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M&AにおけるPMIとは?概要や手法、重要性、成功・失敗事例も紹介

PMIはM&Aの成功に直結する重要なプロセスですが、他国に比べると日本ではその重要性が十分に認識されていないといえます。ここでは、M&AにおけるPMIの重要性、PMIの進め方、PMI計画の策定やセミナーなど、事前知識を得る方法などを解説します。

目次
  1. M&AにおけるPMIとは?
  2. M&AにおけるPMIの流れ・進め方
  3. M&AにおけるPMIの手法
  4. M&AにおけるPMIの成功を左右する計画
  5. M&AにおけるPMIの成功・失敗事例
  6. M&AにおけるPMIの事前知識を得る方法
  7. M&AにおけるPMIの資格
  8. M&AにおけるPMIのまとめ
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M&AにおけるPMIとは?

M&AにおけるPMIとは?

PMI(ピーエムアイ)とは、M&A後の経営統合を実行するプロセスをさし、M&Aで最も重要なプロセスの一つです。経営統合によるシナジーを最大化するために、新組織体制の下で長期的成長を支えるマネジメントの仕組み作りおよび企業価値の向上を推進します。

しかし、日本のM&AではPMIがしっかり行われるのは珍しく、PMIが不十分なためにM&Aで想定したシナジー効果を得られないケースは少なくありません。PMIは、M&Aの結果を左右するプロセスです。

今回は、PMIの意味を確認するとともに進め方や各プロセスのポイント、成功の秘訣などについて解説します。

PMIの概要・意味

PMIは「Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の略称です。M&A成立後における経営の統合プロセスをさします。

M&Aが成功するかどうかは、PMIが成功するかによるといっても過言ではありません。買収前に期待した経営効果が実現できるかどうかは、PMIの成功により効果が発揮される範囲は違ってきます。

M&Aで統合するものは案件により異なりますが、例として、グループ方針の統一や企業文化の融合、コスト削減などがあります。これらは、経営統合によるシナジーです。

PMIの重要性

PMIは、M&Aで想定したシナジー効果を実現し、その効果を最も発揮させるプロセスですが、PMIがしっかりと行われた事例は、決して多くありません。

M&Aでは対象企業との統合合意を取るために労力を割くあまり肝心の経営統合、つまりPMIに関して力が注がれないケースが多いです。本来PMIは、明確なビジョンと明確な計画を持って行います。

不十分なPMIの実施は、結果的に会社の成長へ悪影響を及ぼすため、M&Aのシナジー効果を得たい場合、PMIの適切な実施は必要でしょう。

しかし、M&A後の会社は安定していないため、PMIを適切に実行するのは困難です。PMIを行う際は、M&A専門家の協力を得るのがよいでしょう。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には専門的な知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、M&Aをフルサポートいたします。

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予定していたシナジーの発揮

M&Aを行う際は、実施する前にシナジーを予定することが多いです。予定していたシナジー効果を上手に発揮されるためには、経営統合をうまく進めて早く終わらせることが大切といえます。

できるだけ早く統合させれば効果を早い段階から得られるため、経営統合後、迅速に動けるよう準備を行ってください。

社員が抱く不満の解消

M&Aは異なる企業文化を持つ会社同士が統合するため、従業員間に摩擦が起こることも懸念されます。従業員には買収されたことをよいと思わない人もいるでしょう。

キーマン条項などで会社の重要な業務に携わる人は引き止めできますが、M&Aをよいと思ってない場合は業務に支障が起きないよう前もって説明などを行い理解してもらうことが大切です。

その他の従業員にも同じように説明などを実施して理解を得なければ損失を生じる可能性もあるので、PMIは慎重に進めてください。

内部統制やシステムの構築・統合

M&A後、統合した会社は不安定になるため、PMIの整備が十分でなければ業務での失敗、統合したシステムの不具合が発生しやすいです。適切な対処を行わなければ、業務が停滞し業績が低下するでしょう。

