M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年9月8日更新都道府県別M&A
静岡県のM&A・事業承継の動向!案件例や相談先も紹介
本記事では、静岡県の事業承継の動向やM&A案件情報、公的機関に支援などを紹介します。日本の他地域と同様、静岡県でも中小企業の後継者不在による事業承継問題が課題です。静岡県でM&A・事業承継を検討している方は必見です。
目次
静岡県の経済環境
静岡県の発表によると、静岡県の人口は3,602,840人(2021⦅令和3⦆年12月1日現在推計)、2020(令和2)年度の名目県内総生産額は15兆7,134億円でした。東京・名古屋などの大都市に近い地域に位置しており、経済規模が比較的大きいです。
静岡県の主な産業としては、輸送用機械や電気機械(いずれも全国1位)、化学工業が挙げられます。具体的な品目では、ステレオセット、ピアノ、二輪自動車やモータースクーター用の内燃機関などが全国トップの出荷額を誇っています。
また、市町村別に見ると、浜松市が県内の事業所数の23.0%、従業者数の19.9%、そして出荷額の15.0%を占め、特に産業面で重要な位置を占めています。
静岡県のM&A・会社売却・事業承継の動向
静岡県のM&A・会社売却・事業承継の動向を3つのトピックに分けて解説します。
静岡県の後継者不在率
静岡県における2023年の後継者不在率は51.9%と過去最低を記録し、前年より1.7ポイント改善しました。後継者問題は引き続き改善の傾向にあります。事業承継適齢期にある60代では、不在率が34.6%となり、3社に1社が後継者を抱えていない状況です。
また、同族による承継が43.5%で依然として最も多いものの、M&Aを含む他の手法が増加しています。後継者候補については、親族および非同族の割合が拡大し、ファミリー承継の割合は減少傾向を示しています。
静岡県の休廃業・解散件数
静岡県では、グローバル化・高齢化などの影響により、産業構造の変化・人手不足など、さまざまな問題が浮上しています。これに伴い、静岡県企業の休廃業・解散が懸念されている状況です。
帝国データバンクの「静岡県内企業「休廃業・解散」動向調査(2023年)」によると、2023年の静岡県での休廃業・解散件数は1,620件(個人事業主含む)でした。そのうち「黒字」かつ「資産超過」状態の企業が全体の45.5%を占めています。
そこから推測されるのは、企業代表者や個人事業主が引退年齢を迎えても後継者が見つからず、黒字でありながら休廃業・解散を選択せざるを得なかったケースが多いであろうということです。
静岡県のM&A件数の推移
静岡県では県内企業がM&Aを用いるケースが増加しています。買収側は新たな販路や人材の確保、事業の拡大、新事業への進出として、売却側は事業承継やイグジット戦略としてなど、静岡県の企業はさまざまな目的でM&Aを実施しているのです。
レコフの調べによると、過去4年間に静岡県企業が関わったM&A件数の推移は以下のようになっています。
- 2018(平成30)年:61件
- 2019(平成31、令和元)年:62件
- 2020年:58件
- 2021年:75件
- 2022年:76件
中部地方のM&A・会社売却・事業承継については、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
静岡県近郊のM&A・事業承継の譲渡希望の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている静岡県近郊のM&A・事業承継の譲渡希望の案件例をご紹介します。
【EBITDA1億円超】東海地方 古紙卸売・リサイクル業
処理実績は年間で古紙3万t、廃プラ300t程度です。自社保有のヤードに加えて、魅力的な各種許認可を保有しています。
エリア | 中部・北陸 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 10億円〜15億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【無線応用機器システム開発・製造×東海エリア】
無線応用機器をシステム開発から製造・販売まで手掛けています。主にOEM受託ですが、一定数自社製品もあり、無線を使った信号の送受信を行うセンサーや、無線を活用したエンドユーザー向けのサービスも展開しています。
エリア | 中部・北陸 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【EBITDA5千万円超/薬剤師多数】東海エリアの調剤薬局
毎月30件以上の医療機関からの処方箋が集まります。1店舗で売上5億円以上を安定して維持しています。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 事業存続に対する不安 |
