トラック物流業界の動向とM&Aのメリット！売却・買収事例や流れと注意点も解説！

業界動向サーチの分析からトラック物流を含めた国内の物流業界全般の動向をみると、2021年から2022年にかけての業界規模は13.9兆円でした。

市場規模は2015年から2021年まで緩やかに増加傾向で推移しており、金額も大きいことから物流業界は経済界で大きな影響力を持つ業界の一つといってもいいでしょう。

トラックを含む物流業界が成長している理由は、ネット通販やフリマアプリの拡大です。2021年度の宅配便取扱量は前年度比2.4%増加の49億5,323万個で、そのうち98%がトラックが担っています。同年にトラックで運ばれた個数は48億8,206万個でした。

ネット通販とフリマアプリによる個人間取引の増加により、トラック物流業界は成長していますが、ガソリン代の高騰、人手不足、交通渋滞などの課題も多いのが現状です。

売上増加イコール収益アップとなっていない企業も多いのが業界としての大きな課題です。

参考：業界動向サーチ「運送業界の動向や現状、ランキングなどを解説」

トラック物流会社をM&Aで売却するとどのようなメリットがあるのでしょうか。5つのメリットをみていきましょう。

トラック物流会社をM&Aで売却するメリットには、事業承継を実現できるというものがあります。

近年、トラック物流業界に限らず、日本の多くの会社で、事業承継に失敗して廃業する会社が増加しています。物流業界の中小零細企業でも、後継者不足が原因での廃業がみられます。

経営者の身内や従業員に経営を継いでくれる人がいなければ、会社は廃業するしかありません。そうすると、従業員は全員解雇となり、取引先にも迷惑をかけることになります。

M&Aは第三者に会社の経営を託すことで事業承継を実現させる手段です。会社を第三者の手に委ねることで、廃業を回避して会社を存続させることが可能になるのです。

トラック物流会社をM&Aで売却するメリットには、従業員の待遇改善が可能になるという点もあります。

トラック物流業界は、ドライバー不足が深刻化しています。特に若いドライバーが入ってこない理由の1つが待遇面の問題です。

しかし、中小企業では賃金を上げたくても、荷主との交渉力がないために、賃金の原資となる運賃の値上げがなかなか難しいのが現状です。

M&Aで大手物流会社の傘下に入ることで、より強い交渉力を得られるようになる可能性があります。また、大手企業の福利厚生制度も利用できるようになることで、従業員の待遇を改善できる可能性が高まるでしょう。

トラック物流会社をM&Aで売却するメリットには、経営者が多額の売却利益を得られるという点もあります。

M&Aで会社を売却せずに廃業することになると、従業員への退職金の支払いや、トラックや会社の土地や建物の処分費用、廃業手続きの費用などのコストがかかります。場合によっては、車輌や不動産を売却しても赤字になってしまう可能性もあるでしょう。

しかし、M&Aで会社を売却できれば、従業員も車輌も不動産などの設備も、一般的にすべて買収側が引き取ってくれます。さらに、高額の売却金も手に入ります。

売却金から税金とM&Aの手数料を差し引いた売却利益は、引退後の生活費や新規事業の資金など、経営者が全額自由にしていいお金です。

廃業なら利益は得られずに、収支が赤字になる可能性もありますが、M&Aでの売却に成功できればほぼ確実に多額の利益を得られるでしょう。

トラック物流会社をM&Aで売却するメリットには、経営者が個人保証を解除して債務の負担が解消されるという点も見逃せません。

中小企業であれば、一般的に銀行からの会社の借り入れに対して、経営者が連帯保証人となり、自宅などの個人の資産を担保にして個人保証を付けています。廃業時にもしも債務が残っている場合には、自宅が差し押さえられたり、引退後も返済が続く可能性もあります。

しかし、M&Aで会社を売却できれば、多くの場合は会社の債務も買収側が引き継いでくれます。売却側の経営者の個人保証も解除されます。

債務が残った状態で廃業すれば安心してリタイア生活をおくることが難しいでしょうが、M&Aで売却できれば債務から解放されたゆとりある生活をおくることができるでしょう。

トラック物流会社をM&Aで売却するメリットには、事業規模を拡大したり、サービス向上したりできる可能性が広がるという点もあります。

違うエリアに拠点を持つ物流会社にトラック物流会社を売却すると、そのエリアにも拠点を持つことができて、配送ネットワークを広げることが可能です。

また、自社では行っていない冷凍冷蔵配送や、大型車配送、小型車による小口配送といった配送サービスを展開している会社に売却すると、売却先の会社が行っているサービスも自社で提供できるようになります。

配送ネットワークを拡大させたり、今まで提供できなかったサービスを提供できるようになったりすることで、サービスを向上させて、事業規模を拡大させることが可能になるでしょう。

