2024年11月15日更新業種別M&A

引越し業者のM&A・事業承継の最新事例を解説!市場動向・案件も紹介

近年、引越し業者の業界では、M&A・事業承継が活発に実施されています。当記事では、引越し業者を積極的に買収する企業や、引越し業者のM&A・事業承継の事例をまとめました。また、引越し業者がM&A・事業承継を成功させるポイントも解説します。

目次
  1. 引越し業者の最新動向
  2. 引越し業者のM&A・事業承継するメリット
  3. 引越し業者のM&A・事業承継の案件例
  4. 引越し業者のM&A・事業承継の事例
  5. 引越し業者のM&A・事業承継に積極的な企業
  6. 引越し業者のM&A・事業承継を成功させるポイント
  7. 引越し業者のM&A・事業承継の売却相場
  8. 引越し業者のM&A・事業承継時におすすめの相談先
  9. 引越し業者のM&A・事業承継まとめ
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引越業者のM&A・事業承継

引越し業者の最新動向

引越し業者業界の動向には、以下3つの特徴が見られます。

  • 大型の引っ越し案件が減少し単価が下落
  • ネットマーケティングの活用が広まる
  • ニーズに応えるサービスの充実がポイント
  • 人手不足によるサービス停滞が課題

大型の引っ越し案件が減少し単価が下落

リーマンショックによる景気後退を受けて、マンションやオフィスなど大型の着工件数が減少しており、その影響は引越し業者業界の市場にも及んでいて単価が下落しています。引越し業界では99%以上の割合で中小企業が多いため、経営困難な状況に置かれている企業も少なくありません。

ネットマーケティングの活用が広まる

単価が下落した引越し業者業界は、競争力強化を図る必要があります。競争力強化のキーポイントとして、ネットマーケティングの活用により顧客を取り込めるかどうかという点が重要視されている状況です。

ニーズに応えるサービスの充実がポイント

ネットマーケティングの活用の拡大に伴い、「引越し業者が顧客ニーズに応えるサービスを充実させているのか」という点も重要視されています。

例えば、家族プランと引越プランの2つのプランがある場合は、移動距離や荷物の量など自身に合ったプランを細かく選べるなど料金サービスが充実していれば、他企業と比較して有利だといえます。

人手不足によるサービス停滞が課題

引っ越し業界では人手不足が慢性化しており、繁忙期には希望日に引っ越しができない「引っ越し難民」の増加を招いています。コロナ禍で転勤を控えていた企業が増えたことから「引っ越し難民」の数も増加傾向にあり、さらに2024年に施行される「働き方改革」によるトラック運転手の労働時間規制が加わり、サービスの停滞が懸念されています。

これらの影響で引っ越し料金も上昇しており、2023年2月には家族世帯の料金が前年同月比で15%増となりました。中堅の引っ越し業者「アップル」(東京・中央)も11月に料金を平均で約1割引き上げています。

 

引越し業者のM&A・買収・売却!業界動向、相場、成功事例、ポイントも解説【2023年最新】 | M&A・事業承継ならM&A総合研究所

引越し業者のM&A・事業承継するメリット

引越し業者のM&A・事業承継を行うに際して、メリットを理解しておくことが大切です。この章では、売り手側の立場からのメリットを紹介します。

後継者問題の解決ができる

近年の日本では、多くの会社が後継者不在を理由に廃業に至っています。特に中小企業における後継者不在は深刻な問題とされており、日本経済を支えている活力が失われていると指摘されています。

こうした背景により、会社売却を選択するケースが増えています。会社売却を行い、企業理念に理解のある買い手企業が見つかれば、自身がリタイアした後でも安定した経営が可能です。

廃業や倒産を避けられる

近年、資金繰りに苦しんでいる引越し業者も少なくありません。実際、債務を抱えていることで、廃業や倒産に至る企業もあります。そのため、廃業や倒産の回避を目的として、会社売却を行う企業も目立っています。

大手の傘下に入り安定した経営ができる

引越し会社を売却する場合、大手グループの傘下に入るケースも想定されます。大手グループとM&Aを行うと、経営を安定化できる可能性が高いです。実際に、人手不足の解消を狙って多くの大手企業が譲受先を探している状況が見られます。

