M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月16日更新業種別M&A
物流業界の事業承継の現状は?動向やM&Aのメリットから事例も解説!
本記事では、物流業界のM&A・事業承継動向やメリット、注意点、実際のM&A・事業承継のケースなどを事例とともに紹介します。物流業界は、ユーザーニーズの変化や働き方改革などで業界再編期にあり、M&A・事業承継も増加傾向にあります。事業承継を検討中の方は必見です。
目次
物流業界とは
本記事では物流業界のM&A・事業承継についてご紹介していきますが、まずは物流業界の定義などについて解説します。
物流業界の定義
物流業界とは、発荷主から受け取った商品を着荷主へ配送する事業を行う業界のことを指します。
具体的には、
・輸送:トラック、鉄道、船、飛行機を使い商品を移動させること
・保管:倉庫などある一定の場所で一定期間商品を預かり、留めておくこと
・荷役:トラックや船などに商品を積み込んだり、荷下ろししたりする作業
・包装:適切な資材で商品を梱包すること
・流通加工:ラッピングやラベル貼り替えなど商品に付加価値をつける作業
・情報:物流の過程をより効率的に行えるよう、システムを用いて管理すること
この6つの機能が連携することで消費者の元にモノが届きます。
物流のメインになる要素は「輸送」です。輸送の方法には陸運、海運、空運があり、これらの配送を管理する事業として倉庫・物流センター業があります。
また、物流の流れを最適化しさまざまな工程を一元管理することを「ロジスティクス」と言います。ロジスティクスはインターネットやECの普及により国内外の物流需要が高まっているためより重要になってきます。
現在、物流業界はさまざまな面で大きく変化し続けていることから、多くの物流関連企業各社は組織再編に取り組んでいます。物流業界の変化については本記事では後述します。
物流業界の現状
物流業界でのM&Aを検討している場合、市場動向や業界全体で抱えている課題などを把握しておくことも重要です。ここでは、物流業化の現状について解説します。
市場規模
公益社団法人全日本トラック協会「 日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」
出典:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/yusosangyo2023.pdf
公益社団法人全日本トラック協会の「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」によると令和2年の物流事業全体の市場規模はおよそ29兆円でした。うち、トラック運送事業は19兆3576円で物流の約7割を占めています。
また経済産業省などから出された「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると国内の貨物輸送量は輸送重量(トンベース)で国内貨物輸送量は、ほぼ横ばいでの推移でしたが、2020年度は大幅に減少しました。理由としては、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け経済が停滞したため貨物量が減少しました。しかし、宅配便に関してはEC需要などの拡大により取扱量の増加傾向がみられました。
参考:公益社団法人全日本トラック協会 「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」
経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
EC市場の推移
出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省 我が国の物流を取り巻く現状と取組状況
出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf
先述の通り、EC市場拡大しておりで宅配取扱が5年で23.1%増加しています。しかし宅配貨物の不在再配達に関して、新型コロナウイルスの感染拡大前では全体の約15~16%程度発生しています。物流分野の労働力不足が懸念される中、EC市場の拡大が今後も見込まれることから再配達を削減し・物流の効率化が必要となっています。
2024年問題の影響
働き方改革関連法により2024年4月から自動車運転業務の時間外労働が年に960時間の上限がとなります。そのためドライバー1人あたりの走行距離が短くなることで遠隔地へとモノが運べなくなることが懸念され、それにともなって起こりうる問題を「2024年問題」として呼ばれています。
影響としては
・運送会社や物流会社の売上・利益の減少
・トラックドライバーの収入減少
・荷主の運賃上昇
と言われています。
こういった影響を受け時間外労働に対する賃金の引き上げなど違う部分にも、業界全体に大きく影響すると考えられます。
トラックドライバーの不足
出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf
経済産業省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によるとトラックドライバーは2015年から2030年かけて24.8万人減少し3割減少すると予測されています。
出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf
現状、トラックドライバーは労働時間が全産業平均より約2割長く、年収は全産業平均に比して5%~10%程度低いです。そのため人材確保が容易ではなく全産業に比して平均年齢が3~6歳程度高くなっています。道路貨物運送業は65歳以上の就業者の割合が少ない業種となっています。今後、対策をしていかなければ、担い手の減少は急速に進んでいくおそれがあります。
燃料価格の高騰
出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf
近年は円安やロシアからの原油供給が滞るなどにより原油価格が上がっています。燃料価格はトラック運送の主要費用の一つであるため、燃料価格高騰による経営への影響は大きいです。
しかし燃料価格の上昇分の収受額への反映が進んでいない事業者も多くあるため、トラック運送事業の経営を圧迫しています。また、新規参入業者が増えたことにより価格競争は激化し取引先からの値下げ圧力など価格転嫁できないことにより倒産が相次いでいます。
物流業界のM&A動向
本章では、現在大きな再編期を迎えている物流業界のM&A・事業承継動向について解説します。
2024年問題対応のためのM&A
先述した2024年問題を背景としたM&Aが増えています。売り手側としては時間外労働に上限規制がされることでドライバー不足やコストアップが考えられますが価格競争の激化により運賃の価格転嫁ができないため、大手の傘下に入ることで安定的な経営を図る動きが見られます。
買い手側としても、今までよりも長距離輸送ができないため新たな拠点獲得としてM&Aを行っています。その他にも荷主企業に代わり、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行いさらにそれを包括的に受託し、実行する3PLを狙った動きもあります。
IT・ベンチャー企業とのM&A
国土交通省によるとサプライチェーン全体での機械化・デジタル化により、情報・コスト等を「見える化」、作業プロセスを単純化・定常化を進めています。
業界の大手企業は物流DXに向け投資を始めているところも多くあり、IT・ベンチャー企業とM&Aを行い内部に取り込む動きがみられます。しかし、中小企業においてはシステムがあってもデータをうまく活用することができなかったり、既存のシステムが複雑化しておりシステム化が難しい現状があります。
多様化する顧客ニーズに対応し効率化を図るためには物流DXが重要です。効率的なDX化を進めるためにIT・ベンチャー企業とのM&Aによる投資が有効であると考えられます。
参考:国土交通省「最近の物流政策について」
一括管理ニーズに対応
物流サービスは一括管理のニーズが高まっているため、一括管理に応えるためのM&A・資本業務提携が増えています。
例えば、運送会社が倉庫業を営む会社を買収するなど物流事業の幅を広げたり、関東エリアを中心に事業を行っていた会社がM&Aにより関西エリアへ事業エリアを拡大したりするなどといったケースが増えています。
前述のように、物流業界は現在再編期にあります。人材不足や働き方改革など業界再編の流れに対応するため、M&A・事業承継は今後さらに増加していくとみられています。
EC・ネット通販の売却の相場については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
物流業界のM&Aメリット
物流業界のM&A・事業承継では、売り手・買い手双方に多くのメリットがあります。
買い手側のメリット | 売り手側のメリット |
・事業規模の拡大 ・人材の確保 ・物流拠点の獲得 ・コスト削減 |
・後継者問題を解決 ・従業員の雇用を守れる ・会社の維持 ・創業者利益の獲得 ・個人保証の解除 |
買い手側のメリット
物流業界のM&Aで買い手側が得られるメリットには主に以下の4つがあります。
事業規模の拡大
物流会社の多くは強みとするエリアがあり、事業規模を拡大するためには自社の弱みとするエリアでの事業基盤確立および安定が不可欠です。自社のみで新規エリアを開拓するためにはコストと時間がかかるうえ、軌道に乗るまでの時間も加味しなければなりません。
ですが、M&Aによって自社の弱みとなっているエリアの企業(あるいは事業)を取得すれば、事業規模拡大までの時間やコストを大幅に削減でき、軌道に乗っている企業(あるいは事業)を取得することでリスクを最小限にとどめることが可能です。
物流業界の多くは中小規模の事業者ですが、実際のM&Aでは大手・中堅規模の物流会社が中小規模の事業者を取得して事業規模拡大を図るケースが多くみられます。
人材の確保
物流業界が抱える課題のひとつは慢性的な人材不足であり、2024年問題を間近に控えた今、人材確保は各社の喫緊の課題となっています。
特にドライバー不足の解消は多くの会社が抱える悩みですが、新規採用で一度に多くの人材を確保するのは難しいのが現状です。
しかし、M&Aで同業他社を取得すれば従業員の契約も引き継ぐことができるため、短期間で多くの人材を確保することができます。
物流拠点の獲得
物流企業の場合、事業拡大・安定を図るためには物流拠点の確保は不可欠です。しかし、エリアの特性や競合他社の有無などで将来見込める収益が大きく変わるため、自社で新しく拠点を増やす方法では大きなリスクもあります。
M&Aによって他社の物流拠点を獲得すれば、収益がどの程度見込めるか、自社の既存拠点と生み出されるシナジーの大きさを想定しやすい点がメリットです。
コスト削減
同業種あるいは関連性の高い企業(あるいは事業)をM&Aで取得すれば、さまざまなシナジーを見込むことができ、コスト削減はその代表的なものです。
M&Aによって設備や物流拠点や設備などのリソースを相互活用すれば保守費用の削減や業務効率化によって、コスト削減を図ることができます。
売り手側のメリット
物流業界のM&Aで売り手側が得られるメリットには主に以下の5つです。
後継者問題を解決
近年は後継者不在に悩む中小企業の割合が高くなっており、業績が好調であっても廃業を選択する「黒字廃業」も多いです。
後継者がいない企業にとってM&Aは事業承継を行う有効な手段であり、他社へ引き継ぐことで自社を存続させることができます。
従業員の雇用を守れる
後継者不在や経営状態の悪化など廃業に至る理由はさまざまですが、どのような理由であれ廃業という選択をすれば従業員を解雇しなければなりません。
特に中小企業の場合は経営者と従業員の結びつきが強いことが多いため、廃業という選択は経営者にとって苦しい決断であるケースがほとんどです。
M&Aの場合、株式譲渡であれば雇用は買い手側へそのまま引き継がれ、事業譲渡であっても個々に契約しなおすことで雇用を継続することができます。