そうなれば、想定していたシナジー効果を得られず、M&Aが破談し莫大な損失の発生にもつながります。

買収された会社が中小企業の場合は、上場会社に耐えられる統制を築かなければなりません。中小企業は、内部統制が築かれていないことが多いです。内部統制の整備ができていなければ、業務がスムーズに進みません。

内部統制やシステムの構築や統合は、慎重・スピーディーに進め、内部統制やシステム、業績報告などはグループの方針に合わせましょう

M&AにおけるPMIの流れ・進め方

M&AにおけるPMIの流れ・進め方

この章では、M&AにおけるPMIの流れや進め方を見ていきましょう。

①統合方針を固める

PMIの流れとして、まずは統合方針を固めます。売却側が買収側の期待する統合効果を実現するために、「どのようなステップを踏むのか」「どのような方法で進めるのか」という統合方針を考慮するのです。

②ランディング・プランを策定する

続いての流れは、クロージングしてから数カ月以内に行うべき統合作業を計画するランディング・プランの策定です。クロージングしてから3カ月~6カ月以内に行う作業を計画に入れるのが一般的で、売却側と買収側での作業を含めます。

経営全般におけるいろいろな経営領域がありますが、管理面と事業面の見直しが主です。管理面は組織・規定類・経営管理の見直し、コミュニケーションの推進、人事・労務面の変更などが実施されます。事業面は原材料費などの原価見直しや販管費・管理費の見直しです。

③具体的な100日プランに落とし込む

続いて、中長期的な課題を解決するために作られる100日プランです。クロージングしてから100日間で行われる課題への解決策をスケジューリングした計画で、経営改革プランや中期経営計画を策定します。

100日プランは、プロジェクトチームを作って現場レベルも含んで行い、M&Aにより外部から異なる風が入るので抜本的な変革ができるでしょう。100日プランで、今まで不可能だった改革を現場レベルから行えます。

プロジェクトチームは買収側から派遣された人と売却側におけるプロパーの人を混ぜたチームにすることが望ましいです。

④PMIを実施・検証する

ランディング・プランや100日プランは、実施しながら進捗に遅れがないか、効果はきちんと出ているか、など計画とずれがないか適切に把握しなければなりません。

全体会議は月次で各分科会は週次で把握を行い、計画に対する進捗を比べたり新しい課題が出たら対応したりします。分科会で把握した課題が他の分科会にも影響がありそうなときは、他の分科会と共有するなどして全体で進めてください。

M&AにおけるPMIの手法

M&AにおけるPMIの手法

PMIは、課題を解決するために実行するのがスタンダードな進め方です。ここでは、M&AにおけるPMIの手法を見ていきましょう。

①経営体制・組織構造の統合

PMIにおいて人と企業文化の統合は、M&Aの懸念事項である従業員の流出を防ぐためにも実践するのが大切です。もともと付き合いがある会社同士のM&Aでも、ともに業務を行えば感覚や関係性が変化して、細かな認識や価値観の差が摩擦を起こす可能性があります。

異業種の会社によるM&Aの場合は、根底の経営理念や風土などがずれる可能性もあり、従業員同士の連携が難しくなることもあるでしょう。何より避けたいのが従業員の内部対立です。

買い手会社と売り手会社の間で上下関係の認識ができれば、派閥ができて対立が生じる恐れがあります。そうなれば連携どころかコミュニケーションも取りにくくなるでしょう。

従業員がM&Aに対して不満を持つことも危険です。M&Aに不満があれば、業務における意識のすれ違いや企業文化の衝突が顕在化し、従業員の流出を招くことになりかねません。

経営統合の実践にもつうじますが、買い手会社と売り手会社の経営陣は従業員レベルでの意識や価値観の差、企業文化における摩擦の有無を知り、適切に対処を行う必要があります。

②人事・総務・法務制度などの統合

PMIで最も重要なフェーズは、業務統合の実践です。買い手会社も売り手会社も、それぞれの理念や経営戦略、マネージメントフレーム、現場の状況があり、互いに合致させる必要があります。

