2020年2月17日公開業種別M&A

調剤薬局の継承の相場や注意点を解説【事例あり】

近年の調剤薬局業界における事業継承件数の増加は、度重なる調剤報酬改定や後継者不足などで経営が難しくなっているのが原因です。M&Aを検討する際、継承価格の相場が気になる人も多いでしょう。当記事では、調剤薬局の継承時の価格相場や注意点を解説します。

目次
  1. 調剤薬局の継承
  2. 調剤薬局の継承の相場
  3. 調剤薬局の継承が行われる理由
  4. 調剤薬局を継承する際の注意点
  5. 調剤薬局の継承事例
  6. 調剤薬局を継承する適切なタイミング
  7. まとめ
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調剤薬局のM&A・事業承継

調剤薬局の継承

調剤薬局の継承

最近では、大手ドラッグストアや他業種からの参入もあり、業態の多様化が進んでいます。また、度重なる調剤報酬改定による小規模薬局の経営難や、経営者の高齢化によって顕在した後継者問題などが原因で、M&Aによる譲渡・継承も盛んに行われています。

この記事では、調剤薬局の相場や事例について解説しますが、まずは調剤薬局の継承の概要を説明します。

調剤薬局とは

調剤薬局とは「薬局医薬品」、つまり処方箋を取り扱うことができる薬局のことで、調剤室があり薬剤師が常駐する薬局を指します。

OTC医薬品などの一般医薬品を販売するドラッグストアとは違い、調剤薬局の経営には各都道府県知事からの認可が必要です。

似たような業態にドラッグストアがありますが、ドラッグストアは「薬局医薬品」が扱えない代わりに、都道府県知事からの認可は必要ありません。

調剤薬局の継承とは

調剤薬局の継承とは、後継者に調剤薬局の経営権や事業資産などを引き継ぐことです。先述したように、近年の調剤薬局業界では経営者の高齢化と後継者不足が問題になっています。

度重なる調剤報酬改定によって、調剤基本料や業務にかかる技術料が年々引き下げられており、今後多くの調剤薬局は経営難に陥る可能性が高いです。

このような状況を認知していることもあり、薬局経営者の子供や親族は薬剤師の資格を有していても薬局を引き継がないケースが増えています。結果として、親族や事前に用意した後継者への継承だけでなく、M&Aによる継承が増えているのが現状です。

事業継承は、後継者の有無や後継者が親族か否かによって、親族内継承・親族外継承・M&Aによる継承の3つに分類することができます。

【関連】事業承継とM&Aの違いとは?メリット・デメリット、件数を解説

1.親族内継承

親族内継承は、名前の通り親族に対して事業継承を行うことです。親族間で事業継承を行うため、事業継承のタイミングを自由に決められることが大きなメリットです。

また、事業継承前に後継者となる親族を薬局内で働かせることもできるため、仕事内容の引き継ぎや従業員とのコミュニーケーションを事前に行うことが可能です。

親子間での継承であれば金銭のやり取りも必要がないので、継承元・継承先双方にメリットのある継承方法です。

しかし、近年では経営者の親族が事業を継承するケースは減少しており、多くの経営者が高齢になっても経営を続けなければならない状況になっています。

2.親族外継承

親族外継承は、親族以外の後継者を定めて行う事業継承です。自社の役員や従業員など、親族外の後継者への継承は基本的に相続とはならないため、薬局の継承は売却によって行われます。

譲渡金額を決定する際は、土地や建物を含めた事業価値評価から、当事者同士が納得できる適正な譲渡金額を決定することが必要です。

3.M&Aによる継承

親族・親族外を問わず、後継者が定まっていない場合は、M&Aによって事業継承を行うことになります。

M&Aによる事業継承では、最初に専門家やM&A仲介会社のサポートを受けつつ、継承先を選定することが必要です。

継承先が決まったら、正当な取引を行ったうえで事業を継承します。継承先がみつからなければ事業継承を行うことができないため、専門家とともに自社の現状をしっかりと分析し、継承先に伝えられるようにしましょう。

調剤薬局の継承の相場

調剤薬局の継承の相場

調剤薬局の継承は、親族間継承の場合に限っては金銭的なやり取りをせずに継承を行うケースが多いです。しかし、親族外への継承やM&Aによる継承の場合、譲渡価格をしっかりと定める必要があります。

