2024年12月24日更新業種別M&A

賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&Aの事例!案件や相談先も紹介

不動産管理業界では今後の競争激化を見据え、競争力の強化を図るためにM&A・事業承継を検討するケースが増加中です。不動産管理会社のM&Aや事業承継を検討する際は、業界動向やM&A・事業承継の事例などを踏まえ、分析を進めましょう。

目次
  1. 不動産管理業界の動向
  2. 賃貸管理・不動産管理業界における事業承継M&A
  3. 賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの案件例
  4. 賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&A事例
  5. 賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの課題
  6. 賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの注意点
  7. 賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&A時におすすめの相談先
  8. 賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&Aまとめ
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不動産管理会社のM&A・事業承継

不動産管理業界の動向

賃貸住宅の建築や管理には、オーナー自身が行う場合と、専門の企業に委託する場合があります。ここで注目するのは、支援企業が関わる事業です。この事業は、大きく分けて建設前の企画提案と、建設後の運営管理の2つに分類されます。賃貸住宅は、低層アパートから高層マンションまで様々なタイプがあり、オーナーの資産状況や土地の条件に応じて最適なプランが提案されます。

建設は、住宅開発業者やハウスメーカーがオーナーに企画を提案し、請け負います。管理については、専門の管理会社に委託する方法や、建設・管理会社が物件を一括借り上げ(サブリース)する方法が一般的です。特に大手企業を中心に、サブリースを利用した管理が主流となっています。

一方で、賃貸住宅市場には深刻な課題があります。空き家の増加と人口減少による需要の減少です。総務省の調査によると、2023年10月時点で全国の空き家は約899万戸にのぼり、そのうち共同住宅が半数以上を占めています。さらに、相続後に使われていない空き家の数は過去20年で1.6倍に増加しています。

この問題に対応するため、2015年に「空き家対策特別措置法」が施行されました。この法律では、周囲に悪影響を及ぼす「特定空き家」の所有者に改善を促し、従わない場合は固定資産税の優遇措置を取り消すことができます。さらに、2023年12月の改正では、管理が不十分な空き家も課税対象とされ、空き家の放置に対する規制が一層強化されました。

参考:日経コンパス「賃貸住宅・企画・管理」

賃貸管理・不動産管理業界における事業承継M&A

賃貸管理・不動産管理業界の特徴・動向も踏まえた上で、事業承継M&Aについて解説していきます。

賃貸管理・不動産管理業界における事業承継M&Aの手法

事業承継M&Aでは、多くのケースで会社の経営権を親族や従業員ではなく、全く関係のない第三者に引き継いでもらいます。これは、親族に後継者がいない場合や、従業員の中に適任者が見つからない場合に有効な選択肢です。

この方法では、会社に興味を持つ第三者が株式を取得し、新たな経営者として事業を引き継ぎます。以前は、こうした第三者への承継は大企業の吸収合併など、限られた状況でしか行われていませんでした。

しかし、近年では事業承継を専門とする仲介業者が増加し、それによって潜在的なニーズが掘り起こされています。この結果、会社を売却したいオーナーと、会社を購入して経営したい人とのマッチングが活発に行われるようになっています。

賃貸管理・不動産管理業界における事業承継M&Aの目的

事業承継とは、会社の事業を後継者に引き継ぐことを意味します。親族や従業員が事業を承継する場合などのほか、M&Aによって事業承継が行われるケースも見られます。具体的には、M&Aによって他社に事業を売却することで、買い手に経営を任せ、事業を承継するケースが該当します。

たとえば、経営者が高齢になって引退を考えている場合に、後継者が不在であったとします。後継者がなかなか見つからないと、経営者が経営を続けるしかありませんが、年齢的に業務の継続は難しいでしょう。このような場合には、最終的には廃業せざるを得なくなってしまいます。

しかし、M&Aによって他社に売却し、他社が事業を承継できれば、後継者不在問題が解決し、経営者は安心して引退することができます。M&Aによる事業承継は、このような後継者不足問題や経営者の高齢化など、経営上の問題を解決するための手法として大きな意味があるのです

賃貸管理・不動産管理会社においても、経営者の高齢化などの問題はしばしば見られ、後継者不足をM&Aによる事業承継で解決することは、業界全体にとっても大きな意味があります。

事業承継を成功させるポイント

事業承継を成功させるためには、買い手が求めるポイントを踏まえて検討することが重要です。たとえば、同じ不動産管理事業を手がける会社が買い手となる場合であれば、同業者同士のM&Aとして事業の強化・拡大、競争力の強化などを図るケースが多いでしょう。

この場合、買い手が強化したいと考えている分野に売り手が強みを持っていれば、事業を承継してもらいたい売り手にとっても、事業を強化したいと考える買い手にとっても、お互いにメリットがあります。

M&Aによる事業承継は、買い手あっての事業承継です。当然のことながら買い手にもメリットがないと成立しません。買い手が求めるポイントと自社の事業が沿っているかが重要になるのです。

自社にとって最適な買い手を見つけるためには、業界動向やニーズの動向などを踏まえ、買い手が求めるであろう主なポイントをあらかじめ整理しておき、自社の事業と照らし合わせて買い手候補を絞っていくことが重要です。

【関連】不動産仲介業界のM&Aの動向は?売却や買収の事例からメリットや費用相場も解説!

賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの案件例をご紹介します。

【好立地/カバーエリア23区内】都内の不動産賃貸管理・仲介業

需要が旺盛な23区内のマンション管理に特化し、約80棟、700戸のサブリース契約を保持しています。山手線内の駅から徒歩数分内の好立地に店舗を構え、顧客を確保しやすい環境を確立しています。

エリア 東京都
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 他事業への注力

【好立地/カバーエリア23区内】都内の不動産賃貸管理・仲介業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

【北関東×不動産管理業】1,200戸以上の管理物件保有

 管理戸数は約1,250戸(アパート、テナント、駐車場、土地など)で、テナント管理戸数は地域トップクラスです。地域密着の企業として長年の業歴があり、土地仕入・建築・管理まで行っています。

エリア 関東・甲信越
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 2.5億円〜5億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【北関東×不動産管理業】1,200戸以上の管理物件保有(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所
【関連】不動産管理会社のM&Aとは?相場・費用・案件・不動産管理会社の買収・売却のポイントを解説

賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&A事例

不動産管理会社のM&A・事業承継
不動産管理会社のM&A・事業承継

賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。

アンビションDXホールディングスによるDRS含む3社の買収

2024年7月31日、アンビションDXホールディングスは、START(東京都港区)のグループ会社であるDRS、SPM、LTD(いずれも東京都港区)の全株式を取得することを発表しました。

アンビションDXホールディングスは、賃貸DXプロパティマネジメント事業を中心に、不動産仲介や売買DX事業、不動産関連事業などを展開しています。

今回のM&Aにより、賃貸DXプロパティマネジメント事業の領域をさらに拡大し、DRS・SPM・LTDが持つ顧客基盤を活用して、新たに少額短期保険事業やライフライン事業、内装工事業などの不動産関連事業での収益拡大を目指しています。

これにより、グループ全体の事業基盤を強化し、新たな収益源を創出していく方針です。

完全子会社3社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知しらせ

日動によるシティビルサービス札幌の買収

2024年5月30日、日動(北海道札幌市)は、シティビルサービス札幌(北海道札幌市)の全株式を取得し、完全子会社化しました。

日動は、分譲マンション「ラ・クラッセシリーズ」を展開し、賃貸事業や管理事業も行う不動産企業です。一方、シティビルサービス札幌は、賃貸管理業務を中心に、札幌市内4店舗の賃貸仲介「ピタットハウス」を運営しており、北海道内外で約5,000戸の建物を管理しています。

今回の買収により、日動グループはシティビルサービス札幌の賃貸管理ノウハウや資産を活用し、グループ全体でのシナジーを生み出し、顧客満足度のさらなる向上を目指します。これにより、日動は賃貸管理事業の強化とサービス拡充を図る方針です。

株式会社シティビルサービス札幌の全株式を取得いたしました

リログル―プによるステージプランナーの買収

2022年10月27日、リログループは、ステージプランナー(東京都渋谷区)の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。

リログループは、賃貸管理、借上社宅管理、海外赴任支援、福利厚生、観光など幅広い事業を展開しています。一方、ステージプランナーは約7,000戸の賃貸物件を管理し、特に住宅賃貸需要の高い東京およびその周辺エリアで賃貸管理業務を行う不動産管理会社です。

今回のM&Aにより、リログループは賃貸管理業務におけるノウハウ共有やサービス連携を強化し、顧客満足度の向上や事業間のシナジー効果を生み出すことを目指しています。これにより、賃貸管理事業のさらなる成長と拡大を図ります。

ステージプランナーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
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賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの課題

会社の株式を後継者に贈与や相続で引き継ぐ際には、後継者に大きな税金負担がかかる可能性があります。しかし、後継者はこれから会社経営を担う立場にあり、株式を引き継いだ時点で高額な税金を支払うのは現実的に難しい場合が多いでしょう。

このような負担を軽減するために、「事業承継税制」が設けられています。この制度を利用することで、後継者の税負担を大幅に軽減し、円滑に会社を引き継ぐことが可能です。

ただし、不動産管理会社のように資産保有型や資産運用型の企業の場合、事業承継税制の対象外となる可能性があります。この場合、後継者が株式を贈与される際に、多額の贈与税が発生するリスクがあるため、事前の計画や対策が重要です。

賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの注意点

賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの注意点を3つご紹介します。

資産保有型会社にならないための注意点

資産保有型会社とは、全資産のうち、有価証券や自社で使用していない不動産、預貯金などの割合が70%以上を占める会社を指します。不動産を賃貸している会社は、この条件に該当する可能性が高く、回避するのは難しい場合が多いです。まず、自社が資産保有型会社に該当するかどうかを確認することが重要です。

資産運用型会社にならないための注意点

資産運用型会社は、特定資産(家賃収入など)からの収入が、全収入の75%以上を占める会社です。家賃収入が多い場合、この条件に該当する可能性があります。しかし、その他の事業収入を増やすことで、資産運用型会社と見なされるのを避けることができる場合があります。

事業の実態を持つ会社に該当するための注意点

たとえ資産保有型会社や資産運用型会社に該当しても、事業としての実態がある場合は事業承継税制の対象になることがあります。具体的には、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  • 3年以上継続して事業を行っていること
  • 親族以外の従業員が5人以上いること
  • (社会保険加入が基準とされます)
  • 事業所を所有または賃貸していること

特に、親族以外の従業員を5人以上雇用する条件は負担が大きく、クリアするのが難しい場合もあります。会社の実態を明確にするための計画と準備が重要です。

【関連】不動産管理会社における事業売却とは?メリット・デメリットを解説

賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&A時におすすめの相談先

賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&A時におすすめの相談先を3つご紹介します。

金融機関

近年、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設置するケースが増えており、特に投資銀行やメガバンクがファイナンシャルアドバイザー(FA)として重要な役割を担っています。M&Aを進める際、金融機関は資金調達や専門的なアドバイスを提供する欠かせないパートナーです。

特に買収側では、資金調達のために既存取引先の金融機関に最初に相談することが一般的です。金融機関のサポートは、事業承継時に親族や従業員が後継者となる際、株式取得資金の調達などに役立ちます。また、金融機関によってはM&Aに特化した部署や他の専門家との連携体制を持っており、適切な専門家を紹介してもらえることもあります。

ただし、大手金融機関は大規模案件を中心に扱う傾向があり、中小規模案件には対応しないことや、報酬が高額になることがデメリットとして挙げられます。

公的機関

近年、公的機関でも事業承継やM&Aに関する相談が可能になり、中小企業の後継者問題解決を支援しています。例えば、「事業承継・引継ぎ支援センター」は、全国47都道府県に窓口を持ち、専門家が無料で情報提供やアドバイス、企業間マッチングを行っています。国の運営する機関であるため、相談費用がかからず、公平なアドバイスが得られることが大きなメリットです。

また、M&A仲介会社や各種専門家の紹介も受けられ、個人事業主の事業承継にも対応しています。ただし、公的機関ゆえに対応のスピードに限界があったり、民間のM&A仲介会社と比較すると実績やサポート内容が劣る場合があったりすることがデメリットとして挙げられます。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の売買を専門に支援する企業で、売り手と買い手の双方と契約を結び、交渉や調整を行います。初期相談から相手企業の選定、企業価値評価(バリュエーション)、必要書類の作成まで、M&Aプロセス全体をサポートすることが特徴です。

仲介会社は、売り手と買い手の条件を調整し、双方にとって最適な合意点を見つけることで、スムーズなM&Aの実現を目指します。特に、多数の候補企業の中から最適な相手を選定できる点が大きなメリットです。また、M&Aの初心者でも安心して進められるよう、専門的なアドバイスやコミュニケーションを通じて成功率を高めます。

ただし、着手金や中間金などの費用がかかる場合があり、コスト面での負担がデメリットとなることもあります。そのため、成功報酬制を採用している企業を選ぶと、費用負担を軽減できます。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所
【関連】M&Aの相談先|メリットデメリットや選び方とよくある相談内容を紹介

賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&Aまとめ

賃貸管理・不動産管理業界では、今後の競争激化などを見据え、競争力の強化を図るためにM&Aを検討するケースが増えています。また、今後は、経営上の問題を解決するため、M&Aによる事業承継を検討するケースも増加するでしょう。

経営が悪化した賃貸管理・不動産管理会社であっても、買い手が求める賃貸管理・不動産管理事業の分野に強みがあれば、その買い手に事業を承継してもらい、経営を安定化させることができます。

また、今後は同じ賃貸管理・不動産管理会社が競争力強化のために賃貸管理・不動産管理会社を買収するケースも増える可能性があるため、事業承継を検討している不動産管理会社にとってはチャンスになります。

賃貸管理・不動産管理会社の事業承継M&Aを検討する際には、こうした業界動向やM&A事例などを踏まえ、分析を進めていくことが大切です。

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