2025年2月16日更新都道府県別M&A

石川県・金沢市の事業承継・M&A案件例!動向や事例・相談先も解説

ものづくりの街である石川県・金沢市は、官民ともに伝統的産業を守る意識が高く、中小企業の事業承継問題に対し自治体が積極的に支援する体制を取っています。今回は、石川県・金沢市で実施されている事業承継の公的支援やM&A案件例を紹介します。

目次
  1. 石川県・金沢市の経済状況
  2. 石川県・金沢市の事業承継・M&A動向
  3. 石川県・金沢市の事業承継・M&A案件例
  4. 石川県・金沢市の事業承継・M&A事例
  5. 石川県・金沢市の事業承継・M&A時におすすめの相談先
  6. 石川県・金沢市の事業承継・M&Aで仲介会社を選ぶポイント
  7. 石川県・金沢市の事業承継・M&Aに関する公的支援
  8. 石川県・金沢市の事業承継・M&Aまとめ
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石川県・金沢市の経済状況

石川県の総人口は減少傾向にあり、今後も少子化に伴って人口は減ると考えられます。金沢市における農林水産業の労働生産性は全国平均以上で、漁業の集積と優位性がみられます。また、産業集積において、繊維工業や生産用機械器具の製造業、電子部品など、エレクトロニクス産業などといった産業の重要度が高いです。

石川県では、​県内の支援機関と協力して、先輩起業家、起業家、学生、企業などのベンチャー企業を積極的に支援しています。そのため、高い技術力を持ち、ある分野でシェアトップを占める、いわゆるニッチトップ企業の育成に力を入れているといえるでしょう。石川県は、新規参入や成長の可能性が十分見込めます。

石川県・金沢市の事業承継・M&A動向

石川県・金沢市の事業承継・M&A動向を2つのトピックに分けて解説します。

後継者不在率は6年ぶりに改善

2024年の調査によると、石川県内の企業2,550社のうち、後継者が「いない」または「未定」の企業は1,427社 で、不在率は56.0%となった。これは前年より2.5ポイント低下し、6年ぶりに改善したものの、コロナ前(2019年)と比べると依然として高水準で、全国平均よりも高い状況が続いている。

近年、官民の相談窓口の普及や支援策の拡充により、小規模事業者にも事業承継の支援が広がり、認知度が向上したことが、不在率の改善に寄与したと考えられる。しかし、事業承継の課題は依然として深刻であり、経営環境の変化や後継者の辞退・選定見直し により、承継が中断・頓挫するケースもみられる。

特に、70代・80代の経営者では後継者不在率が高く、80代以上では14.3%に達している。高齢になるほど事業承継のリスクが増す傾向があり、円滑な承継に向けた早期の対策が求められている。

参考:帝国データバンク「石川県「後継者不在率」動向調査(2024 年)」

休廃業件数は増加傾向

2024年における石川県の休廃業・解散件数は580件で、前年度比で10.3%の増加でした。なお、2023年における休廃業・解散件数は526件で、前年度比で23.8%増加しています。

北陸3県で見ると、2023年に休業・廃業・解散した企業は1,370件に達し、前年から22.7%(254件)増加し、2000年の調査開始以来最多となりました。特に石川県は512件(前年比46.7%増) と大幅に増加し、富山県(479件、11.4%増)、福井県(379件、12.4%増)も増加傾向にあります。

能登半島地震の影響による休廃業は112件で、業種別ではサービス業(399件)、建設業(274件)、小売業(180件) が多い結果となりました。また、企業代表者の88.8%が60代以上と高齢化が進み、後継者不足が深刻化しています。。

信用調査会社は、物価高によるコスト増や価格転嫁の難しさに加え、能登半島地震の影響が企業の休廃業を加速 させたと分析しており、経営者の高齢化を背景に、今後も休廃業が増える可能性が高いと指摘しています。

参考:帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2024 年)」
   NHK「北陸3県で休廃業の企業 去年は過去最多 能登半島地震影響も」

石川県企業によるM&A件数

2021年の登録M&A支援機関の報告によると、石川県企業におけるM&A件数は、譲渡側で34件、譲受側で38件を記録しています。北陸地方の他県(富山県:譲渡側31件、譲受側24件、福井県:譲渡側13件、譲受側17件)と比べても多い水準にあることがわかっています。

参考:中小企業庁「M&A支援機関登録制度実績報告等について」

石川県・金沢市の事業承継・M&A案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている石川県・金沢市の事業承継・M&A案件例をご紹介します。