金銭のやり取りが発生する継承で、調剤薬局の価格相場を決める基準には以下の3点があり、その合計額が 譲渡価格の相場となります。

【調剤薬局の価格相場を決める基準】

  • 時価純資産価額
  • 営業権
  • 月の技術料と処方箋応需枚数

時価純資産価額

時価純資産価額は、対象の調剤薬局の企業価値を時価で測る方法です。調剤薬局の資産には、薬局で使用するレセコンなどの専用機器や調剤機器・在庫の医薬品・建物などが該当します。

純資産とはすべての資産から負債の金額を差し引いたものになります。つまり、時価純資産価額とは、現時点でのすべての資産から負債の金額を差し引いた金額を指します。

営業権

営業権とは、継承する調剤薬局の営業利益から割り出される価格基準です。基本的には、調剤薬局が一年に得た利益を企業価値として算出しますが、価格相場を決める際は3~5年の営業権から譲渡価格価値を決定します。

月の技術料と処方箋応需枚数

月の技術料と処方箋応需枚数は、月間の売り上げに算出に大きく影響するため、価格相場を決める際にも重要な要素になります。

一か月の調剤技術料がわかると売り上げに占める技術料を算出することができ、処方箋の枚数が分かれば売り上げが把握できるので、価格相場の決定では最も重要視されます。

【関連】M&Aの相場

調剤薬局の継承が行われる理由

調剤薬局の継承が行われる理由

この章では、調剤薬局の継承が行われる理由を解説します。調剤薬局が継承される主な理由主な原因には、少子高齢化による人材不足から引き起こされているものと、度重なる調剤報酬改定をはじめとした業界の変化によるものが存在します。

【継承が行われる主な理由】

  1. 経営者の高齢化
  2. 後継者問題の解決
  3. 薬剤師不足の解決
  4. 経営状態の悪化
  5. 競合の増加

1.経営者の高齢化

現在、調剤薬局の経営者は全体的に高齢化が進んでいます。年齢に比例して、病気のリスクや体力的な問題も浮き彫りになってきており、経営を続けることが難しいと考える経営者も少なくありません。

自身が動けるうちに事業を引き継ぐために、近年では事業継承を検討する経営者が増えてきています。

2.後継者問題の解決

先述の通り、現在調剤薬局業界では、度重なる報酬改定や大手チェーンの参入などが原因で、小規模薬局の経営が難しくなってきています。

結果、経営者の子供が薬局を引き継ぐケースが減少しており、調剤薬局業界は慢性的な後継者不足に陥っている状態です。

また、従業員から経営者を探そうにも元々女性の比率が多く、家庭との両立が難しいなどの理由により、なかなか適正な人材を探し出すことができません。後継者がいない薬局を残すためにも、近年ではM&Aによる事業継承の事例が増えています。

3.薬剤師不足の解決

薬剤師の資格取得率は年々増加傾向にあるのですが、大手チェーンが次々と事業拡大をしていることもあり、薬剤師不足が発生しています。

また、女性大比率が高い調剤薬局業界では、出産や結婚を機に退職する薬剤師も多いことも、業界全体で薬剤師が不足している大きな原因になっています。

また、近年では若者が仕事の安定性を求めていることもあって、若手の薬剤師の多くは大手に就職してしまい、小規模の薬局まで人員が回っていません。

結果的に小規模の調剤薬局を手放したいという人が増えており、事業継承の件数が増えてきています。

4.経営状態の悪化

経営状態の悪化から、事業を引き渡したいと考えている人も多いです。現在調剤薬局業界は、調剤報酬改定による収益の低下や、調剤薬局自体が増えすぎていることが原因で、経営状態が悪化している企業が増えています。

