M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月10日更新業種別M&A
会計士・税理士事務所の事業承継・M&Aマニュアル!流れや相談先、事例も紹介
後継者不足で事業承継が進められず、廃業・閉鎖する会計士・税理士事務所が増えています。次世代に事業を引き継ぐには、事業承継・M&Aの計画を立てて準備しておくことが必要です。会計士・事務所事務所の事業承継・M&Aの動向や流れ、相談先を紹介します。
目次
会計士・税理士事務所の最近の動向
まずは、会計士・税理士事務所の最近の動向をご紹介します。
試験申込者の減少
近年、税理士の受験者数が減少の一途を辿っており、若くて意欲のある税理士が減少し続けています(令和6年度の試験申込者数は43,919人)。少子化以外にも、受験期間の長期化や労働環境を悲観するなどの原因が考えられており、今後も減少の流れは続くとみられています。
会計士は、ここ数年で受験者数が増加しており人気が戻りつつありますが、全盛期と比較するとまだまだ受験者数は少なく、今後の予測も難しいとされています。
全国的に若い有資格者が減少していることが、会計事務所・税理士事務所の事業承継にも影響を及ぼしています。
競争が激化
受験者が減少しているとはいえ、有資格者は増加しています。自身で会計事務所・税理士事務所を立ち上げるケースが増えているため、顧問獲得競争は激化しています。
また、大手の会計事務所・税理士事務所による人材獲得競争も激しくなっています。顧問を多く抱えている大手は事業拡大のために人材が必要になるため、積極的に有資格者の確保に動き出しています。
会計士・税理士事務所の事業承継・M&Aの動向
近年、会計士・税理士事務所では、M&Aでの事業承継が増加しているその主な理由と考えられるのは、以下の2点です。
【会計事務所・税理事務所の事業承継が増える理由】
- 経営者・従業員の高齢化
- 人材不足
- M&Aの浸透
経営者・従業員の高齢化
1つ目の理由は、会計事務所・税理士事務所の経営者や従業員の高齢化です。高齢になると経営力が落ちて事務所全体の収益性も落ちるため、適切なタイミングで事業承継が必要になります。
しかし、従業員の高齢化も進んでいるため事務所内に後継者候補がいないことも多く、M&Aによる事業承継で外部から後継者を探さなければ引継ぎできないというケースが増えています。
人材不足
近年、会計事務所における深刻な人手不足を背景に、人材確保を目的としたM&Aが行われるケースが増えています。特に税理士の有効求人倍率は、2023年度の全国平均で2.36倍と非常に高い水準にあり、慢性的な人材不足が顕在化しています。
これには「高齢化の進行」「職場定着率の低さ」「採用の難航」といった要因が関係しており、特に若手人材の確保が難しくなっています。このような状況の中、採用活動では補えない人手不足を解消するために、会計事務所や税理士事務所が事業承継や規模拡大を目的としてM&Aを選択する事例が増加しているのです。
参考:厚生労働省 職業情報サイト「税理士」
M&Aの浸透
3つ目の理由は、業界全体でM&Aによる事業承継が浸透してきていることです。多くの会計事務所・税理士事務所が後継者問題を抱えているため、M&Aによる事務所存続を目指すケースが増えています。
ほかの会計事務所がM&Aによる事業承継で廃業を回避しているのをみることなどで、M&Aのネガティブなイメージが少しずつ薄れていると考えられ、M&Aによる事業承継で得られるメリットにも注目が集まるようになってきています。
会計士・税理士事務所の事業承継・M&Aのパターン
会計事務所・税理士事務所の事業承継は、求める目的や条件によってさまざまな進め方があります。パターンとして多くみられるのは、以下の3つです。
【会計事務所・税理士事務所の事業承継のパターン】
- 他事務所の傘下に入り事業継続
- 後継者を受け入れ、数年後引退
- 後継者・譲渡先に引き継ぎ後、すぐに引退
他事務所の傘下に入り事業継続
M&Aによる事業承継で、大手会計事務所・税理士事務所の傘下に入って事業を継続する形です。事務所の経営権は買い手側に移管されますが、全経営者は事務所の代表者として残り続けるパターンが多くみられます。
会計事務所・税理士事務所の経営者にとって後継者問題などの経営課題は頭を悩ませる問題です。事務所の経営を買い手側の経営陣に任せることができるので、事業に専念することができるのは大きなメリットといえます。
後継者を受け入れ、数年後引退
