のままで受け取ることになります。

匿名組合は2者間契約

匿名組合は、事業を経営できる者と資金を提供する者の2者間での契約のみ可能であり、3者間以上の契約は認められていません。

なお、匿名組合は個人でも法人でも実施可能です。昨今において匿名組合はソーシャルレンディングで採用されるケースが多くなっており、気軽に用いられています。また、匿名組合員は必ずしも商人でなければならないわけではなく、非商人であっても匿名組合員になることが可能です。

このような特徴を持つ匿名組合はM&Aに直接的な影響を及ぼす要因とはなりませんが、経営統合の際に取り扱いに悩むケースもあるでしょう。

匿名組合は会社・投資家の投資・経営戦略などに影響を及ぼすこともあるため、取り扱い方法は専門家と相談して決定するのがおすすめです。

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匿名組合のメリット・デメリット

匿名組合は匿名で出資するという性質を持つ契約であり、一見するとどんなメリット・デメリットがあるかがわかりにくいです。ここでは、匿名組合のメリット・デメリットについてわかりやすくお伝えします。

①匿名組合のメリット

はじめに、匿名組合のメリットを紹介していきます。

匿名であること

大きな特徴である「匿名で出資を行える」という点は、匿名組合を行ううえで注目すべきメリットのひとつです。これは、個人ではなく法人が匿名組合を使用した際にとりわけ大きなメリットとなります。

通常、法人が他の事業に投資を行うと、その情報は周囲に漏れてしまいます。つまり、法人がどの事業に注目しバックアップしようとしているかが発覚してしまうため、競合他社が対策を立てたり競合したりするような事態が発生するおそれがあるのです。

特に大企業であれば少額でも投資するとマスコミがすぐに反応し、ますます情報が広がりやすいです。しかし、匿名組合であれば名前を伏せたまま投資を行えるため、周囲に気付かれることなく注目している事業を応援できます。

仮に特定の事業への投資が競合他社に勝つうえで重大な経営戦略となっている場合、匿名組合は有効的な手段になり得るでしょう。

投資したら何もしなくてもいい

これは特に個人が匿名組合を行う際に発揮されやすいメリットですが、「投資したら何もしなくてもいい」という点も匿名組合の魅力です。個人の投資対象には株・為替といったものもありますが、いずれも毎日レートを確認し、レートが変更する度に株を売ったり買ったりする必要があります。

もちろん知識がある人は問題なく対応できますが、投資を始めたばかりという人が行うには株や為替は多くの手間がかかる投資手段です。

これに対して、匿名組合は基本的に投資後は何もする必要はなく、ただ利益が分配されるのを待つのみです。逐一レートを確認したり、細かくお金をやりくりしたりするような手間は一切かかりません。

リスクが低い

匿名組合では、あくまでも自身が出資を行った範囲内でしか事業に関する責任を負いません。このように、たとえトラブルが発生したとしても、投資した金額以上の損害が発生しない点は大きなメリットだといえます。

以上のことから、匿名組合は「日々忙しくていちいち作業する暇はない」、「投資の知識がそれほど初心者」というような人に向いている投資です。

なお、以下の記事ではM&Aのメリットについて紹介しています。戦略策定をするメリットや手法別のメリットなども解説しているので、M&Aを検討している場合にはこちらもチェックしてみてください。

【関連】M&Aのメリットとは?買い手・売り手のメリットやM&A戦略策定・手法別のメリットを紹介

②匿名組合のデメリット

匿名組合のデメリットには以下のようなものが挙げられます。

投資先に指図することができない

匿名組合は投資を行う性質の契約ですが、投資先(ソーシャルレンディングであればレンディング会社)に指図することはできません。一般的に、株主のような投資家は経営に対して何らかの形で意見を提示できます。株主総会のような行事は、まさにそのための場所です。

しかし、匿名組合は匿名で投資するため、事業者側は誰が出資者となっているのかわかりません。ソーシャルレンディングであれば、レンディング会社からどこへお金が出ているかがわからない状態となります(大まかには判明するものの、特定はできません)。

そのため、投資した法人がどのようにお金を使っているか、どのように事業を運営しているかなどがわからないうえに、介入もできないのです。これは匿名であることが裏目に出たようなデメリットですが、匿名組合の性質上仕方のないことであるともいえます。

