M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年1月29日更新業種別M&A
医薬品製造のM&A・事業承継の事例18選を紹介!業界動向や積極買収企業も解説【2024年最新】
本記事では、医薬品製造におけるM&A動向や増加の理由、事業承継の事例、注意すべきポイント、合併や買収を積極的に行う企業を紹介します。近年、医薬品製造業界では、M&A件数が増加し、その取引金額も拡大しています。医薬品製造のM&Aを検討中の方は必見です。
目次
医薬品製造とM&A(譲渡・売却)の基本知識
近年、医薬品製造のM&Aや事業承継が活発化しています。この大きな要因には、新商品である新薬を上市できない点があります。こうした状況のなか、少しでも研究開発費に投資できるよう、医薬品製造業界では事業の譲渡・売却が盛んになっている状況です。
医薬品製造とは
医薬品製造会社が販売している医薬品は、医療用医薬品と一般医薬品の2種類に分類できます。まずは、これらの医薬品の定義を紹介します。
医療用医薬品とは
医療用医薬品とは、医師の処方せんにもとづいて薬剤師が調剤する薬のことです。医療用医薬品は、効き目が強く病気やけがなどの治療に有効ですが、副作用のリスクがあることから医師や薬剤師の指示にしたがって服薬しなければなりません。
また、医療用医薬品は効き目が強いため、国に申請して初めて医療用医薬品と認められます。なお、日本の場合は、薬価制度により医療用医薬品の価格が決められる仕組みです。
一般医薬品とは
一般医薬品とは、医師の処方せんなしに薬局やドラッグストアで購入できる医薬品をさし、薬の効き目の強さに応じて3段階に分類されます。医療用医薬品とは異なり、一般医薬品の販売価格は自由に決めることが可能です。
このうち第1種医薬品は、一般医薬品の中で最も効き目が強いため、薬剤師が勤務している時間のみ販売が許されています。
医薬品製造のM&A(譲渡・売却)とは
M&Aとは、Mergers(合併))and Acquisitions(買収)の略称であり、会社や経営権を売買することです。近年、医薬品業界では、業界内での生き残りを図るため、積極的にM&Aが行われています。
事業承継の種類3選
事業承継とは、経営している事業を後継者に引き継がせることです。近年、中小企業における経営者の高齢化などにより、事業承継の件数が増加しています。事業承継は、誰を後継者にするかによって、以下の3つのタイプに分けられます。
- 親族内事業承継
- 親族外事業承継
- M&Aによる第三者への事業承継
①親族内事業承継
親族内事業承継とは、経営者の親族が事業を引き継ぐことです。日本では、代々家系が事業を引き継ぐことが通例でした。親族内承継は経営者の親族が事業を引き継ぐため、「後継者育成がしやすい」「安心して事業承継できる」などのメリットがあります。
しかし、近年では外部環境が大きく変化したために、事業を引き継がせたくない経営者や事業を引き継ぎたくない親族が増加しており、親族内事業承継の件数が年々減少しています。
②親族外事業承継
親族外事業承継とは、自社の従業員など経営者の親族以外に事業を引き継ぐことをいいます。親族外事業承継は、「自社のことを十分理解している優秀な従業員を後継者として選べる」点が大きなメリットです。
しかし、親族外事業承継では、後継者に対して会社の資産などをすべて売却するため、後継者は大金を調達しなければなりません。こうした資金面の問題もあり、引き継ぎたいと考えている従業員は少ないことから、親族外事業承継も年々減少しています。
③M&Aによる第三者への事業承継
M&Aによる第三者への事業承継とは、第三者の企業を後継者として事業売却することをいいます。M&Aによる第三者への事業承継には、「後継者を選定する必要がない」「短期間で事業承継ができる」などのメリットがあります。
近年では、廃業するよりも事業を承継・売却したいと考える中小企業の経営者が多いため、M&Aによる第三者への事業承継の件数が急増しています。M&Aを行う際は専門知識が必要とされるため、M&A仲介会社などの専門家にサポートを求めるとよいでしょう。
M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、幅広い実績により培ったノウハウを生かして、M&Aをフルサポートいたします。
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医薬品製造のM&A・事業承継の事例18選
本章では、医薬品製造のM&A・事業承継の事例を18件紹介します。
①サワイグループHDによるアメリカ傘下3社の売却
サワイグループホールディングス株式会社は、米国の持株会社であるSawai America Holdings Inc.(SAH)と、その子会社であるSawai America LLC(SAL)、Upsher-Smith Laboratories, LLC(USL)の持分を、共同出資者であるSumitomo Corporation of Americas(SCOA)と共に、Bora Pharmaceutical Holdings, Inc.(Bora)へ譲渡することを決定しました。
