M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年11月2日更新会社・事業を売る
M&Aの譲渡価格の相場はどれくらい?価格の決め方・高値で売却するコツも紹介【事例付き】
M&Aの相場とは、企業を譲渡・譲受する際にふさわしいとされる金額です。買い手側と売り手側ではM&Aの相場観に差異があるため、折り合いをつける必要があります。本記事では、M&Aの取引相場に関する情報を、事例とともに解説します。
目次
M&Aの譲渡価格の相場とは
相場とは、一般的に物が取引される際の金額のことであり、時価の値打ちのことです。実際に自社の買収や事業の一部の買収を検討されている方は、自社がいくらくらいで売れるのか、譲渡価格が気になることでしょう。ここでは、M&Aの譲渡価格の相場について解説します。
M&Aの譲渡価格に相場はある?
M&Aの譲渡価格とは、簡単にいうと自社または事業を売却した際の金額です。つまり、譲渡・譲受対象会社の現時点における価値を表しているということになります。
M&Aの譲渡価格を決める要素は複数ありますが、対象会社の企業価値をベースとして最終的には売り手・買い手の交渉で価格が決まるため、明確な相場というものはありません。
M&Aにおける相場知識の必要性
M&Aを実行する経営者にとって、最大の関心事はM&A取引における譲渡・譲受価格といえます。M&Aによる買収を検討する企業であれば、できるだけ安く買いたいと考えるはずです。その一方、M&Aで売却を検討する企業であれば、できるだけ高く売りたいと考えます。
しかし、双方が考えを変えなければ、いつまでも平行線のままで、M&Aは成立しません。このときに、M&Aの価格に対する感覚を是正できる材料が、M&A相場の情報です。有効で有意義なM&Aを成功させるには、M&A相場の知識が必要といえます。
ただし、M&Aの取引相場を全て理解するのは簡単ではありません。適正な予算感を持ってM&Aを検討するには、M&Aの専門家からアドバイスを受けながら進めていくことが得策です。
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M&Aの相場観
M&Aの当事者となるのは、会社を買う側と会社を売る側です。買う側は少しでも安く買いたいと思い、売る側は少しでも高く売りたいと考えます。
ここでは、各当事者のM&A相場に寄せる心情を紐解きながら、M&Aの相場観に潜む注意点を紹介します。
会社を買う側のM&A相場観
M&Aで会社を買収する側は、買収により期待できるメリット・想定されるデメリットを天秤(てんびん)にかけながらM&Aによる買収価格を検討します。メリットとしてはシナジー効果の獲得が代表例です。
しかしながら、買い手側は、一般的にM&A相場を低く見てしまう傾向があります。M&A成立後のシナジー効果・将来的なキャッシュフローは目に見えない価値であり、買い手は漠然とした不安感を持ってしまうからです。
会社を買収すると、売り手側の会社の経営者が交代します。経営者が変わることで、一時的ではあっても業績が落ちるおそれがあるといったデメリットがあるのです。
こうした観点・心情により、M&Aの買収側は相場を低く見積もってしまいます。買収側は、予算より高い金額を提示されると値引き交渉をするでしょう。しかし、中小企業はほとんどの場合、値引き交渉に応じてもらえないのが現状です。
決断できずに交渉を保留にすれば、以下のトラブルが生じるおそれがあります。
- 優良候補であったにもかかわらず、他の会社とのM&Aが決まる
- さらに高額な金額で取引を要求される
こうした事態を避けるため、ある程度の金額で見切りをつけてM&Aを実施する選択肢も必要です。適切に決断するには、対象会社だけではなく業界全体のM&A相場に関する知識が有用となります。
加えて、フェアなM&A取引となるよう、対象会社の条件と自社のニーズが合致しているのか意識することも大切です。
会社を売る側のM&A相場観
M&Aで会社を売却する側は、可能な限り会社を高く売りたいと考えます。これは、経営に関する苦労・従業員の努力に対する思い・将来的なキャッシュフローを信じる気持ちなどからくる心情です。
同業他社がM&Aで高額な取引を実現したといった情報を耳にすると、自社も高く売れるに違いないと考えがちです。結果的にM&Aで高額な売却希望金額を提示するケースが多くなります。
