2022年6月6日更新業種別M&A

清酒酒造・日本酒業界のM&A・売却・買収事例20選!買う・売る流れ、メリット、費用の相場を解説

世界的に注目度が高まっているイメージのある日本酒業界ですが、生産量の下落傾向は続いています。輸出量もそれほど増えてはいません。ほとんどが中小企業である日本酒業界では経営の維持に苦労する会社も多く、近年はM&Aの活用も増えてきています。

目次
  1. 清酒酒造・日本酒業界のM&A事例20選
  2. 清酒酒造・日本酒業界とは
  3. 清酒酒造・日本酒業界のM&Aを行うメリット・デメリット
  4. 清酒酒造・日本酒業界のM&A相場と費用
  5. 清酒酒造・日本酒業界のM&Aの流れ
  6. 清酒酒造・日本酒業界のM&Aを成功させるポイント
  7. 清酒酒造・日本酒業界のM&Aまとめ
酒蔵 清酒酒造 日本酒のM&A・事業承継

清酒酒造・日本酒業界のM&A事例20選

ここでは、近年、公表されている日本酒業界が関係したM&A事例を紹介します。

  1. 東洋製罐グループホールディングスとAgnaviの資本業務提携
  2. 老松酒造による越後伝衛門の株式譲渡
  3. リオン・ドールコーポレーションと栄川酒造の資本業務提携
  4. AFC-HDアムスライフサイエンスとなすびの株式交換
  5. 菊の司酒造による公楽への株式譲渡
  6. キリンホールディングスによるキッコーマンへの子会社売却
  7. クールジャパン機構によるTrioの買収
  8. 白鶴酒造の会社買収
  9. ハクレイ酒造による友桝ホールディングスへの株式譲渡
  10. 菱友醸造の自己破産に伴う事業譲渡
  11. かづの銘酒の事業承継のための会社売却
  12. 盛田による銀盤酒造の買収
  13. オリエンタルコンサルタンツによる瀬戸酒造店の買収
  14. 盛田による千代菊の買収
  15. 盛田による常楽酒造の買収
  16. 榮川酒造の第三者割当増資
  17. 綾菊酒造の株式譲渡
  18. 神戸物産による菊川の買収
  19. 伊那食品工業による米澤酒造の買収
  20. 老田酒造店の事業譲渡

①東洋製罐グループホールディングスとAgnaviの資本業務提携

2022(令和4)年1月、東洋製罐グループホールディングスとAgnaviは、資本業務提携を締結しました。Agnaviは、180mL缶入り日本酒ブランド「ICHI-GO-CAN」を展開しています。

東洋製罐グループホールディングスは、包装容器事業、エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業、不動産関連事業などを行うグループの持株会社です。

資本業務提携の具体的な内容は公表されていませんが、日本酒一合缶の充填基盤構築・拡充により、すべての酒蔵に対し、最適な容器の選択肢を提示していきたいと発表しています。

②老松酒造による越後伝衛門の株式譲渡

2021(令和3)年7月、エルアイイーエイチの連結子会社である老松酒造は、完全子会社である越後伝衛門の全株式を譲渡しました。譲渡先は非公表ですが、譲渡価額は3,700万円です。越後伝衛門は、酒類の製造・販売を行っています。

エルアイイーエイチの発表によると、グループの中で将来的に大きなシナジー効果が見込めないと判断したことによる売却です。

③リオン・ドールコーポレーションと栄川酒造の資本業務提携

2021年6月、リオン・ドールコーポレーションと栄川酒造は、資本業務提携を締結しました。資本提携としては、栄川酒造の第三者割当増資をリオン・ドールコーポレーションが引き受けています。

栄川酒造はヨシムラ・フード・ホールディングスの完全子会社でしたが、この第三者割当増資によりヨシムラ・フード・ホールディングスの出資比率は19%となり、栄川酒造はリオン・ドールコーポレーションの連結子会社となりました。

業務提携の内容は、栄川酒造が製造する日本酒をリオン・ドールコーポレーションが販売支援することと、リオン・ドールコーポレーションの設備投資により栄川酒造が新たにウイスキー製造事業を開始することです。

