M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年11月19日更新業種別M&A
学校法人・専門学校のM&A・事業承継の事例!動向や案件例・相場も解説
学校法人・専門学校のM&A・事業承継について解説します。学校法人の運営は一般的な会社と異なる点が多く、独自のガバナンスで成り立っています。少子化が進行する日本では、学校法人・専門学校のM&A・事業承継も増加する可能性が高くなる見込みです。
目次
学校法人・専門学校の業界定義
学校法人とは、私立学校の設置・運営を目的として、私立学校法の規定により設立される公益法人のことです。
学校教育法1条に規定されている、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学(大学院と短期大学を含む)・高等専門学校と、専修学校、各種学校の3つに大別されます。
専門学校は、大学と同じ「高等教育機関」として位置付けられています。修業年限は2年である学科が最も多くなっていますが、教育内容に応じて1年制から4年制までさまざまな学科が存在します。大学教育と比較した場合の専門学校の教育の特徴は、実践的な職業教育が行われている点です。
学校法人・専門学校の事業特性
学校法人・専門学校は、学校教育という高い公共性が求められる事業を運営する目的で設立されます。そのため、所轄庁(文部科学大臣および都道府県知事)による許可・指導・監督を受けなければなりません。
「寄付行為」に関しては、学校法人の目的や名称、資産・評議員に関する規定などを定め、法令に則った手続きが必要です。創設者の私財によって土地・建物・設備などが使用されることがありますが、これは創設者の所有とはならず「寄付行為」とみなされます。
学校法人・専門学校は、特殊なガバナンスで成り立っています。意思決定機関である「理事会」、諮問機関である「評議員会」、監査を行う「監事」の設置が必要です。
収入面については、大半は学生からの入学金・授業料・施設整備資金などの納入金です。そのため、学生数の増減により影響を受ける業界といえます。
学校法人・専門学校の市場規模
文部科学省「令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値を公表します。」
出典:https://www.mext.go.jp/content/20230823-mxt_chousa01-000031377_001.pdf
人口減少に伴い、学校法人・専門学校の生徒数も減少の傾向にあります。子どもの数は年々減少し、公立学校でさえ廃校に追い込まれるところもみられます。特に、バブル崩壊後から世帯所得が伸びず少子化の進行が深刻化し、学校法人も生徒数確保に頭を悩ませている現状です。
ただし、高等教育機関への進学率に関しては、若干増加しています。文部科学省の「令和5年度学校基本調査結果」によると、大学全体の在学者数は294万6千人で、前年度より1万5千人増加して過去最多となっています。一方で、専門学校生は55万5千人で、前年度より2万6千人減少している状況です。
就職に有利な高学歴を身につけるため、大学への進学を考える人が増加していることがうかがえます。
学校法人・専門学校の教員数の推移
生徒数には減少が見られるものの、大学数の増加から、大学教員数は年々増加し続けている状況です。学生のニーズに応えるために、学部や学科の細分化が必須となり、非常勤講師の採用が増えています。このことが教員数増加の一因と考えられます。
教員の平均年齢は上昇傾向です。教育方法の考え方の違いなどから、最近では保護者からのクレーム対応が増え、教職員を志す若者が減っていることも原因の一つと推察されます。
政府統計ポータルサイト「学校基本調査年次統計」
出典:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011...