サワイグループは、ジェネリック医薬品の製造販売を行う企業です。一方、Boraは医薬品およびヘルスケア製品の製造販売に携わっています。
本件M&Aにより、譲受側では、製品戦略での差別化を進めるための思い切った製品戦略投資や新工場を有効活用するための追加投資を図っています。
②そーせいグループによるイドルシア社の医薬事業の買収
2023年7月、そーせいグループは、バイオ医薬品企業として、英国と日本の2カ所で肺疾患などの治療薬を作っている会社です。このそーせいグループがイドルシア社という企業から、イドルシアファーマシューティカルズジャパン(東京都港区)と韓国のIdorsia Pharmaceuticals Korea Co., Ltd.の全ての株式を買い取り、子会社にすることを決めました。
買収の目的は、そーせいグループの事業をさらに成長させるためです。具体的には、日本での臨床開発の能力を高め、販売の効率を上げるとともに、新しい販売やマーケティングの方法を導入することで、規模を拡大し、価値を高めることが期待されています。
③michitekuによる猫舌堂の買収
2023年6月、小野薬品工業の完全子会社であるmichiteku(東京都中央区)は、関西電力グループ会社と一緒に、大阪の猫舌堂の全株式を買い取る契約を結びました。
この買収によって、小野薬品工業は、がん患者の生活の質を向上させる目標に一歩近づくと考えています。具体的には、がんの手術や治療を受けている患者の食事に関連する問題に取り組み、より良い生活を提供するための新しい方法を開発する予定です。猫舌堂がmichitekuに加わることで、がん患者の社会的課題解決に対する貢献が期待されています。
④ロート製薬による三洋化成工業との資本業務提携
4つ目は、ロート製薬による三洋化成工業との資本業務提携です。ロート製薬は、大阪府大阪市生野区巽西に本社を置く製薬会社です。三洋化成工業とは、化学メーカーで、界面活性剤・高吸水性樹脂を主力としています。
買収年度 | 2021年12月 |
買収価格 | なし |
買収手法 | 資本業務提携 |
買収目的 | 事業拡大・企業価値向上 |
⑤科研製薬によるARTham Therapeuticsの買収
5つ目は、科研製薬によるARTham Therapeuticsの買収です。買収側は、東京都文京区に本社を置く製薬会社です。売却側は、バイオベンチャーであり、医薬品の研究開発を行っています。
買収年度 | 2021年11月 |
買収価格 | 55億円 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | ART-001およびART-648の第2相臨床試験の成功実現など |
⑥帝人グループによるKiSCOの事業承継
6つ目は、帝人グループによるKiSCOの事業承継です。買収側は、グローバルなテクノロジー主導企業として、輸送・電子工学・安全対策・環境・ヘルスケア産業にソリューションを提供しています。
売却側は、脊椎固定材料や骨接合材料などのインプラント製品の開発・販売を行う医療機器会社です。
買収年度 | 2021年10月 |
買収価格 | 非公表 |
買収手法 | 吸収分割 |
買収目的 | KiSCOの人財および製品の承継、開発・営業基盤の強化、製品ラインアップの拡充など |
⑦ロート製薬によるカフェ・カンパニーとの資本業務提携
7つ目は、ロート製薬によるカフェ・カンパニーとの資本業務提携です。本件により、ロート製薬は主要な株主になり、持分法適用会社となっています。
カフェ・カンパニーは、飲食店舗の企画運営事業・地域コミュニティ事業・海外店舗企画運営事業などを手掛ける会社です。
買収年度 | 2021年8月 |
買収価格 | 非公表 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 事業成長、より多くの顧客の心・身体の健康的な生活への貢献 |
⑧ジーエヌアイグループによるBAB社の完全子会社化
8つ目は、ジーエヌアイグループによるBAB社の完全子会社化です。買収側は、マザーズに上場している創薬企業で、主に中国を拠点に新薬探索・臨床開発から製造・販売まで一貫した事業を行っています。売却側は、アメリカの医療機器(生体材料)サプライヤーです。
買収年度 | 2020年12月 |
買収価格 | 非公表 |
買収手法 | 逆三角合併、株式交換 |
買収目的 | BABの主要製品のグローバルマーケティング活動の強化など |
⑨大正製薬HDによるフランスの製薬会社UPSA SASの買収