④AFC-HDアムスライフサイエンスとなすびの株式交換

2021年6月、AFC-HDアムスライフサイエンスとなすびは、株式交換を実施しました。AFC-HDアムスライフサイエンスが完全親会社、なすびが完全子会社です。株式交換に先立ち、AFC-HDアムスライフサイエンスは、なすびの株式80.2%を取得しています。

株式の取得価額は非公表ですが、株式交換での割当比率は、AFC-HDアムスライフサイエンス:なすび=1:57.51です。AFC-HDアムスライフサイエンスは、健康食品受託製造、化粧品・医薬部外品の受託製造などを行っています。

なすびは、飲食店の経営・企画運営事業の他に、静岡県内産日本酒の輸出販売を行っている企業です。AFC-HDアムスライフサイエンスの子会社となすびは、2020(令和2)年から業務提携関係にあり、それをより強固に進めるため傘下に入りました。

⑤菊の司酒造による公楽への株式譲渡

2021年4月、公楽は、菊の司酒造の株式を取得し子会社化しました。取得価額は公表されていません。岩手県の公楽は、パチンコ・スロット事業、不動産賃貸事業、再生可能エネルギー事業、フランチャイズ事業などを行っています。

岩手県の菊の司酒造は、1772(安永元)年創業の酒造会社です。岩手県における酒造りの文化を維持・発展させるため、今回のM&Aが実施されました。

⑥キリンホールディングスによるキッコーマンへの子会社売却

2020(令和2)年3月、キリンホールディングスは、子会社であるブラジルの東麒麟飲料食品製造販売(現地社名はAzuma Kirin Indústria de Bebidas e Alimentos Ltda.)の全株式をキッコーマンに譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。

東麒麟飲料食品製造販売はブラジルで清酒「東麒麟」や食料品の製造・販売を行ってきましたが、キリンホールディングスは南米での事業から撤退を決めました。一方、キッコーマンは、この買収で南米進出の足掛かりとする考えです。

なお、子会社は、社名をキッコーマンブラジル商工(現地社名はKikkoman do Brasil Indústria e Comércio de Alimentos e Bebidas Ltda.)と改めています。

⑦クールジャパン機構によるTrioの買収

2019(令和元)年6月、クールジャパン機構(登記社名:海外需要開拓支援機構)は、香港のTrioの株式を取得し子会社化しました。取得価額は約22億円です。官民ファンドであるクールジャパン機構は、日本の商品・サービスの海外需要開拓支援・促進のために設立されました。

この買収の狙いは、持株会社であるTrioの子会社でありワイン卸売事業を中国において展開するEMWの取得にあります。クールジャパン機構としては、このワインの販売網を用いて、中国における日本酒の流通拡大を図る考えです。

⑧白鶴酒造の会社買収

2019年5月、兵庫県で創業1743(寛保3)年に創業した白鶴酒造が、ヨーロッパワインの輸入・販売を行っている東京の八田の株式100%を取得し完全子会社化しました。白鶴酒造としては、従来の日本酒の販路を生かして、輸入ワインの販売を行う多角化に乗り出す方針です。

⑨ハクレイ酒造による友桝ホールディングスへの株式譲渡

2018(平成30)年10月、友桝ホールディングスは、ハクレイ酒造の株式を取得し子会社化しました。取得価額は公表されていません。友桝ホールディングスは、ソフトドリンク・健康飲料・酒類の企画・開発・製造・販売を行うグループの持株会社です。

1832(天保3)年創業のハクレイ酒造は、事業承継のためにこのM&Aを実施しています。

⑩菱友醸造の自己破産に伴う事業譲渡

2018年3月、磐栄ホールディングスの子会社である磐栄運送は、前年4月に自己破産した菱友醸造の酒造事業を入札により事業譲受しました。入札価額は公表されていません。磐栄運送は、運送事業・倉庫事業・発電事業などを行っています。

磐栄ホールディングスとしては、グループにおける事業の多角化および、これを通じた人手不足問題の解決を図る考えで異業種を取得しました。

⑪かづの銘酒の事業承継のための会社売却

2017(平成29)年12月、居酒屋などの外食チェーンを展開する秋田のドリームリンクは、酒造事業を行う秋田のかづの銘酒を子会社化しました。かづの銘酒は、創業1872(明治5)年の伝統を持ち、歳盛という銘酒で名高い酒蔵です。

