M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新業種別M&A
OA機器・卸業界のM&A動向、相場!メリットや注意点も紹介!
近年、OA機器・卸業界ではM&Aが活性化しています。その背景にあるのは、社会的に進んでいるペーパーレス化による需要の減少や後継者不在による事業承継問題などです。本記事では、OA機器・卸業界のM&A動向や相場、メリットなどを解説します。
目次
OA機器・卸業界とは
OA機器・卸業界とは
OA(Office Automation)機器とは、オフィスで行う事務作業を効率化するための電子機器のことです。紙を用いて手作業で行っていたような事務作業を自動化もしくは効率化させるために活用します。
ビジネスシーンで必需品とも言えるOA機器ですが、近年のOA機器・卸業界はいくつかの問題に直面しつつあります。この章では、OA機器・卸業界の定義と現状を確認していきます。
OA機器・卸業界の定義
OA機器の代表例は、電話・コンピュータ・コピー機・ファクシミリ等が挙げられます。これらOA機器の販売・卸売を行う業界のことをOA機器・卸業界と言います。
OA機器が普及していなかった頃は手作業で書類を用意する必要がありましたが、1990年代の急激な普及により事務作業の大幅な効率化が図られました。
OA機器・卸業界の現状
OA機器はオフィスとしての機能を果たすための必需品とも言えるものばかりですが、時代のニーズの変化により業界全体が厳しい状況になりつつあります。
【OA機器・卸業界の現状】
- ペーパーレス社会による需要の減少
- 顧客ニーズの発掘が重要
- 業界全体で転換期に入っている
1.ペーパーレス社会による需要の減少
1つ目は、スマートフォンやクラウドの普及によるペーパーレス化です。オフィスの事務作業でコピー機やファクシミリを使う機会がなくなることで、OA機器そのものの需要が減少しつつあります。
多くのオフィスは使用量に応じて料金が決まるカウンター保守を契約していますが、ペーパーレス化を果たすと、毎月のカウンター料金の支払いもなくなります。経費削減にも繋がるため、社会全体でペーパーレス化が急激に進行しています。
2.顧客ニーズの発掘が重要
2つ目は、顧客ニーズの多様化です。複数の機能を搭載した機器が普及する中で、単一機能しか持たない機器は見向きされない時代になりつつあります。
OA機器の販売契約を取り付けるためには、顧客がOA機器を使って何をしたいのかという考えを汲み取って、OA機器に正確に反映させた上でプレゼンテーションしなくてはなりません。
3.業界全体で転換期に入っている
前述した2つの現状により、OA機器・卸業界は厳しい状況に立たされていることが分かります。現在も生き残っているOA機器・卸会社は、需要が残っているOA機器を見つけ出して強い営業によって販売を取り付けています。
しかし、今後もIT技術の発達によりOA機器の需要は減少し続ける見方がされています。従来の営業姿勢のままではOA業界・卸業界で生き残るのは困難となっており、業界全体が転換期に入っていると言えます。
OA機器・卸業界のM&A動向
OA機器・卸業界のM&A動向
OA機器・卸業界が直面している現状から、業界全体でM&Aの動きが加速しつつあります。この章では、OA機器・卸業界のM&A動向を取り上げていきます。
【OA機器・卸業界のM&A動向】
- 顧客リストの有無が決め手になる
- 中小規模の会社はM&Aによる生き残りを考える
- 積極的な業界再編の動き
1.顧客リストの有無が決め手になる
OA機器・卸業界のM&Aで決め手になるのは、顧客リストの有無です。リース契約・カウンター契約をしている顧客が多いほど収益が安定するため、顧客リストを求めてOA機器・卸会社を買収しようとする買い手が多いです。
また、既存顧客に対しては新商品の営業をかけやすいメリットもあります。リース期間の終了と同時に新しく契約を取り付けることで、安定した収益源を確保することができます。
2.中小規模の会社はM&Aによる生き残りを考える
社会的にOA機器の需要が減少しているなか、業界全体で顧客確保競争が激化しています。大手企業の強い営業体制の影響で、規模の小さい中小企業は顧客を奪われ続けている現状があります。
経営状態の悪化よる廃業・倒産を防ぐために、OA機器・卸業界ではM&Aによる生き残りを視野に入れる会社が増えています。
3.積極的な業界再編の動き