学校法人・専門学校の課題・展望
学校のブランド・教育の提供内容・立地条件などにより、学生が大学を選ぶ傾向が強まっているなか、学校法人・専門学校の競争はますます激化しています。
地方大学や短期大学に顕著ですが、近年は定員割れが急増していることが課題です。少子化が加速しているため今後もこの流れが止まるとは考えづらく、厳しい市場環境であるといわざるをえません。
生徒数減少と教員数増加が学校法人の経営を圧迫している状態であり、生徒数獲得のためには教育の質の向上がカギとなるでしょう。
その方策の一つとして少人数制のクラス編成にすることが考えられ、そうすることで難関校への進学率が向上し、生徒の囲い込みが可能となります。
この厳しい市場環境を勝ち抜くためには、ブランド力の強化や、特色のある教育展開、経営の効率化など、競合と差別化を図る必要があるでしょう。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継の現状
現在の日本は少子化が進行し、学校法人にとっては苦しい状況が続いています。18歳以上の人口は減少、もしくは低い水準のまま推移しています。それに伴い、学校法人も閉鎖や定員割れが続出しているのです。
一方で、大学進学率は上昇しています。より良い教育へのニーズは高まる傾向です。生徒数自体は一定の数値を維持し続けています。
それに伴って、学校法人同士、特に私立大学同士の生徒の取り合いが激化しています。少子化が続いている以上、この競争が終わることはないでしょう。
学校法人・専門学校は生徒数次第で収益が増減するため、「生徒の獲得」は何よりも優先すべき突破目標です。一定以上の生徒数の確保に失敗すれば、その学校法人の経営は大きく悪化します。
一般的な会社とは異なり、学校法人・専門学校は独自のシステムで成り立っているため、行政機関の許認可を獲得するのも膨大な時間がかかります。たとえ許認可を得たとしても、守らなければならない制度や規制が非常に多いのです。
何かしらの施策を打っても、あらかじめノウハウを心得ていなければスムーズに運営ができません。そのため、学校事業への進出は非常にハードルが高いといえます。
M&A・事業承継で他の学校法人を取り込んで生徒数を確保
これらの問題を解決するうえでM&A・事業承継は有効的な手段です。M&Aで他の学校法人・専門学校を取り込めれば、生徒数を確保できます。中学・高校・大学と一貫型の統合を行えば、内部進学もあって一定の生徒数を維持しやすくなります。
外部企業との経営統合により、新たなノウハウを取り入れたり、財務基盤を強化したり、より安定的な経営を目指すというメリットが得られるでしょう。
企業が学校法人の設立を目指すケースでもM&Aは役立ちます。学校法人をゼロから設立すると、行政の許認可取得に時間がかかり、設備の確保や生徒の募集など煩雑かつコストがかかるプロセスをこなす必要があります。
M&A・事業承継で学校法人・専門学校の経営権を獲得すれば、許認可を取る必要はありません。学校法人・専門学校をゼロから設立するより大幅にプロセスを省略できます。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継の相場
学校法人・専門学校のM&A・事業承継の相場が気になっている方も多いのではないでしょうか。一般的な会社のM&Aでは、経営権を獲得できるだけの株式を取得するため、その取得した株式分の費用がM&Aの取引価格になります。
一般的な会社のM&Aとは異なり、学校法人・専門学校のM&A・事業承継では株式を取得するプロセスがありません。理事長や理事会のメンバーを入れ替えることで経営権を獲得します。端的にいうと、学校法人・専門学校のM&A・事業承継において、経営権の獲得自体は実質的には無料で行えるということです。
ただし、理事長や理事会のメンバーを入れ替えた際には、退職したメンバーの退職金が発生します。退職金の設定は学校法人ごとに異なります。一般的には数千万円単位の金額になるでしょう。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継において対価に該当するのは、この退職金ということになります。 退職金が総額でどれだけかかるかはケースバイケースです。退職させる人数によっては、数億円になる可能性もあるので、計画的に行いましょう。
株式取得のプロセスはないが、事業譲渡や合併で対価は発生
学校法人のM&Aは、ただ理事長や理事会のメンバーを入れ替える以外にも事業譲渡や合併といった手法があります。この場合、発生する費用は異なってきます。
事業譲渡は、経営権を取得するのではなく、学校法人が有する資産などを直接買収するという手法です。相手から資産を買い上げることになるため、当然対価が発生します。ケースバイケースですが、基本的に「純資産価値+のれん代」の金額で決定します。