また、調剤薬局の店舗数を減少させ、かかりつけ薬局を増やしたい政府の方針により、今後も調剤報酬改正によって調剤技術料が減少する可能性が高いです。

上記のような状況を危惧し、今のうちに事業を他人に引き渡したいという経営者が増えているのも、調剤薬局の事業継承が増えている原因といえるでしょう。

5.競合の増加

近年、調剤薬局業界には他業種からの参入が相次いでおり、資本力を充分に持った競合が増加しています。

資本が潤沢な企業は急速な事業拡大が可能であり、調剤報酬の改定にも柔軟に対応することが可能です。

対して小規模の調剤薬局では、先に述べた薬剤師不足や調剤報酬改定への対応の遅れなどが問題となりやすく、新たに増加した競合に打ち勝つことが難しくなっています。

結果的に、事業継承によって調剤薬局を手放したいと考える人が増えてきています。

調剤薬局を継承する際の注意点

調剤薬局のM&A・事業承継
調剤薬局のM&A・事業承継
調剤薬局を継承する際の注意点

調剤薬局を継承する際は、どのような点に注意して進めればよいのでしょうか。ここでは、特に意識しておくべき5つのポイントについて解説します。

【調剤薬局を継承する際の注意点】

  1. 最良の継承方法を選ぶ
  2. 後継者の育成を行う
  3. 計画的に準備を行う
  4. 引き継ぐ内容を確認する
  5. 信頼できる相談先を見つける

1.最良の継承方法を選ぶ

まず注意しなければならないのが、継承の方法です。事業継承をM&Aで行う場合、主に株式譲渡と事業譲渡の2つの方法があります。どちらの手法を選択するかによって、契約成立後の譲渡にかかる期間や双方の状況が変わってきます。

株式譲渡を選択した場合、対象企業の株式を譲渡することによって事業継承するため、売り手側には譲渡金額しか残りません。

一方で、事業譲渡の場合は事業のみを引き渡すので、会社自体は売り手の手元に残ります。事業譲渡は引き継ぐ項目が多いため、株式譲渡に比べると手続きに時間を要します。

また上記以外にも、グループ会社などに事業の一部を移転し、組織再編をする会社分割などが行われるケースもあります。

2.後継者の育成を行う

親族内承継あるいは親族外承継を行う場合、後継者の育成が重要になります。そのためには、事業を引き継ぐにふさわしい人物を早い段階でみつけることが必要です。

後継者に、経営者として必要な視点や業務をあらかじめ身に付けさせることによって、継承後もスムーズに経営を行うことが可能です。

3.計画的に準備を行う

事業継承を行うのであれば、入念な準備は欠かせません。スムーズに継承を行うためには、継承する薬局の情報をまとめておく必要があります。

特に、財務情報や組織情報など譲渡価格や継承後の経営に関わる情報は、資料にまとめておくようにしましょう。

そのほか、後継者の育成や事業継承後の従業員の待遇など、継承後の経営を円滑に行うための準備も必要です。可能であれば5年程度の期間を掛け、着実に継承のための準備を行うようにしましょう。

4.引き継ぐ内容を確認する

事業継承を行う前に、引き継ぐ内容を確認しておくことも重要です。特に、時間がかかるのが財務状況の整理です。

個人経営で公私の財務情報が混同している場合、事前に整理して正確な資産額と負債額を算出する必要があります。

自家用車やパソコンなどについては、事業用と個人用の境界があいまいなことが多いので、明確に分類しましょう。

また、ほとんどの場合、専門家や仲介会社のサポートを受けるとはいえ、当事者自身も事業継承における取引の流れを把握しておくことが必要です。

どのような情報がどのタイミングで必要か、契約書の締結における注意点があるのかなど、事業継承の取引におけるポイントをできる限り勉強しておきましょう。

5.信頼できる相談先を見つける

事業継承の取引は長期間かかるうえ複雑な手続きが必要になるため、当時者のみでの取引を完遂することは困難といえるでしょう。

事業継承を滞りなく終わらせるためには、信頼できる相談先を見つけることが重要です。特に、調剤薬局の事業継承においては、調剤薬局業界の動向や薬機法などに精通している必要があるため、相談先の選定は一般的な業種以上に大切なものとなっています。

M&A総合研究所では、アドバイザー・M&Aに精通した公認会計士・弁護士がチーム体制でサポートするので、スムーズな事業継承が実現可能です。

チームには薬剤師も加わるため、目まぐるしい調剤薬局業界の変化にも柔軟に対応できます。

無料相談は年中無休でお受けしておりますので、事業継承についてお悩みの方はお気軽にお問い合せください。

調剤薬局のM&A・事業承継ならM&A総合研究所

調剤薬局の継承事例

調剤薬局の継承事例

この章では、調剤薬局の継承事例を3つご紹介します。

  1. 後継者問題からM&Aによる継承を行った事例
  2. 経営者自身の高齢化を機に事業継承を行った事例
  3. 時人手不足から事業継承を行った事例

【関連】調剤薬局の売却の相場は?高値で売る方法も解説【案件事例あり】

1.後継者問題からM&Aによる譲渡を行った群馬の老舗薬局

1つ目は、後継者問題を理由にM&Aによる事業継承を行った群馬の老舗薬局の事例です。売却先は大手の調剤薬局チェーンで、保守的な地域である群馬への新規参入のため、地域の信頼を得ている企業を探していました。