静岡県の事業承継・M&A事例
静岡県の事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。
NTTグリーン&フードによる海幸ゆきのやの事業承継・M&A
2024年8月1日、NTTグリーン&フード(東京都千代田区)は、関西電力から海幸ゆきのや(静岡県磐田市)の全持分を取得し、完全子会社化しました。
NTTグリーン&フードは魚介類や藻類の品種改良や生産、サステナブルな陸上養殖システムの研究開発を行う企業です。一方、海幸ゆきのやは養殖設備の運営や水産物の製造・販売を手掛けています。
今回のM&Aにより、NTTグリーン&フードは、国内最大規模の養殖エビの陸上養殖施設を保有する企業となります。関西電力のDX技術とNTTのIoTやAI技術を融合し、スマートな陸上養殖の実現を目指し、環境に配慮したサステナブルなシーフードの提供を強化していく予定です。
AFC-HDアムスライフサイエンスによるラビット急行の事業承継・M&A
2024年7月29日、AFC-HDアムスライフサイエンスは、ラビット急行(静岡県浜松市)の全株式を取得し、グループ会社化することを決定しました。
ラビット急行は貸切バス事業と旅行業を営み、子会社のラビットトラベル株式会社も国内旅行業を行っています。AFC-HDアムスライフサイエンスは、健康食品や化粧品の製造販売を主軸とし、不動産開発や観光事業にも注力している企業です。
本件M&Aにより、ラビット急行のバス運行やドライバーの経営資源を活用し、AFCツアーズとのシナジーを追求して、さらなる事業成長を目指します。
MINEZAWAによる古橋の事業承継・M&A
2024年7月22日、MINEZAWA(愛知県岡崎市)は、古橋(静岡県浜松市)の発行済全株式を取得し、完全子会社化しました。
MINEZAWAは機械工具や配管資材の販売を行い、古橋は工作機械や切削工具などの工場用品を販売しています。古橋は、自動車業界の脱炭素化・電動化・自動化の進展に伴い、新たな商材や販路の拡大を図る一方で、人材確保や後継者不在などの課題を抱えていました。
これらの課題を解決するため、M&Aによる株式譲渡を選択した結果、今回の完全子会社化が実現しました。
アルコニックスによる富士根産業の事業承継・M&A
2020年11月、アルコニックスは、静岡県沼津市の富士根産業の株式を追加取得して子会社化すると発表しました。本件M&Aの取引価額は3億8,600万円です。
買収側のアルコニックスは、東京都に本社を置く商社・メーカーで、非鉄金属製品などを取り扱っています。対する売却側の富士根産業は、空調機器向けの配管部品メーカーです。主に、冷凍・空調機器製品に使われる各部品を製造しています。
本件M&Aの目的は、グループ内の金属加工に関する製販一体の事業体制の整備およびグローバル展開の実現です。
TOKAIホールディングスによるイノウエテクニカの事業承継・M&A
TOKAIホールディングスは2020年11月、イノウエテクニカの全株式を取得し完全子会社化しました。本件M&Aの取得価額は公表されていません。買収側のTOKAIホールディングスは、静岡県静岡市に本社を置く持株会社です。
グループ企業には、石油・LPガスなどのエネルギー関連事業を行っているTOKAIや、ケーブルテレビやインターネット接続サービスなどの事業を行っているTOKAIコミュニケーションズなどを抱えています。
対する売却側のイノウエテクニカは、静岡県東部でビルメンテナンス事業を展開している企業です。本件M&Aの目的は、静岡県内でのビルメンテナンス事業の拡大にあります。
事業承継・M&A時におすすめの相談先
静岡県での事業承継・M&A時におすすめの相談先を3つご紹介します。
金融機関
最近では、金融機関がM&Aサポートに特化した専門部署を設立する例が増加しています。特に、投資銀行や大手銀行がファイナンシャルアドバイザー(FA)として重要な役割を担うケースが多く見受けられます。
M&Aを進める際には、金融機関は欠かせない存在です。特に、買収側では資金調達において金融機関との協議が必要不可欠で、既存の取引がある金融機関が最初の相談先となることが一般的です。
金融機関を利用する大きな利点は、資金調達に関する専門的な助言を得られる点です。たとえば、事業承継で親族や従業員が後継者となる際にも、株式取得に必要な資金について金融機関の支援が非常に有効です。
また、M&Aに特化した部署を持つ金融機関や、他の専門家と連携して適切な専門家を紹介してくれる金融機関もあります。
ただし、大手金融機関は主に大規模案件に焦点を当てる傾向があり、中小規模の案件には対応しないこともあります。さらに、仲介ではなくアドバイザリー形式を採用している場合、報酬が高額になることがデメリットといえます。
公的機関