外部から有望な後継者を探して、徐々に業務を移行させてから引退するパターンです。経営者に求められるスキルを育成する時間も必要になるので、数年かかることも珍しくありません。
経営者の交代と業務移行を同時に行うと事務所内に混乱が起きやすいので、一定の段取りを踏んで事業承継を進めていきます。
このパターンは、ほかの従業員からの反発を生みにくいので、事業承継後の経営も安定しやすくなるメリットがあります。
後継者・譲渡先に引き継ぎ後、すぐに引退
M&Aによる事業承継で経営を引き継ぐと同時に引退するパターンです。買い手が大手の会計事務所・税理士事務所の場合、顧客や人材の確保を目的としていることも多いので、業務移行作業が不要になることもあります。
経営者や事業者として完全に引退することになるので、高齢化や健康上の問題で引退を急ぎたい場合に有効な選択肢です。
会計士・税理士事務所の事業承継・M&Aの事例
会計士・税理士事務所の事業承継・M&Aの事例をピックアップしてご紹介します。
税理士法人Futere Createと税理士法人マッチポイントによる経営統合
2023年10月、税理士法人Future Createと税理士法人マッチポイントが経営統合を果たしました。両法人ともに北海道札幌市を拠点としており、今回の統合により、これまで以上に広域かつ充実したサービスの提供が可能となります。
今回の統合の主な目的は、業務プロセスの効率化と合理化を通じて、顧客へのサービス品質を一層高めることです。新たな組織体制のもと、両法人はより強固な基盤を築き、地域社会と経済の発展に貢献し続けることを目指しています。今後は、より高度な専門知識と広範なサポート体制を活かし、さらなる成長を遂げていく予定です。
テイエムエス税理士法人と税理士法人蓑・高山会計による経営統合
2023年9月、テイエムエス税理士法人と税理士法人蓑・高山会計が経営統合し、新たに「れん税理士法人」として生まれ変わりました。
統合により、従業員数は60名体制へと強化され、組織力がさらに向上しました。この体制拡充を生かし、千葉・東京・石川を中心とした各エリアでの会計・税務サービスの提供力を一層強化し、より充実したサポートを行っていく方針です。
みそら税理士法人とビジネスサポート林総合事務所による経営統合
2022年7月、みそら税理士法人はビジネスサポート林総合事務所と経営統合を行いました。この統合により、両社のリソースや専門知識を結集し、クライアントに対してより充実した会計・税務サービスの提供を目指しています。
統合後も「みそら税理士法人」の名称を維持し、地域に密着したサービスの強化を図っていく方針です。地域社会の発展に貢献し、クライアントのビジネス成長を支援するため、引き続き高品質なサービスを提供し続けることを目指しています。
会計士・税理士事務所の事業承継・M&Aの流れ
会計事務所・税理士事務所の事業承継は、全体の流れを把握しておくことが大切です。大まかな流れは以下のようになっています。
【会計事務所・税理士事務所の事業承継の流れ】
- M&Aの専門家に相談を行う
- M&A先の選定・交渉を行う
- トップ同士の面談
- 基本合意書の締結
- M&A先によるデューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
1.M&Aの専門家に相談を行う
会計事務所・税理士事務所の事業承継では、M&Aにおける高い専門性が求められるので、専門家であるM&A仲介会社に相談することをおすすめします。
M&A仲介会社は、日常的にM&A・事業承継の案件を扱っていて豊富なネットワークを保有しているので、M&A先の選定において大きなアドバンテージを得られます。
会計事務所・税理士事務所の事業承継を進めるうえでは交渉や各種契約書の締結も行いますが、あらゆる分野の知識が必要になるので、包括的なサポートを行えるM&A仲介会社のサポートは不可欠といえるでしょう。
もし、M&A仲介会社選びにお困りでしたら、一度、M&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所は、M&A・事業承継の仲介を手掛けているM&A仲介会社です。中小規模の案件を得意としており、豊富な実績を持つアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
