2021年4月25日更新資金調達

中小企業金融円滑化法が与えた影響

中小企業金融円滑化法とは、借入条件の緩和や、返済に一定の猶予期間をもたらすのをサポートする法律でした。すでに終了している中小企業金融円滑化法は現在の中小企業支援にどのような影響を与えたか、昨今の中小企業の資金調達手法についてもご紹介します。

目次
  1. 中小企業金融円滑化法とは
  2. 中小企業金融円滑化法の施行終了後
  3. 中小企業金融円滑化法は再び施行されるか?
  4. 中小企業における資金調達手法
  5. まとめ
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中小企業金融円滑化法とは

中小企業金融円滑化法とは

平成25年まで、「中小企業金融円滑化法」(正式名称:中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律)と呼ばれる法律が存在しました。中小企業金融円滑化法を活用した経験がある方も中にはいらっしゃるでしょう。

今はすでに役割を終えてしまった中小企業金融円滑化法ですが、日本政府の中小企業への取り組みを方向付ける大きなきっかけとなりました。今回は、そのような中小企業金融円滑化法について解説します。

どのような法律だったのか

平成21年といえばリーマンショックの直後で、日本全体にも金融危機が押し寄せていた時期です。資金繰りが悪化する中小企業が続出しました。政府は中小企業などの資金繰りをサポートしようと、中小企業金融円滑化法を時限立法(当初2年の期限付きであった)として成立させました。

中小企業金融円滑化法は、金融機関から借入を受けている中小企業や住宅ローンの借り手に対するサポートを目的に施行されました。具体的には借入条件の変更サポートや貸し渋り・貸しはがしの対策を実施し、法律の施行により大幅に借入条件が緩和されました。

しかし、中小企業の資金繰り悪化は想像以上に深刻だったがゆえに、その後この法律は平成21年から平成25年までに2度も延長して施行されました。最終的に中小企業金融円滑化法は、平成25年まで続けられました。

一見中小企業金融円滑化法は、中小企業にとって非常に有益な法律であり、資金繰りの一助となるものです。実際に中小企業金融円滑化法を使用した企業は、30~40万社ほど存在します。

中小企業金融円滑化法を活用して返済期間の延長や借入条件を緩和する事自体は、中小企業にとってプラスとなります。しかし、結果的に負の側面も残していった法律でもありました。

中小企業金融円滑化法のマイナス面

プラスの面と同時に、中小企業金融円滑化法は金融機関の業務停滞や利益の低減につながりました。実際に一部金融機関の収益が悪化した事実もあります。また、借入期間に一定期間の猶予を申請する場合、申請した企業の信頼を損なうという事象も発生しました。

中小企業金融円滑化法を活用したことでマイナスのイメージがついてしまい、金融機関から新たに融資が受けられなかったというケースもありました。そうして最終的に資金難に陥った企業は少なくありません。

中小企業金融円滑化法が施行されてから、倒産企業が増加したのです。平成23年には前年の5倍近くまで、倒産件数が急増しました。その点を踏まえると、中小企業金融円滑化法はリスクの高い政策だったとも言えます。

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中小企業金融円滑化法の施行終了後

中小企業金融円滑化法の施行終了後

プラスとマイナスあわせて中小企業に大きな影響をもたらした中小企業金融円滑化法は、平成25年に終了となりました。その後、政府や金融機関はどのような取り組みを実施しているのでしょうか。

金融庁の取り組み

出典:https://www.fsa.go.jp/policy/chusho/enkatu.html

上記のように、金融庁の姿勢としては、施行終了後も中小企業に対して円滑な資金提供などに努めるべきであるとしています。幸いにも政府を中心に、中小企業のサポートを遂行するシステムや制度は、依然として運用され続けています。

例えば、全国の財務局や財務事務所が資金繰りや融資に困っている中小企業の相談を個別で受け入れる窓口を設置し、中小企業をサポートしています。加えて、中小企業支援ネットワークを地域金融機関や信用保証協会、商工会議所等の組織が構成し、中小企業を網羅的にサポートしています。

金融の円滑化をサポートする制度や取り組み以外にも、政府は中小企業投資促進税制等、中小企業の設備投資を促進する税制を設けました。他にも、中小企業の資金調達を円滑化するための施策を打ち出しました。

中小企業の資金繰りをサポートする取り組みが功を奏したのか、中小企業金融円滑化法終了後の混乱は、思った以上にありませんでした。また民間の金融機関でも、中小企業金融円滑化法終了を受け、中小企業の金融円滑化をサポートする動きを見せています。

