M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年9月30日公開業種別M&A
金型設計・製造業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!
金型設計・製造業界では海外企業との競争が激しく、また海外市場の獲得も必要なことから、M&Aで事業再編を図る動きが加速化しています。この記事では、金型設計・製造業界の動向とM&Aのメリットや事例などについてみていきましょう。
目次
金型設計・製造業界の動向
NIKKEI COMPASSによると、金型設計・製造の2022年の生産額は前年比3.3%増の3,556億円でした。
金型は、近年半導体やEVの製造業界からの需要が多く、一見すると追い風が吹いているように見えます。
しかし、かつては絶対的な技術力を誇っていた日本の金型設計・製造業界でしたが、海外勢の技術の追い上げと、3Dプリンタの登場により、長期的にみたときの需要が今後どのように変化していくのか見通せない面もあります。
参考:NIKKEI COMPASS「金型」
金型設計・製造会社をM&Aで売却するメリット
金型設計・製造会社をM&Aで売却するメリットは次の通りです。
後継者問題の解決、従業員の雇用確保
金型設計・製造業界に限らず、日本では多くの会社で経営を引き継ぐ人がいない後継者問題が深刻化しています。
M&Aで会社を売却することができれば、跡継ぎがいなくても会社を存続させることができて、金型設計・製造会社が育ててきた技術やノウハウを次世代へ継承させることが可能です。
技術やノウハウの継承
半導体製造や部品製造に使うための金型設計・製造では、微妙な精度の調整が必要な作業が多く、熟練の技術とノウハウが必要になります。
後継者不足などで会社を廃業してしまうと、その金型設計・製造会社が長年育ててきた技術やノウハウが失われてしまうことになり、日本の製造業にとって大きな損失となるでしょう。
M&Aで会社を売却することができれば、その会社が持っている技術やノウハウを買収側の会社へ引き継ぐことができます。
M&Aには、貴重な技術を守るため、という意味もあるのです。
売却利益の獲得
会社をM&Aで売却することができれば、経営者は売却利益を手に入れることができます。税金を支払った後の残りは、自由に使えるお金です。
もしも、会社を廃業してしまうと、従業員への退職金や設備の処分費用などの出費がかかります。
M&Aで会社を売却できれば、これらの出費はなく収支はプラスになるのです。
資本力のある企業の傘下で経営安定・海外進出
M&Aで金型設計・製造を売却すると、経営を安定化できるというメリットもあります。
現在、発注量は多いものの、海外勢の追い上げや国内市場の低迷と価格破壊、金型に代わる技術の登場により、厳しい経営状態に置かれている金型設計・製造会社が増加しています。
資本力のある企業の傘下に入ることで、大手企業のリソースを利用できるようになり、中小企業単独では難しいDX化への対応や、海外市場への進出などが可能になるでしょう。会社の将来を安定化できる可能性が高まります。
金型設計・製造業界のM&A・売却・買収事例4選
金型設計・製造業界では実際にどのようなM&Aが実施されているのでしょうか。今までに実際に行われた金型設計・製造会社のM&Aの事例を4つ紹介します。
TOWA(株)がK-Tool Engineering Sdn. Bhd.から金型製造事業を取得した事例
2023年2月に、TOWA株式会社から、マレーシア ペナン州のK-Tool Engineering Sdn. Bhd.から金型製造事業を譲り受けるMA&と、その受け皿となる製造子会社を設立することを発表しました。
TOWAは、京都に本社のある精密金型、半導体製造装置メーカーで、マレーシアなどの東南アジアで事業を展開しています。
K-Tool社の金型製造事業は、半導体製造用金型の専門技術者を有し、高精度な金型を製造するメーカーとして国内外から高い評価を得ている部門です。
このM&Aにより、TOWAとしては東南アジア地域での金型事業の早期立ち上げが可能になるとしています。
参考:TOWA株式会社「マレーシアにおける金型製造事業譲受及び製造子会社の設立並びに特定子会社の異動に関するお知らせ」
富士紡ホールディングス(株)が(株)GFIホールディングスを子会社化した事例
2022年9月に、富士紡ホールディングス株式会社から、株式会社GFIホールディングスの全株式を取得して、同社を子会社化することと、同社の子会社である株式会社IPMを孫会社化することが発表されました。
富士紡ホールディングスは、研磨剤事業、化学工業品事業、生活衣料事業、化成品事業の4つの事業で、高付加価値な製品の開発、製造に取り組んでいる会社です。
GFIホールディングスの子会社であるIPMはプラスチック用精密金型の設計、製作分野で優れた技術力を持っています。
富士紡ホールディングスとしては、IPMがグループの一員となることで、射出形成品の品質向上が期待できるとしています。
参考:富士紡ホールディングス株式会社「株式取得(子会社化及び孫会社化)に関するお知らせ」
(株)タカギセイコーが(株)中井製作所を黒田化学(株)に譲渡した事例
2021年3月に、株式会社タカギセイコーから、同社の連結子会社である株式会社中井製作所の全株式を、黒田化学株式会社へ譲渡するM&Aが発表されました。
タカギセイコーは富山県にある自動車などのプラスチック製品及びその金型を製造販売する会社です。
中井製作所は、精密プラスチック射出成形金型の設計・製造を行う会社で、2000年にタカギセイコーの連結子会社になりました。
タカギセイコーとしては、生産品目の選択と集中を進めるために、中井製作所の株式のM&Aによる譲渡となりました。
参考:株式会社タカギセイコー「連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ」
(株)アークが(株)積水工機製作所を三光合成(株)へ譲渡した事例