現場レベルから業務のノウハウ、ビジネスの全体的な流れ、従業員の働き方における傾向などを把握し、経営統合に反映させましょう。

買い手会社と売り手会社の従業員は何度もミーティングを行い、互いの認識をすり合わせることも重要です。それぞれの会社が当たり前と思うことが違うことは珍しくありません。従業員の業務に対する認識の不一致は業務の停滞だけでなく、経営統合の成功を阻害します。

現場レベルでしかわからないことも多いため、買い手会社と売り手会社が力を合わせ、営業だけでなく法務や税務、財務などさまざまな観点から分析を行う必要があるのです。

上場会社が買い手、非上場会社が売り手のM&Aでは、PMIは非上場会社が上場会社に応じるケースがよくあります。

③業務システムの統合

会社のシステムやインフラなどの統合も、PMIで解決すべき課題です。システム、インフラ、人事、経理、総務、決算日、支払日などは会社の基本的な構成要素で、これらの統合は簡単ではありません。各部署の負担は、M&Aを行うと倍増することが予想されます。

この負担が部署の不調和や反発、混乱を生み出しトラブルの種になるため、買い手会社と売り手会社の各経営陣は、社員にPMIを行う意味を入念に説明し、負担を減らせるよう的確な指示を出してください。

④事業内容・取引先の再検討

事業を統合するシナジー効果の大きさにより、選択と集中を行います。業務を続ける計画や、両社の仕入れ先などの分析、取得したデータからの事業展開立案、担当業務の割り当てなどを行います。

製品やサービスで重なる点は統廃合し、スケールメリットを追求することも欠かせません。

会社には各取引先があるため、両社が同業であれば共通して購入しているものは1つにするなど、取引先を見直すことも大切です。事業面の統合は、シナジー効果の獲得にダイレクトにつながるPMIといえます。

⑤業績評価システムの見直し

経営統合の効果が、きちんと計画どおりとなっているか検証するために、測定・分析できるシステムを見直します。KPIの設定・マネジメントサイクルを取り入れて、定期的にモニタリングを行いPDCAサイクルを回すことが大切です。

KPIの設定に関しては、業種や事業内容、職種などで異なり、マネジメントサイクルを取り入れて高めればより利益が生じるといえます。M&Aでどれくらい効率よく成果が出ているのかを何度も確認して精度を上げれば、目標達成率が高まるでしょう。

【関連】シナジー効果の意味とは?M&A成功事例や多角化戦略、使い方をわかりやすく解説

M&AにおけるPMIの成功を左右する計画

M&AにおけるPMIの成功を左右する計画

PMIは複数の課題を解決するため、多角的にさまざまな物事に取り組みます。これを成功させるポイントは、下記のとおりです。

  1. M&A専門家を活用したPMI計画の策定
  2. 買収後のPMIにおける意思決定プロセスの確立
  3. PMI成功における人材の確保
  4. PMIを失敗させないためのリーダーシップ
  5. PMIのビジョン・意味を現場に共有
  6. 売却側社員とのコミュニケーションの円滑化

①M&A専門家を活用したPMI計画の策定

PMIを成功させる不可欠なポイントは、統合プランをスムーズに、かつ長期的な視点で策定することです。PMIは統合1日目から始め、その段階で綿密なプランがなければ見とおしを立てるのが困難でしょう。従業員に指示を出す根拠も曖昧になります。

加えて、PMIは長時間かかる可能性があり、完璧な経営統合の実現には現場レベル、会社の構成要素からの調整も必要です。そのため、統合プランも長期的な目で定めます。M&Aを行う段階から買い手会社と売り手会社で、網羅的かつ長期的な統合プランを策定する必要があるのです。

策定する統合プランは、曖昧ではいけません。統合のプロセスを段階的にわかりやすく整理したうえで、それぞれのプロセスを遂行する担当者をあらかじめ決定し、詳細な統合プランを策定します。M&Aは契約を結ぶ段階でかなり労力を使うため、PMIに向けた統合プランの策定を進めるのは簡単ではありません。