後継者難に陥っていたかづの銘酒は、秋田県事業承継・引継ぎ支援センターに相談し、秋田銀行の紹介でドリームリンクとM&Aが実施されました。ドリームリンクは、自社が展開する106店の居酒屋などにかづの銘酒の日本酒を置き、販売数拡大を図る所存です。

⑫盛田による銀盤酒造の買収

2017年10月、盛田は、銀盤酒造の株式95.0%を取得し、子会社化しました。株式の取得先は阪神酒販で、取得価額は5億円です。JFLAホールディングスの子会社である盛田は、酒類・しょうゆ・調味料・味噌・漬物・清涼飲料水などの製造・販売を行っています。

JFLAホールディングスグループには多くの酒類製造販売事業会社があり、商品の共同開発や販路の相互活用による営業力強化が見込めると判断しました。

⑬オリエンタルコンサルタンツによる瀬戸酒造店の買収

2017年6月、オリエンタルコンサルタンツは、瀬戸酒造店の全株式を取得し、完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。オリエンタルコンサルタンツは、道路整備・保全事業、流域管理・保全事業、防災事業、交通運輸事業、地方創生事業、海外事業などを行っています。

1865(慶応元)年創業の酒蔵である瀬戸酒造店は、杜氏・蔵人の不在により1980(昭和55)年から自家醸造を断念している状態でした。今後は、オリエンタルコンサルタンツ傘下で、醸造所を建替し自家醸造を再開する計画です。

⑭盛田による千代菊の買収

2017年4月、盛田は、千代菊の全株式を取得し完全子会社化しました。株式の取得先は田中文悟商店で、取得価額は4億円です。1738(元文3)年創業の千代菊は、清酒などの製造・販売を行っています。

JFLAホールディングスグループの一員である盛田は、グループ内の酒類製造・販売事業を強化・拡大するために、このM&Aを実施しました。

⑮盛田による常楽酒造の買収

2017年4月、盛田は、常楽酒造の全株式を取得し完全子会社化しました。株式取得先は田中文悟商店で、取得価額は4億円です。このM&Aは、前項の千代菊の買収と同時に実施されました。

1912(大正元)年創業の常楽酒造は、酒類・清涼飲料水・乳製品類・調味料・食料品類の製造・卸売・販売を行っています。本件は、JFLAホールディングスグループの酒類製造・販売事業の強化・拡大策として行われたM&Aです。

⑯榮川酒造の第三者割当増資

2016(平成28)年9月、食品関連事業を行う東京のヨシムラ・フード・ホールディングスは、酒造事業を行う福島の榮川酒造の第三者割当増資を引き受け、子会社化しています。榮川酒造は業歴150年ながら、財務状況が悪化し地域経済支援機構に再生支援を申請していました。

榮川酒造には「榮四郎」と呼ばれる日本酒があり、2007年から2017年の間、モンドセレクション最高金賞を受賞しています。今回の子会社化で会社は存続し、伝統的な日本酒の製法・味・従業員の雇用などが守られました。

⑰綾菊酒造の株式譲渡

2014(平成26)年5月、酒類食品卸売を行う飯田は、日本酒メーカーである綾菊酒造の全株式を取得し完全子会社化しました。綾菊酒造は、1945(昭和20)年に蔵元5つが合併して設立されましたが、近年は売上減により経営が悪化し立ち行かなくなっていたようです。

綾菊ブランドの維持と発展は飯田に託されることになり、綾菊酒造の旧経営陣は全員、退任しています。

⑱神戸物産による菊川の買収

2014年4月、神戸物産は、菊川の全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は5,000万円です。神戸物産は、業務スーパー・ビュッフェレストラン・惣菜店などの直営および、フランチャイズ事業・自社商品の製造事業・再生可能エネルギー事業などを行っています。

1871(明治4)年創業の菊川は、酒類に製造・販売などを行っている企業です。神戸物産としては、運営する業務スーパー・ビュッフェレストランなどにおいて、菊川の製造する酒類を広く販売・提供する狙いでM&Aを実施しました。

⑲伊那食品工業による米澤酒造の買収

2014年、伊那食品工業は、米澤酒造の株式を取得し子会社化しました。取得価額は公表されていません。伊那食品工業は、寒天製品メーカーとして国内トップシェアを誇っています。米澤酒造は、1907(明治40)年創業の酒蔵です。