会社の維持
自社の維持が叶うのも、売り手側が得られる大きなメリットです。事業承継が適切なタイミングで行われず廃業となれば、自社のノウハウ・技術・積み上げてきた信用度などは全て失われますが、会社そのものを売却すれば、それらは全て買い手へと引き継がれます。
また、M&Aの買い手は売り手よりも規模が大きい企業であることが多いため、自社のみでは難しかった新たな取り組みなどにチャレンジすることもできるでしょう。
創業者利益の獲得
売り手側が得られるメリットのひとつが、創業者利益の獲得です。会社そのものを売却する場合は株式譲渡スキームを使用するケースがほとんどですが、その場合は株主が対価を受け取ります。
中小企業の場合は全株式を経営者が保有しているケースも多いため、対価としてまとまった現金を受け取ることが可能です。
事業のみを売却する事業譲渡では法人(会社)が売却益を得るかたちとなりますが、その場合は退職金として経営者が受け取ることもできます。
個人保証の解除
中小企業の場合は経営者が個人保証を負っている、つまり連帯保証人となっているケースが多いです。個人保証は金銭的・精神的な負担が大きく、それが足かせとなり親族や従業員へ事業承継できないケースも少なくありません。
M&Aの場合、買い手側が経営者の個人保証を肩代わりするケースが多く、経営者には大きなメリットとなります。特に中小企業が行うM&Aでは経営者の個人保証解除を取り決めるケースが一般的です。
なお、個人保証はM&Aで自動的に外れるわけではなく、金融機関での手続きが必要となるため、専門家に相談しながら行うとよいでしょう。
M&Aのメリット・デメリットについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
物流業界のM&Aデメリット
物流業界のM&A・事業承継ではメリットだけでなくデメリットも当然あるため、両方を考慮したうえで実行することが重要です。ここでは売り手・買い手の主なデメリットを紹介します。
買い手側のデメリット | 売り手側のデメリット |
・簿外債務の承継リスク ・優秀な従業員の流出リスク ・シナジーがでないリスク |
・競業避止義務 ・顧客・取引先からの反発 ・希望条件で売却できない |
買い手側のデメリット
買い手側に想定される主なデメリットには以下の3つが挙げられます。
簿外債務の承継リスク
株式譲渡スキームを使用した場合、売り手の資産や権利義務はすべて買い手へ引き継がれます。このような引き継ぎ方を包括承継といいますが、包括承継では負債も同時に引き継がなければなりません。
負債のなかには、簿外債務と呼ばれる貸借対照表には計上されない債務保証や未払い賃金なども含まれます。簿外債務の額によってはM&A後の事業運営に支障がでる場合もあるため、デューデリジェンスを徹底してリスクを最大限回避することが重要です。
もし簿外債務を引き継ぐリスクが大きい場合は事業譲渡スキームを用いる方法もあります。事業譲渡スキームでは引き継ぐ対象を細かく決めることができるため、M&Aアドバイザーへ相談するとよいでしょう。
優秀な従業員の流出リスク
売り手側の従業員すべてがM&Aに好印象を持つとは限らず、経営統合後の方針や企業文化の違いなどで離職する従業員がでるケースもあるでしょう。
買い手側が人材確保を目的としている場合、もしキーマンとなる従業員が流出してしまえば、予定していたプロジェクトが進行できないなどのデメリットが生じ得ます。
買い手は優秀な人材がM&Aによって流出するリスクがあることも念頭におき、売り手と協力して対策を講じておくことも必要です。
シナジーがでないリスク
買い手はM&A後に想定されるシナジーを考慮して価格や条件を決定しますが、シナジーが十分得られるかどうかはM&A完了後の経営統合(PMI)の成否や、市場環境などの外部要因も大きく影響します。
そのため、M&A前に想定していたシナジーが十分に発揮されるよう経営統合を丁寧かつ慎重に行うことが重要です。同時に、シナジーが十分得られるかは不確定な部分も多いことを念頭に置き、M&Aを実施する必要もあります。
売り手側のデメリット
売り手側に想定される主なデメリットは以下の3つです。
競業避止義務
競業避止義務は会社法による定めであり、買い手と隣接する地域で同一事業を行うことがM&A後の一定期間禁止されるものです。競合避止義務の期間は原則20年間ですが、この期間は売り手・買い手の合意があれば自由に決めることができます。
また、競合避止義務に関する取り決めは最終契約書に記載されることが一般的ですが、事業譲渡スキームの場合は最終契約書に記載がなくとも、会社法の定めにより売り手はその義務を負うため注意が必要です。
顧客・取引先からの反発
M&A後、売り手は買い手側の経営方針に従って事業運営を行いますが、売り手の顧客・取引先には契約内容や価格設定が変わることもあるため、反発が起こることも考えられます。
中小企業の場合、経営者の個人的な付き合いから長期間に渡って契約している取引先も多いです。売り手は顧客・取引先に丁寧な説明を行うとともに、交渉段階から買い手とよく話し合う必要があります。
希望条件で売却できない
M&Aの売り手・買い手はそれぞれ希望条件や価格があり、交渉によって最終的な内容を取り決めます。その過程では当然譲歩しなければならない部分がでてくるため、必ずしも自社の希望条件での売却が実現するわけではありません。
最終的に満足度の高いM&Aとするためにも、自社の希望条件に優先順位を付けておくとよいでしょう。そうすることで、譲歩する部分と譲れない部分が明確になり、交渉も円滑に進みやすくなります。
物流業界のM&Aの流れ
物流業界のM&A・事業承継は一般的に以下の流れで進められます。
1.専門家の選定・相談を行う
オーナー経営者にとって最初の難題は、M&A・事業承継をいつ、どこに相談するかという点です。
よくあるケースのひとつは、まず税理士やメインバンクに相談するケースです。近年はメインバンクや公的機関から事業承継に関する声掛けを積極的に行うケースも増えてきました。
M&A・事業承継を依頼する専門家と契約したら、具体的な手続きに進んでいきます。
