2024年11月20日更新業種別M&A

保険代理店の事業承継の注意点は?業界動向・事例・案件例も紹介

保険代理店の事業承継は、会社を経営している中小企業にとって「経営上の問題」として捉えることが多く、さまざまな課題点や注意点があります。ここでは、保険代理店の課題点や注意点、事業継承・M&A事例などについて詳しく解説していきます。

目次
  1. 保険代理店の事業承継とは
  2. 保険代理店とは
  3. 保険代理店の市場動向
  4. 保険代理店の事業承継の課題
  5. 保険代理店の事業承継の注意点
  6. 保険代理店の事業承継の案件例
  7. 保険代理店の事業承継事例
  8. 保険代理店の事業承継時におすすめの相談先
  9. 保険代理店の事業承継まとめ
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保険代理店のM&A・事業承継

保険代理店の事業承継とは

事業承継の問題は、保険代理店に限らず会社を経営している中小企業にとって「経営上の問題」として捉えることが多く、できれば早期に事業承継計画の策定を実施して、準備に取り掛かることをおすすめします。

しかし、中小企業の経営者の場合は、経営者自身も業務に携わっていることが多く、事業承継の問題は先送りにしているケースが多いのが現状です。

保険代理店を営む経営者の場合も経営者自身が保険販売をしていることも多く、今は何の問題もなく、この先5年は自分自身が第一線で仕事ができると感じている経営者が多いでしょう。

事業承継にかかる期間は、おおむね10年とされており、今現在、現役で仕事ができていたとしても、10年後には後継者へと事業を承継しなければならない時が来るのです。それを見据えて、事業承継の準備を始めて、後継者を育てなければならないといえます。

まずは、事業承継の種類についておさらいします。

事業承継の種類

事業承継を行うには、誰にどのように引き継ぐかがポイントになります。事業継承には以下の3種類があり、それぞれについてお伝えします。

親族内継承

親族内承継とは、子供などの親族に承継する場合をさし、現在でも比較的多く取り入れられている方法です。

親族内承継の多くは、現経営者の子供に引き継ぐことが多く、現経営者が急死した場合などは、現経営者の配偶者や兄弟などに事業承継される場合もあります。親族への事業承継は、従業員や取引先などから心情的に受け入れられやすく、比較的スムーズに事業承継ができます。

親族外承継(役員・従業員承継)

子供を含めた親族内に適切な後継者候補がいない場合に、会社の役員や従業員を後継者候補として事業承継することを、親族外承継または役員・従業員承継といいます。

親族外承継は、役員や従業員の中から適切だと思う人材を後継者とする方法です。事業承継を実行する時に、株式の買い取りなどで資金不足が課題とされていました。しかし最近では、種類株式や持株会社設立、従業員持株会などを活用することで資金不足の問題は解決できるとされています。

社外への事業承継(M&A)

子供などの親族や会社の役員、従業員にも適当な後継者候補が見つからず、会社を売却して社外への事業承継をする場合はM&Aを実施します。

M&Aは合併と買収という意味ですが、事業承継をする会社から見ると、会社を売却してその対価を得ることになります。M&Aを実施する時には、買収してくれる会社が存在しなければ成立しないので、まずは買収してくれる会社を探さなければなりません。

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保険代理店とは

保険代理店とは、保険契約を仲介する業務をしている会社をさします。保険会社と業務委託契約を結んで、内閣総理大臣の登録を受けて会社を運営しています。保険に加入したい人と保険会社を結ぶ役割があり、保険会社に代わって保険契約や給付金の手続きなどをしています。

生命保険の場合は、保険会社に所属する外交員が保険契約を結んだり、各種手続きをしたりしています。損害保険の場合は、保険代理店が自動車保険や火災保険、傷害保険などの加入手続きなどをする場合が多くあります。

保険代理店は、保険の紹介や契約内容の説明などもします。顧客が契約を決めた時には、速やかに契約手続きを代行して業務委託契約を結んでいる保険会社から手数料をもらって売上としています。

