2025年12月24日公開業種別M&A

予備校業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例5選や流れと注意点も解説!

本コラムは予備校業界のM&Aについてまとめたものです。主な内容として、予備校業界の概要と市場動向、予備校のM&Aで得られるメリットや注意点、M&Aプロセスの概略などの解説と、実際に行われた売却・譲渡・買収などのM&A事例も紹介します。

目次
  1. 予備校業界の動向
  2. 予備校業界におけるM&Aのメリット
  3. 予備校業界のM&Aによる売却・買収事例5選
  4. 予備校のM&Aを行う流れ
  5. 予備校のM&Aにおける注意点
  6. 予備校業界のM&Aまとめ
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予備校業界の動向

予備校とは、学生および浪人生を対象に入学試験合格を目標にした民間教育機関です。予備校のほとんどは大学入試合格を目指すものですが、小中学校や高等学校の入試合格を目指す予備校や、何らかの資格試験合格を目標とする予備校もあります。

なお、総務省の「日本標準産業分類」には予備校というカテゴリーはなく、産業分類上、予備校は学習塾の一形態としてくくられています。

参照元:総務省

予備校業界の市場動向

市場動向を示す公的データでは、予備校は学習塾の中にくくられています。経済産業省の資料によると、最近10年間の学習塾の市場動向は以下のとおりです。

  • 2015年:4,317億8,000万円
  • 2016年:4,359億8,900万円
  • 2017年:4,415億7,200万円
  • 2018年:4,443億3,800万円
  • 2019年:4,487億6,600万円
  • 2020年:4,702億9,300万円
  • 2021年:5,517億1,900万円
  • 2022年:5,568億4,800万円
  • 2023年:5,812億7,600万円
  • 2024年:5,933億9,700万円

受講料と教材料で形成されている学習塾の売上高動向は、右肩上がりです。若年層が人口減少しているものの、子ども1人あたりの教育費が高騰化していると推測されます。

参照元:経済産業省

予備校業界におけるM&Aのメリット

予備校業界においてM&Aを実施すると以下のようなメリットが得られます。

  • 事業承継問題の解決
  • 従業員の雇用継続
  • 対価の獲得
  • 債務からの解放
  • 経営の安定化
  • 市場シェア拡大
  • 人材の獲得

予備校業界のM&Aにおける各メリットの内容を説明します。

事業承継問題の解決

後継者不在の予備校がM&Aによる売却・譲渡を行った場合、事業承継問題が解決するメリットを得られます。中小規模の予備校のケースでは、経営者の親族や社員が後継者となるのが一般的です。

しかし、後継者が不在の予備校も少なくありません。そのままでは廃業危機に陥るところですが、M&Aを行うことで買収側が新たな経営者となり予備校は存続できます。

従業員の雇用継続

予備校のM&Aによる売却・譲渡は、従業員の雇用を守れることもメリットです。どのような理由であれ予備校が廃業となる場合、従業員は解雇せざるを得ません。予備校の廃業は従業員の生活にも悪影響を及ぼすものです。

しかし、M&Aによって予備校の廃業を回避できれば従業員の雇用契約はそのまま維持されるため、雇用関係に変化は生じません。

対価の獲得

予備校をM&Aで売却・譲渡した側の大きなメリットは、対価を獲得できることです。予備校のM&Aにおける対価は交渉で決まるものですが、提示する交渉条件の内容は売却・譲渡側、買収側がそれぞれ行う売却・譲渡側に対する企業価値評価によります。

企業価値評価では、有形・無形固定資産の金額換算に加え対象の予備校が将来稼ぐであろう利益なども加味されるため、相応の対価を得られるでしょう。

債務からの解放

予備校のM&Aにおける売却・譲渡側は、負債から解放されることもメリットです。合併や株式譲受など包括承継となるM&Aスキーム(手法)の場合、売却・譲渡側の負債は買収側が自動的に承継します。

ただし、M&Aスキームに個別承継である事業譲渡を採用した場合は、売却・買収対象を個別に協議して決められるため負債が承継されないことが多く、注意点です。

経営の安定化

予備校のM&Aは、売却・譲渡側に経営の安定化というメリットももたらすでしょう。M&Aで買収側の子会社となれば、親会社である買収側のさまざまな経営資源を共用できます。

また、財務面の支援も得られることから資金繰りに困ることもなくなるでしょう。M&Aによって、このような新たな経営環境を得られるため、経営は安定化に向かうのです。

市場シェア拡大

予備校を経営する企業がM&Aで同業者を買収した場合、子会社化したケースでは企業グループとして、合併したケースでは一企業として、市場シェアを拡大できるメリットがあります。瞬間的に市場シェアを拡大するのは、通常の企業活動ではできません。瞬間的な市場シェア拡大はM&Aならではの醍醐味です。