後継者不在と設備の老朽化問題で廃業危機にあった米澤酒造を、伊那食品工業が事業承継しました。現在の米澤酒造は、伊那食品工業の寒天作りで培った設備作りのノウハウも導入した、最新設備が整った酒蔵に変貌しています。

⑳老田酒造店の事業譲渡

2007年10月、香川の食品関連事業ジャパン・フード&リカー・アライアンスの子会社タオイ酒造が、岐阜の老田酒造店から事業譲渡を受け、日本酒製造販売事業を取得しました。老田酒造店の杜氏ら従業員13人はタオイ酒造に移籍し、タオイ酒造は老田酒造店と改名しています。

老田酒造店は江戸時代中期から続く酒蔵で、辛口が特徴の「鬼ころし」が有名です。しかし、経営不振から脱却できずに負債がかさみ、事業譲渡代金を負債の返済に充てて、会社清算を実施しました。

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清酒酒造・日本酒業界とは

清酒・日本酒は、日本の伝統的アルコール飲料の1つです。清酒・日本酒が米を原料とする酒であることは広く知られていますが、清酒と日本酒は厳密にいうと意味が違います。

清酒は、海外産も含めた米を原料とする酒を意味するのに対して、日本酒は国内産米のみを原料とする酒を指します。なお、酒税法上では、「清酒」が使われています。ここからは、清酒酒造・日本酒業界の現状を解説します。

清酒酒造・日本酒業界の現状とM&Aの動向

2013(平成25)年12月、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、和食を無形文化遺産として登録しました。これにより、日本酒は世界中から注目を集めています。しかし、残念なことに、日本酒の注目度と日本酒業界の業績とは必ずしも連動していないのが実態です。

清酒酒造・日本酒業界の現状

国税庁発表の統計年報によると、日本酒の国内出荷量は1990年代より徐々に減少を続けています。その一方で、近年における日本酒の輸出量は増加傾向にある状況です。

昨今、20代の若者層では飲酒離れが進んでいるとも言われています。また、飲酒する層においては、嗜好の多様化により、さまざまなアルコール飲料に好みが分散化してしまっているのです。日本酒好きの人にとっては、この上ない最上級の存在とされていますが、伝統的製法の難しさも相まって日本酒業界は、かじ取りが難しい時期にあるといえます。

参考:農林水産省 農産局「日本酒をめぐる状況」令和4年5月

清酒酒造・日本酒業界のM&A動向

国税庁の「清酒製造業の概況 (平成30年度調査分)」によると、2017年度の日本酒業界の事業者数は1,371者です。2003(平成15)年度の1,836者と比べると、465者も減少したことがわかります。

また、2017年度の事業者数のうち資本金3億円超かつ従業員300人超の大企業は6社だけであり、99.6%が中小企業というのが日本酒業界の実態です。つまり、日本酒の販売数が落ち込めば、ダイレクトに経営状況へ影響が及んでしまう事業者がほとんどになります。

つまり、上記の減少した事業者数の多くは、経営が立ち行かなくなり廃業したケースだといえます。さらに、他の業種同様に、後継者不足によって存続をあきらめた事業者もいます。しかし、昨今はこれらの問題を打破すべく、M&Aによって存続を図る動きも日本酒業界の中に生まれてきました。

日本酒業界では、日本の歴史として伝統を紡いでいる立場であるという自覚から、大手企業の傘下に加わったり、いくつかの酒蔵が合併したりするなど、存続に積極的である特徴を持っています。

参考:国税庁「清酒製造業の概況(平成30年度調査分)」

清酒酒造・日本酒業界の将来性・展望

清酒酒造・日本酒業界では、国内市場・海外市場ともに売上増を図っていくことが急務です。ここでは、その取り組み事例を国内向けと海外向け、それぞれ紹介します。まず、国内も含めた海外向けに行われている取り組みが「Miss SAKE(ミス日本酒)」です。

2013(平成25)年10月、一般社団法人Miss SAKEの主催で始まったこのミス・コンテストは、後援が外務省・農林⽔産省・国税庁・観光庁・⽇本酒造組合中央会などで構成されており、水着審査を行うような一般的なミスコンとは当然ながら異なります。