仮に買収側から希望売却金額よりも大幅に下回る金額を提示されたとしたら、M&A成約には至らないでしょう。買収側のケースと同様に、ある程度の金額で売却しなければ、いつまでもM&Aが実現できなくなるケースが想定されます。
M&Aで適切な判断を下すには、業界の相場・自社の価値を十分に認識しておくことが必要です。
M&Aの相場に影響を与える要素
M&Aでの取引金額には、対象となる企業の価値が反映されます。企業の価値には、貸借対照表の数字だけではなく、目に見えない価値も含まれる点が欠かせない要素です。ここでは、M&Aの相場に影響を与える以下の要素を紹介します。
- 純資産
- M&A後に期待される利益
- 取引先・顧客リスト
- 優秀な社員
- 大きな市場シェア
- 高度な技術力
- 企業理念・経営者の人間性
①純資産
M&A相場に対し、具体的な数値で影響を与える要素として純資産があります。ただし、貸借対照表に記載されている価格(簿価)では、純資産の現在の本当の価値を表しているとは言えません。
M&A相場に純資産額を反映させようとする場合は、現時点での時価に換算し、その数値を引用します。
②M&A後に期待される利益
純資産が現在所有しているものの価値であるのに対し、買収対象企業が将来、稼ぐであろう利益も、M&A相場に影響を及ぼすものです。M&Aの現場では、これを簡易的に算定する方法として以下の計算式を用います。
- M&A相場=時価純資産額+過去3年間の平均営業利益額×3~5年
営業利益に掛ける年数が変数となっているのは、業種の特性や対象企業の価値性などにより幅を持たせているからです。
③取引先・顧客リスト
M&Aの相場に影響する要素として、取引先や顧客リストもあります。売り手側の企業が優良な取引先を抱えていれば、M&A成立後もそのまま取引先を引継げます。事業が安定し、新規顧客を獲得する必要がないことがメリットです。
買い手側にとって、すでに信頼関係のある取引先があれば、さらなるビジネスチャンスを見つけられる可能性もあります。新規事業に参入する場合、顧客獲得までに時間を要することが課題です。
買い手側の企業としては、すでに多くの顧客リストを持っている企業を獲得できれば、新規事業参入でも有利になります。
④優秀な社員
M&Aの相場に影響する要素として、優秀な社員の存在も大きいです。たとえば、企業が新規事業に参入する際は、専門知識や経験、ノウハウを持った従業員の募集から始めなければなりません。
しかし、一から集めるには時間や手間がかかるため、M&Aによって、知識と技術を持った従業員を獲得できるのは、買い手側にとって非常に大きな魅力といえます。
⑤大きな市場シェア
大きな市場シェアは、M&Aの相場に影響する要素として非常に重要です。すでに市場シェアを獲得している企業をM&Aで買収できれば、順調にビジネスを拡大できる可能性も高くなります。
⑥高度な技術力
高度な技術力を持っている場合、M&Aの際に売却金額を高くできるでしょう。技術力という価値があるからです。
同じような業績・利益を上げている会社があったとしても、他社と差別化できる高度な技術力を持った従業員が在籍していると、M&Aの相場は高くなります。
⑦企業理念・経営者の人間性
M&Aの相場に影響する要素として、企業理念・経営者の人間性が挙げられます。これらは、目に見えるものとしては非常に表しにくいものです。
しかし、企業買収を検討している側としては、どのようなビジョンで会社を成長させてきたのかを大切な要素と考えています。売り手の企業理念・経営者の人間性を見て、自社の企業風土に合うかどうかも判断しているのです。
M&Aの譲渡価格の相場算出方法
買収側と売却側では、M&A相場に対する思惑に相違があります。そこには、売却側企業の歴史や売却後の会社の未来など目に見えない要素も大きく関係しているのです。価値として考えるのは非常に難しいですが、見えない利益価値をできるだけ数字に換算しなければM&Aは実行できません。
なお、以下の動画でも企業価値算定の概要を解説しておりますので、より理解を深めるために本記事と合わせてご覧ください。
M&Aの譲渡価格を算出する際の基礎知識