M&Aに対して積極的な姿勢を見せているのは買い手も同様です。中小の会社を買収して事業規模を拡大させようとする買い手が増えており、業界全体で再編の動きが強まっています。
業界全体のM&A活性化は、売り手にとっても好機であるといえます。廃業を回避したい売り手と事業規模を拡大させたい買い手のニーズが一致することで、多くのM&Aが成立しています。
OA機器・卸業界のM&A事例
OA機器・卸業界のM&A事例
OA機器・卸業界は沢山のM&A案件が成立しています。この章では、話題性の大きな事例を3つピックアップして紹介します。
【OA機器・卸業界のM&A事例】
- ムサシによるニュービジネスサプライの子会社化
- あいHDによる加のカード発行ソフト・装置メーカーの買収
- ブラザー工業によるニッセイの連結子会社化
1.ムサシによるニュービジネスサプライの子会社化
2017年6月、ムサシはニュービジネスサプライの全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。買収価格は21億円となっており、ムサシにとって過去最大規模のM&Aです。
ニュービジネスサプライは富士フィルムの子会社の富士フイルムビジネスサプライから洋紙事業やプリンターシステム事業を承継する会社です。M&A後に「エム・ビー・エス株式会社」へと商号を変更しています。
ムサシは今回の株式取得で富士フイルムブランドや新規顧客を獲得することで、新規市場の開拓とシナジー効果の創出を図るとしています。
2.あいHDによる加のカード発行ソフト・装置メーカーの買収
2015年3月、あいホールディングスはNBS Technologies Inc.(カナダ)の全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。買収費用は25億7400万円です。
NBSはカナダのカード発行ソフト・装置メーカーです。アメリカ・フランス・イギリスに子会社を持っており、世界中に販売網を有しています。
あいホールディングスは今回のM&Aの目的をカード発行装置のラインナップ強化としています。NBSが保有する販路を活用して既存製品の小型即時発行機を世界に向けて販売することで企業成長を図ります。
3.ブラザー工業によるニッセイの連結子会社化
2012年12月、ブラザー工業はニッセイの株式をTOBにより取得して連結子会社化することを公表しました。TOBは2013年1月30日付けで完了(異動後の所有割合57.15%)し、取得費用は111億7800万円です。
ニッセイは歯車や減速機を中核事業とする会社です。小型ギアモーターにおいては当時の国内シェア25~30%を維持するなど、手堅く事業を展開していました。
今回のM&Aの目的はブラザー工業の販路を活用した商品展開です。ニッセイの製品を米国や中国に展開することで、売上を伸ばすとしています。
OA機器・卸業界のM&A相場
OA機器・卸業界のM&A相場
OA機器・卸業界のM&Aを検討する上で売却金額は関心の高いポイントですが、OA機器・卸業界のM&A相場は一定ではないため、一概に相場を提示することができません。
ただ、取引価格の目安を計算することは可能です。「時価純資産法+営業権」と呼ばれる方法を用いて、時価評価した資産から負債を差し引いた純資産額に、顧客リスト等の営業権を加算して企業価値を算出します。
算出された企業価値を基に、M&A交渉を行って最終的な取引価格を決定する流れになります。OA機器・卸業界のM&Aは顧客リストの有無が大きく影響するので、営業権の算出に関しては専門家に依頼することをおすすめします。
OA機器・卸業界でM&Aを行うメリット
OA機器・卸業界でM&Aを行うメリット
OA機器・卸業界でM&Aが活性する理由は、M&Aで得られるメリットが多いことも影響しています。この章では、OA機器・卸業界のM&Aで得られるメリットを売り手と買い手のそれぞれの視点から解説します。
売り手のメリット
OA機器・卸業界の売り手のメリットは以下の5つが挙げられます。それぞれのメリットを把握しておくことで最大限に活用することができますので、順番に確認していきましょう。
【OA機器・卸業界でM&Aを行う売り手のメリット】
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用先の確保
- 売却益の獲得
- 個人保証・担保からの開放