あくまでも「伝統ある日本酒と日本文化の魅力を日本国内外に発信する美意識と知性を身につけたアンバサダー(親善大使)を選出する」ことが目的です。選出されたMiss SAKEは世界各国を回り、⽇本酒および⽇本の⾷⽂化の啓発・⽇本への観光誘致活動などを行います。一方、国内向けの日本酒普及活動の一環として行われているのが「パ酒ポート(パシュポート)」です。

パ酒ポートは、日本酒の酒蔵・ワイナリー・ウイスキー醸造所・焼酎醸造所などを巡るスタンプラリー帳BOOKであり、JTBが北海道のアルコール業界や自治体と組んで開始しました。現在では、北海道以外の各地でも実施され、好評を得ています。

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清酒酒造・日本酒業界の経営者が引退するための手段

清酒酒造・日本酒業界の経営者が、年齢や健康状態などを理由に引退する場合、その手段として以下の3つの選択肢があります。

  • 親族内承継・社内承継
  • M&Aによる第三者への事業承継
  • 廃業

親族内承継・社内承継

経営者の子どもなど親族に後継者がいる場合、親族内承継により事業承継し引退できます。しかし、経営者は経営権を後継者に譲渡するため、株式を贈与しなければなりません。したがって、後継者には贈与税の負担が発生します。

なお、昨今は、少子化の影響と価値観の多様化によって親の後を継がない子どもが増えたことから、親族で後継者が見つからない可能性があります。その場合、次善の策として、社内承継が用いられることが多いです。これは、会社の役員や従業員を後継者とする事業承継です。

親族ではない役員・従業員が経営権を得るには、経営者から株式を買い取らなければなりません。そのための資金を用意できない場合、後継者を辞退するケースもあります。事業承継を優先するならば、無償譲渡も可能です。

しかし、それでは、現経営者は対価を得られず、不満が生じるでしょう。また、「無償譲渡=贈与」であるため、後継者側では親族と同様に贈与税が課せられ、結果として資金負担は解消されないのです。

M&Aによる第三者への事業承継

親族や社内に後継者がいない場合の事業承継方法として、近年注目を集めているのがM&Aによる事業承継です。会社や酒造事業を売却し、その買い手が後継者(新たな経営者)となり、会社や事業は存続します。

従業員の雇用は守られ、酒蔵の伝統や酒造りの技術・ノウハウも継承されるのです。また、株式譲渡(会社売却)であれば、負債は買い手に引き継がれるため、個人保証や担保の差し入れからも解消されます。そのうえ、売却益も得られるため、老後の生活資金も安心です。

廃業

いずれの事業承継も実施しない場合、残る選択肢は廃業しかありません。しかし、廃業してしまえば、酒蔵の伝統や酒造りの技術・ノウハウは途絶えてしまい、従業員も職を失います。そのうえ、設備の処分など廃業のためのコストが発生し、引退前の大きな出費となりかねません。

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清酒酒造・日本酒業界のM&Aを行うメリット・デメリット

清酒酒造・日本酒業界のM&Aを行った場合、多くのメリットがある一方デメリットもあります。M&Aを行う前はその両方を考慮して検討することが大切です。ここでは、清酒酒造・日本酒業界のM&Aのメリット・デメリットを、売却側・買収側それぞれの観点で解説します。

売却側のメリット・デメリット

清酒酒造・日本酒業界のM&Aで売却側が得られるメリットとしては、主に以下のとおりです。

  • 事業承継が実現でき、従業員の雇用も維持できる
  • 経営の安定化が図れる
  • 債務の移転、個人保証・担保の解消が可能
  • 売却益を獲得できる

売却側企業が事業承継を考えている場合、M&Aによって第三者に自社を譲渡することで事業の継続ができます。後継者がいない場合でも、M&Aであれば幅広いなかから譲受先を探すことが可能です。また、株式譲渡の場合は包括承継となるため、従業員の雇用もそのまま買い手へ引き継がれます。

M&Aの場合、買い手は売却側より規模が大きい企業であることが多いため、経営の安定化を見込むことができる点もメリットのひとつです。

このように多くのメリットが期待できる一方で以下のようなデメリットが生じうることも考えられます。
  • 買い手がみつからない可能性がある
  • 必ずしも自社の提示する条件で売却できるとは限らない