M&Aの現場では、利害が一致しづらい買収側と売却側の双方が納得できる相場を算出するために特有の計算方法を用います。このとき、M&A相場の簡易的な計算方法として用いられているのが、会社の純資産額と営業権を足す算定方法です。
純資産とは、その会社が所有する資産を時価で換算したものから、時価換算した負債を引いた金額をさします。営業権とは、これまで企業が生み出してきた利益の3年分程度を見込んだ金額のことです。
上記をいいかえると、将来的なキャッシュフローと現時点で所持している資産の総額をさします。M&Aでは、この金額を基準にしながら、具体的な相場を考察するのです。
代表的な算出方法
M&Aの譲渡価格を算出する際の代表的な方法を3つ紹介します。
- 修正純資産法
- DCF法
- 類似会社比較法
修正純資産法
修正純資産法とは純資産法のひとつであり、資産と負債の差額(純資産)から株価を算出する方法です。純資産法には、修正純資産法のほかに簿価純資産法があります。
簿価純資産法は帳簿の価格によって計算しますが、修正純資産法では時価評価を用いる点が両者の違いです。修正純資産法を用いる場合、企業の保有資産(時価)総額から、負債(時価)総額を差し引いて算出します。比較的簡単に計算することができますが、将来見込まれる価値は一切含まれない点がデメリットです。
DCF法
M&Aで最も多く採用される算出方法が、DCF(Discounted Cash Flow)法です。将来見込まれるキャッシュフローを基に算出する方法であり、フリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を計算します。
ただし、フリーキャッシュフローの予測に必要な事業計画書に、計画策定者の主観や恣意性が入りやすくなる点がデメリットです。
類似会社比較法
類似会社比較法とは、同一の業種・規模・収益など類似する要素が多い上場企業の株価をもとに、対象企業の企業価格を算出する方法です。客観性に優れている点が特徴で、「類似会社基準法」や「マルチプル法」とも呼ばれます。
上場企業を参考とするため、情報を集めやすいのがメリットですが、類似する企業がみつからない場合はそもそも使用できない点がデメリットです。その場合はほかの算出方法を用いる必要があります。
M&Aの譲渡価格の相場算出に向けたアプローチ
M&A相場を算出する際は、その過程の中で目に見えない要素も考慮します。すなわち、M&A相場を算出するには、会社の価値(企業価値)を理解しなければなりません。企業価値とは、企業が生み出す利益に、企業が獲得している評価を含んだものです。
企業価値を明確にするには株価の明示が求められますが、株価を利用した企業価値の計算手法には、以下の3つの系統があります。
- コストアプローチ
- マーケットアプローチ
- インカムアプローチ
ここからは、それぞれの計算手法を順番に見ていきましょう。
コストアプローチ
コストアプローチとは、簡単にいうと、企業の純資産における時価評価額などを基準にしながら、企業価値を算定する手法のことです。コストアプローチは、「簿価純資産法」と「時価純資産法」の2種類に大きく分かれます。
1つ目の簿価純資産法とは、「企業価値は帳簿上の純資産価額で示される」といった考えのもとで計算を行う手法です。計算式は、下記になります。
- 簿価純資産価額÷発行済み株式総数
簿価純資産価額は、帳簿上の資産から負債を差し引くことで求められます。簿価純資産法は帳簿資産の合計値を企業価値とする計算方法です。実質的な数値とかけ離れているケースもあるため、昨今のM&Aシーンで利用されることはほとんどありません。
2つ目の時価純資産法とは、評価時点において企業が保有する資産の時価合計額から、負債の総額を差し引いた金額を企業価値とする計算手法です。これにより、会社の価値が株価となって明示されます。
ここからは架空の企業「A社」を想定し、具体的な計算例を紹介します。想定するA社の貸借対照表上の数値は、以下のとおりです。
種類 | 価格:百万円(時価に換算したもの) | |
資産 | 営業債権 (売掛金、受取手形、貸付金など) | 2,100 |
有価証券、子会社・関連会社株式 | 600 | |
棚卸資産 | 350 | |
有形固定資産 | 1,100 | |
知的財産権 | 150 | |
資産合計 | 4,300 | |
負債 | 買掛金、未払金など | 900 |
