宮城県・仙台市のM&A・事業承継の案件例！動向や事例・公的支援も紹介

宮城県の主要産業（出荷額ベース）は、食料品製造業、電子部品・デバイス産業、鉄鋼業となっています。特に、コントロールユニット、鉛管・板、レーザーダイオード は全国でトップの出荷額を誇ります。

県内の産業活動を市町村別にみると、仙台市が経済の中心地となっており、以下の割合を占めています。

• 事業所数の19.4%
• 従業者数の14.8%
• 出荷額の16.3%

その他の主要都市として、石巻市、大崎市、気仙沼市、登米市、栗原市、岩沼市、柴田町 などが経済活動の拠点となっています。仙台市を中心に、県内各地で特色ある産業が発展しており、宮城県全体の経済成長を支えています。

参考：経済産業省「－ 食料品、電子部品･デバイス等が盛んな宮城県 －」

宮城県・仙台市のM&A・事業承継の動向について、3つのトピックに分けて解説します。

帝国データバンク仙台支店の調査によると、2023年の東北6県に本社を置く企業の後継者不在率は56.0%（速報値） となり、前年から0.7ポイント低下しました。不在率は4年連続で改善し、2011年の調査開始以来、最も低い水準 となっています。背景には、M&A（合併・買収）の普及や、企業内部での昇格による事業承継の増加 が挙げられます。

県別では、岩手（57.9%）と山形（46.6%）が3ポイント以上改善 し、大きな低下が見られました。一方、宮城は1.1ポイント低下の59.2%だったものの、秋田（70.0%）は全国で2番目に高く、青森（61.2%）も高止まり しています。最も低いのは福島の46.1% でした。

不動産業を除く建設業や製造業を含む6業種で後継者不在率が低下しました。最も高いのは建設業（59.6%） で、不動産業（59.3%）、サービス業（59.2%） が続いています。

同族承継は39.8%と2年連続で減少 する一方、企業内での昇格による事業承継は32.0%と2年連続で増加 しています。今後も、事業承継の多様化が進むと予測されます。

参考：日本経済新聞「東北企業の後継者不在率が改善 最低の56% 脱同族承継」

2024年における宮城県の休廃業解散件数は1,036件で、前年比10.3%の増加が見られました。宮城県の休廃業解散件数は、調査開始以降で初の1,000件台を記録しています。

参考：帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査（2024年）」

仙台市と仙台商工会議所が発表した「経営発達支援計画の概要」によると、仙台市の人口は2020年に110万人弱でピークを迎え、その後は緩やかに人口減少すると予想されています。

これに伴い、売上低迷・労働人口減少による人材確保難・高齢人口比率の上昇など、中小企業を取り巻く経営環境は今後さらに厳しくなる見込みです。経営者における高齢化の進行、後継者不在による倒産・廃業による雇用および技術・ノウハウの喪失による地域経済の衰退なども懸念されています。

仙台市の持続的な発展には、地域経済を支える中小企業や小規模事業者の成長が不可欠です。そこで、仙台商工会議所では事業者の競争力向上を目的とした総合的な支援を進めています。

具体的には、経済動向の調査や外部・内部環境の分析を通じて経営状況を把握し、環境変化を見据えた事業計画の策定を支援します。また、付加価値の高い商品・サービスの開発や販路開拓による市場拡大、生産効率の向上を通じた経営強化にも取り組みます。

さらに、地域伝統行事を活用した観光事業やインバウンド誘致、商店街の活性化、若者の地元定着促進などを、行政や地域事業者と連携して推進 し、地域経済の発展を目指します。

出典：仙台商工会議所「経営発達支援計画の概要」

この章では、宮城県・仙台市近郊におけるM&A・事業承継の案件例を見ていきましょう。

同社展開エリアでは数少ない造成工事から行っている会社です。長年の人脈から安定した仕入が可能です。中古住宅のリフォームに強みがあります。役員陣が地場の不動産会社の出身のため、職人との繋がりが強く低価格での工事の依頼が可能です。
 

東北に2拠点を構え、市役所や地元企業など優れた取引基盤を構築しています。大手ゼネコンとの取引もあり、現場事務所へ事務用品や事務機器を手配しているのも強みです。NetCash1億円以上、修正営業利益2,000万円程度と財務も良好です。
 