- 廃業・倒産をまぬがれる
1.後継者問題の解決
1つ目のメリットは後継者問題の解決です。OA機器・卸業界は後継者不足が深刻化しており、存続が危ぶまれている会社が増加しています。
後継者問題は経営者を悩ませる大きな問題ですが、M&Aで買い手グループの傘下入りを果たすと経営を任せることでできるので後継者問題に悩まされることがなくなります。
2.従業員の雇用先の確保
OA機器・卸業界のM&Aは、従業員の雇用先を確保できるメリットもあります。経営状態が悪化しているものの、従業員のことを考えると廃業に踏み切れない経営者も少なくありません。
会社を廃業すると従業員が失業してしまいますが、M&Aであれば従業員を引き継ぐことが可能です。雇用条件を維持することもできるので、従業員が不幸になってしまうことはありません。
3.売却益の獲得
OA機器・卸業界のM&Aは、売却益の獲得を目的にM&Aを行うケースも多いです。特に顧客リストが豊富な会社は高い評価がされることが多いため、売却益も高額になります。
売却益の獲得者は、株式譲渡であれば経営者(株主)、事業譲渡であれば会社です。M&Aの目的に合わせて手法を使い分けることで売却益を有効活用することができます。
4.個人保証・担保からの開放
OA機器・卸業界のM&Aは、個人保証・担保からの開放というメリットもあります。個人保証・担保は、事業に失敗した場合は個人的な資産で弁済することになるため、経営者にとって大きなストレス要因になっています。
M&Aであれば会社と同時に個人保証・担保を買い手に引き継ぐことができるので、悩み・ストレスから開放されます。
5.廃業・倒産をまぬがれる
OA機器・卸業界では、廃業・倒産回避目的にM&Aも多数見受けられます。会社を廃業すると顧客や従業員に与える影響が大きすぎるため、経営者にとって可能な限り避けたい選択肢です。
M&Aで会社を存続させることができれば、顧客や従業員に迷惑をかけることもなく、培ってきた技術・ノウハウを引き継ぐことも可能です。
買い手のメリット
OA機器・卸業界の買い手のメリットは以下の3つが挙げられます。買い手の目的を把握しておくとM&Aの交渉を有利に進められるようになるので、確認しておきましょう。
【OA機器・卸業界でM&Aを行う買い手のメリット】
- 顧客リストの獲得
- 従業員の獲得
- 事業規模・エリアの拡大
1.顧客リストの獲得
OA機器・卸業界の買い手のメリットは、顧客リストの獲得です。販売・卸売会社にとって顧客リストは会社の業績に直結するため、顧客リストを多く保有する会社を買収する傾向にあります。
顧客リストを豊富に所有している場合は、買い手に対して分かりやすくアピールするために、資料として整理しておくと良いでしょう。
2.従業員の獲得
OA機器・卸業界のM&Aは、経験豊かな従業員の獲得を目的に買収することもあります。OA機器の社会的な需要減少のなか、他業種に人材流出する傾向にあり、業界全体でベテランの従業員が不足しています。
OA機器・卸会社をM&Aで買収すれば経験のある従業員をまとめて確保することができます。これは売り手の従業員の雇用先の確保とニーズが一致するメリットなので、相互利益の関係にあるといえます。
3.事業規模・エリアの拡大
OA機器・卸業界のM&Aは、事業規模・エリアの拡大を目的とすることも珍しくありません。OA機器・卸業界は既存顧客の乗り換えが難しい業界でもあるため、新たな地域への進出は難しい特徴があります。
特定地域で顧客リストを保有する会社を買収することで、該当地域に一気に進出することができます。業界シェア占有率を拡大することに繋がりますので、会社の事業規模を手早く拡大できます。
OA機器・卸業界でM&Aを行う際の注意点
OA機器・卸業界でM&Aを行う際の注意点
OA機器・卸業界のM&Aを成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。この章では、OA機器・卸業界でM&Aを行う際に特に注意すべきポイント2つを取り上げます。
【OA機器・卸業界でM&Aを行う際の注意点】
- 自社の強みを理解する
- 顧客離れを防ぐ
1.自社の強みを理解する
1つ目のポイントは、自社の強みを理解しておくことです。自分自身が自社の強み・魅力を理解していなければ適正価格での売却も難しくなってしまいます。
M&A戦略策定段階で自社の強み・魅力を資料として整理しておくことで、買い手に対して効果的にアピールすることができます。