退職給与引当金、退職給付会計 | 200 | |
賞与引当金 | 200 | |
未払税金 | 400 | |
負債合計 | 1,700 | |
株主資本価値 | 2,600 |
上記の資産合計から負債合計を差し引いた株主資本価値(=純資産)は2,600百万円となります。これが時価純資産法で算出された企業価値です。
時価純資産法は簿価純資産法と比べて使用頻度の高い計算手法ですが、将来的なキャッシュフローが加味されないデメリットもあります。時価純資産法で算出された相場に不満を持つ企業も少なくありません。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、上場している類似企業を比較対象として企業価値を計算する手法です。対象企業の決算書上の数値を一定割合の係数で調整し、価値を算出します。マーケットアプローチは2種類に大別されます。「類似企業比較法(マルチプル法)」と「類似取引比較法」です。
1つ目のマルチプル法とは、買収対象となる企業と同一業界に属している類似企業の企業価値・株式価値・各種財務指標などと比較して相場を計算します。市場価値・需要に沿った企業価値が計算できる点がメリットです。
対象企業の価値がそれほど高くなくても、企業の属する業界次第では相場が上がる可能性もあります。類似企業比較法を利用して企業価値評価を行う場合、一般的に用いられる指標は以下のとおりです。
- EV/EBIT倍率(企業価値÷利払い前・税引き前の利益)
- EV/EBITDA倍率(企業価値÷利払い前・税引き前・減価償却前・その他の償却前利益)
- PER(株価÷1株あたりの利益)
- PBR(株価÷1株あたりの純資産)
以下の動画で、弊社M&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法を解説しておりますので、ぜひご覧ください。
2つ目の類似取引比較法とは、自社のM&Aと類似する取引で成立した売買価格を基準にしながら、企業価値を評価する手法のことです。過去に取引された案件の各種倍率を算出し、評価対象となる企業に適用して企業価値・株式価値などを算出します。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、企業の将来の収益やキャッシュフローの予想を指標としながら企業価値を評価する計算手法のことです。インカムアプローチは、「DCF(Discounted Cash Flow)法」と「配当還元法」の2種類に大きく分かれます。
1つ目のDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法とは、将来的に生み出すキャッシュフローを加味しながら企業価値を明確に算出する手法です。将来的に生じる価値に着目するため、売却する会社側からすると喜ばしい計算方法といえます。DCF法の計算式は、以下のとおりです。
- FCF(フリーキャッシュフロー)÷割引率
上記のように、評価対象となる企業の将来におけるフリーキャッシュフローをリスクが考慮された割引率で調整し、企業価値を求めます。なお、フリーキャッシュフローを求める計算式は、以下のとおりです。
- EBIT×(1-法人税率)+減価償却費-設備投資など運転資本の増減分
上記のEBITとは法人税によって割り引かれる前の企業利益のことであり、一般的には営業利益と受取配当金を足した数値をさします。
2つ目の配当還元法とは、将来的な配当額の予測値をもとに企業価値を算出する計算手法です。この方法では、配当額を利率で割り元本の株式を求めることで企業価値が算出されます。
しかし、配当額は企業が設定する配当政策により変動するため、配当額の確定的な値を出すことは困難です。大企業のM&Aではそれほど活用されない計算手法です。
配当政策が変動しにくい非上場企業や株主数が少ない企業で利用されるケースは多く見られます。
のれん代
最終的なM&Aの買収価格は、これまで紹介した計算手法で求められた数値に「のれん代」を足すことで算出されます。のれん代とは、M&Aで生じる「無形資産の価値」のことです。
いいかえると、「M&Aにおける買収企業側が支払った買収金額のうち、売却企業側の純資産を上回った差額の部分」をさします。