【北陸地方/官公庁と取引あり】オフセット印刷業・地域情報報誌出版業

業歴40年以上を誇る老舗企業です。長年、自治体を中心に官公庁とも取引しており、地域に根差した事業を行っています。地域情報誌を発行しており、県内の多くの企業とネットワークを構築しています。印刷媒体に伴う、企画・デザイン、発送まで一気通貫で対応可能です。
 

売上高 1億円〜2.5億円
営業利益 赤字経営
総資産額 5000万円〜1億円
譲渡希望額 1000万円〜5000万円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【北陸地方/官公庁と取引あり】オフセット印刷業・地域情報報誌出版業(その他サービス等) | M&A総合研究所

【安定した財務体質】北陸信越地方の鉄筋加工・工事業

一級鉄筋技能士が5名以上在籍している鉄筋加工・工事業です。地域に密着して事業運営を行ってきており、安定した受注が確保できています。

鉄筋を使用するものに関しては基本的にすべて対応可能です。見積から加工、施工まで自社で一貫して対応できます。
 

売上高 2.5億円〜5億円
営業利益 1000万円〜5000万円
総資産額 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 1億4,000万円(応相談)
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【安定した財務体質】甲信越地方の鉄筋加工・工事業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

【地域密着型】北陸×ホームセンター事業

業歴30年超と長く、年間40万人以上の地域顧客が来店しており、地域から愛される店舗運営を継続しています。140社を超える取引先により商品は安定供給できており、園芸資材や花苗鉢花等は直接市場で買付を実施しています。

従業員の大半が社歴10年以上のベテランで、接客、商品陳列技術等の面で競合に負けない戦力があるのも強みです。
 

売上高 5億円〜10億円
営業利益 赤字経営
総資産額 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 事業存続に対する不安、戦略の見直し

【地域密着型】北陸×ホームセンター事業(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

【事業の安定性◎】中部北陸のWEB制作・職業訓練事業

職業訓練事業は既得権益的な側面が強く、また人材採用も行えるため非常に強みです。WEB制作の元請比率85%であり、大手企業と長年の継続的な取引関係を構築しています。

両事業とも安定的に推移し財務基盤が安定しています。社長は将来的な後継者不在ですが、継続勤務希望のため自走可能です。
 

売上高 5000万円〜1億円
営業利益 〜1000万円
総資産額 5000万円〜1億円
譲渡希望額 8,000万円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【事業の安定性◎】中部北陸のWEB制作・職業訓練事業(ウェブサイト・システム) | M&A総合研究所

石川県・金沢市の事業承継・M&A事例

石川県・金沢市の事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。

古河電気工業による白山の事業承継・M&A

古河電気工業は、白山(石川県金沢市)の株主である大和PIパートナーズ株式会社が運営する投資事業組合「DPIP企業支援1号」および白山の代表取締役社長と、白山の株式約67%を取得する契約を締結しました。取得日は2025年1月30日 です。

古河電気工業は、メタル・ポリマー・フォトニクス・高周波の4つのコア技術を強みとし、インフラや自動車部品など幅広い分野で事業を展開しています。一方、白山は光通信向けの多心型光MTフェルールで世界第2位のシェアを持ち、光通信・電力関連製品を開発・製造する企業 です。

近年、生成AIの普及に伴い、ハイパースケールデータセンター市場が拡大し、光ファイバ接続の需要が急増しています。特に低損失型MTコネクタ は、光損失を抑え、電力消費を削減できるため、重要な部品となっています。

本M&Aにより、古河電気工業の技術力と白山の開発力・コスト競争力を融合し、製造能力と製品開発スピードを向上させることで、市場競争力を強化します。今後、グローバル市場でMTコネクタ事業を拡大し、低損失型MTコネクタ分野で世界第1位を目指します。

株式会社白山、古河電気工業株式会社への株式67%譲渡を発表

カナカンによる三和食品の事業承継・M&A

カナカン(石川県金沢市)は、2024年10月17日付で三和食品(富山県南砺市)の発行済株式100%を取得し、子会社化しました。

カナカンは、食料品や酒類の卸売業を手がける企業 です。一方、三和食品は、かぶら寿しや大根寿し、昆布巻、魚漬などの伝統食品を製造・販売しています。

今回のM&Aにより、カナカンは富山県推奨「とやまブランド」に認定された三和食品の高い技術とオリジナル製法を継承し、かぶら寿し事業の発展を図るとともに、地域の伝統食品を守ることを目的としています。