当然ながら、自社を買収してくれる買収側の存在がなければM&Aを実施することはできません。自社の業績が悪化していたり、保有する事業・資産などに魅力がなかったりすると、なかなか買い手がみつからない可能性があります。

また、たとえ買収側がみつかっても、必ずしも自社の納得する条件で売却できるとは限りません。かといって、買収側の希望を全面的に受け入れるとM&Aを実施したこと自体に後悔することも考えられます。

買収側のメリット・デメリット

清酒酒造・日本酒業界のM&Aで買収側が得られるメリットは、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 人材・独自ノウハウや設備・環境を獲得できる
  • 新規事業へのスムーズな参入が可能
  • 新規顧客の獲得、事業エリアの拡大ができる

酒造りに欠かせない杜氏・蔵人は簡単に確保できる人材ではありませんが、M&Aでは売却側の人材だけでなくノウハウもまとめて譲り受けることが可能です。

売却側の清酒ブランドをそのまま獲得できるため、そのファン(支持者)の獲得にもつながり、同業者であればその獲得は大きな意味があるでしょう。

また、日本酒造りには適した水と設備が必要なので、どこでも造れるというわけではありません。加えて「地酒」と呼ばれる清酒ブランドは地域性が強いものですが、買収によりその地域への進出が可能となります。

このように、買収側には多くのメリットがありますが、当然デメリットも存在します。生じうるデメリットとして考えられるのは、例えば以下のようなものです。
  • 従業員・杜氏・取引先・顧客などから反発されるおそれがある
  • 想定した利益を得られないこともある

清酒酒造・日本酒業界は、従業員・杜氏・経営者・会社と地域社会の結びつきが強固です。そのため、経営者や経営主体の会社が変わることで、従業員・杜氏・取引先・顧客などから反発を受けることも考えられます。

また、緻密にシミュレーションしてM&Aを行ったとしても、想定どおりにメリットが得られるとは限りません。想定したとおりの利益を得られない場合、買収した費用が無駄となってしまうこともあります。

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清酒酒造・日本酒業界のM&A相場と費用

酒蔵 清酒酒造 日本酒のM&A・事業承継
酒蔵 清酒酒造 日本酒のM&A・事業承継

清酒酒造・日本酒業界でM&Aを検討する場合、M&A実行にあたって会社売買の相場価額や手続きなどに要する諸費用が気になるところです。本章では、日本酒業界のM&A相場と費用を解説します。

清酒酒造・日本酒業界のM&A相場

清酒酒造・日本酒業界では、そのほとんどが中小企業です。各事業者は少数で運営されており、売上高も2億円以下ほどの規模の会社が多いため、それが対象となる日本酒業界のM&Aは基本的にスモールM&Aとなります。

清酒酒造・日本酒業界のM&A対象として多い事業規模が売上高2億円以下、営業利益率はその数%程度とすると、M&A実施時の売買価額の概算は数百万円から数千万円の範囲と考えるのが一般的です。

ただし、清酒酒造・日本酒業界のM&Aでは、経営成績には含まれない売却側の思惑も働きます。創業100年以上に及ぶ酒蔵としての歴史や伝統などのブランド力があるため、その価値観も換算した売買価額でないと、売却側から納得してもらえない可能性があるのです。

つまり、M&Aで一般的に含まれるのれん代とは異なる、売却側の思い入れの換算内容などによって相場額が変動するのです。

清酒酒造・日本酒業界のM&A費用

M&A費用とは、M&A実施時に起用するM&A仲介会社への手数料のことです。このM&A仲介会社の手数料は、それぞれの会社により規定が異なります。最も費用項目が多いM&A仲介会社の手数料は、着手金・月極契約料・中間報酬・成功報酬などです。また、 M&A業務の委託・仲介契約を締結しても、M&Aが成約するまで一切、費用が発生しないM&A仲介会社もあります。

もしもM&A仲介会社選びでお悩みでしたら、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに関する豊富な知識と経験を持つアドバイザーが専任となり、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしておりますので、清酒酒造・日本酒業界のM&Aをご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