保険代理店の種類

保険代理店は、専業もしくは副業で運営されています。専業の場合は、保険業だけをしている代理店で、保険商品の紹介、契約、各種手続き、保険料の集金などを主な事業としています。

一方、副業の場合は、本業をしながら保険の契約などの手続きをしている代理店をさします。例えば、自動車整備工業が自動車保険の契約もしている場合や、旅行代理店が旅行保険の契約を取り扱っている場合も副業となります。

保険代理店の市場動向

保険の銀行窓販が始まって以来、複数の保険会社の商品を取り扱う「乗合代理店」(保険ショップ)の存在感が急速に高まっています。

主要な事業者としては、ほけんの窓口グループや「保険クリニック」を展開するアイリックコーポレーションなどが挙げられ、これらの企業は駅前や大型ショッピングモールなどで店舗を構えています。

顧客が複数の保険商品を比較して選べるスタイルが特徴で、生命保険に加えて医療保険や介護保険といった第三分野の商品にも強みを持っています。さらに、2021年11月に始まった金融サービス仲介業の制度改革により、預金、投資信託、保険を一括で提供できる環境が整い、保険代理店の役割が大きく変化しつつあります。

一部の保険代理店が金融アドバイザー(IFA)として活動範囲を広げる動きが見られ、ファンドラップ商品などの提供を通じて証券会社との連携が強まる傾向も顕著です。これにより、保険代理店のサービスモデルは多様化を遂げています。

保険代理店の事業承継の課題

保険代理店のM&A・事業承継
保険代理店のM&A・事業承継

保険代理店に限らず、全国の中小企業は、事業承継の問題を抱えている状態だといえます。中規模の会社のうち、およそ80%の会社が事業を承継したいとしており、小規模の会社では、事業承継を望む会社はおよそ60%弱となっています。

事業承継を望む一方で、業界の先行きの不安を理由に、「自分の代で廃業しよう」と考えている中小企業も多くあります。廃業を検討している会社は、「子供に継ぐ意思がない」「適当な後継者がいない」という事情があり、後継者不在の問題が、事業承継を進められない理由としている場合もあります。

以前であれば、親が会社を経営していれば、それを引き継ごうとする子供が多くいましたが、現在では、ライフスタイルの多様化や職業の選択の自由などによって、子供が必ずしも親が経営している会社を引き継ぐとは限らないのです。

後継者不足と経営者の高齢化

保険代理店の場合も、後継者がいないことや現経営者の高齢化が事業承継の課題といえそうです。保険代理店を運営するには、保険会社との業務委託契約が必要ですが、その前に、「生命保険募集人」および「損害保険募集人」の資格を取得しなければなりません。

その資格を取得していないと生命保険の販売ができませんし、損害保険の場合も同様ですので、後継者は資格を取得する必要があります。従業員のほとんどが募集人の資格を取得しているので、経営者には必要ないと考えられますが、仕事をしていくうえでは必須になります。

このようなことをふまえても、適当な後継者がいないと感じる保険代理店が多くあるようです。現経営者についても高齢化が進んでおり、60歳を超えても現役で仕事をしていることも珍しくありません。適当な後継者が見つからないまま、現経営者が高齢となる場合もあります。

【関連】社長の引退年齢の現状や課題点とは?M&Aや事業承継を活用するポイントを解説

保険代理店の事業承継の注意点

事業承継は、経営者の交代をすれば完了というわけではありません。保険代理店の会社を引き継ぐには、株式の移譲や財務、税務に関すること、従業員の雇用や保険販売のノウハウなど、さまざまなものを承継することになります。

また、事業承継を実行するタイミングは、会社の転換期と考えることもでき、事業承継をするタイミングで事業内容を見直したり、内部統制を図ったりするケースもあるのです。そのため、「経営上の問題」として捉える会社も多く、誰に、どのように事業承継するのかという点においては重要なポイントとなります。

①情報漏洩に注意する

事業承継は、会社にとっても大きな転換期となる可能性があります。事業承継そのものについては、親族内承継、親族外承継、社外への引継ぎ(M&A)の方法がありますが、どの方法で事業承継をするのか、というのは経営者にとっても悩み事の一つとなるでしょう。