2.M&A先の選定と交渉をする
M&A先の選定と交渉は、依頼する専門家によって大きく結果が分かれる点です。
専門家のネットワークからM&A先を選定する場合の一般的な方法は、まず売り手企業側が声をかける相手を数十社程度選定した後、さらに候補を絞り込む方法です。
専門家は売り手企業を最終的に絞り込んだ買い手候補企業へ打診していきます。
3.M&A先のトップと面談を行う
専門家が買い手候補企業へ打診を行った結果、売り手企業の経営者と、買い手としての意思表示を示した企業の経営者はトップ面談を行います。
トップ面談では、事前の提示条件で気になる点や、わからない点などを確認しつつ、お互いに人柄などを探っていきます。
4.基本合意書の締結
M&Aに関してまとまった交渉内容は、基本合意書として整理し合意します。取引によっては、基本合意書の締結事態を行わないケースもあります。
M&A手続きを大きく分けると、ここまでが前半部分にあたります。中小企業のM&Aの場合は前半部分が特に重要となるので、M&A先の案件情報と適切にアプローチできる交渉力を持った専門家を選ぶ視点が大事です。
5.M&A先によるデューデリジェンスの実施
買い手側が売り手企業に対して行うデューデリジェンス(買収監査)の主な目的は、買収を行うかどうかの判断、M&A価格の決定、リスクの判断、M&A後の戦略構築などさまざまです。
デューデリジェンスの範囲は、ビジネスデューデリジェンス、財務・税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンスをはじめとした、多岐に渡る分野で行うケースもあります。
6.最終契約書の確認・交渉・締結
詳細なデューデリジェンスが終了し最終的な条件を確認・再交渉し終わったら、最終契約書の締結に至ります。
最終契約書の内容については、不当に不利な条件になったり、想定外のトラブルが起きたりしないよう、M&A専門の法務専門家からのアドバイスをもらうことがポイントです。
7.クロージング
クロージング手続きをすべて終えたらM&Aの手続きは終了です。中小企業の場合、ここまでの手続きを平均半年から1年の期間をかけて行われます。
ただし、クロージング後に想定外のトラブルが発生することも少なくありません。
そのため、売り手側の経営者は、クロージング後に取締役を継続したり、顧問契約を結んでいなかったりしたとしても、一定期間は買い手企業のケアを行うことでトラブルを最小に抑えることが可能です。
物流業界のM&Aの注意点5選
物流業界のM&A・事業承継では以下の点に注意が必要です。
1.労務管理の徹底
現在物流業界は働き方改革により、ずさんな労務管理はリスクが高くなっています。
物流業界は以前まで労務面がずさんな業界でした。現在は以前よりも良くなってきてはいるものの、まだ問題の多い会社も少なくありません。
労務問題を抱えていると買い手にとっては大きなリスクとなる時代になっているので、M&A・事業承継前に労務管理を改善しておくことが必要です。
2.従業員の離職を防止する
物流業界は離職率が比較的高い業界です。そのため、買い手は常に人材を求めています。しかし、売り手側の従業員がM&A・事業承継をきっかけに離職する可能性に注意が必要です。
売り手側の従業員は、M&A・事業承継をきっかけに雇用条件が下がるのではないか、希望しない業務に回されるのではないかなどさまざまな不安を感じています。M&A・事業承継の際は、従業員の不安の解消が必要です。
3.経営者が計画的に準備を開始する
M&A・事業承継はさまざまな関係者に影響を与えます。そのため、本当にM&A・事業承継が最良の選択かどうかも含めて検討しなければなりません。
オーナー経営者は、経営状態の洗い出しと課題の見える化、企業価値の向上などを計画的に進めておく必要があります。
4.タイミングを見る
M&A・事業承継はいつ行うかも大事です。現在再編期にある物流業界では、最適なタイミングで準備が整っていないとすぐに最適な案件は流れていってしまいます。
上記のように、オーナー経営者は早めにM&A・事業承継の準備に取りかかり、いつでも万全な状態を整えておくことが大事です。
5.専門家に相談する
計画的に準備を万端にしておき、最適なタイミングを見計らってM&A・事業承継を行うには、M&A・事業承継の専門家による助言が役に立ちます。
まずは早めにM&A・事業承継の専門家に相談して準備に着手することが大事です。
小売業界の事業譲渡・株式譲渡のポイントについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
物流業界のM&A相場価格
M&Aには明確な相場基準はありませんが、価格交渉は企業価値を基に行われるため、自社の評価額を知っておくと相場を知る目安にできるでしょう。ここでは、物流業界のM&A相場価格や企業価値評価の方法を説明します。
物流業界の大まかな相場価格
物流業界のM&A相場は売り手の企業規模などによっても変わりますが「時価純資産+営業利益の2〜5年分」で求めた価格を売却相場の目安にするとよいでしょう。
あくまでも大まかな相場価格なので、必ずしも近い価格でM&Aが成立するとは限りませんが、目安を知っておけば必要以上に希望譲渡価格を下げる事態を防ぐことができます。また、以下の式を使えばもう少し具体的な価格がわかるので、一度計算してみるとよいでしょう。
- 株式譲渡スキームの場合:時価純資産+{(営業利益 + 役員報酬)×2〜5年}
- 事業譲渡スキームの場合:事業資産+ 事業利益×2〜5年
最終的な価格は企業価値をもとに交渉し決定
M&Aは売り手・買い手が合意した金額で成立するため、事前に計算した相場に近い価格とならないケースもあるでしょう。価格交渉では企業価値評価額がベースとなり、そこに売り手の収益力・保有資産・ノウハウや技術力などが加味されます。
無形資産をどのように評価するかは買い手次第なので、相場を上回る価格でM&Aが成立するケースも少なくありません。
物流業界の企業価値評価の方法3選
企業価値はM&A価格交渉のベースとなる重要な要素です。その評価方法は複数あり、その方法で算出するかによって結果が変わることもあります。