平成24(2012)年8月に、三光合成株式会社から、株式会社アークが所有する株式会社積水工機製作所の株式を譲り受け、同社を持分法適用関連会社として、業務提携を締結することが発表されました。
このM&Aにより、三光合成の積水工機製作所の議決権所有割合は33.18%になります。
三光合成は創業70周年を誇るプラスチック工業部品メーカーです。積水工機製作所は、プラスチック成形金型の技術力・品質・サポート体制で世界トップクラスの水準を持つメーカーです。
このM&Aにより、三光合成としてはプラスチック成形金型分野の強化を図ることができるとしています。
参考:三光合成株式会社「株式会社積水工機製作所の株式の取得(持分法適用関連会社化)及び同社との業務提携締結に関するお知らせ」
金型設計・製造会社のM&Aの流れ
金型設計・製造会社をM&Aで売却する流れについて解説します。
M&Aの専門家への相談
金型設計・製造会社をM&Aで売却したほうがいいのか考え始めたら、まずはM&Aの専門家に相談してみましょう。
専門家は、法律や財務関連のM&Aについての高度な知識を持ち、M&Aが最善策なのかどうか、といったところから親身になって一緒に考えてくれます。
M&Aを決断したら、難しい相手企業探しや手続きもサポートしてくれるので安心してM&Aについてお任せできるでしょう。まずはM&Aの専門家への相談から始めるのがおすすめです。
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売却先の選定
M&Aの専門家にサポートを依頼することに決めたら、専門家は売却探しの選定に入ります。
会社の詳細を明かさないノンネームシートをM&A情報サイトに掲載して買収希望者を募ったり、金型設計・製造会社に興味のある顧客に声を掛けたりして、売却先候補を探すのです。
数社候補企業が見つかったら、その中から厳選して、経営者に提案し、経営者によって交渉相手が決定されます。
トップ面談・条件交渉
交渉相手を決めたら、トップ面談を行いお互いの相性を確認します。トップ面談でM&Aを進めることを決めたら、最初の交渉に入ります。
この段階の交渉で決めるのは、M&Aのスキーム、譲渡金額と時期の目安、従業員の待遇など、M&Aの大枠です。
秘密保持契約の締結
M&Aを進めるにあたって、売却側の会社はM&Aの専門家と買収側の会社に、会社の機密情報である財務情報や人事情報、ノウハウなどを開示する必要があります。
この情報が漏洩すると、万が一M&Aが破談になったときに売却側にとって大きな損失となるので、必ず秘密保持契約を情報の開示前に締結します。
基本合意の締結
最初の交渉がまとまったら基本合意書を締結します。
基本合意書では、独占交渉権と秘密保持義務以外の項目には法的拘束力はかかりません。今後の成り行き次第では、基本合意書に記載された金額などの項目の内容は変更の可能性があります。
デューデリジェンスの実施
基本合意書の締結後にデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、買収側が売却側の会社の正確な価値を算定して、リスクを調査することです。
M&Aについての知見の高い弁護士や会計士などの専門チームが売却側の会社に入り、財務や法務、人事などについて徹底的に調べ上げます。
ここで、基本合意書締結時には開示されていなかった重大な問題が発見された場合には、この後の最終交渉で大幅な減額交渉や、最悪の場合にはM&Aの破談の可能性もあるようです。
最終交渉と最終契約の締結
デューデリジェンスの結果、買収側がM&Aを進めても大丈夫だと判断した場合には、最終交渉に進みます。
最終交渉では、M&Aを実施するに当たっての必要な事柄がすべて決定されて最終契約書に記載されます。譲渡金額やスキームといった基本的なことから、売却側の経営者の個人保証の外し方や、会社が保有する美術品の扱いなど、細かい点もすべてです。
最終契約書はすべての項目に法的拘束力がかかり、サイン後の変更には違約金などの罰則が発生します。
クロージング
最終契約書の締結から、経営権の引き渡しであるクロージングまでは、1ヶ月から1年程度の期間を設けます。この間に、従業員と取引先への説明に努めながら、経営体制の変更に向けた準備を進めます。
クロージング日になったら、株式など買収側に譲渡するものを譲渡し、代金を決済してM&Aが完了です。
金型設計・製造会社でM&Aを行う際の注意点
金型設計・製造会社でM&Aを実施するときの注意点をみておきましょう。
情報漏洩に気を付ける
会社売却の噂が広がると、従業員の離職や取引先からの取引停止を招く可能性があります。
最終契約書を締結するまで、M&Aについての情報の共有は最低限の人数に限りましょう。また、噂や憶測はちょっとした会話の断片を耳にしたことから広がります。M&Aについて話をするときには、周囲の状況によく気をつけることが大切です。
従業員や取引先に対して十分な説明をする
買収側が高額で会社を売却する目的の一つが、従業員を確保して顧客を広げること、という場合が多いようです。従業員や取引先がM&Aに反発して、離職や取引停止を招いてしまったら、買収側としてもその会社を買った意味がありません。
最終交渉までに、従業員や取引先についてしっかりと取り決めておき、M&Aの公表後は丁寧な説明を尽くして、M&Aの必要性について理解してもらうように努めましょう。
目的と戦略の明確化
M&Aは目的が最も大切です。目的が決まれば、スキームなどの戦略も自然と決まります。
M&Aをどうして行うのか、そのためにはどのような戦略が必要か、M&Aの専門家にサポートしてもらって、M&Aを進める前に明確化しておくようにしましょう。
金型設計・製造会社のM&A・事業譲渡まとめ
金型は3Dプリンタが出てきたとはいえ、まだまだ製造業の根幹をなす技術であることは間違いないでしょう。金型設計・製造会社が続けられなくなり、廃業することになると、日本の製造業にとって大きな損失であることは間違いありません。
金型設計・製造会社の将来が不安な場合には、M&Aでの売却の可能性について、M&Aの専門家に一度相談してみることをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。