子供が後継者になることを望んでいる場合は、親族内承継の方法で比較的スムーズに実行できますが、会社の役員や従業員を後継者とする親族外承継の場合は、ほかの従業員から不満が出る場合もあります。

特に、注意が必要なのは、社外への引継ぎとしてM&Aを実行する場合です。M&Aに伴って、会社を売却することになりますが、このことは従業員にとっても不安を抱える要因となります。

M&Aと聞くと、あまり良くないイメージがあり、会社を売却することで従業員のリストラや内部統制の変更などが実施される可能性について不安を抱くことになります。そのため、M&Aを実施する時は、内容が確定してから従業員や取引先などに公表するようにしましょう。

また、親族内承継で、子供が後継者となった場合は、従業員や取引先なども心情的に受け入れられやすいので、大きな問題となることは少ないでしょう。役員や従業員が後継者となった場合は、従業員の一部から不満が出る可能性もあります。

それに対して、どのように対処すべきか考えておく必要があります。いずれかの方法で事業承継をする時は、事業承継計画の策定が終わってから、従業員や取引先に通達するなど、情報が漏れないように注意しなければなりません。

②後継者の教育

事業承継するうえでは、おおむね10年の期間をかけて実行するのが一般的とされています。保険代理店の事業承継の場合は、後継者をどのように教育していくかしっかりと計画を立てる必要があります。

自社で教育をする場合は、生命保険募集人と損害保険募集人の資格取得を目指さなければなりません。資格を取得した後は、どのように営業活動をするのか、保険のそれぞれの手続きはどのようにしていくか、など実務的な経験を積む必要があります。

自社以外で教育をする方法もあり、例えば、実際に保険会社などに就職して、保険商品の販売や各種手続きなどの経験を積んでから、自社に入社する方法があります。社外での経験は、自社に入社した後にも役立つことが多く、保険の知識を深めることもできます。

いずれの場合でも、販売が難しいとされる保険商品の販売のノウハウや話法などを学び、経営者の資質を高めるように後継者教育をしていくことが重要となります。

保険代理店の事業承継の案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている保険代理店の事業承継の案件例をご紹介します。

【EBITDA1億円以上】関西地方の生命保険代理店

法人中心で強固な顧客基盤を築いています。退任予定の代表には担当顧客が殆どなく、大半を従業員に引継ぎ済みです。

エリア 近畿
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 7億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【EBITDA1億円以上】関西地方の生命保険代理店(その他サービス等) | M&A総合研究所

【関西/エリア核指定代理店】損保中心の保険代理店

大手損害保険会社のエリア核指定代理店に認定されています。個人顧客が約3,400名、法人顧客は約600社です。

エリア 近畿
売上高 5000万円〜1億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【関西/エリア核指定代理店】損保中心の保険代理店(その他サービス等) | M&A総合研究所

保険代理店の事業承継事例

保険代理店は、従来は保険会社と業務委託契約を結んで安定した会社運営がされることが多くみられました。しかし、インターネットや来店型保険代理店などの利用が多くなってから、保険代理店として運営していくのが難しくなっています。

そのような中で、事業承継をしていく保険代理店もあり、M&Aを活用して会社を存続させているケースもあります。そこで、ここでは事業承継の事例をご紹介します。

新栄総合管理によるニュータスへの保険代理店事業の譲渡

2024年9月1日、新栄総合管理(福岡市)は、保険代理店事業をニュータス 福岡中央支社(同市)に譲渡しました。

新栄総合管理はマンションや賃貸物件の管理業務、建物設備の維持管理を行う企業です。一方、ニュータスは損害保険や生命保険代理業務、投資信託の販売を手掛けています。

本譲渡により、顧客ニーズに応じた提案力や事故対応の強化を図る狙いがあります。この連携で、保険事業のサービス向上が期待されます。

保険代理店事業の譲渡に関するお知らせ

FPパートナーによるサプライズジャパンの子会社化

2024年1月12日、FPパートナーはサプライズジャパンの全株式を譲り受けることに合意しました。

FPパートナーは、無料FP相談サイト「マネードクター」運営や保険代理業、金融商品の仲介業務を手掛ける企業です。一方、サプライズジャパンは東京海上日動の専属代理店で、損害保険部門に強みを持ちながら生命保険分野の成長を目指していました。

