2024年10月20日更新業種別M&A

建設業・ゼネコン業界の事業承継の動向!注意点や事例も解説

建設業・ゼネコン業界では、人材不足を理由に事業承継などのM&A手法をとるケースが多くなってきています。しかし、建設業・ゼネコン業界で事業承継を行う場合、許認可の引き継ぎに注意しなければならないなどの課題もあります。事業承継の際は、M&A仲介会社などの専門家に相談しながら進めましょう。

目次
  1. 建設業・ゼネコン業界の現状
  2. 建設業・ゼネコン業界の事業承継の動向
  3. 建設業・ゼネコン業界の事業承継・M&A案件例
  4. 建設業・ゼネコン業界の事業承継・M&A事例
  5. 建設業・ゼネコン業界の事業承継における課題
  6. 建設業・ゼネコン業界における事業承継の注意点
  7. 建設業・ゼネコン業界の事業承継時におすすめの相談先
  8. 建設業・ゼネコン業界の事業承継まとめ
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建設 ゼネコンのM&A・事業承継

建設業・ゼネコン業界の現状

建設投資額は1992年度の84兆円をピークに減少し、2010年度には42兆円と約半分に落ち込みました。しかし、東日本大震災の復興需要が増加を後押しし、2017年度以降は60兆円台を維持しています。

2024年度の地域別建設投資の構成割合は、関東が35%で最も多く、次いで近畿が15%、中部が11%となっています。地方の比率は公共投資の抑制で縮小していますが、半導体関連の投資が集中する九州(11%)や復興が進む東北(8%)の割合は高くなっています。

日本建設業連合会の調査によると、2023年度の国内建設受注額は17兆6646億円で、前年から8.6%増加し、過去20年で最高値となりました。特に関東での大型民間受注が多く、資材費の高騰による工事単価の上昇も影響しています。官公庁からの受注は14%増加し、民間からの発注も7.0%増と、いずれも前年を上回りました。

参考:日経コンパス「総合建設(ゼネコン)」

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建設業・ゼネコン業界の事業承継の動向

建設業・ゼネコン業界はその特性上、M&Aが進みにくい業界であるといわれています。その理由は、同じ仕事内容でも規模を大きくすることで原材料や労働力のコストを抑える「規模の経済」が働きにくく、事業規模拡大によって公共工事への入札参加資格が制限されるなどがあるためです。

しかし、建設業・ゼネコン業界では現在、深刻な人手不足が課題となっており、それを解決するための手法としてM&Aが用いられるようになってきました。現在、国内の就業人口は減少の一途にあります。20歳から65歳の人口が、2000年には約8,000万人であったのが、2060年には約4,400万人まで減少するというデータがあります。

そのような状況において、M&A手法を用いて企業買収を行い、労働者の確保にあたる企業が増え、事業承継型M&Aの需要は増加しています。また、近年ではハウスメーカーがゼネコンを買収するケースもあり、事業拡大や基盤の強化のためのM&Aも行われています。

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建設業・ゼネコン業界の事業承継・M&A案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている建設業・ゼネコン業界の事業承継・M&A案件例をご紹介します。

【関西地方/一級建築士在籍】多様な工事が可能な建設業

一級建築士、一級施工管理技士等の有資格者が在籍し、自社にて設計・施工・販売が可能です。官民バランスよく案件を受注しています。

エリア 近畿
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 戦略の見直し

【関西地方/一級建築士在籍】多様な工事が可能な建設業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

【EBITDA1億円以上の高収益/有資格者・拠点多数】 地場優良建設コンサル業

EBITDAは1~2億円で推移しています。マネジメント人材が留任予定のため、譲渡後も自走が可能です。

エリア 中部・北陸
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 10億円〜15億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【EBITDA1億円以上の高収益/有資格者・拠点多数】 地場優良建設コンサル業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

建設業・ゼネコン業界の事業承継・M&A事例

建設 ゼネコンのM&A・事業承継
建設 ゼネコンのM&A・事業承継

建設業・ゼネコン業界の事業承継・M&A事例をピックアップしご紹介します。

ハセックによる山本設備機工の事業承継・M&A

長谷工コーポレーションの子会社、ハセック(東京都港区)は、2024年10月1日付で山本設備機工(兵庫県神戸市)の全株式を取得しました。ハセックは建設資材や設備機器の販売代理やリースを行い、山本設備機工は空調給排水設備の設計・施工を手掛けています。

今回のM&Aは、長谷工の施工能力や品質、生産性を向上させる目的で行われました。長谷工は、設計、建設、技術推進の各部門と協力会社から成る「建栄会」との連携強化を通じ、建設業界の課題に対応しながら受注拡大を目指しています。

長谷工グループ 山本設備機工株式会社の株式を取得 ~更なる受注拡大に向けた生産体制構築の推進~

戸田建設によるPlatinum Landscapeの事業承継・M&A

2024年9月3日、戸田建設は、米国カリフォルニア州にある100%子会社の戸田アメリカを通じ、同州に拠点を置くPlatinum Landscape, Inc.(以下、プラチナランド社)の事業を2024年8月28日付で買収しました。