のれん代の代表例としては、企業の特許・技術・ノウハウ・ブランドイメージなど売り手企業の持つ将来性や、買取企業側が売却企業側にかける期待値などが挙げられます。
M&Aの譲渡価格を算定する際の注意点
企業価値評価の3つの系統は、それぞれ異なる観点で計算を行います。同じ企業に対する計算でも、どのアプローチを用いたかによって異なる算定結果が生じるのです。
つまり、売却側は高い算定結果が出る手法を用い、買収側は低い算定結果が出る手法を用いれば、結局、金額は合致しません。いずれにしても、M&Aでは条件交渉による話し合いで最終的に取引額が決まります。
双方が有利となる算定方法に固執せず、建設的に話し合いを進めるには、真の意味での適正価格を知っておくことが肝要です。本記事でも紹介した簡易的な算定方法である以下の計算式が、話し合いのベースとなるでしょう。
- M&A相場=時価純資産額+過去3年間の平均営業利益額×3~5年
M&Aの譲渡価格の相場は手法により異なる
M&Aの手法には、いくつか種類があります。中小企業のM&Aで用いられるのは、ほとんどが「事業譲渡」か「株式譲渡」です。事業譲渡は、会社の経営権に影響を与えず事業・資産・権利などを選別して売買取引します。
株式譲渡は、買い手企業に自社株を譲渡し、会社の経営権を移動させる方法です。事業譲渡、株式譲渡のどちらの手法を用いるかによっても相場価格が異なりますので、それぞれ解説します。
事業譲渡の相場価格
事業譲渡でM&Aを行う場合、新規事業を検討中の経営者は、すでに利益を生み出している事業を他社から買収したいと考えます。一方、自社で成長させた事業を売却し、売却益を得たいと考えている経営者もいるでしょう。
事業譲渡を行った場合、該当する事業が売却されて、資産化されます。全部もしくは一部の事業売却となるため、株式譲渡と比べると事業譲渡の相場価格は低い金額です。
他の方法として、売却する事業を子会社化して、M&Aを行うケースもあります。この場合、事業譲渡よりも高い金額で売却できる可能性が高いでしょう。
事業譲渡で課される税金【参考】
事業譲渡を実施した場合、譲渡側法人に課される税金は法人税(法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人税)です。ただし、事業譲渡益単独への課税ではなく、その年度の決算で他の損益と通算した利益額に対して課税されます。
仮に損益通算額が赤字であれば課税されません。2022年5月現在の法人税の実効税率は約31%です。
一方、譲渡された中に消費税課税資産が含まれていた場合、譲受側が消費税を負担しなければなりません。事業譲渡対価の支払い時に消費税額も加算して譲渡側に支払い、消費税の納付は譲渡側が行います。
消費税課税資産は以下のとおりです。
- 有形固定資産(土地を除く)
- 特許、商標権などの知的財産
- ソフトウェアなどの無形固定資産
- 棚卸資産
- のれん代
株式譲渡の相場価格
株式譲渡は、事業譲渡とは違って、売り手の会社の資産全てが買い手側へ移転します。全ての資産が引き渡されるため、事業譲渡する場合と比べて、相場価格は高めになるのです。
株式譲渡の場合、売り手側は売却益を手にするだけでなく、後継者問題も解決できるのが大きなメリットになります。
株式譲渡で課される税金【参考】
株式譲渡を実施した場合、譲渡側が課税を受けます。譲受側は課税されません。また、譲渡側が個人か法人かで課税内容は異なります。
個人の場合は、株式譲渡所得は分離課税扱いです。税率は固定で以下のようになっています。
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%(2037⦅令和19⦆年までの時限税)
法人の場合は、法人税が課されますが、他の損益と通算された金額に課税されるのは事業譲渡の場合と同様です。
M&Aの譲渡価格を交渉する方法
M&Aの譲渡価格を交渉する方法は、「個別交渉」と「オークション(入札)」の2種類のタイプが存在します。それぞれの特徴を以下にまとめました。
個別交渉
個別交渉を行う場合、M&Aの相手候補となる企業を対象に、取引条件を交渉します。M&A当事会社の双方が合意に至れば取引成立です。合意に至らない場合には、別の相手候補を探したうえで交渉に移る段取りです。