本提携により、サプライズジャパンは生命保険販売や営業社員育成ノウハウを活用でき、FPパートナーは損害保険事業の強化が可能となります。両社は生損保両分野でのシナジー効果を期待しています。

サプライズジャパン株式会社からの株式譲受に関するお知らせ

シキボウによるシキボウサービスの保険代理店事業の譲渡

2023年9月28日、シキボウは子会社であるシキボウサービスが行う保険代理店事業を譲渡することを決定しました。

譲渡先は非公開です。シキボウは、繊維や化学工業品の製造・販売、不動産開発を手掛ける企業で、現在は化成品事業を成長の柱と位置付け、積極的な投資を行っています。また、資本効率を重視するROICを導入し、事業ポートフォリオの見直しを進めています。

今回の事業譲渡は、経営資源の集中と選択を進め、企業価値向上を目指す戦略の一環とされています。

中期経営計画「ACTION22-24」の進捗状況及び 2024 年度計画値と業績予想との乖離について

保険代理店の事業承継時におすすめの相談先

保険代理店の事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

近年、金融機関がM&A支援に特化した部署を新設する動きが加速しています。特に投資銀行や大手メガバンクは、資金調達の支援や戦略の策定といった包括的なサービスを提供し、M&Aプロセス全体を円滑に進めるための専門的な役割を担っています。

このような支援を活用することで、企業は事業承継や資金調達などの複雑な課題に効率的に対処できるだけでなく、専門家のアドバイスを通じて取引成功の可能性を高めることができます。

しかしながら、大型案件を優先する傾向があるため、中小企業が十分なサポートを得られない場合もあります。そのため、自社の規模や目的に適した支援機関を選ぶことが不可欠です。

さらに、こうしたサービスは高額な費用が発生することがあるため、事前に料金体系を確認し、費用対効果を慎重に見極めることが重要です。

公的機関

近年、事業承継やM&Aを支援するための公的サービスが大幅に強化されています。全国47都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」は、後継者不足に悩む中小企業の相談窓口として、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイスを無料で行っています。

さらに、企業間のマッチングサービスも展開しており、地方の企業でも専門的なサポートを受けやすい体制が整えられています。加えて、個人事業主に対する支援も充実しており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介を受けることも可能です。

ただし、公的機関の支援は、民間仲介会社と比較するとスピードや柔軟性に限界がある場合があります。そのため、利用時にはこれらの点を踏まえた判断が必要です。

こうした公的支援機関は、事業承継やM&Aを検討する企業にとって、安心して活用できる重要な選択肢といえるでしょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の買収や売却を円滑に進めるための幅広いサポートを提供する専門組織です。

売り手企業と買い手企業をつなぐだけでなく、交渉の補助、進行管理、企業価値の評価、契約書の作成など、M&Aの各プロセスを包括的に支援し、スムーズな取引実現を目指します。

特筆すべきは、豊富なネットワークを活用して最適な取引相手を迅速に見つける能力であり、これによりM&Aの成功率が大幅に向上します。また、M&A初心者の企業に対しても分かりやすい助言を行い、不安を解消しながら取引を進められる環境を整えます。

ただし、仲介サービスの利用には着手金や中間報酬などの費用が発生する場合が多く、事前に料金体系を十分に確認することが重要です。費用を抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを提供する仲介会社を選ぶことで、費用対効果の高い支援を受けることが可能です。

保険代理店の事業承継まとめ

保険代理店の事業承継は、親族内承継であれば保険会社との業務委託契約を結んだまま会社を運営できます。また、親族外承継であっても、会社の代表者の変更などをすれば事業承継が可能です。後継者にとっては、生命保険、損害保険の募集人の資格取得などやらなければならないことがいくつかあります。

規模の小さい保険代理店は、今後は存続が難しくなるケースも出てくることが予測できます。M&Aも視野に入れて今後を検討していくべきだと考えられます。

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