戸田建設は、建築、土木、海外事業、投資開発、再生可能エネルギーなど多岐にわたる事業を展開しています。一方、プラチナランド社は主に、分譲住宅と住宅街における植栽工事やその管理サービスを手がけています。

今回の買収の背景には、戸田建設グループの中期経営計画で掲げる「海外事業の強化」があり、これまでカリフォルニア州を中心に商業不動産の賃貸事業で安定した成長を遂げてきました。しかし、コロナ禍以降のオフィス市場の変動や米国の金利、為替動向の影響を受け、新たな方針転換が必要となっていました。

プラチナランド社の買収は、こうした環境変化に対応するための外部成長戦略としてのM&Aの一環です。プラチナランド社が活動するカリフォルニア州のオレンジ郡、サンディエゴ郡、リバーサイド郡は、人口増加と住宅需要が見込まれる地域です。この地域での植栽サービスを強化し、戸田建設は安定した成長と地域社会への貢献を目指します。

米国子会社におけるカリフォルニア州植栽会社の事業譲受

イチケンによる片岡工業の事業承継・M&A

2024年5月27日、イチケンは、取締役会において、千葉県長生郡に拠点を置く片岡工業の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。

イチケンは、建設業を中心に、ビルの賃貸、不動産開発、住宅や商業施設の企画・設計・施工・管理、また、専門店舗の設計と施工に至るまで、幅広い事業を展開しています。一方、片岡工業は、建設および土木工事の分野で事業を展開している企業です。

今回の株式取得の目的は、片岡工業が有する土木工事や舗装分野での専門技術や知識を取り込み、両社の事業シナジーを生かしてグループ全体の企業価値を高めることにあります。

片岡工業株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

建設業・ゼネコン業界の事業承継における課題

建設業・ゼネコン業界でも、他業界と同様に後継者や人手が不足していることから、事業承継型のM&Aが増えてきていますが、建設業の事業承継においては他業種に比べて課題が多くあります。代表的な課題には、許可の引き継ぎと経営業務の管理責任者の不足があります。

許可の引き継ぎ

建設業として営業していくためには、国土交通省の許可を得なくてはいけません。そのため、事業承継においては許可の引き継ぎが大きな課題となります。この許可の引き継ぎは、法人の場合は商業登記の変更をすることで引き継ぐことができます

しかし、個人事業の場合は、許可の引き継ぎはできません。引き続き事業を行う場合は、前の個人事業主が建設業許可の廃業届を出し、後継となる新事業主が新たに許可申請をすることが必要になります。

他業種とは異なり、許認可の取り直しが必要となる分、事業承継後に営業を開始するまでに時間がかかる場合が多く、十分な準備をもって事業承継にあたることが必要です。

法改正により相続などの場合に許可の引き継ぎが可能に

建設業法の改正により、2020年の秋には事業譲渡や合併、相続によって建設業許可の引き継ぎが可能になります。これにより、例えば個人事業主である親が亡くなり、それを子供が相続して事業を継続する場合に、許可についても引き継ぐことができるようになります。

建設業許可の申請は、知事許可の場合で1ヶ月~2ヶ月、大臣許可の場合ではおよそ4ヶ月の許可審査期間がありますが、2020年の秋からは許可を引き継ぐことができるため、無許可となっている期間がなく事業を継続していけるようになります。

経営業務の管理責任者の不足

建設業を営むには、経営業務の管理責任者(経管)が必ず社内に1名はいなければならないという規約があります。経営業務の管理責任者とは、営業上対外的に責任者の地位にあり、経験を積んだ人物をさし、個人事業の場合、事業主である場合がほとんどです。

事業承継を考える際、後継者がこの「経営業務の管理責任者」となる必要がありますが、これは事業責任者についてから経験を積んでいないと認められないため、事業承継後、すぐに営業を開始できないことになります。

個人事業であれば代表か支配人、法人であれば役員のうち最低1人が、経営業務の管理責任者として常勤している必要があります。社内に条件を満たす人材がいない場合、事業承継後に、譲渡先から派遣してもらうケースもあります。

建設業のM&Aにおいては、この経営業務の管理責任者の不足が問題となるケースが多くあります。事前に経営者以外の人間の支配人登記を行い、経験を積むなどの方法もあるため、状況に合わせて事業承継を考えはじめた段階で、何らかの対策を行っておく必要があります。

【関連】建築業の事業承継の許認可手続きやポイントを解説【事例あり】

建設業・ゼネコン業界における事業承継の注意点

ここでは、建設業・ゼネコン業界における事業承継の注意点について解説していきます。

従業員へのフォロー

事業承継においては、取引先などの社外のみならず、社内へも目を向ける必要があります。事業承継により、一族を後継者とする場合は社員の抵抗も少なく、比較的受け入れやすいです。しかし、他の企業と事業承継型M&A取引を行う場合は難しいでしょう。