最近では、事業承継やM&Aに関する相談が公的機関でも可能となっています。例えば、「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業が抱える後継者不足などの問題解決を目的とした公的相談窓口です。
このセンターでは、事業承継やM&Aに関する情報提供、アドバイス、さらには企業間マッチングの支援も行っています。2021年4月に設立され、全国各地で専門家が無料で相談に応じ、中小企業の事業承継をサポートしています。
全国47都道府県に相談窓口が設置されており、地方の企業でも利用しやすいのが大きな利点です。国が運営しているため、無料で公平なアドバイスを受けられる点も大きな魅力です。また、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介も受けられ、個人事業主の承継にも対応しています。
ただし、対応の迅速さには限界がある場合があり、民間のM&A仲介会社と比べると、サポート実績や提供サービスに差があることがデメリットとなる可能性もあります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の売買に特化してサポートを提供する企業で、売り手・買い手の双方と契約を結び、双方の利益を考慮しながら交渉を進めます。仲介会社は、初期相談から企業の選定、スケジュール管理、企業価値評価(バリュエーション)、書類作成など、M&Aに関するすべてのプロセスを包括的にサポートします。
彼らの役割は、売り手と買い手の要望を調整し、双方が合意できる最適な条件を見つけ出し、スムーズなM&Aを実現することです。
仲介会社の大きな強みは、多くの候補企業から最適な相手を探し出せる点です。これにより、取引双方が納得のいくM&Aを成功させやすくなります。
また、M&Aの経験が少ない企業でも安心して進められるように、仲介会社が継続的にアドバイスを提供し、相手企業との円滑なコミュニケーションをサポートするため、成功の可能性が高まります。
ただし、仲介会社によっては着手金や中間金が発生するため、費用面での負担が懸念されることもあります。費用を抑えたい場合は、成功報酬制を採用している仲介会社を選ぶのが一つの方法です。
静岡県のM&A・会社売却・事業承継に役立つ公的機関
ここでは、静岡県のM&A・会社売却・事業承継に役立つ公的機関として、以下の4つを取り上げます。
- 静岡県事業承継・引継ぎ支援センター
- 静岡県よろず支援拠点
- 静岡商工会議所
- 静岡県信用保証協会
①静岡県事業承継・引継ぎ支援センター
静岡県事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する公的な相談窓口です。中小企業の事業承継やM&Aに関する専門家が、無料で相談を受けつけています。電話で相談の予約を行えて、センターの窓口でアドバイスや情報提供を受けることが可能です。
②静岡県よろず支援拠点
静岡県よろず支援拠点とは、国が全国に設立している中小企業・小規模事業者向けの経営全般相談所です。無料で利用できます。静岡県よろず支援拠点の設置場所は、静岡商工会議所静岡事務所内です。
中小企業診断士・社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーなどが在籍しており、専門的なアドバイスを受けられます。セミナーやイベントも開催しているため、静岡県でM&Aを行いたい場合は活用するとよいでしょう。
③静岡商工会議所
静岡商工会議所は、地域の経済発展に向けて活動している公益経済団体です。主な会員は商工者や企業の経営者であり、相互の助け合い・セミナーの開催などを展開しています。各種相談会も行っているため、静岡県でM&Aを行う際に役立てられるでしょう。
④静岡県信用保証協会
静岡県信用保証協会は、中小企業を金融面で支えている公的保証機関です。各種保証制度を取り扱っており、起業志望者や経営者などを支援しています。保証業務以外にも経営相談を受けつけているので、事業承継やM&Aの相談も可能です。
商工会議所が支援する事業承継については、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
静岡県のM&A・会社売却・事業承継のまとめ
静岡県における後継者不在の問題は安心できるものではなく、廃業危機にある中小企業は多いと言えるでしょう。
その有効な解決策がM&Aによる事業承継です。M&Aで事業や会社を売却すると、その買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継が実現します。そして、M&Aを成功させるためには、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けることが肝要です。
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