M&A総合研究所は、M&A・事業承継のスピード成約を目指してサポートを行っており、最短3カ月での成約実績も強みです。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」となっています(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
随時、無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
2.M&A先の選定・交渉を行う
事業承継の相談先が決まりアドバイザリー契約を締結したら、M&A先の選定へと移行します。
相談先の専門家が保有するネットワークを活用して、広範囲から会計事務所・税理士事務所の後継者・買い手を探します。
複数のM&A先候補をピックアップしたら、ノンネームシート(匿名希望)で打診して反応を伺います。迂闊に名前をだすと情報漏洩リスクが高まるため、M&A先が前向きな姿勢をみせるまでは会計事務所・税理士事務所の名前を伏せておきます。
反応が返ってきたらネームクリアした後、事務所の詳細がわかる資料を提供してM&A・事業承継の本格的な交渉に入ります。
3.トップ同士の面談
交渉がある程度進むと、双方の経営者が顔合わせするトップ同士の面談を実施します。具体的な交渉というよりは、書面からは分かりづらい相手の価値観や見通しなどを確認しあう意味合いが強いです。
M&A・事業承継に対して疑問に思うことを相互に解消することで、今後のM&A・事業承継の進行を円滑にする効果を期待して実施されます。質問事項は事前にまとめておき、相談先の専門家と共有しておくとよいでしょう。
4.基本合意書の締結
基本合意書とは、現段階の交渉内容について売り手・買い手の双方の合意が得られていることを確認するための契約書です。
双方がM&A・事業承継に対して前向きであれば、トップ同士の面談から間もなく締結することになります。
契約書という扱いですが、記載される条項に関して法的な効力を持ち合わせていません。会計事務所・税理士事務所の譲渡価格や手法などは最終決定ではなく、仮決定というイメージになります。
なお、独占交渉権や秘密保持義務などに関しては法的な効力を持たせることが一般的です。条項によって扱いが異なることがあるので、締結する際は十分に注意しておく必要があります。
5.M&A先によるデューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、M&A・事業承継対象の価値・リスクを調査する活動です。会計事務所・税理士事務所が抱えている潜在的リスクを把握するために、M&A先より専門家が派遣されて徹底的に調査されます。
デューデリジェンスはM&A先が主体となって進められますが、売り手側にも協力が求められます。調査に必要になる書類の提供やマネジメントインタビューなど、いくつか協力することになるので準備を進めておく必要があります。
また、デューデリジェンスで問題がみつかった場合は、M&A・事業承継の条件に変更が加えられることもあります。
最悪の場合は破断になることもあるので、何か問題を抱えている場合は事前に通知しておくほうがM&A先に与える印象がよくなります。
6.最終契約書の締結
最終契約書とは、M&A・事業承継の最終的な交渉内容に双方が合意することを示す契約書です。双方がサインすることで契約書としての効力を発揮し、M&Aによる事業承継が正式に決定したことになります。
契約書の締結後は、正当な理由なく一方的に契約解除することは認められません。賠償問題に発展する可能性もあるので、契約書の内容に不備がないかどうか、締結前に全ての条項を慎重に確認しておく必要があります。
7.クロージング
最終契約書の内容に沿ってクロージングを実行します。売り手側の会計事務所・税理士事務所の引き渡しと買い手側の対価の支払いをもってM&A・事業承継が完了します。
交渉自体は最終契約書の締結時点で終わっていますが、引き渡しや支払いの準備期間が必要になることもあるので、契約書の締結日より一定の期間を空けてからクロージングを実施することが多いです。
会計士・税理士事務所の事業承継・M&Aマニュアルまとめ
会計事務所・税理士事務所の後継者がいない場合、まず、後継者探しのために手続きを踏むことになるので、計画的に進めることが必要です。
会計事務所・税理士事務所のM&Aによる事業承継では専門的な知識も必要になるので、早期にM&Aの専門家に相談しておくと事業承継を円滑に進めやすくなります。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。