1.コストアプローチ
コストアプローチは企業の純資産額をベースに企業価値を評価する方法です。主な方法に簿価純資産法と時価純資産法とがあり、前者が純資産を簿価で評価するのに対し、後者は純資産額を評価時点の時価に置き換えて算出します。
貸借対照表上の数字を使用するため、納得感が得られやすく客観性が高い点がメリットです。その一方で、貸借対照表に反映されない無形資産(ノウハウ・ブランド力・信用力・技術など)は加味されないというデメリットもあります。そのため、実務上では営業権(のれん)を加えて無形資産を反映させるケースが多いです。
2.インカムアプローチ
インカムアプローチは企業の収益力をベースに企業価値を評価する方法です。簡単にいえば、将来どのくらい利益を得られるかを基に企業価値を算出する方法であり、予測される将来の利益・フリーキャッシュフロー・配当のいずれかをベースとし、それを現在価値に置き換えて企業価値を出します。
代表的な方法には収益還元法・DCF法・配当還元法の3つがあり、なかでもDCF法は実務上で用いられることが多いです。3つの方法では、収益還元法が将来の収益性、配当還元法は予想配当金を資本還元したもの、DCF法では将来のフリーキャッシュフロー(予測値)を現在価値に割り引いたものをベースとして算出します。
企業の固有性質や収益力が反映される点がインカムアプローチの最大のメリットですが、算定根拠となるのは評価対象企業が作成した事業計画書などであるため、主観が入りやすく客観性に乏しい点がデメリットです。
3.マーケットアプローチ
マーケットアプローチでは事業内容や企業規模が類似する上場企業を選定し、その上場企業の市場株価や過去のM&A取引価格をベースとして企業価値を求める方法です。
主な手法には類似会社比較法・類似取引比較法があり、類似会社比較法では類似上場企業の株価倍率(EBITDAやPERなどの指標で求めた倍率)、類似取引比較法では過去のM&A取引価格をベースとして企業価値を算出します。
市場動向が反映されており客観性が高い点がメリットですが、類似上場企業の選定基準には主観が入りやすい点がデメリットです。また、中小企業の企業価値評価に用いる場合、規模が類似する上場企業がなければ算定することができません。
物流業界のM&Aの主な手法2選
M&Aとは、会社・事業の買収・統合を行うことを指し、現在再編期にある物流業界ではM&Aが活発に行われています。
物流関連企業がM&Aを行う理由は、事業拡大や事業エリアの拡大、物流システムの効率化などさまざまですが、物流関連企業はM&Aによって、業界の変化に低いリスクで迅速に対応することが可能です。
ここでは、物流業界のM&A・事業承継で多く用いられる株式譲渡と事業譲渡について紹介します。
1.株式譲渡
株式譲渡は前述したM&A・事業承継事例のように、物流業界で大企業からから中小企業まで幅広く用いられています。株式譲渡は売り手企業の株主から買い手へ株式を譲渡することで経営権を移転させる手法です。
株式譲渡は事業承継目的のM&Aでも用いられることが多く、後継者不在であっても他社へ自社を引き継ぐことで事業を存続させることができます。
物流業界は成熟産業であり中小物流関連企業では経営者の高齢化が進んでいますが、後継者がいない会社も多いため株式譲渡によって事業承継を行うケースも増えてきました。
2.事業譲渡
事業譲渡も物流業界のM&A・事業承継でよく用いられる手法です。事業譲渡は事業の一部を譲渡できるので、物流拠点の一部を譲渡したり、物流設備の一部を譲渡したりといった柔軟な戦略を選択できます。
事業譲渡は複数事業を展開している企業が「選択と集中」を目的として用いることが多く、売り手にとっては不採算事業を切り出すことができ、買い手は必要な事業のみを取得できるという点が大きなメリットです。
そのほか、広義のM&Aでは資本業務提携が増加傾向にあります。物流業界は物流コストが増加傾向にあるのに対して、利益率は減少傾向にあるため、他社と資本業務提携を締結することで、事業の効率化を図るケースが増えています。
物流業界のM&A事例28選
本章では、物流業界のM&A・事業承継事例を紹介します。
バローホールディングスによる鷺富運送の株式取得
2024年4月、バローホールディングスの連結子会社である中部興産が鷺富運送の発行株式の100%を取得し子会社化することを発表しました。
中部興産は1969年の創業以来、独自の物流技術を活用した倉庫運営と自社配送を行っています。また、東海・北陸・関東・関西エリアに展開するグループ店舗に対応するため、24拠点の物流センターを運営しています。
鷺富運送は「運輸の使命に徹して、社会の信頼にこたえる」を経営理念とし、石川・福井・富山県を中心に3温度帯別の食料品と医薬品の輸配送業務を行っています。幹線輸送から仕分け、共同配送まで多様な物流サービスを提供しています。
今回のM&Aにより倉庫運営ノウハウの共有や川上への物流領域の拡大とサプライチェーンの高度化が期待されています。
参考:当社連結子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ
安田倉庫によるHIROMIカンパニーの子会社化
2023年12月、安田倉庫はオリエント・サービスのグループ化を目的とし、その親会社であるHIROMIカンパニーの全株式を取得し子会社化することを発表しました。
安田倉庫は物流事業では、「付加価値の高いサービスの提供に向けたソリューションの強化とネットワークの拡充」を基本戦略とし、全国に倉庫・輸配送ネットワークを拡大してきました。これまでに、大西運輸株式会社(北陸/石川県)、南信貨物自動車株式会社(中部/長野県)、YSO Logi 株式会社(関西/京都府)をグループ化してきましたが、今回の株式取得により、当社グループで初の中京エリアの倉庫拠点が実現いたします。
オリエント・サービスは1988年に愛知県春日井市で創業された一般貨物自動車運送業の企業です。春日井市を拠点に約170台の車両による運送サービスと自社の営業倉庫を組み合わせ、幅広い物流サービスを提供しています。