トラック物流業界ではどのようなM&Aが実施されているのか、近年行われたM&Aの事例4選を紹介します。

2024年3月19日に、古林紙工株式会社が、金剛運送株式会社の全株式を取得して子会社化することを発表しました。

古林紙工は神奈川県横浜市にある、印刷紙器や容器、ラベルなどのパッケージ印刷を手掛けている会社です。金剛運送は横浜市戸塚区を拠点とする一般貨物運送事業者です。

金剛運送には古林紙工から運送と倉庫業務の一部を委託していて、売上高の85%は古林紙工との取引によるものとなっています。

古林紙工では、同社をグループ内に招き入れることで、物流専業者のノウハウを活用できるようになり、グループ全体の企業価値向上につなげられるとのことです。

参考：持分法非適用関連会社の株式の追加取得による子会社化に関するお知らせ

2023年10月3日に、トナミホールディングス株式会社が、山一運輸倉庫株式会社の全株式を取得する株式譲渡契約を締結して実行したことを発表しました。

トナミホールディングスは、富山県高岡市に本社のある物流システムの開発やインターネットプロバイダー、ホスティング事業などを展開している会社です。

山一運輸は、静岡県富士市でトラック輸送と倉庫事業、トラックを中心とした自動車整備事業を展開しており、主に富士市の主要産業である紙製品の物流を担っています。

トナミホールディングスグループでは、事業の継続的な成長に向けてM&Aを積極的に実施しています。山一運輸を傘下に納めることで、東名阪エリアの中心となる静岡県に拠点を持つことで、総合的なロジスティクス提案力の強化と業容の一層拡大を図ることができるとのことです。

参考：「山一運輸倉庫株式会社」の株式取得に関するお知らせ

2021年10月8日に、安田倉庫株式会社が、南信貨物自動車株式会社の全株式を取得して子会社化することを発表しました。

安田倉庫は1919年に創業した老舗の物流会社で、首都圏と関西圏を中心に倉庫、物流サービスを展開しています。

南信貨物自動車は、長野県松本市に拠点を置く物流会社で、長野県全域に拠点を持ち、大型車から小型車、冷蔵・冷凍車に至るまで300台を超える車輌と、一時保管、荷役、流通加工作業のノウハウを持っています。

安田倉庫としては、物流事業で倉庫・輸配送ネットワークを全国へ広げる取り組みを行っており、このM&Aでさらなるネットワークとサービスメニューの拡充を図ることができるとしています。

参考：株式の取得（子会社化）に関するお知らせ

平成28(2016)年10月3日に、トナミホールディングス株式会社が、株式会社テイクワンの全株式を取得することを発表しました。

テイクワンは、埼玉県川口市で一般貨物自動車輸送事業や、産業廃棄物収集運搬、家電及び通信販売品の配送設置工事などを行っている会社です。

トナミホールディングスでは、ドライバーや車両不足など物流を取り巻く環境が厳しくなる中で、事業基盤の強化に乗り出しています。テイクワンをグループに招き入れることで、同社の実運送力や地域密着型配送サービスのノウハウを発揮しながら、輸送サービスの高度化促進での事業拡大が期待できるとのことです。

参考：「株式会社テイクワン」の株式取得に関するお知らせ

トラック物流会社をM&Aで売却する時の流れについて解説します。

トラック物流会社をM&Aで売却しようか検討を始めたら、最初にM&Aの専門家へ相談することをおすすめします。

近年は、M&A情報サイトも充実してきたので、自力でも売却先探しができるような気になってしまう人もいるようですが、自力で行うのはおすすめできません。

その理由は、条件や相性が最適な売却先をみつけるのは案外難しいことと、M&Aの手続きは法律や財務の専門的な知見が必要なので、専門家のサポートがないと進めるのが難しいためです。

M&Aの専門家ならM&Aをするべきかどうか、といったところから懇切丁寧に相談に乗ってくれます。まずは、会社の将来像について無料相談から始めてみましょう。

トラック物流業界で事業譲渡を適切に行うには、各業界に精通した専門家によるサポートを受けるのがおすすめです。

M&A総合研究所では、M&Aの支援経験豊富なM&Aアドバイザーが専任につき、事業譲渡を丁寧にフルサポートいたします。

また、料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。（※譲渡企業様のみ）

無料相談も随時受け付けておりますので、こちらの業界で事業譲渡をご検討の際はM&A総合研究所までお気軽にご相談ください。

M&Aの専門家と契約を結んだら、専門家は売却先の選定に入ります。まず、会社の状況を分析して、希望する条件などをヒアリングした上で、条件や相性が合う相手を見つけるのです。

探し方は、M&Aの専門家の顧客で、トラック運送会社の買収を希望している会社に声をかけたり、M&A情報サイトに会社名などの詳細を伏せた売却希望を掲載して希望者を募ります。