今後の待遇や業務内容に大きな変化があるのでは、と社員が不安を抱き、M&Aをきっかけとして社員が辞めてしまうケースも少なくありません。そのため、M&A取引後に社員が働きにくくなることが起こらないよう、社風や企業文化の合う信頼できる企業を選び取引を行うことが重要になります。

従業員への待遇などの条件を確約することが理想的

より信頼できる相手を選ぶためには、両社の経営者による会談を行い、交渉の際には社員が今後も働き続けたいと思える待遇面での条件を確約しましょう。給与、労働環境等の待遇における条件だけでなく、社員のやりがいへ配慮した業務内容を意識した条件を取り付けることが理想的です。

建設業のM&Aにおいて、最たる目的とされているのは買収による人材の確保ですので、業務に通じた貴重な人材を流出させることは、売り手、買い手ともに大きな損失となります。そのようなことにならないよう、従業員へのフォローは確実に行う必要があります。

事業承継後の統合プロセス

事業承継後は、買い手企業との経営のすり合わせを行っていくことになります。建設業界は現在、人材不足を背景に企業統合が盛んに行われている時代となっています。建設業界に限ったことではありませんが、今後は就業人口の大幅な減少から、経済も縮小していくものと考えられます。

そうなれば、強い企業が弱い企業を買収する形で業界再編が進んでいくと予想され、その中でどれだけ波に乗れるかが重要になってきます。ビジネスモデルが変化すれば差別化が進みますし、その中で業績や社員待遇にも差がついてきます。

これは決して大企業のみの問題ではなく、中小企業も当事者となる問題です。優秀な技術者や人材を抱える中小企業は、買収のターゲットとなります。事業承継による統合の成立後も、複数の企業間で新たなビジネスモデルを作り上げ、シナジー効果を創出することが生き残りのカギとなります。

取引相手を選ぶ段階で社風なども勘案し、より違和感なく統合していける企業を選択することが理想です。受注方針1つをとっても、事業によって受注方針は異なります。受注内容の傾向は時間によって変遷していきますが、双方の協力効果が最大となるような受注方針を事前に固めておくことも重要です。

建設業・ゼネコン業界の事業承継時におすすめの相談先

建設業・ゼネコン業界の事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

最近、金融機関がM&A支援に特化した部門を設立する動きが加速しています。特に、投資銀行や大手メガバンクは、企業間取引をスムーズに進めるために、ファイナンシャルアドバイザー(FA)として資金調達や戦略立案のサポートを積極的に行っています。

こうした専門サービスを利用することで、企業は資金調達や事業承継などの複雑な課題にも迅速に対応しやすくなり、専門家の助言を受けることで、取引が成功する確率を高めることができます。

しかし、大手金融機関は規模の大きいM&A案件を優先する傾向があり、中小企業が十分なサポートを得られないこともあります。そのため、企業は自社の規模やニーズに合った支援先を慎重に選ぶ必要があります。また、アドバイザリーサービスの費用が高額になることがあるため、事前に費用を確認し、適切な予算計画を立てることが重要です。

公的機関

近年、事業承継やM&Aに対する公的サポートが大幅に拡充されています。全国に展開されている「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者が不足している中小企業を対象に、事業承継やM&Aの情報提供や専門的なアドバイスを行い、企業間のマッチングを無償でサポートしています。

この仕組みによって、地方にある中小企業でも専門的なサポートを手軽に受けられる環境が整えられており、個人事業主も対象とされています。さらに、必要に応じてM&A仲介会社や専門家を紹介することも可能です。

ただし、民間のM&A仲介会社と比較すると、対応速度や柔軟性に限界がある場合もあるため、その点には注意が必要です。それでも、公的機関は事業承継やM&Aを検討している企業にとって、信頼できるサポート先として評価されています。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の買収や売却プロセス全体を支援する専門機関です。売り手と買い手の双方に対し、最適な相手の選定、交渉サポート、進行の管理、企業評価(バリュエーション)、契約書作成など、幅広いサービスを提供します。彼らは、両者の条件や希望を調整し、取引が円滑に進行するよう支援する役割を果たします。

特に、仲介会社は広いネットワークを活用して理想的な取引先を見つけ出し、M&Aの成功率を高めることに貢献しています。また、取引経験が浅い企業にも具体的な助言を提供し、スムーズな取引実行をサポートします。

ただし、仲介会社の利用には着手金や中間金などの費用が発生する場合があるため、コスト管理が求められます。費用を抑えたい場合は、成功報酬型の仲介会社を利用するのが有効です。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

建設業・ゼネコン業界の事業承継まとめ

これまではM&Aが進みにくい業界であるといわれていた建設業・ゼネコン業界においても、人材不足などの面から事業承継などのM&A手法をとるケースが多くなってきています。現在、中小規模の事業への事業承継・売却のニーズは高まっているため、買い手企業は吟味のうえで選ぶことをおすすめします。

ただ、事業承継においては許可の引き継ぎなどの手続きも含め、十分な期間を確保し準備することが成功のカギとなります。建設業の事業承継を行う際は、M&A総合研究所のようなM&A仲介会社へ相談し、専門家のアドバイスをもとに進めていきましょう。

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