清酒酒造・日本酒業界のM&Aの流れ

清酒酒造・日本酒業界でM&Aを進める場合、以下のような流れで行われるのが一般的です。

  1. 相談
  2. M&A仲介会社への依頼
  3. 交渉相手の選定
  4. 条件交渉とデューデリジェンス
  5. 最終契約締結とクロージング
     

相談

清酒酒造・日本酒業界でM&Aを行う場合、自社独力で進めるのは現実的ではありません。M&Aの各プロセスは、専門的な知識と経験が不可欠です。したがって、まずは、M&Aの専門家に相談することから始めましょう。

相談先として候補となるのは、M&A仲介会社、弁護士・公認会計士などの士業事務所、経営コンサルタント、FA(ファイナンシャルアドバイザー)などです。ここでは、M&Aの専門業者であるM&A仲介会社に相談する前提で全体の流れを説明します。

M&A仲介会社への依頼

ほとんどのM&A仲介会社は、無料相談を受け付けています。Webサイトなどで情報収集をした後、気になる会社に連絡を取り、無料相談を行いましょう。その際は、費用面の確認や担当者の対応(態度)の観察なども行うことが大切です。

また、最初から1社に絞らず、複数の会社を比べたうえで、M&A仲介業務を依頼する会社を決めるのがおすすめです。M&A仲介会社の選定後、M&Aアドバイザリー契約を締結すると正式な依頼として扱われます。

交渉相手の選定

契約締結後、M&A仲介会社は、クライアントの希望するM&Aの内容に適した相手を探します。専門業者のネットワークにより、複数の取引候補が見つかるはずです。候補が出そろったら、案件を絞り込みます。

ただし、この段階では相手の社名などは匿名です。具体的なイメージが湧きづらいこともありますが、M&A仲介会社のアドバイスを聞きながら候補を絞り込みましょう。交渉相手を選定したら、M&A仲介会社を通して正式交渉の打診をします。

相手側も同意すれば、秘密保持契約書を締結し、正式交渉の開始です。

条件交渉とデューデリジェンス

秘密保持契約の締結後、当事会社が相互に情報を開示し、具体的なM&Aの交渉が始まります。交渉の過程で必ず行われるのがトップ面談です。双方の経営トップが会って話し合いを行います。この場では交渉を行う必要はなく、お互いの経営ビジョン・M&A実施の理由・今後の展望・人物像の見極めなどを行うのが一般的です。

条件交渉が大筋でまとまったら、基本合意契約書を締結します。これは現時点での合意内容確認書という位置付けの書類で、法的拘束力はありません。基本合意契約書の締結後、買い手側により、デューデリジェンスが行われます。

デューデリジェンスとは、売り手企業に対する精密監査です。財務・法務・税務・労務・事業などの分野に関して、それぞれ士業などの専門家が起用され、調査が行われます。

最終契約締結とクロージング

デューデリジェンスの調査結果をもとにして、最終交渉が行われます。なお、デューデリジェンスで何らかの重大な問題が発覚すると、交渉が破談となる可能性があるため注意が必要です。最終交渉がまとまれば、その内容を記載した最終契約書を締結します。

クロージングとは、最終契約書に記された契約内容を、それぞれが履行することです。具体的には、売却側であれば株式や資産の引き渡しなど、買収側であれば対価の支払いなどが該当します。

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清酒酒造・日本酒業界のM&Aを成功させるポイント

他業種と比較した場合、清酒酒造・日本酒業界には固有の特性が多いため、M&Aの際に大きく影響を及ぼすことも考えられます。最後に、清酒酒造・日本酒業界相手に買収を検討するにあたって押さえておくべきポイントを買収側・売却側に分けてみていきましょう。

買収のポイント

まずは、買収側のポイントとして代表的な3つをピックアップし、順番に解説します。

清酒酒造・日本酒業界の特殊性を知る

清酒酒造・日本酒業界の蔵元や酒造メーカーの多くは長い歴史を持っており、そこには日本の伝統文化の一翼を担ってきた自負があります。それゆえ、突然、M&Aの話を持ちかけられると、「身売り」や「家業を捨てる」などネガティブな思考に陥りやすい傾向があります。