統合プランを策定する場合は、経営コンサルティング会社やM&A仲介会社などM&Aに協力する専門家とともに行うほうが良いでしょう。

②買収後のPMIにおける意思決定プロセスの確立

PMIを実行する際は、意思決定プロセスを確定しておけば楽です。M&A後は経営陣も含め、従業員も新しい組織体制に慣れておらず、現場で混乱が発生することが予測できます。経営統合を進める過程で意思伝達が円滑に行われなければ、PMIも停滞するでしょう。

統合プランを策定すると同時に、統合後の意志決定プロセスも確定させれば、その後におけるPMIが円滑に進みます。意思決定プロセスを確定させる際は、M&A後の組織がどのような形になるか想定し、組織における最適な意思決定プロセスを組んでください

そのためには、M&Aの交渉が行われる段階から買い手と売り手の意思を共有することが重要です。最初の交渉段階から買い手と売り手のニーズが合致しているか、PMIの方法に問題はないか、などを協議する必要があります。

③PMI成功における人材の確保

PMIは現場レベルでさまざまな統合を行うために適切に実行し、なおかつ適切な判断を他の従業員にくだせる有能な人材の確保が不可欠です。PMIを行う過程で従業員は新しい決まりごとや業務を理解しながら、日々の業務をこなす必要があり、負担は大きくなります。

ルールや業務プロセスが確定していなければ、日々の業務すらうまくできないこともあり得るでしょう。経営陣が目指す統合プランを理解し、適切に指示を出して従業員を動かす人材がいれば、従業員の負担を減らしつつ統合プラン遂行のサポートを任せられます。

統合プランにある各種プロセスの担当者となる有能な人材は、あらかじめ確保しましょう。そのような人材が流出する事態は回避してください。コア事業のみならず、総務や経理、法務などのバックオフィス業務を担当する部署の人材にもいえることです。

④PMIを失敗させないためのリーダーシップ

精神論になりますが、PMIではリーダーシップも大切です。M&Aでは買い手会社も売り手会社も組織が大きく変わるため、不安や混乱を感じることは避けられません。

業務レベルで意思疎通ができない、企業文化が異なるなどの原因で従業員同士の摩擦が生まれたり、役員同士が自身の利害に固執するあまり意見が対立したりするシチュエーションが発生することも十分に考えられます。

そのため、経営者はそのような事態を解決し、混乱する従業員を力強く導くリーダーシップが求められるでしょう。リーダーシップは、統合後の各部署を取り仕切る責任者クラスの従業員にも求められます。

立場の上下はあっても、部下に指示を出す立場の人間が混乱し、明確な意思決定ができない場合はPMIが円滑に進みません。現場、そして会社全体のより早い安定化を図るためにも、指示を出すポジションの人間はリーダーシップを意識しましょう。

⑤PMIのビジョン・意味を現場に共有

PMIのビジョンや行う意味を経営陣から現場の従業員まで明確に共有することも重要です。PMIの意味やビジョンが浸透していない従業員が多い場合は、そもそも経営陣がPMIの意味を理解していないこともあります。

そのような状態ではPMIが行えないどころかトラブルが発生し、M&A自体が破談になることも考えられ、統合プランの遂行も難しいでしょう。PMIを行う前に経営者から現場の従業員までPMIのビジョンは共有することが大切です。

⑥売却側社員とのコミュニケーションの円滑化

売却側には、買収をマイナスに捉える社員が多くいることも考えられます。買収側のみでPMIを成功させるのは困難なため、売却側の社員もPMIに含まなければなりません。

そのため、売却側でM&Aにネガティブな感情を持つ社員の理解を得る必要があるのです。売却側における社員とのコミュニケーションを徹底・円滑化し、お互いを理解してPMIを進めてください。