9つ目は、大正製薬HDによるフランスの製薬会社UPSA SASの買収です。大正製薬HDは、アジアを中心に事業展開を行ってきましたが、UPSA SASの買収により本格的に欧州に進出すると発表しています。
買収年度 | 2019年7月 |
買収価格 | 約1,800億円 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 欧州への進出 |
⑩小林製薬による梅丹本舗の全株式取得
10件目は、小林製薬による梅丹本舗の全株式取得です。梅丹本舗は、梅肉エキスを使用した健康食品の製造販売を行う会社です。
消費者の健康志向が進む中で、小林製薬は、梅丹本舗が長年培った健康食品のノウハウを活用し、健康食品のラインナップを強化して、自社のマーケティング戦略で売上拡大を目指すと発表しています。
買収年度 | 2019年5月 |
買収価格 | 約10億円 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 健康食品のラインナップ強化と売上拡大 |
⑪武田薬品工業によるシャイアーの買収
11件目は、武田薬品工業によるアイルランドの製薬メーカー「シャイアー」の買収です。本件買収によって、武田薬品はメガファーマとなり、新薬開発力を高めると発表しています。
買収年度 | 2019年1月 |
買収価格 | 約7兆円 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 新薬の研究開発力の強化 |
⑫シオノギヘルスケアによる宝ヘルスケアの子会社化とタカラバイオからの健康食品事業譲受
12件目は、塩野義製薬の子会社であるシオノギヘルスケアによる宝ヘルスケアの子会社化と、タカラバイオからの健康食品事業譲受です。シオノギヘルスケアはシニア層向けの健康増進事業を強化しており、本件事例により当該事業のさらなる強化を図ると発表しています。
買収年度 | 2019年1月 |
買収価格 | 非公表 |
買収手法 | 株式譲渡、事業譲渡 |
買収目的 | シニア層向け健康増進事業の強化 |
⑬ツムラによるマイファームと資本業務提携
13番目に紹介する事例は、ツムラによる農地活用事業展開を行っているマイファームとの資本業務提携です。今回の資本提携により、ツムラは国内での生薬生産拡大と技術の共同開発に取り組むと発表しています。
買収年度 | 2018年4月 |
買収価格 | 3億円 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 生薬生産の拡大とその技術の共同開発 |
⑭日医工とエーザイの資本業務提携
14番目は日医工とエーザイの資本業務提携です。また、日医工は、エーザイ子会社のエルメッドエーザイを子会社化しています。
エルメッドエーザイは、ジェネリック医薬品の研究開発などを行っている会社です。日医工では、ジェネリック医薬品の事業拡大と成長を図ると発表しています。
買収年度 | 2018年3月 |
買収価格 | 170億円 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | ジェネリック医薬品事業の拡大と成長 |
⑮アステラス製薬によるMitobridge社の完全子会社化
15番目は、アステラス製薬による米国のバイオベンチャーMitobridge社の完全子会社化です。アステラス製薬は、ミトコンドリア関連疾患を得意分野とするMitobridge社を子会社化することで、研究開発のさらなる加速を図っています。
買収年度 | 2018年1月 |
買収価格 | 非公表 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | ミトコンドリア関連疾患における研究開発の加速 |
⑯田辺三菱製薬によるステリック再生医科学研究所の腸疾患関連事業の買収
16番目は、田辺三菱製薬によるステリック再生医科学研究所の腸疾患関連事業の買収です。田辺三菱製薬は、アメリカでの製品ラインナップを構築するために、腸疾患事業を買収しています。
買収年度 | 2017年11月 |
買収価格 | 買収直後は約35億円 研究の進捗度に応じて、追加的に最大約84億円を支払う予定 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 開発製品の戦略領域の拡大 |
⑰日立化成による診断薬製造販売協和メデックスの子会社化
17番目は、日立化成による協和発酵キリン系列である協和メデックスの子会社化です。日立化成は、診断薬事業のうちアレルギー診断薬の製造を行っていますが、協和メデックスを子会社化することで事業基盤の強化を図ると発表しています。
買収年度 | 2017年9月 |
買収価格 | 非公表 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 診断薬事業の基盤強化 |
⑱キョーリン製薬HDによる検査機器開発会社ジェイタスの全株式取得