M&A交渉に関する専門知識・能力が乏しい場合、希望どおりの価格で取引を成立させられなかったり、自社に不利な条件で契約を締結してしまったりするおそれがあります。M&Aの専門家である仲介会社にサポートを依頼するのが得策といえるでしょう。
オークション(入札)
M&Aにおけるオークションでは、はじめに、売り手側企業に関する情報を匿名状態で公開して買い手企業を募集します。これにより集まった買い手候補のうち、売り手側が興味を持った数社を対象に、取引条件を提示してもらったうえで最終的な相手企業を選ぶといった段取りです。
なるべく高い価格での売却を望む場合には、オークションでのM&Aをおすすめします。ただし、オークションにより選ばれた相手企業とは基本的に取引の破談はできません。M&A仲介会社のサポートを得ながら、慎重に相手候補の選択・交渉を進めましょう。
M&Aを行ううえで交渉は欠かせないプロセスです。円滑に進めるためにはM&A仲介会社など専門家のサポートが有用です。M&Aをご検討されていて専門家をお探しの際は、ぜひ、M&A総合研究所へご相談ください。
M&A総合研究所には、M&Aの知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、専任となってクロージングまでフルサポートいたします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
随時、無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
M&Aの相場よりも高値で売却するコツ
M&Aによる売却価格を高めたい場合には、以下の施策を実行すると良いでしょう。
- 複数の買い手候補と交渉する
- 自社に魅力を感じる企業を買い手に選ぶ
- アピールポイントを伝えて買い手に刺激を与える
- M&A直前まで収益力を高め続ける
自社の買収価格を最終的に決めるのは、買い手側企業の判断です。買い手が高い将来性を感じる企業の買収価格は相場よりも高くなる一方で、価値を低く見積もられた企業には相場よりも低い価格が提示されます。
買い手候補の企業は、それぞれ異なる考え方や価値観のもとで判断を下すため、なるべく多くの買い手と交渉しながら、特に自社に強い魅力を感じている企業を最終的な買い手に選ぶと良いでしょう。
交渉の際には、自社のアピールポイントを積極的に伝えて、買い手の買収意欲をあおることをおすすめします。アピールポイントを伝える際は、正確かつ具体的な数値を用いると効果的です。このプロセスは企業概要書の書類を用いるため、仲介会社に作成を依頼すると良いでしょう。
合わせて、売上を落とさないよう、M&Aの直前まで収益を上げる努力を怠らないようにしましょう。M&A直前に業績が上がり買い手から評価されたことで、売却価格を高められた事例も報告されています。
M&Aプロセスは長いケースでは、1年以上かかることもあるので、気を抜かずに努力を重ねていきましょう。
買い手はM&Aの買収価格を相場よりも抑えると良い?
M&Aの買い手としては、少しでも安い買収価格にしたいのは人情です。しかし、執拗な値下げ交渉に対し、仮に成約したとしても売り手側に悪印象が残るかもしれません。それが、事業の引継ぎや買収後の従業員のモチベーションに悪影響をもたらす危険性もあります。
買収後の経営統合などを考えれば、売り手側の立場や気持ちを尊重することを忘れず、値下げ追及は程よいタイミングで打ち切る方が得策といえるでしょう。
M&A手数料の相場一覧
これまで紹介したように、M&Aでは複雑な計算手法により買収価格が決定されるため、ほとんどのケースでM&A仲介会社が起用されます。M&A仲介会社を起用すれば手数料が発生し、これにも相場が存在するのです。
M&Aで発生する手数料には数種類あり、金額はM&A仲介会社により異なります。M&A仲介会社によっては請求しない手数料もあるため、念入りに調べたうえで相談先を選びましょう。
M&A仲介会社に支払う可能性がある手数料は、主に「相談料」「着手金」「成功報酬」です。それぞれ手数料の相場の目安を紹介します。
相談料の価格相場
M&A検討の初期段階で発生するのが相談料です。M&A仲介会社には、M&A案件の交渉を進める前に相談するのが一般的です。相談では「どういった企業を買収しようとしているのか」「どのような事業を売却したいのか」などの相談を仲介会社と行います。