三和食品株式会社の株式取得に関するお知らせ

オカモトによるスタハの事業承継・M&A

2024年9月2日、オカモトは、2024年8月28日付でスタハ(石川県金沢市)の全株式を取得し、同社の全事業を引き継ぎました。

オカモトは、オカモトグループ全体の経営を統括する純粋持株会社です。スタハは、石川県内に18の拠点を展開する個別指導型学習塾「スタディハウス」を運営しています。

M&Aのお知らせ|オカモト

システムサポートによるコミュニケーション・プランニングの事業承継・M&A

2024年6月20日、システムサポートは、コミュニケーション・プランニング(東京都渋谷区)の株式を取得し、同社を子会社化することを決定しました。

システムサポートは、石川県金沢市に本社を構えるシステムインテグレーターで、クラウドインテグレーション、システム開発、アウトソーシング、製品開発、さらには海外事業も展開しています。

一方、コミュニケーション・プランニングは、ソフトウェア開発やITソリューションを提供する企業で、XRソリューションや人事システムコンサルティングなどを手掛けています。

今回の株式取得の目的は、システムサポートグループのサービスラインを強化し、特にERP導入支援などの事業成長を促進することにあります。

株式会社コミュニケーション・プランニングの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

GENDAによるレモネード・レモニカの事業承継・MA&

2023年9月19日、GENDAは、レモネード・レモニカ(石川県金沢市)の発行済株式の66.0%を取得し、子会社化することを決定しました。この株式取得により、レモネード・レモニカはGENDAの連結子会社となります。

GENDAは、グループ全体でゲームマシンのレンタルやオンラインクレーンゲームサイトの運営を手がけており、フード&ビバレッジ分野においても、アニメやゲームとのコラボカフェを全国各地で展開しています。レモネード・レモニカは、レモネードの製造・販売を専門とする企業です。

両社は、ショッピングセンターへの出店を通じて蓄積したノウハウを活かし、共同で物件を開発し店舗ネットワークの拡大を目指しています。レモネード・レモニカがグループに参画することで、GENDAグループはアミューズメント施設の運営など既存事業を強化し、さらなる成長を図ることを狙っています。

GENDAグループが「フード&ビバレッジ事業」領域を強化~「レモネード・レモニカ」の株式取得へ ~

石川県・金沢市の事業承継・M&A時におすすめの相談先

石川県・金沢市での事業承継・M&A時におすすめの相談先を3つご紹介します。

金融機関

最近、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設けるケースが増えてきました。特に、投資銀行やメガバンクはファイナンシャルアドバイザー(FA)として、M&Aにおける資金調達や戦略面でのアドバイスを提供する重要な役割を果たしており、企業が買収を進める際に金融機関との連携が欠かせません。

金融機関を活用するメリットには、資金調達に関する高度なアドバイスを受けられる点や、事業承継や後継者への株式移転に関するサポートが含まれます。

さらに、M&A専門の部署を通じて、適切なアドバイザーを紹介してもらえることも大きな利点です。ただし、大手金融機関は主に大規模案件を優先するため、規模の小さい案件には対応しないことがあるほか、アドバイザリー報酬が高額になる可能性がある点には注意が必要です。

【関連】M&Aにおける銀行の役割は?融資・アドバイザリー業務の特徴やM&Aの相談をする際のポイントを解説

公的機関

近年、事業承継やM&Aに関する相談窓口が公的機関によって大幅に整備されました。

「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業が抱える後継者不足などの課題に対応するために設けられた窓口で、情報提供やアドバイス、さらに企業間のマッチング支援を行っています。このセンターは2021年4月に設立され、全国47都道府県に展開されているため、地方企業でも簡単に利用でき、信頼性の高い無料サポートが提供されています。

さらに、個人事業主も支援の対象となっており、M&A仲介会社や専門家の紹介も受けられます。ただし、民間のM&A仲介会社と比較すると、対応の迅速さやサービスの質に限界がある場合があるため、その点を考慮する必要があります。

【関連】事業承継の相談先である事業承継・引継ぎ支援センターとは?成約事例や案件・手数料・その他の支援機関も徹底解説

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の売買を総合的にサポートする専門機関です。売り手と買い手双方と契約を結び、交渉の調整や相手企業の選定、スケジュールの管理、企業価値の評価(バリュエーション)、書類作成など、M&Aに関わるすべてのプロセスを支援します。