今回のM&Aにより中京エリアのネットワークを当社グループに取り込むことで、関東・関西を繋ぐ中継地点として活用し、更なる発展が見込めるととしています。
参考:株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
トナミホールディングスによる丸嶋運送の株式取得
2023年10月、トナミホールディングスは丸嶋運送の全株式を取得することを発表しました。
トナミホールディングスは第22次中期経営計画「TONAMI NEW PLAN 2023」に基づき、新しい経営ステージを目指して事業の継続的成長を図り、「業務資本提携やM&A」の積極的な展開を目指しています。
丸嶋運送は奈良県天理市に本社を構え、トラック輸送と倉庫事業を展開しており、関西・関東圏へのスピーディーな配送が強みです。当社グループの新たな関西拠点として経営に融合することで、総合的なロジスティクス提案力を強化し、業容の拡大を図るため、株式を取得することを決めたとしています。
今回のM&Aによってトナミホールディングスはグループインフラや情報システムの共有などの協業を進め、生産性の拡大と企業価値の向上に取り組んでいくとしています。
参考:「丸嶋運送株式会社」の株式取得に伴う連結子会社化のお知らせ
ハマキョウレックスによる山里物流サービスの子会社化
ハマキョウレックスは、2023年5月に大阪府の山里物流サービスを子会社化したと発表しました。ハマキョウレックスは貨物自動車運送業や物流センター(3PL)事業を手掛けており、主に食品・アパレル・医薬品など幅広い商品を扱っています。
子会社となった山里物流サービスは一般貨物自動車運送業や貨物利用運送を手掛けており、特に食品輸送を得意とする大阪府八尾市の企業です。
ハマキョウレックスは山里物流が培ってきた食品輸送ノウハウを獲得し、自社の物流ノウハウと組み合わせることでより付加価値の高いサービス提供が可能になるとし、本M&Aに至りました。
参考:株式会社ハマキョウレックス「株式会社山里物流サービスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
NIPPON EXPRESS ホールディングスによるcargo-partner の株式取得(子会社化)
2023年5月にNIPPON EXPRESS ホールディングスによるcargo-partner の株式取得(子会社化)することを発表しました。
NIPPON EXPRESS ホールディングスは、世界の国々や地域において、陸海空の多様な輸送モードを用いたサプライチ ェーンソリューションを提供して、あらゆるお客様のグローバル展開に貢献する企業を目指しています。非連続な成長戦略としてクロスボーダーM&Aを進めていたとしています。
cargo-partnerは、オーストリア・ウィーンに本拠地を置いています。欧州における産業集積地として注目が高まる中東欧地域に強固な物流事業基盤を有すると共にる自動車、電機・電子、 医薬品産業における海運・航空フォワーディング事業を中心として欧州、アジア、北米で事業展開しています。
本M&Aによりネットワークの拡大と欧州地域の提供サービス拡充、グローバル市場における競争力の強化、アジアと欧州を結ぶロジスティク ス需要への対応力とグローバルアカウント体制の増強、、相互補完によるロジスティクス 事業のシナジー創出と拡大・発展を図るとしています。
参考:cargo-partner の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
センコーグループホールディングスによるオーナミの子会社化
センコーグループホールディングス(以下センコーグループHD)は、2022年12月、日立造船傘下のオーナミの子会社化を発表しました。
センコーグループHDは、物流・商事・農業などを展開する大手物流会社です。一方のオーナミは運送業を手掛ける企業で、陸上と海上の一貫輸送体制を構築しており、大型貨物や重量物の荷役・通関・輸送・保管業務を得意としています。
センコーグループHDには海陸運事業を行う複数の傘下会社があり、重量貨物輸送を手掛けていますが、今回の子会社化は自社の保有ネットワークや輸出梱包ノウハウと、オーナミの重量物輸送を相互活用することで、重量物輸送事業の拡大およびグローバルな展開を図ることが目的です。
参考:センコーグループホールディングス株式会社「国内外の重量物輸送拡大を図る ~海陸一貫輸送会社オーナミをグループ化~」
日立物流によるオランダCyberFreight社の子会社化
日立物流は、2022年9月、オランダのCyber Freight International Holding B.V.(以下CyberFreight社)の発行済み全株式を取得して子会社化すると発表しました。
日立物流は倉庫保管・輸送を主軸とする大手物流企業で、製造業や小売業・物流システム構築および運営の請負業務も行っています。子会社となったオランダのCyberFreight社は、食品や医薬品関連の輸出入業務や運送手配などのサービスを一貫提供する企業です。
日立物流は、今回の子会社化でCyberFreightが持つ医薬品関連のネットワークやオペレーションノウハウを取り込み、医薬品事業拡大を図るとしています。
参考:株式会社日立物流「オランダ国際フォワーディング会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」
株式会社ヒガシトゥエンティワンによる山神運輸工業の子会社化
株式会社ヒガシトゥエンティワンによる山神運輸工業の子会社化です。
2022年4月に売上高20億8,000万円の運送業の山神運輸工業を株式譲渡により子会社化しています。本M&Aによりシナジー効果を見込んでいる他、海上コンテナ輸送・エンジニアリング事業など新規分野での事業展開につなげています。
参考:山神運輸工業株式会社の株式取得完了に関するお知らせ
アクセンチュアによるトランコムITSの子会社化