従業員の雇用先を確保できる

会社売却は、従業員の雇用を守る有用な選択肢です。経営難に陥っている場合は整理解雇を余儀なくされ、また上手く対応できずに倒産に至った場合はこれまでに頑張ってくれた社員を路頭に迷わせてしまいかねません。

会社売却では会社の所有権のみが移るため、会社と従業員の雇用関係は継続されます。安定した企業に売却できれば、従業員が働き続けられる環境を構築できます。

売却益を獲得できる

引越し業者の会社は、高齢社長の健康悪化などで事業継続が困難な場合もあります。事業継続が困難な場合は、経営者の資金確保が重要です。

会社売却を行えば売却益を獲得できるため、廃業や倒産を避けつつ退職後の資金を調達することが可能です。

引越し業者のM&A・事業承継の案件例

M&A総合研究所が取り扱っている引越し業者のM&A・事業承継の案件例として、全国対応の引越・テレビの壁掛け工事業を手掛けている会社をご紹介します。

売上・利益は安定、実質無借金です。後継者不在による事業承継案件となっています。

エリア 関東・甲信越
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1億8,000万円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【全国対応 / 引越 / 家電】テレビの壁掛け工事業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

引越し業者のM&A・事業承継の事例

引越業者のM&A・事業承継
引越業者のM&A・事業承継

ここからは、引越し業者がこれまでに行ったM&A・会社売却事例を紹介します。

アート引越センターによるヤマトホームコンビニエンスの完全子会社化

2024年8月29日、アート引越センター(アート)は、ヤマトホールディングス(ヤマトHD)からヤマトホームコンビニエンス(YHC)の発行済普通株式49%を取得し、YHCを完全子会社化することに合意しました。

YHCは2025年1月1日付で「アートセッティングデリバリー」に社名を変更予定です。アートはこのM&Aを通じて、引越事業と大型家財の配送事業を連携させ、利便性の高いサービスを提供しながら新たな成長分野として強化を図ります。

アートグループによるヤマトホームコンビニエンス株式会社の完全子会社化のお知らせ

セイノーHDによる三菱電機ロジスティクスの買収

2024年6月18日、セイノーホールディングス(セイノーHD)は、三菱電機が保有する三菱電機ロジスティクスの株式66.6%を572億7600万円で取得し、連結子会社化することを発表しました。

セイノーHDは、三菱電機ロジスティクスの物流資産や特殊輸送ノウハウを活用してエレクトロニクス分野への対応力を強化します。一方、三菱電機はセイノーHDの輸送ネットワークを活用し、物流の効率化を図ります。また、三菱電機ロジスティクスは、セイノーHDの顧客基盤を通じて、三菱電機グループ外へのサービス拡大を目指します。

三菱電機ロジスティクス株式会社の株式に係る株式譲渡契約書及び株主間契約書の締結並びに子会社の異動に関するお知らせ

アイナボHDによるアクセスへの物流部門の事業承継

2023年11月13日、アイナボホールディングスは、物流部門「関西物流センター」をアクセスに吸収分割で移管することを決定しました。

アイナボホールディングスは、住宅機器の販売や工事などを行う企業グループであり、物流基盤の強化を目指して2023年2月にアクセスをグループに加えました。

この分割により、顧客ニーズへの迅速かつ柔軟な対応を可能にする意思決定体制を構築し、グループ全体で持続可能な物流基盤の確立を図ります。

物流部門の会社分割に関するお知らせ
【関連】特殊運送・輸送会社のM&A・会社売却!譲渡事例や積極買収企業を紹介!

引越し業者のM&A・事業承継に積極的な企業

最近では、引越し業者を積極的に買収している企業が増えていますが、ここでは以下の5社を紹介します。

  1. 日本通運
  2. サカイ引越センター
  3. トナミホールディングス
  4. 福山通運
  5. ヤマトホームコンビニエンス

①日本通運

引越し業者を積極的に買収する企業の1つ目は、日本通運です。これまでに日本通運が買収した案件には、主に以下のような事例があります。

  • 2008年6月2日: 郵便事業と折半出資にて、JPエクスプレスを設立
  • 2015年12月15日: 豊田自動織機よりワンビシアーカイブズの全株式を取得し、子会社化
  • 2015年12月25日: 名鉄運輸と資本業務提携契約および株式譲渡契約を締結