合併の場合は、株式取得ではないため、理事長や理事会のメンバーを入れ替える手法と同様に対価は発生しません。しかし、退職金を支払うための費用が必要です。行政機関の許認可をもらうなど多くの手続きが必要なため、コストもかかります。
債権者に個別催告した際は、弁済や担保の提供が必要となることもあります。非適格合併と判断された場合は、法人税や他にもコストが発生する可能性があるのです。
学校法人の合併は、理事長や理事会のメンバーを入れ替えるだけの手法よりも、退職金などの費用の他にコストがかかる傾向があります。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継を成功させるポイント
ここでは、学校法人・専門学校のM&A・事業承継を成功させるために買収側・売却側それぞれの立場で重要なポイントを説明します。
買収側のポイント
学校法人を買収する際のポイントを説明します。学校法人は教育機関です。優秀な人材を育成し、輩出できるだけの機能を持たなければ、学校法人に価値はありません。
買収するときは「質」に注目しましょう。学校法人がどのような学部・学科・コースを設置しているか、どのような環境や設備を用意しているかはもちろん、実際に教育を行う教員の質にも注意が必要です。
学校法人は生徒数で収益が決まります。生徒をどれだけ集められるかが最大の注目ポイントです。
- どのような生徒にターゲットを定めて募集しているか
- 募集プロセスはどのようなものか
- 生徒の募集の妨げになるような問題はないか
生徒の確保がどのように行われているのかをしっかり確認しておくべきです。これらは、学校法人同士の競争に勝つための最大の要素であり、将来性にも直結する重要なポイントといえるでしょう。
さらに、学校法人の独自システム(ガバナンス)が問題なく機能しているか、しっかり見極める必要があります。学校法人が教育機関である以上、利益至上主義や理事長・理事会の権限の独占は、学校法人としての価値を落とすことにつながります。
それだけでなく、ひとたびスキャンダルが発覚すれば、経営自体にも大きな悪影響を及ぼしかねません。健全な教育体制が維持できているかを知っておく必要があります。
売却側のポイント
学校法人を売却する際のポイントを説明しましょう。学校法人が一定数の生徒を確保するためには、生徒を集められるだけの「強み」を持っておく必要があります。
学校法人の中には、経営を優先するがゆえに、設備カットや環境を悪化させるようなことを行うことがあります。教育機関としての価値を下げるようでは本末転倒です。
M&Aを行ったとしても、教育機関としての伸びしろがなければ将来的な発展は厳しいでしょう。将来性がないと判断されてしまえば、M&A自体が破談する可能性もあります。学校法人の売却を考える際は、教育機関としての「強み」を維持しておくべきでしょう。
学校法人が一般の会社と異なる特殊な法人である以上、買い手側の経営手腕にも注意が必要です。学校法人は単純に会社経営と同じ要領で経営できるものではなく、利益至上主義に走るようであれば、教育機関としての価値を損ないます。
特に大学の場合は、研究機関としての価値も注目されているため、買い手側の質は非常に重要です。学校法人の特殊性や独自のシステムやプロセス(ガバナンス)などをある程度理解している買い手を選ぶようにしましょう。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継は専門家の協力が大切
学校法人・専門学校は一般的な会社とは異なる点が多く、M&A・事業承継においてもプロセスが異なります。もし何も知らずにM&A・事業承継に踏み込もうとしても失敗してしまう可能性が高いでしょう。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行う場合は、専門家の協力が必要です。一般的なM&A仲介会社であると支援してもらえないこともあります。実績などを確認してから支援を依頼することがおすすめです。
M&A総合研究所では、M&Aの知識・実績豊富なアドバイザーがご相談からクロージングまで専任でフルサポートいたします。
M&A総合研究所の料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている学校法人・専門学校のM&A・事業承継の案件例として、首都圏の学校法人(幼稚園、学童保育)をご紹介します。
英語教育に力を入れており、近隣幼稚園との差別化を図っています。有資格者が多数在籍しているのも強みです。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
学校法人・専門学校のM&A・事業承継の事例
この章では、近年において実際に行われた学校法人・専門学校のM&A・事業承継の事例を紹介します
清泉女学院と清泉女子大学の合併