事前相談は、経営者がそのM&A仲介会社に任せられるかを判断するためにもしっかりと行いましょう。M&A仲介会社の実績なども考慮し、「企業売却を任せても問題ないか」「信頼できるか」といったことを判断基準にします。
相談料の価格相場は、ばらつきはあるものの、無料としているM&A仲介会社が多いです。
着手金の価格相場
相談後、そのM&A仲介会社へ正式にM&Aの仲介業務を委託する場合は、契約締結時に着手金が請求されるケースがあります。M&A仲介会社でM&Aを進行する際は、人件費や資料作成費などの費用が発生します。
交渉を始める前に着手金の手数料を回収するケースが多いので、はじめに確認すると良いでしょう。着手金の価格相場は、100万円~500万円程度です。
着手金は、M&A取引がうまくいかなかった場合でも返金されません。昨今では着手金無料のM&A仲介会社も多く存在します。
成功報酬の価格相場
最終的に、M&Aがクロージングした際に支払う手数料が成功報酬です。成功報酬の価格相場は、一般的にM&Aの成立金額をもとに決定されます。
基準値は、「M&Aの取引金額×一定料率」です。成約金額次第で価格が変動するため、成功報酬の価格相場がありません。
事前に手数料を吟味したうえで、M&A仲介会社を利用しましょう。M&Aでは、算出だけではなく金額を調整する交渉のプロセスも必要です。交渉のプロセスも専門的かつ手間がかかるため、M&A仲介会社からサポートを得ると良いでしょう。
なお、成功報酬額の一部を前払いするという形式で、基本合意書締結時に中間報酬が求められる場合があります。
M&A仲介会社に相談・依頼するメリット
M&A仲介会社は、手数料が発生するだけあって、多くのメリットが得られます。特に重要なメリットは以下の3点です。
- 相手企業とのマッチングを効率化できる
- 適正なM&A価格で取引できる
- 煩雑な手続きのサポートが受けられる
相手企業とのマッチングを効率化できる
M&A仲介会社はM&Aの専門業者ですから、それぞれ独自のネットワークを持っています。買収希望であれ、売却希望であれ、そのニーズに合致した取引候補相手複数を、あまり時間をかけず見つけてくることでしょう。
自社のM&A取引・交渉にふさわしい相手探しという点で、M&A仲介会社の起用は有用です。
適正なM&A価格で取引できる
M&A仲介会社はM&Aの専門家です。多くの支援実績を持った会社が多いですから、M&Aの相場感も確かなものを持っています。その相場感のアドバイスを受ければ、高過ぎる金額で買収してしまったり、安過ぎる金額で売却してしまったりすることは起きないでしょう。
煩雑な手続きのサポートが受けられる
M&Aは、専門的な知識・経験が必要なプロセスばかりです。M&A仲介会社を起用すれば、企業価値評価、交渉、資料や契約書の作成、契約書のチェック、デューデリジェンスなどのプロセス全ての対応を任せられます。その結果、事業への対応がおろそかになることもありません。
M&A仲介会社から相場情報を集める際の注意点
M&Aの検討を始める段階でM&A仲介会社と接触する際は、下記の点に注意して相場情報を得ると良いでしょう。
- 複数のM&A仲介会社から情報を得る
- 複数のM&A仲介会社に直接会わない
- M&A仲介会社は話を盛ることを知っておく
①複数のM&A仲介会社から情報を得る
情報を得るときは、複数のM&A仲介会社に意見を聞きましょう。対象業種のM&Aに関して、M&Aアドバイザーの理解が不足している場合も少なくないためです。複数のM&Aアドバイザーから意見を聞いたうえで、最も説得力がある仲介会社を選びましょう。
②複数のM&A仲介会社に直接会わない
意見は聞くべきですが、情報流出の危険性が高まるため、複数のM&Aアドバイザーに直接会うことは避けましょう。M&A価格の目安を形成する意味では多少精度が下がるものの、代理人を立てながら匿名での情報収集をおすすめします。
③M&A仲介会社は話を盛ることを知っておく
基本的にM&Aアドバイザーは、接触してきた経営者にM&Aを依頼してもらいたいと考えるものです。そのため、ときには膨らました価格でM&A提示し、経営者を誘惑してくるケースもあります。