人材の獲得

予備校のM&Aにおける買収側にとっては、人材の獲得もメリットの1つです。人口減少が続く日本では、多くの業種で人手が足りていません。しかし、通常の採用活動では限度があります。

M&Aの場合、売却・譲渡側の人材をまとめて獲得でき、さらにそれらの人材は一定の経験値やスキルを持っていることから、人材教育の手間とコストも削減できるのです。

予備校業界のM&Aによる売却・買収事例5選

ここでは、実際に行われた予備校関連のM&A事例として以下の5事例を紹介します。

  • アガルートによる雷音の買収事例
  • ナガセによるダンロップスポーツウェルネスの買収事例
  • 虔十社によるしょうわ出版への事業譲渡事例
  • エムスリーによるDr. Bhatia Medical Coaching Institute Private Limitedの買収事例
  • ナガセとティエラコムの資本業務提携事例

各M&A事例の内容を説明します。なお、表中に売上高を記載している場合、それはM&Aが実施された時期の直前期決算の数値です。最新の決算数値とは違う点にご留意ください。

アガルートによる雷音の買収事例

事例1 売却側 買収側
法人名 雷音 アガルート
所在地 東京都中央区 東京都新宿区
事業内容 システムインテグ
レーション事業、
運用保守事業
国家試験・検定試験などの
オンライン講座、出版事業、
オンラインコーチング、
医学部受験オンライン予備校
売上高 非公開 非公開

2025(令和7)年3月、アガルートは、合同会社雷音の全持分を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。アガルートとしては、グループのシステム開発⼒向上と、グループ内の各社協業によるシナジー効果創出を目的にM&Aを実施しました。

参照元:株式会社アガルート

ナガセによるダンロップスポーツウェルネスの買収事例

事例2 売却側 買収側
法人名 ダンロップスポーツウェルネス ナガセ
所在地 千葉県千葉市 東京都武蔵野市
事業内容 各種スポーツ施設の経営・フランチャイズ事業、
スポーツ機器・用品の製造・加工・修理・販売、
スポーツの興行、ダイビング事業、介護事業、
ゴルフ会員権売買、損害保険・生命保険事業、
温泉浴場・サウナ風呂経営、不動産賃貸・管理、
酒類・煙草・米穀・日用雑貨品・食料品の販売、
駐車場・駐輪場の運営管理、各種飲食店経営、
マッサージおよび関連施設運営
予備校・英語塾・その他の教育事業、
スイミングスクール事業、出版事業
売上高 87億2,400万円 523億5,400万円(連結)

2024(令和6)年12月、ナガセは、ダンロップスポーツウェルネスの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は3億9,000万円、アドバイザリー費用が2,000万円です。なお、買収に先立ち、ダンロップスポーツウェルネスのゴルフスクール事業とテニススクール事業はダンロップスポーツマーケティングに譲渡されました。

ナガセとしては、フィットネス事業を行うダンロップスポーツウェルネスがグループに加わることで、グループ内のイトマンスイミングスクールとイトマンスポーツスクールの事業と合わせ、総合型スポーツジム・スイミングスクール事業体として大きなシェアを握ることが目的のM&Aです。

参照元:株式会社ナガセ

虔十社によるしょうわ出版への事業譲渡事例

事例3 売却側 買収側
法人名 虔十社 しょうわ出版
所在地 神奈川県横浜市 東京都渋谷区
事業内容 難関大・医学部
受験塾事業
社会保険・介護保険
関係の加除式出版物の
編集・作成・販売
売上高 非公開 非公開

2024年7月、富士山マガジンサービスの連結子会社であるしょうわ出版は、虔十社から塾事業(翔進予備校事業、アカデミア事業)を譲渡されました。譲渡額は2,000万円です。なお、譲渡された事業の直近売上高は6,045万円(経常利益は1,102万円の赤字)でした。

富士山マガジンサービスとしては、グループ内に虔十社の塾事業を取り込むことで、他のグループ会社が行う塾事業との協業によりシナジー効果を得ることが目的のM&Aです。

参照元:株式会社富士山マガジンサービス

エムスリーによるDr. Bhatia Medical Coaching Institute Private Limitedの買収事例

事例4 売却側 買収側
法人名 Dr. Bhatia Medical Coaching
Institute Private Limited
エムスリー
所在地 インド共和国ハリヤナ州 東京都港区
事業内容 医師・医学生向け
学習予備校の運営
インターネットによる
医療関連サービス提供
売上高 非公開 2,308億1,800万円(連結)

2023(令和5)年12月、エムスリーは、Dr. Bhatia Medical Coaching Institute Private Limitedの株式を買収し子会社化しました。買収株式数、買収額は非公表です。

インドにおいてオンライン医学学習アプリ事業を展開しているエムスリーとしては、インドにおける医師・医学生向けオフライン予備校事業への参入を目的としてM&Aを実施しました。