2023年9月27日、学校法人清泉女学院と学校法人清泉女子大学(いずれも東京都品川区)は、合併基本合意書を締結しました。清泉女学院が存続法人となり、清泉女子大学はその設置大学として残ります。
この合併により、少子化など厳しい経営環境下での運営を安定化させ、清泉ブランドの統一と強化を図ります。また、相互補完的な学部構成による連携が活発化し、学生の学習機会が広がることが期待されています。法人統合により運営効率も向上し、経営管理機能の強化が見込まれています。
京進によるSELC Australia Pty Ltdの連結子会社化
2020年10月12日、京進は、オーストラリア・シドニーにある語学学校・専門学校事業を展開するSELC Australia Pty Ltdの全株式を取得し、同社を連結子会社とすることを発表しました(取得価額は10百万円)。
京進は、国内外での学習塾、英会話、日本語教育、介護、キャリア支援など幅広い事業を展開しており、今回のM&AによりSELC Australia Pty Ltdとのノウハウやリソースを共有し、新しい英会話サービスの開発や語学関連事業でのシナジー効果を期待しています。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継時におすすめの相談先
学校法人・専門学校のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
金融機関がM&Aサポートに特化した専門部門を新たに設置する動きが広がっています。特に投資銀行やメガバンクといった大手金融機関は、資金調達や戦略の策定など、M&Aに必要な包括的サポートを提供し、ファイナンシャルアドバイザー(FA)として企業間取引を円滑に進める役割を果たしています。
このような支援により、企業は資金調達や事業承継といった複雑な課題に取り組みやすくなり、専門的なアドバイスを活用することで成功の可能性が高まります。
一方で、大手金融機関は大規模な案件を優先する傾向が強いため、中小企業が必要なサポートを受けにくい場合もあります。企業は、自社の規模やニーズに合わせた支援先を慎重に選ぶことが大切です。また、アドバイザリー費用が高額になることが多いため、事前に料金を確認することも欠かせません。
公的機関
近年、事業承継やM&Aを支援するための公的サポート体制が急速に拡充されています。全国の47都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業に対し、事業承継やM&Aに関する情報提供、アドバイス、企業間のマッチングサービスを無料で提供しています。
この充実したサポートにより、地方の中小企業も専門的な支援を受けやすくなり、さらに個人事業主へのサポート体制も強化されています。また、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介を受けることも可能です。
ただし、民間の仲介会社と比較すると対応のスピードや柔軟性には限界があるため、利用の際にはこの点を考慮することが重要です。このような公的支援機関は、事業承継やM&Aを検討する企業にとって有力な選択肢の一つとなっています。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業売買に関する手続きを包括的に支援する専門サービスです。売却側と買収側の双方に、取引相手の選定、交渉サポート、進行管理、企業評価、契約書作成まで、多岐にわたる支援を行い、取引の円滑な実施をサポートします。
特に、広範囲なネットワークを活用して最適な相手を見つけやすく、成約率が高いのが大きな特徴です。また、M&Aに不慣れな企業に対しても丁寧なアドバイスを提供し、安心して進められるようバックアップします。
ただし、仲介会社を利用する際には着手金や中間報酬といった費用がかかることがあるため、事前に料金を確認することが重要です。コストを抑えたい場合には、成功報酬型の仲介会社を検討するのも効果的な手段です。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継まとめ
学校法人・専門学校は一般的な会社と異なる点が多く、独自のシステム(ガバナンス)で運営されます。公共性が非常に高い事業であるため、その運営には長年の経験と知識が必要です。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継は少子化の進行に比例して増加する可能性が高いため、何らかの形で関わる場合はそのノウハウを身に付ける必要があります。少しでも迷ったり、悩んだりしたときは、学校法人・専門学校のM&A・事業承継に関する経験が豊富なM&A仲介業者に相談しましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。