候補企業が見つかったら、その中からM&Aの専門家が相性などを見て経営者に提案して、最終的な交渉相手を経営者本人が決めます。

交渉相手を決めたら、まずトップ面談を行います。両社の経営トップが直接会談を行い、経営資料の数字からは見えない経営理念や企業文化などを語ってお互いの相性を探ります。

トップ面談の結果、M&Aを進めることに両社が合意したら、最初の条件交渉です。この交渉では、譲渡金額とクロージング時期の目安、M&Aのスキーム、従業員の待遇など、M&Aのもっとも重要なポイントについて決めます。

M&Aを進めるにあたって、売却側の企業の機密資料、財務や人事に関する書類やノウハウといったものを買収側に開示する必要があります。

これらの資料が万が一、買収側から流出してしまったら、売却側の企業が大きな損失を被る可能性が高いので、機密資料の開示前に必ず秘密保持契約を結びます。

秘密保持契約には、開示する資料の種類、利用用途、返却期限、返却方法、万が一流出した場合の罰則などについて記載するので、不利な項目などがないかよく確認してからサインしましょう。

最初の条件交渉がまとまったら、基本合意書を締結します。基本合意書は契約書のようなものですが、内容は今後の流れの中で変わる可能性が高いので、基本的に秘密保持と独占交渉権以外の項目には法的拘束力をかけません。

法的拘束力はありませんが、今後のM&Aの長い流れの中で、両社が同じ方向を向いて進むことを確認するための書類となります。必ず締結するようにしましょう。

基本合意書を締結したら、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、買収監査ともいい、買収側が売却側の企業の企業価値とリスクを徹底的に調べ上げることです。

M&Aに精通した弁護士、税理士、会計士といった専門家がチームを組んで、売却側から提供された資料をとことん調査します。

万が一、今まで開示されていなかった重大な問題がこの時点で発見された場合には、大幅な減額交渉となったり、最悪の場合には破談になる可能性もあります。

売却側にとってはデューデリジェンスはあまり気持ちのいいものではありませんが、不都合な情報も事前に積極的に開示して、誠実に調査に協力するように心がけましょう。
 

デューデリジェンスの結果、買収側がM&Aを進めても問題ないと判断したら最終交渉です。

最終交渉では、最終的な金額や条件を細かく決めて、最終契約書にまとめていきます。最終契約書では、売却側の経営者の個人保証の外し方や、会社で保有する美術品の取り扱いなど、経営権の移行に必要な項目はすべて記載されます。

サイン後の変更や破棄は違約金が発生するので、サイン前によく内容を確認するようにしましょう。

最終契約書締結から1ヶ月から1年間の期間を置いてクロージング、経営権の引き渡しです。期間を置くのは、この間に従業員や取引先に会社売却の説明をして理解を求める必要があるためです。

クロージング日になったら、株式など買収側に譲渡するものを譲渡、代金を決済、経営権を移行し、M&Aが完了します。

トラック物流会社をM&Aで売却するときの注意点です。

1つ目の注意点は、最終契約書締結まで情報流出を起こさないようにすることです。

会社売却の噂が立ってしまうと、不安になった従業員の離職や取引先からの取引停止の可能性が高まります。近年はトラックドライバー確保のために他社を買収する会社も多く、従業員の離職が相次ぐと会社売却の話も失くなってしまうかもしれません。

噂は電話での会話を聞かれるなど、ちょっとしたことから広がります。M&Aについての情報は、情報を解禁できるタイミングが来るまで、秘密厳守で進めましょう。

2つ目の注意点は、会社売却の目的を明確化することです。会社を売却する目的によって、選ぶべきM&Aのスキームが異なります。

経営者が経営から身を引きたい場合には株式譲渡を、一部の事業を整理したい場合には事業譲渡が一般的です。

スキームの選び方で、売却後の会社のあり方や税額が大きく変わるので、M&Aを始める前に目的をしっかりと明確化しておきましょう。

3つ目の注意点は従業員や取引先にしっかりとした説明を行うことです。

M&Aの最終契約書を締結してからクロージングまでの間に、十分に説明を尽くして、会社売却の必要性を理解してもらうように努めましょう。

特に、中小零細企業では、従業員や取引先が経営者との心情的なつながりを持っていることが多く、急に経営者が変わると言われても受け入れられないと辞めてしまう人も出てしまいます。

会社を売却せざるをえない理由や、売却後の待遇や取引について、できる限り理解してもらうように説明を尽くすことが大切です。

トラック物流業界は、人手不足やDX化への対応など多くの困難を抱えていて、会社の将来について不安を感じている経営者も多いことでしょう。

後継者問題や事業の悪化などで、将来的な会社の存続が難しいと考えているのなら、M&Aも検討する価値があります。まずは、M&Aの専門家への無料相談からはじめてみるのがおすすめです。