たとえば、4億円から6億円の相場観を提示してきた場合、上限である6億円は現実的な価格ではないケースがほとんどです。話を持ちかけられた売り手側企業の経営者からすると、4億円未満では売却しないといった考えに至るのが自然でしょう。
これを受けて、取引を成立させたいM&Aアドバイザーとしては、何とか4億円以上の買い手を探すことになります。この事情を踏まえると、結果的には4.5億円ほどの取引価格が落とし所となる可能性が高いでしょう。
このように、M&Aアドバイザーの思惑を考慮したうえで仲介会社を利用すると、予想外の価格で取引しなければならないトラブルを避けられます。
M&Aの譲渡価格の相場を理解する際に役立つ事例
M&Aの譲渡価格の相場を理解する際に役立つ事例を3つご紹介します。
Zホールディングス×ZOZO
譲渡企業である株式会社ZOZOは、日本最大級のファッション専門のオンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営し、ファッション業界でビジネスを行っています。
一方、譲り受け企業のZ Holdings株式会社(以前はヤフー株式会社と呼ばれていました)は、ニュース提供サービス「Yahoo!ニュース」やオンラインショッピングサイト「Yahoo!ショッピング」を運営するなど、インターネット関連の多岐にわたる事業を手掛けています。
この企業買収は、より多くの顧客を惹きつけたり、商品の多様化を図ったり、利用者の利便性を高めたりするなど、両社の事業上の相乗効果を目指して行われました。
取引は、現金を使って株式を直接買い取る形式で実施され、株式1株あたり2,620円で合計約152万株が取得されました。これにより、買収総額は約4,000億円に達しました。
NTT×NTTドコモ
株式会社NTTドコモは、携帯電話の通信サービスやデータ通信などを提供する企業です。日本電信電話株式会社(NTT)は、NTTドコモの親会社で、以前からNTTドコモの株式の約66%を持っていました。つまり、NTTドコモはすでにNTTのグループの一員でした。
この買収は、世界の市場での激しい競争に対応するため、NTTドコモを完全にNTTグループの一部とすることにより、事業の強化を目指します。具体的には、会社のリソースを最大限に活用し、法人向けサービスや新しいライフスタイルを支えるサービスを強化し、研究開発の体制を強くすることで、さらなる事業の成長を図ります。
この取引は、現金を使ってNTTドコモの株式を市場から直接買い取る方法(公開買い付け)で行われました。株式の買い取り価格は1株あたり3,900円で、公開買い付けで約8億株を手に入れ、更に別の方法で約2億株を買い取り、合計で約11億株を取得しました。これにより、買収の総額は約4兆3,000億円に上りました。
ニトリホールディングス×島忠
株式会社島忠は、関東地方で「島忠」ホームセンターを運営しており、家具やインテリアの小売を手がけています。一方、ニトリホールディングス株式会社は、家具やインテリア商品を自社で製造し、日本国内外にある「ニトリ」の店舗で直接販売しています。
この二社の合併の目的は、お互いの商品を補完し合って売上を伸ばし、自社ブランド商品の開発技術を共有して利益を上げること、そして物流の効率化を図りコストを削減し、資産をより効果的に使うことです。
合併は、株式を現金で買い取る公開買い付けという方法で行われました。株価は一株5,500円で、約3,000万株が取得されました。この買い取りによる総額は約1,650億円です。
M&Aの譲渡価格の相場まとめ
M&Aでは多額の資金が必要になりますが、具体的な相場は取引により大きく異なります。M&Aの実施前に相場を理解するのが非常に重要であることから、仲介会社などを利用して取引相場をスムーズに把握しましょう。
やみくもにM&Aの手続きを進めるのは危険です。M&Aの相場がわからなければ、買収で非常に高額な費用を要求されるおそれがあります。
売却時には、低い金額での取引を要求される可能性があります。満足できるM&Aを実現するには、相場に関する知識を身につけることは必須といえるでしょう。
M&Aの相場を理解するのは、市場や自社の知識知見を深める良い機会にもなります。M&Aを検討する場合は、積極的に相場情報の収集に努めましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。