省力機械・ロボットの設計、製作を手掛けている企業です。高圧力装置、半導体製造ライン、搬送ラインなど多くの受注実績があります。当面大きな設備投資は必要なく、譲渡後すぐに業績拡大・資産構築に注力することが可能です。

東北エリアで仕出し業をメインに飲食店の運営を行う企業です。近隣の同業他社が縮小し、仕出し部門の受注が急増しています。仕出し、飲食店ともに約8割が常連顧客であり安定した受注を誇っています。お歳暮の注文は全国（北海道から熊本まで）から受注している状況です。
 

年間200棟以上の施工を行っているため、高品質かつ短納期での施工が可能です。外国人労働者中心の施工体制のため、全国問わず需要のあるエリアに対して流動的な人員配置が可能です。

施工体制に余力があることから、受注増加によりさらなる成長を狙えます。これまで多くの建築工事未経験の外国人労働者を育成してきたため早期の戦力化が可能です。
 

近年における宮城県のM&A・事業承継の事例をご紹介します。

能美防災は、2024年10月1日付でシステムズ（宮城県仙台市）の全株式を取得し、子会社化しました。

能美防災グループは、火災報知設備や消火設備などの防災システムを提供する総合防災企業です。一方、システムズは、東北エリアで電気通信、電気工事、消防施設事業を展開 しています。

今回のM&Aにより、能美防災は東北エリアにおける防災および弱電分野での連携を強化し、施工体制の拡充と業績向上を目指します。これにより、地域の防災インフラのさらなる強化にも貢献していく方針です。

ジオリーブグループは、2024年9月12日付で丸西（宮城県仙台市）の株式を取得し、連結子会社化することを決定しました。

ジオリーブグループは、傘下企業の経営管理を行う持株会社 であり、丸西は内装工事業を展開する企業 です。

今回のM&Aは、人口減少や少子高齢化に伴う住宅需要の縮小を見据えた戦略的な取り組みです。商業施設や公共施設の内装工事を手掛ける丸西をグループに迎え入れることで、東北エリアにおける事業基盤を強化するとともに、グループ全体で非住宅分野への展開を加速 させる狙いがあります。

キムラタンは、2024年8月26日付で、イスト、ライブ、コネクト（総称：イストグループ）の発行済株式を全て取得し、子会社化することを決定しました。

キムラタンは、不動産事業、ベビー・子供アパレル事業、ウェアラブル事業を展開 しています。一方、イストグループは、個人向けの不動産販売を中心に、リフォーム工事や不動産賃貸業を手掛ける企業 です。

本M&Aを通じて、キムラタンはイストグループの賃貸収入や不動産販売収入を取り込み、収益基盤の強化を図るとともに、事業領域の拡大を進め、多様な不動産ビジネスの展開を目指します。

2020年11月、コンドーテックはフコクの株式すべてを取得して完全子会社化することを発表しました。本件M&Aの取引価額は、非公開です。

買収側のコンドーテックは、大阪府大阪市と東京都江東区に本社を構え、建設資材・環境関連資材の仕入販売などを手掛ける専門商社です。自社で建設金物の製造も手掛けるなど、メーカー機能を備えています。

売却側のフコクは、土木建築用足場など架払工事業を行う企業です。本件M&Aの目的は、社会インフラの老朽化に伴う、維持修繕分野の事業基盤強化になります。

宮城県・仙台市のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関を利用するメリットは、広範なネットワークを持ち、多くの取引先を抱えているため、適切な事業承継先を紹介してもらえる可能性が高いことです。自社の経営状況を詳しく把握しているため、スムーズな承継を支援してくれます。事業承継に関する知見がない場合でも、提携する専門家（税理士やコンサルタントなど）を紹介してもらえて安心して進めることが可能です。

一方で注意すべき点として、事業承継と併せて融資などの金融商品が提案されるケースもあるため、本当に必要な条件のもとで承継を進められるか慎重に判断することが重要です。承継に必要な最低限の条件を見極め、金融機関の提案内容をしっかり精査することが求められます。