アクセンチュアは、2022年3月、トランコムITSを子会社化すると発表しました。本M&AはトランコムITSが新設する会社(トランコムITSの100%子会社)へ、吸収分割によって外販事業を承継し、当該新会社の全株式をアクセンチュアが取得するかたちで行われます。
アクセンチュアはテクノロジー・オペレーションズ・インタラクティブ・ストラテジー&コンサルティング、4つの事業領域でソリューションサービス事業を展開する企業です。
子会社となったトランコムITSは、ITによる物流システムの構築サービス事業や、グループ外企業へのサプライチェーン変革支援サービスなどを行っています。
アクセンチュアは、今回の子会社化によって新しい「ものづくり」の体制構築や物流DX化の実現に向け協業を進めていくとしています。
参考:アクセンチュア株式会社「アクセンチュア、トランコムITSから、次世代の物流ソリューションおよびデジタルエンジニアリングの創造につながる事業の獲得に合意」
東部ネットワークによる東北三光の子会社化
東部ネットワークは、2022年3月、東北三光の発行済み全株式を取得して子会社化しました。東部ネットワークは物流・運輸・運送・倉庫事業を手掛ける横浜市の総合物流企業で、物流3PLアウトソーシングを強みとしています。
子会社となった東北三光は仙台・秋田を中心にセメント輸送や販売等を手掛けており、当該エリアのユーザーやメーカーなどに強いパイプを持つ企業です。
今回の子会社化によって、アクセンチュアは東北地区の営業拡大と、両社のリソースの相互活用による生産性向上を図るとしています。
参考:東部ネットワーク株式会社「株式会社東北三光の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
ニッコンホールディングスによる安川トランスポートの子会社化
2022年2月、ニッコンホールディングスは、安川電機の孫会社である安川トランスポートの子会社化を発表しました。ニッコンホールディングスは倉庫・運輸・梱包の各事業に必要な機能をグループ各社が保有しており、総合物流事業の一貫サービスを可能としている点に強みを持ちます。
子会社となった安川トランスポートは運輸・物流サービス事業を手掛けており、システムエンジニアリング・ロボット・モーションコントロールなどを展開する安川電機の孫会社です。
ニッコンホールディングスは安川トランスポートの子会社化により、ノウハウやネットワークを相互活用し、品質・価格・納期のさらなる質・サービスの向上を図るとしています。
なお、本M&A後、安川トランスポートは「ニッコン北九」へ社名変更することも同時に発表されました。
参考:株式会社安川電機「当社孫会社(株式会社安川トランスポート)の株式譲渡に関するお知らせ」
株式会社ゼロによる陸友物流有限公司の子会社化
株式会社ゼロによる陸友物流有限公司の子会社化です。
2021年7月に株式の40%を取得し、子会社化しました。当時の売上高は約37億5,000万円です。本M&Aにより中国の中古車市場の中でも車両輸送への本格参入を備えることを目的としています。
参考:持分法適用関連会社の異動(連結子会社化)に関するお知らせ
日本通運株式会社による、医薬品物流の米MD LOGISTICSなど2社の子会社化
日本通運株式会社による、医薬品物流の米MD LOGISTICSなど2社の子会社化です。
2020年9月に日本通運株式会社は米物流会社のMD Logistics(インディアナ州)、MD Express(同)の全持分を取得しています。本M&Aにより医薬品需要で市場の約4割を占める米国に於いてのロジスティクス機能を獲得しています。
参考:米国物流会社の出資持分取得(子会社化)完了に関するお知らせ
ファイズHDによる中央運輸のM&A
ファイズHD
2020年7月、3PL(総合物流受託事業)のファイズHDは、貨物自動車運送業などを営む中央運輸を株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これによりファイズHDは、中央運輸が拠点としている神奈川県の厚木エリアと相模原エリアでの物流需要に対応できる体制を整えています。
参考:株式会社中央運輸の株式を取得(子会社化)
ハマキョウレックスによるシティーラインのM&A
ハマキョウレックス
2019年12月、3PL(総合物流受託事業)のハマキョウレックスは、物流センター事業を営むシティーラインを株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これによりハマキョウレックスは、シティーラインが拠点としている福岡県をはじめとした九州エリアでの事業強化を図っています。
参考:株式会社シティーラインの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
内外トランスラインによる韓進海運新港物流センターのM&A
内外トランスライン
2019年2月、海上混載貨物輸送事業を行っている内外トランスラインは、韓国で物流センターの運営を行っている韓進海運新港物流センターを株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これにより内外トランスラインは、韓国をはじめとした、海外での物流センター事業強化を進めています。
参考:韓国における倉庫会社の株式取得と子会社化に関するお知らせ
鴻池運輸による中電産業のM&A
鴻池運輸
2019年2月、港湾運送業・倉庫業を営む鴻池運輸は、総合建設業の中電産業を株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これにより鴻池運輸は、中電産業の拠点である北陸エリアでのエンジニアリングサービスを強化しています。
参考:「鴻池運輸、中電産業株式会社の全株式を取得」に関するお知らせ
MOLケミカルタンカーズによるノルディックタンカーズのM&A
MOLケミカルタンカーズ
2019年1月、化学品などの海上輸送を行っているMOLケミカルタンカーズは、同じく海上輸送業を営むデンマークのノルディックタンカーズを完全子会社化すると発表しました。