なお、匿名組合を用いるソーシャルレンディングの場合、レンディング会社を通じて行う投資は実質的には融資として扱われ、金を貸していることと同義です。匿名であるからこそ匿名組合として成立していますが、仮に匿名でなければ個人で金を貸している状態といえます。

つまり、匿名でないと出資者は無登録業者に該当してしまい、貸金業法違反に問われるおそれがあるのです。上記の事情を踏まえると、匿名組合はたとえデメリットがあったとしても匿名を維持する必要があります。

流動性がない

匿名組合は、投資する権利を第三者に譲ることはできないうえに一度投資したら途中で解約できないなど、流動性がない点もデメリットです。

とりわけ途中解約に関しては手数料などが発生するおそれもあるため、おすすめできません。いうなれば、「投資したお金を返してほしい」「投資先が不安になってきた」といった事情が発生した際に対応しづらいのが匿名組合の持つ大きな欠点です。

元本割れが起こる可能性がある

匿名組合では、元本割れが起こる可能性がある点もデメリットだといえます。

匿名組合は、基本的に元本が保証されない投資です。もしもソーシャルレンディングにおいて儲けが少なくなったり投資先が倒産したりした場合には、元本が返ってくる可能性は低いでしょう。とはいえ、これは株式やFXなどにも共通するデメリットです。

【関連】会社売却のメリット・デメリットとは?方法、相場、税金も紹介

匿名組合を活用した事例

近年、匿名組合はさまざまな形で実践されており、そのケースは多種多様です。ここでは、匿名組合を活用した事例をそれぞれ紹介します。

  1. オペレーティング・リース
  2. 研究開発費のコストシェアリング
  3. 一口馬主
  4. 企画物

それぞれの事例を順番に見ていきましょう。

①オペレーティング・リース

オペレーティング・リースとは、航空機・船舶・海上コンテナなどの大型リースを複数の出資者で行うことをさしますが、ここでは匿名組合が活用されています。

具体的にいうと、匿名組合を利用し複数の出資者で出資することで、航空機・船舶などを購入したうえで他の法人にリースしていきます。このときに、収益として獲得したリース料を匿名組合員で分配するという仕組みです。

オペレーティング・リースは収益を目的にするよりも、節税のために行われるケースが多いです。オペレーティング・リースで購入した航空機・船舶などは減価償却ができるうえに、そこで発生する減価償却費はリース料よりも大きくなります。

つまり、赤字が発生するため、これを利用して節税を行うという仕組みです。

②研究開発費のコストシェアリング

匿名組合は、研究開発費のコストシェアリングに用いられることもあります。

研究開発費のコストシェアリングは、製品化された際に、利益を共有する同業者同士が匿名組合を通じて金融機関に貸し付けを行い、その返済をもらうことで成立します。

そのため、研究開発費のコストシェアリングでは、研究開発に失敗した際のリスクを低減するだけでなく、利益をシェアできるというメリットも期待可能です。

③一口馬主

一口馬主も匿名組合を通じて行われます。一口馬主とは、馬主登録をしていない複数の人が匿名組合を通じて小口で出資を集め、間接的に共同で馬主になるというものです。

一口馬主は、愛馬会法人の会員となった後に匿名組合を通じて出資を行います。そして出資が集まったタイミングで、愛馬会法人が競走馬を取得するという仕組みです。競走馬が賞金を獲得した場合、賞金は愛馬会法人に配当された後で匿名組合員に分配されます。

一口馬主は通常の匿名組合と同様に元本の保証はないため、元本割れを起こすリスクを孕んでいます。しかし、競走馬が死亡したり競争できなくなったりした場合には、出資した金額がすべて返還されるケースもあるのです。

④企画物

企画物は「利益を生み出す事業のために匿名組合を活用する」というよりも、自分の趣味や応援したい相手に匿名組合を活用して出資するという性質を持っています。

企画物にはさまざまな種類があります。例えば、アーティストのライブ・期間限定イベント・ミュージカルや演劇の公演や、特定のアイドルやアーティストのデビュー企画などです。