事業承継・引継ぎセンターは、国が設置した公的機関で、中小企業庁の委託を受けて運営されています。全国47都道府県の認定支援機関内に設置され、中小企業の事業承継を専門的に支援しています。

このセンターの大きな特徴は、国が設置している公的な専門機関であるため、信頼性の高い情報や専門的な知識を得られる点です。事業承継に関する知見が豊富なため、適切なアドバイスやサポートを受けることができる のが大きなメリットといえます。

M&A仲介会社は、事業承継を検討する際の有力な相談先の一つ です。事業承継ではM&Aが関わるケースが多く、専門的な知識や豊富な実績を持つ企業に相談することで、手続きをスムーズに進められます。

また、M&A仲介会社の多くは税理士・弁護士・会計士などの専門家と連携しているため、事業承継に関するさまざまな課題に対して適切なサポートを受けることが可能です。必要に応じて、それぞれの専門家に直接相談できる点も大きなメリットといえます。

ただし、依頼内容によっては報酬が高額になるケースもあるため、費用面について事前にしっかり確認することが重要です。

本章では、宮城県・仙台市のM&A・会社売却・事業承継に役立つ公的機関として、以下の4つを取り上げます。

1. 宮城県事業承継・引継ぎ支援センター
2. 宮城県よろず支援拠点
3. 宮城県商工会議所連合会
4. 宮城県信用保証協会

それぞれの項目を見ていきましょう。

宮城県事業承継・引継ぎ支援センターは、国の補助のもとで宮城県が主体となり作られたネットワークです。宮城県内の商工団体・金融機関・士業などが集まるつながりで、宮城県地域のプラットフォームを構築しています。

宮城県事業承継・引継ぎ支援センターは、みやぎ産業振興機構を大もとに、宮城県における中小企業へのサポートを行っています。宮城県の企業や団体が参加しているため、宮城県内のM&A案件を把握している可能性が高いです。

そのため、宮城県事業承継・引継ぎ支援センターの活用によって、宮城県内で希望に合うM&A案件を見つけられる場合があります。

政府も事業承継・引継ぎ支援センターの活用を後押ししています。近年のニーズに合わせて、事業承継・引継ぎ支援センターのネットワークも拡充している状況です。後継者不在などで、事業の存続に悩みを抱える経営者は少なくありません。

国が支援を行う事業承継・引継ぎ支援センターは経営に関する悩みを解消するため、事業承継を行いたい人を支援しており、各都道府県に設置された支援センターではM&Aを行いたい方々に向けてサポートを行っているのです。

ただし、事業承継・引継ぎ支援センターは、M&Aを行う際にクロージングまでサポートするとは限りません。場合によっては、M&A仲介会社の利用が必要です。

宮城県よろず支援拠点は、地域における中小企業向けの無料相談窓口です。中小企業診断士などのコーディネーターが中小企業向けに経営相談窓口を設けて、アドバイスを行っています。

セミナー・勉強会や、宮城県内の経済を活性化するための活動も行っているため、宮城県内でM&A案件を探す際に活用しましょう。

宮城県商工会議所連合会は、商工会議所法に基づき設立された認可法人です。事業経営者を中心に運営され、県内に6つの商工会議所が存在します。

経営全般に関して問題解決に向けた指導を行い、専門家の派遣も実施しています。希望する宮城県のM&A案件を把握している可能性もあるので、気軽に相談すると良いでしょう。

宮城県信用保証協会は、信用保証協会法に基づいて設立された公的保証機関です。中小企業における金融の円滑化を目的に、中小企業者へさまざまな支援を行っています。

具体的には、中小企業が金融機関から融資を受ける際に公的な保証人となり、スムーズな借り入れを行うなどのサポートです。金融面のサポートも行っており、宮城県でM&A案件を探す際に役立ちます。

宮城県・仙台市はM&Aが積極的に行われている地域で、M&Aを行いやすい環境が整っています。県庁所在地の仙台市は非常に発展した大都市であるため、ビジネスチャンスも豊富です。

宮城県・仙台市は大手のM&A仲介会社が拠点を設置しているうえ、金融機関も積極的にM&Aを推進しているため、M&Aを行う際はこれらの機関にサポートを依頼するとよいでしょう。