大手のメガバンクの中には、中小企業金融円滑化法を踏まえ、企業の金融円滑化を社会的に重要な役割と位置づけている企業もあります。例えば以下の施策により、民間の金融機関もできる限り借り手のニーズに応えると明言しています。

  • 融資の際に実情や実態をしっかり把握し、そのうえで適正な条件で融資を実施する
  • 借入条件の緩和に対して親身に応じる

これは住宅ローンでも同様です。無理のない返済計画を実現するために、サポート体制を取っている金融機関が増えています。中小企業の存続は、日本社会にとっても重要な事柄です。上記のとおり中小企業金融円滑化法によって、中小企業の金融円滑化を図る動きが活発化しています。今後もこの傾向は続くと考えられます。

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中小企業金融円滑化法は再び施行されるか?

中小企業金融円滑化法は再び施行されるか?

平成25年に失効を迎えた中小企業金融円滑化法ですが、今後も施行される可能性はあるのでしょうか? 残念ながら、中小企業金融円滑化法が失効された段階では、復活あるいは類似の法律の実施は明言されていません

そもそも中小企業金融円滑化法は、リーマンショックによる金融危機で例外的に施行されました。よって、似たような事態にならない限り、再び施行される可能性は低いです。万が一再び施行される事態になったとしても、中小企業金融円滑化法は金融機関に少なからず影響を与えます。

また、企業の倒産リスクを増加させる法律でもあります。再び中小企業金融円滑化法、あるいは類似する法律が施行される際は、前回の反省を踏まえ、そのリスクを取り除いた内容で実施される可能性が高いです。

その場合、中小企業金融円滑化法が以前施行されたものと比べて、かえって条件が悪化する可能性もあります。中小企業金融円滑化法が再び施行されるかどうかは、あくまで推測の範囲内でしか語れません。

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中小企業における資金調達手法

中小企業における資金調達手法

上述のように、中小企業金融円滑化法が再度施行されるかは不明です。よって中小企業経営者は、中小企業金融円滑化法の有無にかかわらず、資金繰りを良化させる取り組みを独自に編み出す必要があります。

実際に中小企業金融円滑化法を活用しても倒産した企業は、その取り組みが甘かったと考えられます。あくまで資金繰りの悪化を防ぐのは、経営者の手腕に寄るところが大きいです。この点はおろそかにすべきではありません。

金融機関からの融資や借入以外での中小企業の資金調達方法としては、「経営者の自己資金を使う」「資本を増やす」「補助金や助成金を得る」「クラウドファンディング」「M&Aの実施」などがあげられます。その中でも「M&Aの実施」は資金繰りの面だけではなく、効果的な経営戦略として選択する企業が増えています。

例えばM&Aを実施して、大企業などのグループ傘下に入れば財務基盤が強化できます。大企業の中には節税対策も兼ね、あえて赤字経営の会社を買収するケースもあります。買収後に赤字だったベンチャー企業の経営再建を成功させている大手企業も、実は少なくありません。

ただしM&Aの成功率は30%と言われているため、実際にM&Aを行う際にはM&A仲介業者や経営コンサルタントなど、適切な専門家のサポートを得るのがベターです。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aの専門的な知識・経験が豊富なアドバイザーが、丁寧にサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

まとめ

中小企業金融円滑化法はすでに終了した法律です。しかし今の日本社会に、とりわけ金融機関に大きな影響を与えました。各地の金融機関も、中小企業金融円滑化法に追随した取り組みを実施しています。

中小企業金融円滑化法の影響は、良い意味で残っています。中小企業の資金繰りサポートする取り組みについては、経営者ならば学んでおく必要があります。

要点をまとめると、下記になります。

・中小企業金融円滑化法はどのような法律だったか
→借入条件の緩和や、返済に一定の猶予期間をもたらすのをサポートする

・中小企業金融円滑化法の施行期間
→平成21年に施行され、2度延長された後に平成25年に終了

・中小企業金融円滑化法の悪影響
→倒産件数の急増、金融機関の利益減少

・中小企業金融円滑化法の施行終了後
→中小企業をサポートする取り組みが、官民あわせて実施されている

・中小企業金融円滑化法が再び施行する可能性
→低いうえに、施行されたとしても条件が変化する可能性が高い

・中小企業における資金調達手法
→「経営者の自己資金を使う」「資本を増やす」「補助金や助成金を得る」「クラウドファンディング」「M&Aの実施」など

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