企画物への匿名組合は、大きな利益を期待するというよりも、応援したいイベントや特定の個人が世間に認知されることを目標に行われるケースが多いです。

また、複数の企画物に投資すれば、リスクの分散にもなるため、非常に有効な事例だといえます。ただし、企画者に出資する際には、「商品ファンド法」を必ずチェックしたうえで出資しなければなりません。

以下の記事では、実際にM&Aを行った際の成功事例について紹介しています。大手や中小企業・ベンチャー企業などのさまざまなM&A事例を紹介しているので、ぜひ確認してみてください。

【関連】M&A成功事例とは?大手・中小企業、スタートアップやベンチャー企業のM&A成功事例を解説

匿名組合契約によるファンド設立

匿名組合は、ファンド設立の際に活用されるケースもあるのです。匿名組合契約の締結により設立されるファンドは組合型ファンドと呼ばれており、太陽光発電事業などの出資に活用されています。

また、不動産ファンドに匿名組合が採用されるケースもあります。ファンドに匿名組合が活用された場合であっても、ルールや仕組みに何らかの変化が加わることはありません。

とはいえ、ファンドの設立のために匿名組合を利用したい場合には、弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。これはファンドに限らず、匿名組合を行う際にはなるべく検討することをおすすめします。

後ほど「匿名組合契約書と注意点」でもお伝えしますが、弁護士のような第三者の専門家に出資・投資の内容をチェックしてもらうと、素人では気づきにくい契約の欠陥が判明するため、安心して匿名組合を利用できます。

【関連】ファンドとは?ファンドの種類と事業承継・M&Aについて

匿名組合契約書と注意点

最後に、匿名組合契約書とその注意点についてお伝えしていきます。匿名組合契約書はインターネット上でもひな型が出回っており、具体的な様式を知りたい場合にはすぐにチェック可能です。匿名組合を利用するならば、匿名組合契約書は入念にチェックしておきましょう。

匿名組合契約書は、「一口いくらで出資を募っているのか?」「分配はどのように行われるのか?」など、自身が期待する利益に直接関係する部分に関して、しっかりと確認しておく必要があります。

また、匿名組合では基本的に元本の保証はないケースが多いですが、一口馬主のように何らかのきっかけで出資した額が返ってくる場合もあるため、こうした規則についてもチェックしておきましょう。

加えて、匿名組合契約書にリスクに関する事項が記載されている場合にも、念入りに確認してください。とはいえ、匿名組合契約書は金融商品取引法にもとづいて記載すべき事柄が決められていますが、素人が見てもその契約書が正しいものかどうか見極めるのは決して簡単ではありません。

そのため、匿名組合契約書の正当性を判断できない場合、弁護士などの専門家にチェックしてもらうと良いです。特にそれほど投資の経験がない人は、知識が乏しいために契約の重要事項を見逃してしまうケースも珍しくありません。

弁護士は法律や契約のプロフェッショナルであり、依頼すればしっかりと匿名組合契約書に問題がないかチェックしてくれます。万が一トラブルに発展した際にも、弁護士がいれば適切な対処を講じてくれるでしょう。

【関連】M&Aにおける弁護士の役割

まとめ

匿名組合契約は初心者向けの投資であるうえに、法人からすると周囲に知られないように興味のある分野を成長させられるなど便利な投資手段だといえます。しかし、匿名組合契約には、特有のデメリットもあるため注意が必要です。

また、元本の保証がないために元本割れが起こるおそれもあるなど、リスクがまったくないわけでもないため、実際に行う際には注意しましょう。不安がある場合には弁護士などの専門家からサポートを受けることも有効策です。本記事の要点をまとめると、下記になります。

・匿名組合とは?
→出資者が事業者に対して出資を行い、事業者は生み出した利益を出資者に対して分配するという契約

・匿名組合のメリット
→匿名である、投資したら何もしなくてもいい、リスクが低い

・匿名組合のデメリット
→投資先に指図することができない、流動性がない、元本割れが起こる可能性がある

・匿名組合を活用した事例
→オペレーティング・リース、研究開発費のコストシェアリング、一口馬主、企画物

・匿名組合契約によるファンド設立
→設立されるのは組合型ファンド、不動産ファンドに匿名組合が採用されるケースもある

・匿名組合契約書と注意点
→匿名組合契約書の正当性を判断できない場合、弁護士などの専門家にチェックしてもらう

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