双方が条件に納得し、資本業務提携という形式で事業の譲渡が行われました。当案件のように、近年では大手チェーンが未開拓地域に新規参入する際に、既に患者との信頼関係を確立している小規模企業から事業を引き継ぐケースが増えています。

2.経営者の高齢化から事業継承を検討

2つ目は、自身の高齢化と母親を介護する時間の確保のために事業継承に踏み切った事例です。大阪の調剤薬局である継承元企業の女性経営者は、薬局の経営と共に母親の介護を行っていました。

自身の年齢を重ねるなか、薬局経営と母親の介護の両立が困難になってきたこともあり、事業継承に踏み切ります。

当初は、意欲のある従業員に引き継ぐことは考えていましたが、家族からの反対を受けている姿を見て、第三者への継承を決意します。

今後の調剤薬局業界では中堅チェーンでの生き残りが難しいを見通しを立て、大手チェーンの買い手を探し、希望通りの企業への継承に成功しました。

買い手の立場に立って、「欲しい」を思われる薬局に内部状況を整えたことが、事業継承成功のカギとなったと、継承元の経営者は語っています。

3.早めの相談が良好な事業継承を実現

最後に紹介するのは、静岡県で個人経営を行っていた調剤薬局の例です。事業継承に踏み切った理由は人手不足であり、患者に寄り添ったサポートを行うためにはサービス拡充が必要でしたが、人材の確保が難しいことが決め手となりました。

子供は薬学部ではなく、従業員も数名程度だったことから、M&Aによる継承を考え専門家に相談します。早めの相談が功を奏し、静岡県という買い手が付きづらい土地柄にも関わらず、早々に継承先が見つかりました。

買い手の企業には資金力もあったので、継承元の経営者が望むサービス拡充も行えると判断し、両者納得の上で取引は完了し、事業継承に成功しています。リタイアの年齢も踏まえ、早めに相談を行ったことが、スムーズな継承に繋がった事例です。

調剤薬局を継承する適切なタイミング

調剤薬局を継承する適切なタイミング

調剤薬局を事業継承するタイミングには、大きく分けて2つあります。1つ目は、経営から身を引きたい年齢の5年前です。

事業承継を行うには、後継者探しや後継者の育成や引き継ぎ作業などが必要です。M&Aによる継承を考えている場合でも、事業情報の整理や継承先の選定に時間がかかることも考えられます。

スムーズな事業承継のためには、準備期間を含め事業継承を行う5年ほど前から、余裕を持って進めることが大切です。

2つ目のタイミングは、経営状況が悪くなる前です。薬局の財務状況は、譲渡価格を決定する重要な要素になります。

経営状態が悪くなってから継承を行おうとすると、希望する金額では売却できない可能性が高くなります。近々の経済状況も考慮して、事業継承は経営が安定しているうちに行うようにしましょう。

【関連】調剤薬局の売買を徹底解説!流れ・手数料・相談先は?【東京/大阪】

まとめ

まとめ

今回は、調剤薬局の事業継承における相場や事例についてお話ししてきました。調剤薬局の事業継承を成功させるには、事前の準備とタイミングが重要です。

【調剤薬局の継承が行われる理由】

  1. 経営者の高齢化
  2. 後継者問題の解決
  3. 薬剤師不足の解決
  4. 経営状態の悪化
  5. 競合の増加

【調剤薬局を継承する際の注意点】
  1. 最良の継承方法を選ぶ
  2. 後継者の育成を行う
  3. 計画的に準備を行う
  4. 引き継ぐ内容を確認する
  5. 信頼できる相談先を見つける

納得できる事業継承を行うためには、早めに専門家と連携を取り、継承に向けた計画の立案や諸々の準備を進めることが重要です。

M&A総合研究所では、M&Aや事業継承に関する実績豊富なアドバイザー・M&Aに精通した会計士・弁護士がM&Aチームを編成し、フルサポートいたします。

チームには薬剤師も加わるため、薬機法や調剤報酬改定などにも柔軟に対応することが可能です。

事業継承においても徹底的なサポートを行いますので、是非一度お問い合わせください。

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