18番目は、キョーリン製薬HDによる検査機器開発会社ジェイタスの全株式の取得です。ジェイタスはベンチャー企業で、感染症を診断できる「GeneSoC®」を開発しています。
キョーリン製薬HDは、ジェイタスを買収することにより、感染症診断を事業化して、シナジー効果の獲得を図ると発表しています。
買収年度 | 2017年6月 |
買収価格 | 非公表 |
買収手法 | 株式譲渡 |
買収目的 | 感染症診断の事業化、シナジー効果の獲得 |
医薬品製造業界を取り巻く現状4選
本章では、医薬品製造業界を取り巻く現状を以下の4つの視点から解説します。
- 高齢化社会による薬価改定の影響
- ジェネリックのシェア拡大
- 後発医薬品メーカーも含めた業界再編の動き
- AIやIoTなどの最先端技術を用いた新しい医薬品製造の動き
①高齢化社会による薬価改定の影響
医薬品製造業界は、薬価改定による影響を非常に大きく受けます。医療用医薬品の価格は国によって決められますが、これまでは製薬会社が得られる収益・社会保険費の負担額・類似医薬品の価格などを参考に決められていました。
しかし近年は、高齢化社会により社会保険費の負担額が大きくなっているため、薬価を下げて社会保険費を削減しようとする動きが目立っています。新薬開発費が莫大であるにもかかわらず、高齢化社会により薬価が下がっているため、以前に比べて収益をあげにくい状況です。
②ジェネリックのシェア拡大
医薬品製造業界では、ジェネリック医薬品のシェアが拡大しています。ジェネリック医薬品とは、特許切れの医薬品であり、同じ薬効ですが低価格で販売される医薬品です。
この動きは新薬メーカーからすると好ましくありません。以前は、特許が切れてもある程度の収益を得られましたが、ジェネリック医薬品のシェアが拡大すると収益源がなくなり財務状態が悪化することが予測されています。
③後発医薬品メーカーも含めた業界再編の動き
後発医薬品メーカーを含め、医薬品製造業界では業界再編の動きが活発化しています。中でも先発メーカーは、新薬の研究開発費を確保するために積極的なM&Aを行っている状況です。
その一方、政府によるジェネリック医薬品の推進が完了すれば、ジェネリック医薬品事業のみでは会社の成長が見込めないため、後発医薬品メーカーでも業界再編の動きを強めています。
④AI・IoTなどの最先端技術を用いた新しい医薬品製造の動き
近年は、AIやIoTなどの最先端技術を用いた新しい医薬品製造の動きも見られます。特に新薬の研究開発では、AIを駆使して新薬となり得る化合物の探索を行っている状況です。また、医薬品の製造現場では、AIやIoTを用いることで、業務の効率化・人件費が削減されて収益向上に貢献しています。
医薬品卸業界のM&A動向については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
製薬企業以外で医薬品製造の買収に積極的な企業2選
薬価改定などにより逆風が吹いている医薬品製造業界ですが、製薬会社以外でも医薬品製造のM&Aに積極的な企業があります。その代表例として、以下の2つの企業を紹介します。
①ジェイフロンティア
ジェイフロンティアは、ヘルスケアセールス事業・ヘルスマーケティング事業を行っている中小企業です。サプリメント・医薬品の企画販売・著名メーカーのマーケティング支援なども行っています。
医薬品関連のセールス・マーケティングを得意分野としており、医薬品製造の買収を積極的に行っています。
②ケアネット
ケアネットは、医師・医療従事者向けの医療コンテンツだけでなく、製薬企業向けの医薬営業支援サービスも行っている企業です。
買収取引価格が10億円以内の案件であれば買収を行うと公表したこともあり、今後も積極的にM&A・買収を進めていくものと考えられます。
CRO・SMO業界のM&A・売却・事業承継の最新動向については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
医薬品製造のM&A・事業承継の最新動向3選
本章では、医薬品製造業界のM&A・事業承継に見られる以下の3つの特徴を解説します。
- 国内大手メーカーによる海外製薬企業のM&A
- M&A件数・金額の大きさ
- 医薬品製造工場を買収するケース
①国内大手メーカーによる海外製薬企業のM&A
1つ目は、国内大手メーカーによる海外製薬企業のM&Aです。国内の医薬品市場は、医療費削減などの影響により収益性が下がると見込まれています。
また、日本は超高齢社会であるため、将来的に人口が急激に減少すると予測されており、市場の縮小を見越した方策が必要です。
その方策として国内大手メーカーの多くが選択したのが海外進出であり、足掛かりとして海外製薬企業のM&Aを積極的に行っています。
②M&A件数・金額の大きさ
2つ目は、M&Aの件数・金額が大きいことです。近年は、海外進出や国内での業界再編を目的としたM&A件数が増加しています。先発メーカーは、少しでも多くの新薬を開発・販売するために、販売可能なシードを持っているベンチャー企業を積極的に買収しています。