仲介会社は、双方の条件を調整しながら、最適な合意に導くために重要な役割を果たします。また、豊富な選択肢の中から適切なパートナーを見つけることで、M&Aの成功率を高めます。M&Aが初めての企業に対しても、具体的なアドバイスや手厚いサポートを提供するため、安心して手続きを進められます。

ただし、着手金や中間金が発生することがあり、費用が負担になる場合もあります。こうしたコスト面を考慮し、成功報酬制を採用している仲介会社を選ぶことが推奨されます。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所
【関連】M&Aの相談先|メリットデメリットや選び方とよくある相談内容を紹介

石川県・金沢市の事業承継・M&Aで仲介会社を選ぶポイント

この章では、石川県・金沢市の事業承継・M&Aで仲介会社を選ぶポイントを見ていきましょう。

業界ごとの変化に対応できるか

事業承継・M&Aをスムーズに実施するには、業界ごとの変化に対応できるM&A仲介会社を選ぶことが大切です。M&Aに関する幅広い知識・経験はもちろんのこと、相談する分野の専門的知識やM&A実績があるかどうかも確認しましょう。

自社と同じ程度の案件を扱った実績があるか

相談する自社と同じ程度の案件を扱った実績があるかどうか、石川県におけるM&A・事業承継の実績があるかどうかも確認してください。地元での実績があると、地元企業や金融機関・士業専門家などとのつながりが強いので、円滑なM&A・事業承継につながります。

報酬体系がわかりやすいか

報酬体系は、仲介会社によって異なります。中には手数料・相談料・報酬体系が複雑な仲介会社もあり、予期しなかった費用が発生してトラブルが起こることもあるため、報酬体系がわかりやすく手数料が安い仲介会社を選びましょう。

担当スタッフの対応と相性が良いか

最後のポイントは、担当スタッフの対応と相性です。事業承継・M&Aでは、担当スタッフとの信頼関係がとても重要です。自社の考え方などを理解し、誠実に対応してくれる仲介会社を選んでください。

石川県・金沢市の事業承継・M&Aに関する公的支援

この章では、石川県・金沢市の事業承継・M&Aに関する公的支援を見ていきましょう。

石川県事業承継・引継ぎ支援センター

石川県事業承継・引継ぎ支援センターは、次世代へ事業をつなげるためにいろいろな課題を解決するサポートを行う公的機関です。

石川県事業承継・引継ぎ支援センターでは、専門家が面談や提出資料を元に、事業における実態の把握や具体的な課題を抽出して、さまざまな選択肢を提案します。

七尾事業承継オーケストラ~事業承継ネットワーク~

石川県とは別に、七尾市が単独で行っている事業承継ネットワークが七尾事業承継オーケストラです。2018(平成30)年2月に発足しました。

七尾市は、過去18年間に1,300余りの企業が廃業し、中小企業の存続と事業承継について、石川県内でも問題意識の強い地域です。七尾市に限定・特化した運営を実施することで、より緻密で丁寧な事業承継支援を目指しています。

石川県商工会の事業承継支援

石川県商工会連合会は、石川県内全20の商工会と商工会連合会内に、2019(令和元)年4月から、小規模事業者向け事業承継相談窓口を設置しました。各商工会の経営指導員を中小企業診断士などで構成し、より有用なコンサルティングの実現を目標に掲げています。

金融機関による事業承継支援

2019(令和元)年8月より、富山銀行、福邦銀行、金沢信用金庫は、経営コンサルティング事業などを行う東京のインクグロウと提携し、北陸3県における企業の事業承継支援対応に乗り出しました。

具体的には、インクグロウが運営しているM&Aマッチングサイト「事業引継ぎ.net」を活用し、3行庫が連携して北陸3県における企業のM&Aサポートに就き、M&Aを成約させて事業承継が1社でも多く実現することを目指します。

【関連】福井県の事業承継・M&A事例!動向や案件一覧も紹介

石川県・金沢市の事業承継・M&Aまとめ

石川県は、他の都道府県よりも製造業の割合が多い地域です。それらの中小企業は創業も古く、地域全体の伝統性を保つためにも安定した地域経済を継続するためにも、欠かせない存在です。しかし、廃業する企業が後を絶ちません。

石川県では、県だけでなく市、商工会、金融機関など、官民をあげて事業承継が実現するよう積極的な取り組みが行われています。事業承継向けの補助金や融資制度もあるので、廃業せずに会社を存続させる方策を考えましょう。

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