世界各地でケミカルタンカーを配船しているMOLケミカルタンカーズは、ノルディックタンカーズを子会社化することで世界各地での配船をさらに強化しています。
参考:MOLケミカルタンカーズがデンマークのケミカル船社「ノルディックタンカーズ」の株式100%取得で合意
ニッコンHDによる松久運輸と松久総合のM&A
ニッコンHD
2018年12月、貨物自動車輸送事業などを行っているニッコンHDは、一般貨物自動車運送事業を営む松久運輸と、一般貨物自動車運送事業や倉庫業を営む松久総合を株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これによりニッコンHDは、総合的な物流サービスの強化を図っています。
近物レックスによるエービーエクスプレスのM&A
近物レックス
2018年11月、物流会社の近物レックスは、共同配送事業を営むエービーエクスプレスを株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
近物レックスはエービーエクスプレスを子会社化することで、人手不足の解消やサービス力の向上を図っています。
参考:株式会社エービーエクスプレスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
西日本鉄道によるグローバル・スター・インターナショナル社のM&A
西日本鉄道
2018年10月、福岡県を拠点に鉄道や路線バスの運営を行っている西日本鉄道は、フランスで航空輸送・海上輸送を営むグローバル・スター・インターナショナル社を子会社化すると発表しました。
西日本鉄道はグローバル・スター・インターナショナル社を子会社化することにより、これまで西日本鉄道が取り扱いの少なかった分野の強化を図っています。
参考:株式会社エービーエクスプレスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
阪急阪神エクスプレスによるイントラスピード・サウス・アフリカ社のM&A
阪急阪神エクスプレス
2018年2月、国際物流事業を営む阪急阪神エクスプレスは、アフリカで国際物流業を営むイントラスピード・サウス・アフリカ社が保有する2社を子会社化すると発表しました。
これにより阪急阪神エクスプレスは、今後成長が期待できるアフリカ市場での事業を強化しています。
商船三井によるアザレア社のM&A
商船三井
2018年1月、海上輸送・旅客輸送などを営む商船三井は、オランダで船員派遣業を営むアザレア社を子会社化すると発表しました。
これにより商船三井は、ヨーロッパでの船員派遣体制を強化しています。
センコーグループHDによる安全輸送のM&A
センコーグループHD
物流業界のM&A・事業承継事例11件目は、センコーグループHDによる安全輸送のM&Aです。
2017年8月、総合物流企業のセンコーグループHDは、神奈川県を中心に貨物自動車運送事業を営む安全輸送を株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これによりセンコーグループHDは、神奈川県を中心とした関東エリアでの運送事業を強化しています。
参考:安全輸送㈱を子会社化し、 グループ車両勢力を増強、事業拡大を図る
JR九州によるキャタピラー九州のM&A
2017年8月、JR九州は、建設機械の販売・レンタルを行っているキャタピラー九州を、会社分割後に株式を取得し子会社化すると発表しました。
これによりJR九州は、鉄道事業以外への事業領域を拡大しています。
参考:株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
内外トランスラインによるGTC-ASIAのM&A
内外トランスライン
2017年7月、海上輸出混載貨物輸送事業を営む内外トランスラインは、ミャンマーの国際輸送会社であるGTC-ASIAを子会社化すると発表しました。
これにより内外トランスラインはミャンマーで輸送事業を展開し、グローバル展開を強化しています。
参考:GTC-ASIA(MYANMAR)COMPANY LIMITED の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
カンダHDによる中村エンタープライズのM&A
カンダHD
2017年3月、物流総合企業のカンダHDは、一般貨物自動車運送業を営む中村エンタープライズを株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これによりカンダHDは、新たな顧客の獲得と低音流通のノウハウを獲得しています。
参考:株式会社中村エンタープライズの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
ハマキョウレックスによる千代田運輸のM&A
ハマキョウレックス
2017年2月、3PL(総合物流受託事業)のハマキョウレックスは、商品自動車輸送業務や倉庫業務を中心に行っている千代田運輸を株式譲渡契約により子会社化すると発表しました。
これによりハマキョウレックスは、物流サービスの総合力強化を進めています。
参考:千代田運輸株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
物流業界のM&Aまとめ
本記事では、物流業界のM&A・事業承継についてご紹介してきました。物流業界は競争の激化と人材不足、働き方改革、多様化する個人ユーザーの要望などにより、業界再編が進められている状況です。
物流業界のM&A・事業承継では以下の点に注意が必要です。
- 労務管理の徹底
- 従業員の離職を防止する
- 経営者が計画的に準備を開始する
- タイミングを見る
- 専門家に相談する
物流業界のM&A・
- 専門家の選定・相談を行う
- M&A先の選定と交渉をする
- M&A先のトップと面談を行う
- 基本合意書の締結
- M&A先によるデューデリジェンスの実施
- 最終契約書の確認・交渉・締結
- クロージング
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