大手先発メーカーのM&Aは取引金額が大きくなっており、新薬の開発が可能となる企業体力を付けるために、大型のM&Aが積極的に行われています。
③医薬品製造工場を買収するケース
近年は医薬品製造工場を買収するケースが目立っており、特にジェネリックメーカーにその傾向が見られます。先発メーカーは新薬開発に注力しており、研究開発費を調達するために、特許の切れた医薬品の製造方法を積極的に売却している状況です。
このときに、医薬品を製造する工場も売却しているケースがあり、件数は年々増加しています。
製造業(メーカー)の売却の流れや価格算定方法については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
医薬品製造のM&A・事業承継の際に注目したいポイント6選
本章では、医薬品製造のM&Aや事業承継の際に注目したいポイントを解説します。多くのポイントが存在するものの、今回は特に重要な以下の6点を取り上げます。
- 製造する医薬品の特徴や市場
- 製造する医薬品の競合メーカー
- 検査薬・試薬品などの製造事業への着手
- 遺伝子解析など研究分野への着手
- AI・IoTなどの最先端技術を取り入れた医薬品製造
- M&A・事業承継分野で相談できる専門家の存在
①製造する医薬品の特徴や市場
1つ目は、製造する医薬品の特徴や市場規模を把握しておくことです。医薬品製造のM&A・事業承継では、製造する医薬品の特徴や市場規模をもとに将来計上できる売上高を予測して、取引価格を決定します。
例えば、中堅よりも規模の小さな先発メーカーでは、ニッチであり得意分野を積極的に研究開発し、新薬を製造しようと考える傾向があります。事前にどのようなニーズがあるのかを把握しておき、自社が製造する医薬品の特徴も理解しておくと良いでしょう。
②製造する医薬品の競合メーカー
2つ目は、競合となる企業を把握しておくことです。近年、医薬品業界では競合を回避するために細分化が進んでいるため、製造する医薬品メーカー同士の競合はそれほどみられません。
しかし、まれに同じ分野で競合している場合もあるため、対象企業がどの点で強みがあるのかを把握しておくことが大切です。
③検査薬・試薬品などの製造事業への着手
3つ目は、検査薬・試薬品などの製造事業への着手です。医薬品製造の中には、検査薬や試薬品などの製造事業への参入を図る企業もあります。
関連事業へ進出する主な理由には、「新薬開発には莫大な資金が必要であること」「新薬の特許が切れると収益がなくなること」「リスク回避のために経営多角化を行う必要があること」などが挙げられます。
④遺伝子解析など研究分野への着手
4つ目は、遺伝子解析など研究分野への着手です。新薬開発が困難になっているため、大学と連携して基礎研究が行われているケースもあります。
遺伝子解析など、さまざまな研究分野に着手している企業は、医薬品業界で生き残るための将来性があるといえます。
⑤AI・IoTなどの最先端技術を用いた医薬品製造
5つ目は、AI・IoTなどの最先端技術を用いた医薬品製造です。AIやIoT技術を取り入れることで、医薬品開発や製造での効率化・コスト削減を図れます。つまり、AI・IoTなど最先端の技術を導入している企業は、将来的に成長できる可能性が高いです。
⑥M&A・事業承継分野で相談できる専門家の存在
医薬品製造業界でM&Aや事業承継を成功させるためには、関連する法律などM&Aに関する専門的な知識だけでなく、医薬品製造業界の動向に精通していることも求められます。
実際の交渉ではM&Aに関する経験も必要とされるため、M&A・事業承継の実績があり、なおかつ医薬品製造業界にも精通しているM&Aの専門家に相談しながら進めていくことが大切です。
製造業(メーカー)の事業譲渡と株式譲渡については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
医薬品製造のM&A・事業承継の際におすすめの仲介会社
医薬品製造のM&Aや事業承継を成功させるためには、M&Aに関する知識や見解に加えて、医薬品業界に精通していることも必要です。
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医薬品製造のM&A・事業承継のまとめ
今回は、医薬品製造会社のM&A・事業承継の概要や、実際の事例を中心に解説しました。医薬品製造会社は、業界で生き残るためにさまざまな戦略を取っており、M&Aもその戦略のひとつです。
ただし、M&Aや事業承継を成功させるためには、M&Aに関する知識や見解に加えて、医薬品業界に精通していることも求められます。成功を目指すためにも、専門家のサポートを得ると良いでしょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。