②サカイ引越センター

引越し業者を積極的に買収する企業の2つ目は、サカイ引越センターが挙げられます。これまでに、サカイ引越センターが買収した案件には、以下のような事例があります。

  • 1982年4月:八洲運送(現・サカイ引越センター、形式上の存続会社)の株式を取得し子会社
  • 2012年6月:フランスのNippon Euromovers SARLを子会社化
  • 2016年4月:SDホールディングス(連結子会社)を子会社化

③トナミホールディングス

引越し業者を積極的に買収する企業の3つ目は、トナミホールディングスが挙げられます。これまでに、トナミホールディングスが買収した案件には、以下のような事例があります。

  • 1996年8月: 日本運輸(現・トナミ国際物流)を買収
  • 2003年10月:京神倉庫の全株式取得(完全子会社化)
  • 2010年2月:帝石不動産から第一倉庫の株式の98.5%を取得し子会社化
  • 2013年4月:シー・フォーカスの全株式取得(完全子会社化)
  • 2014年7月 :菱星物流の株式取得(子会社化)
  • 2016年7月 :中央冷蔵の全株式取得(完全子会社化)

④福山通運

引越し業者を積極的に買収する企業の4つ目は、福山通運が挙げられます。これまでに福山通運が買収した案件は以下のとおりです。

  • 2009年10月:王子運送を子会社化
  • 2012年1月:三統(現・福山グローバルソリューションズ)を子会社化
  • 2012年7月:東京都中央区の絹川屋運送の株式74%を追加取得し同日付で完全子会社化
  • 2018年4月:キタザワの株式51%を取得、同時に同社と資本・業務提携

⑤ヤマトホームコンビニエンス

引越し業者を積極的に買収する企業の5つ目は、ヤマトホームコンビニエンスが挙げられます。これまでにヤマトホームコンビニエンスが買収した案件は以下のとおりです。

  • 2006年5月:海運最大手である日本郵船との資本・業務提携
  • 2007年5月:小売業大手の丸井と資本・業務提携

買収のメリット20選!事例40選! | M&A・事業承継ならM&A総合研究所

引越し業者のM&A・事業承継を成功させるポイント

引越し業者のM&A・事業承継を成功させるには、以下のポイントを把握しておきましょう。

  • M&Aの準備を計画的に行う
  • M&Aを行う理由・目的を明確にする
  • 希望する条件を決める
  • 最良の手法を選択する
  • M&Aの専門家に相談する

M&Aの準備を計画的に行う

引越し業者のM&A・会社を成功させるためには、M&Aの準備を計画的に行うことがポイントです。日本の中小企業は高齢化が進んでおり、これに伴い会社を売却しようと考えたとしても、役員や従業員が高齢であれば、将来性がないとみなされて売却価格が下がってしまうおそれがあります。

企業価値が高いタイミングで売却するためにも、M&Aの準備を計画的に進めたうえで、適したタイミングを逃さないようにしましょう。

M&Aを行う理由・目的を明確にする

引越し業者の会社をM&A・会社売却する場合は、理由・目的を明確にしておくこともポイントです。M&Aを行う目的にはさまざまなものがありますが、目的に応じて戦略や用いる手法が変わってきます。

目的に合致しない戦略や手法を実行してしまうと、手続きが煩雑になったり、費用が余分に発生したりするなどのデメリットが生じ、想定していたメリットを得られないおそれがあります。

希望する条件を決める

引越し業者のM&A・会社売却を成功させるには、まず自社の希望する条件を決めておくことが大切です。条件を明確にすることで、売り手企業を絞り込みやすくなり、M&Aの準備へとスムーズに移行できます。

売却を行う際は従業員の雇用継続や待遇など、自社が優先する条件や譲れない条件を事前に検討し、希望する条件を明確化しておきましょう。

最良の手法を選択する

M&Aにはさまざまな手法があり、それぞれに異なるメリット・デメリットが存在します。そのため、引越し業界でM&Aを行う際は、自社にとって最良の手法を選択することが大切です。どの手法を選んだとしても少なからずデメリットはあるため、総合的に判断する必要があります。

判断する際には専門的な知識や見解が不可欠であるため、M&A仲介会社などの専門家に相談したうえで決定しましょう。

M&Aの専門家に相談する

引越し業者のM&A・会社売却を成功させるには、M&A・会社売却の専門家に相談することが一番の近道だといえます。引越し業者のM&A・会社売却の際は、M&Aに関する知識だけでなく、経営・会計・税務・法務などの専門知識も必要とされるため、自社のみで進めるのは困難です。