2.顧客離れを防ぐ
OA機器・卸業界のM&Aは顧客確保を目的に行われることが多いため、成約前に顧客離れが進むと会社の価値が大きく損なわれて交渉が白紙になってしまう可能性が高いです。
顧客離れを防ぐためには、M&Aで経営者が変わっても契約条件に変動はないことを説明しておくことが大切です。
OA機器・卸業界でのM&Aの流れ
OA機器・卸業界でのM&Aの流れ
この章では、OA機器・卸業界でのM&Aの流れをまとめています。流れを把握しておくと全体の進行を円滑にすることができるので、M&Aの成功率を高める働きも期待できます。
【OA機器・卸業界でのM&Aの流れ】
- M&A仲介会社に相談
- M&A先の選定・交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
1.M&A仲介会社に相談
まずはM&Aの専門家であるM&A仲介会社に相談することをおすすめします。OA機器・卸業界のM&Aは複雑な交渉も必要になるので、専門家のサポートが欠かせません。
相談先のM&A仲介会社に心当たりがない場合は、前章で取り上げているおすすめのM&A仲介会社を参考にしていただけると幸いです。
2.M&A先の選定・交渉
相談先のM&A仲介会社との契約が済んだら、M&A先の選定に移ります。M&Aの目的・条件を明確化した上で、M&A先に求める条件を絞り込んで検討します。
複数社に打診して何社から反応が得られたら、会社の事業内容や財務状況を記載した企業概要書を提供して本格的な交渉へと移ります。
3.基本合意書の締結
交渉がある程度進んだ段階で基本合意書を締結します。基本合意書は契約書ですが、法的な効力は持っていないため、M&Aの成約を意味するものではありません。
今後の交渉次第では記載内容が変更されることもあるため、あくまでも現段階までの交渉内容の整理と今後のスケジュール確認を目的としています。
4.デューデリジェンスの実施
大方の交渉が終わると最終契約書の締結前にデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスはM&A対象の潜在的リスクを調査するための活動です。
潜在的リスクを放置したままM&Aを実行すると買い手が不要な負債を抱えることになるため、買い手側から派遣される専門家によって、財務・税務・法務などのあらゆる面から徹底的に調査が行われます。
5.最終契約書の締結
デューデリジェンスで大きな問題が認められなかった場合は、最終契約書の締結へと移ります。M&Aの最終的な交渉内容を記載した契約書なので、すべての条項において法的な効力を持ちます。
本契約書の締結を持ってM&Aが成約したことを意味します。以降は一方的な契約破棄をすると、損害賠償問題に発展することもありますので、契約書の内容に不備がないか事前に確認しておくことが大切です。
6.クロージング
最後に売り手の引き渡しと買い手の対価の支払いを行うクロージングを実施します。M&Aの交渉は最終契約書の締結段階で終えていますが、引き渡し準備のために一定期間を開けてから実施することが一般的です。
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まとめ
まとめ
OA機器・卸業界は業界全体が直面している現状からM&Aが活性化しています。大手・中小問わずM&Aが行われており、今後も再編の動きは強まっていくでしょう。本記事の概要は以下のとおりです。
【OA機器・卸業界の現状】
- ペーパーレス社会による需要の減少
- 顧客ニーズの発掘が重要
- 業界全体で転換期に入っている
- 顧客リストの有無が決め手になる
- 中小規模の会社はM&Aによる生き残りを考える
- 積極的な業界再編の動き
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用先の確保
- 売却益の獲得
- 個人保証・担保からの開放
- 廃業・倒産をまぬがれる
- 顧客リストの獲得
- 従業員の獲得
- 事業規模・エリアの拡大
- 自社の強みを理解する
- 顧客離れを防ぐ
- M&A仲介会社に相談
- M&A先の選定・交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
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