参照元:エムスリー株式会社

ナガセとティエラコムの資本業務提携事例

事例5 売却側 買収(出資)側
法人名 ティエラコム ナガセ
所在地 兵庫県神戸市 東京都武蔵野市
事業内容 受験学習指導・合宿教育・語学教育留学・
国際交流・研修企画・教育旅行・塾経営支援
システム提供などの総合教育サービス事業
予備校・英語塾・その他の教育事業、
スイミングスクール事業、出版事業
売上高 80億8,200万円 494億600万円(連結)

2023年1月、ナガセは、ティエラコムの株式を追加で買収し資本業務提携関係を強化しました。追加取得株式は全体の19.07%で合計では29.35%です。これにより、ティエラコムはナガセの持分法適用関連会社となりました。また、追加買収額は非公表です。

ナガセとしては、従来からの資本業務提携関係をより強固なものとして、協業による相互の事業拡大を目論んでいます。

参照元:株式会社ナガセ

予備校のM&Aを行う流れ

予備校のM&Aは以下のような流れで進めます。

  1. M&Aの検討・実施決定
  2. M&A業務委託先の選定
  3. M&A交渉相手探し
  4. M&A交渉相手との秘密保持契約締結
  5. M&A交渉開始
  6. トップ面談
  7. 基本合意書の取りまとめ
  8. デューデリジェンス
  9. 最終交渉
  10. M&A契約の締結
  11. クロージングに向けた諸手続き
  12. クロージング
  13. PMI

上記のプロセスのうち、クロージングとは契約内容の履行のことです。PMIについては後述する「注意点」で説明いたします。

以下の動画はM&Aの基本的な流れを解説したものです。また、その他にポイントとなるM&Aのプロセスについては、順次、個別に説明動画を掲載します。

M&Aプロセスの個別解説動画として、まずは「M&A検討段階の準備」です。

次は「M&Aアドバイザーの見極め方」の解説動画です。

続いて「M&Aにおける譲渡先の探し方」の解説動画です。

次の動画は「M&Aにおける秘密保持契約と情報漏えい」を解説しています。

こちらは「トップ面談」の解説動画です。

こちらの動画は「デューデリジェンスの種類」を解説しています。

この動画では「デューデリジェンスにおける売却・譲渡側の注意点」を解説しています。

以下の動画では「M&A成約当日の流れ」を解説しています。

最後に「M&Aの契約書」に関する解説動画です。

予備校のM&Aにおける注意点

予備校のM&Aを行う場合、以下のような注意点があります。

  • M&Aの専門家に相談をする
  • 事業譲渡時の人材流出を防ぐ
  • 的確な企業価値評価を行う

予備校のM&Aにおける各注意点の内容を説明します。

M&Aの専門家に相談をする

予備校のM&Aにおける注意点の1つは、早期からM&Aの専門家に相談することです。M&Aでは、初期のプロセスであるM&A戦略策定とM&A交渉相手探しが肝となります。それらをM&Aの専門家抜きで行うのは現実的ではありません。

予備校のM&Aの最終的な成功確度を高めるためにも、早期からM&Aの専門家に相談することです。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

予備校のM&Aを相談できる専門家をお探しであれば、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は多くのM&A成約実績を有しており、知識・経験ともに豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(ただし譲受側企業様には中間金が発生します)。随時、無料相談を承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

事業譲渡時の人材流出を防ぐ

予備校のM&Aを事業譲渡で行う場合の注意点として挙げられるのが、人材流出です。個別承継である事業譲渡では、従業員を自動的に買収側に転籍させられません。本人の同意と新たな雇用契約の締結が必要です。

その際、従業員は一度、売却・譲渡側を退職するというプロセスを踏むため、買収側に入社せず他社に転職してしまう危険性があります。

的確な企業価値評価を行う

的確な企業価値評価を行うことも予備校のM&Aにおける注意点です。売却・譲渡側に対する企業価値評価は、売却・譲渡側と買収側がそれぞれ個別に行います。

M&A交渉で提示する条件は企業価値評価の結果を基に決めるため、的確な企業価値評価が行われていないと双方の提示条件が乖離したものとなり交渉が難航してしまうでしょう。

以下の動画は、企業価値評価方法の1つである「コストアプローチ」について解説したものです。ご参考まで掲載します。

以下の動画は、企業価値評価方法の1つである「マーケットアプローチ」について解説したものです。ご参考まで掲載します。

予備校業界のM&Aまとめ

予備校のM&Aを円滑に成功させるには、業務委託するM&Aの専門家選びが重要です。選び方の参考例としては、予備校のM&A支援実績があること、自社と同規模のM&A支援実績があること、特定の地域・地方に強みがあること、または全国対応でのM&A支援実績があることなどが挙げられます。

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