したがって、対象の蔵元や酒造メーカーがどれほど経営的に苦しい状況であろうと、そのことばかりを話題にするのではなく、包括的に日本酒の将来を語り合うようなスタンスで交渉に臨むのが望ましいです。

そのために、先方と話し合う準備として、日本酒・杜氏・酒蔵・酒類製造免許などの知識を習得することが、清酒酒造・日本酒業界のM&A成功の秘訣です。

売却候補の探し方

清酒酒造・日本酒業界のM&Aを実施する際、その相手探しも一般の業種とは異なった方法が用いられます。一般の業種であれば、首都圏や大都市圏に集中している場合が多く、その地域のM&A仲介会社に委託すれば大体はスピーディーに見つけられます。

一方で、清酒酒造・日本酒業界の蔵元や酒造メーカーの場合、日本酒の原材料となる米・水などの環境が優先されるため、地方に点在しています。また、自分たちの情報を必ずしもインターネット上に掲載しているとは限らず、適する相手探しは決して容易ではありません。

適切な相手探しを行う場合、考えられる方法は2つです。1つ目は、全国規模でM&Aの業務を行っている仲介会社に、日本酒業界の売却候補を探してもらうことです。全国の中小企業対象のM&A仲介会社は複数あるため、その中の1社に頼みましょう。

2つ目は、自分たちで地域を特定し、その地方に密着しているM&A仲介会社に相談する方法、もしくは地元の金融機関・公認会計士・税理士などの同業の知り合いを経由して情報を収集する方法です。

マッチングサービスの活用

日本酒業界のM&A候補の直接的な探し方ではありませんが、M&Aマッチングサイトを利用する方法もあります。M&Aマッチングサイトムとは、M&A仲介会社がインターネット上で運営するM&Aマッチングサービスです。

基本的に無料の会員登録をすることで、サイト内に登録されている売却希望案件情報を閲覧できます。情報閲覧後、気になる案件に対しては、別途、手数料を支払うなどして直接交渉が可能です。サイトの利用方法は各社で異なるため、事前に十分に確認しましょう。

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売却のポイント

清酒酒造・日本酒業界でM&Aによる売却を目指す場合、その理由はさまざまです。重要なのは、M&Aを良いターニングポイントとすることです。ここでは、M&Aで売却を行う際に、心掛けておきたいポイントを掲示します。

良き日本酒を造るために

後継者不在や経営不振のために、歴史や伝統のある蔵元や酒造メーカーを廃業してしまうのは、当事者として何としても避けたいことです。しかし、どうしても独力では、経営上の問題を解決できない場合もあります。

そのような場合の解決手段として、M&Aは有効です。M&Aによって会社を売却し、資金に余裕のある第三者のもとで安定した経営体制が敷かれれば、杜氏をはじめとする従業員は今まで以上に良い日本酒を造りあげるはずです。

これまで築きあげた日本酒造りの技術・ノウハウを、清酒酒造・日本酒業界の中に残すことも経営者の重要な仕事です。会社を存続させることこそが、清酒酒造・日本酒業界の1人の経営者として果たすべき役目と考えてみてはいかがでしょう。

M&A仲介会社への相談

たとえ清酒酒造・日本酒業界の中でM&Aによる会社売却を決意したとしても、条件の合う相手が見つからなければM&Aは成立しません。酒蔵や酒造メーカーの売却を目指す場合は、M&Aの専門家に委託するのがおすすめです。

M&A仲介会社に売却条件をはっきりと伝えれば、法人・個人問わず買い手候補とのマッチングを行い、最適な相手を探してくれます。最近では、特に事業承継のケースで自治体がM&Aの相談に乗るなど、支援体制が確立されてきています。自身が相談しやすい相談先に足を運び、まずは話を持ちかけてみましょう。

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清酒酒造・日本酒業界のM&Aまとめ

アルコール飲料である日本酒は、嗜好品であり生活必需品ではありません。近年は若年層を中心に、積極的に飲酒をしない生活習慣も増えている現象が伝えられるなど、清酒酒造・日本酒業界にとっては難しい状況が続いています。

しかし、1杯の日本酒が気分転換になったり、明るい思い出の一端になったりするなど、人生の良き潤滑油となる効果があるのも事実です。日本酒業界としては、伝統だけに固執するのではなく、M&Aなど新しい発想の導入もときには必要とされています。

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