無料相談を受け付けているM&A仲介会社や専門家も多いため、引越し業者のM&A・会社売却を検討した段階でまずは相談すると良いでしょう。

会社売却とは?手続きの流れやメリットデメリットを徹底解説! | M&A・事業承継ならM&A総合研究所

引越し業者のM&A・事業承継の売却相場

引越し業者を対象とするM&A・事業承継を検討している場合、どのくらいが相場なのかと思うことも多いでしょう。

引越し業者のM&A・売却相場は一概には断言できないものの、中小規模の企業であれば数千万円〜数億円程度、中堅・大企業であれば数十億円〜数百億円程度に及ぶケースが多いです。

M&A価格の算出方法

引越し業者のM&A価格を算出する際は、「バリュエーション」と呼ばれる手法が採用されます。

バリュエーションは、大まかにコストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチなどの方法に分かれており、それぞれ異なる特徴があります。

実際に算出する際は、複数の手法を組み合わせながら企業価値評価を行い、妥当な取引価格を模索していくプロセスが必要です。

企業価値評価を専門家に任せるメリット

M&Aでは、複数の手法を組み合わせながら企業価値評価を行う必要があり、専門的に高度な知識が不可欠です。

M&A価格をスムーズに算定するためにも、M&A仲介会社などの専門家からサポートを得ることをおすすめします。

【関連】運送会社の株式譲渡・会社譲渡!手法の違いを解説!どのスキームが得?

引越し業者のM&A・事業承継時におすすめの相談先

引越し業者のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

最近、金融機関がM&A支援に特化した部門を設けるケースが増えています。特に、大手投資銀行やメガバンクは、ファイナンシャルアドバイザー(FA)として、資金調達や戦略立案を含む広範な支援を提供し、M&A取引の円滑な進行をサポートしています。

このような支援によって、企業は資金調達や事業承継の難しい課題を克服し、専門家の力を借りることで取引成功の可能性が高まります。

しかし、大手金融機関は大規模案件に重点を置くため、中小企業への支援が十分に行き届かない場合もあります。企業は自社に最適な支援機関を慎重に選ぶ必要があるでしょう。加えて、アドバイザリー費用が高額になることが多いため、事前にその費用を確認しておくことが重要です。

公的機関

近年、事業承継やM&Aに対する公的支援が急速に拡充されています。全国の47都道府県には「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されており、後継者不足に悩む中小企業向けに、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイス、企業間のマッチング支援を無料で行っています。

これにより、地方の中小企業や個人事業主も専門的な支援を受けやすい環境が整えられています。また、希望があればM&A仲介会社や専門家の紹介も行っています。

ただし、民間の仲介会社に比べると対応の迅速さや柔軟性には限界があるため、利用の際にはその点を考慮することが必要です。公的支援機関は、事業承継やM&Aを検討する企業にとって、頼りになる選択肢のひとつです。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の売買を総合的に支援する専門機関です。売り手と買い手の双方に対し、取引相手の選定から交渉のサポート、スケジュール管理、企業評価、契約書作成まで、多岐にわたるサービスを提供し、取引を円滑に進める役割を果たします。

特に、広範なネットワークを駆使して適切な取引相手を見つけ、M&Aの成功率を高めることが大きな強みです。M&Aの経験が少ない企業に対しても、実務的なアドバイスを行い、スムーズな取引進行を支援します。

ただし、仲介会社の利用には着手金や中間報酬などの費用が発生する場合があるため、コスト面の事前確認が重要です。費用を抑えたい場合には、成功報酬型の仲介会社を選ぶことも一つの方法です。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所
【関連】M&Aの相談先9選!メリットデメリットや選び方とよくある相談内容を紹介

引越し業者のM&A・事業承継まとめ

ネットマーケティングの活用が広まり、料金体系などの顧客ニーズに応えるサービスの充実化が重要とされる引越し業者業界ですが、その一方ではM&A・事業承継事例にも見られたように競争が激化しており、経営困難に陥っている中小企業も多いのが現状です。

M&A・事業承継を成功させるためには、M&A・事業承継の専門家に相談し、サポートを受けながら進めていくのがおすすめです。

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