M&AにおけるPMIの成功・失敗事例

M&AにおけるPMIの成功・失敗事例

この章では、M&AにおけるPMIの成功・失敗事例を見ていきましょう。

PMIの成功事例

まずは、PMIの成功事例です。

日本電産

日本電産は、2019年11月までに66件のM&Aを行いました。技術力を持つ経営が悪化した会社を買収し、経営改善を行い立て直して事業を広げています。

日本電産は、「高値づかみをしない」「PMIと経営に関与」「シナジー効果」に重点を置いてM&Aを行っており、入りの段階で値段を抑えて失敗するリスクを抑えているのです。

PMIに前向きに関わることでも失敗するリスクを下げ、買収によるシナジーを早めに出現させて買収額を回収しています。

サントリー

2014年1月のサントリーホールディングスによるビーム社の買収も、PMIの成功事例です。

世界のいろいろな地域で両社の強いブランド展開にプラスして、販売網や技術交流などをとおしたシナジー効果が目的でした。これにより、サントリーにおけるウイスキーの販路が世界へ広がり、業績が広がっています。

トップが徹底して現場レベルでのコミュニケーションを図ったことが成功を導いており、ファンクション同士の話し合いで理解が進みシナジーも生じました。ビーム社の独立性を保ち放任することなく進めたことも成功のカギです。

楽天

楽天は、他社があまりM&Aを行っていない2000年代からM&Aを実施し、楽天トラベルや楽天証券などの前身会社を買収しています。

楽天は、インターネット基盤と証券、アパレル、旅行などの分野を結びつけて、売上高を上げました。売上面やコスト面でシナジーを創出し、各分野で成功しています。

各分野のシナジーを上手に発現させて業務範囲を広げたことが成功のポイントです。楽天市場、楽天ブックス、楽天トラベル、楽天証券、楽天銀行など事業を幅広く拡大しています。

KDDI

KDDIはM&Aを前向きに行い、買収によるインフラを整えるクロスセル、スマホのコンテンツを強めるなどの見解でM&Aを実施しています。

KDDIは、既存事業とシナジーを創出することを前提にM&Aを行い、CATV、携帯電話、インターネットなどを通貫したサービスの提供、これらをまとめて割引となるプランの作成で業績を拡大しました。

自社のサービスに幅を持たせ、通信とライフデザインを合わせて事業も広げて、新しい価値への投資も進めています。既存事業とのシナジーやサービスの融合を進めたことが、KDDIの成功につながっているのです。

JT

JTは、1999年5月にRJRIを買収し、2007年4月にGallaherを買収しました。これらは、国際的な競争力を高めるために実施されています。難しい海外のM&Aにおける知見を深めて経験を積み、スケールを広げました。

経験から事前準備も実施でき、短い間にPMIを行ってシナジー効果も早く獲得しています。その結果、海外市場向けの販売本数が高い水準となりました。

PMIの失敗事例

次に、PMIの失敗事例を見ていきましょう。

マイクロソフト

マイクロソフトは、2014年4月にノキア携帯端末事業を買収しました。マイクロソフトは、「ノキアの携帯開発力を得ることで携帯端末の開発促進」「ノキアブランドにおける利用者の獲得」のために買収を行っています。

しかし、携帯端末市場でマイクロソフトの携帯端末シェアは広がらず、iPhoneやアンドロンド端末が市場で人気を集めている状況です。

ノキアブランドは一定数の利用者を保持していたため、ノキアブランドを残してハードウェア事業を継続していればコアな支持者を残せたでしょう。

DeNA

DeNAは、2014年10月に、iemoとペロリを買収しました。iemoを買収することでキュレーション事業を広げて、短い期間で収益が期待できる事業へと拡大することがDeNAの狙いでした。ペロリも買収し、新しい事業構想を具体化して進めたのです。

しかし、ペロリ運営のMERYに盗用疑惑の批判が出て、DeNAの法務部門も警告したのですが、DeNAは問題をそのままにしてM&Aを進めます。

その後、DeNA運営のキュレーションサイトを閉鎖し、MERYも公開を停止しました。急いでM&Aを進めたため、高いKPIが設定されて失敗した事例です。

パナソニック

パナソニックは、2009年12月に三洋電機の株式を得て子会社化しました。これは、両社のノウハウを共有して生まれるシナジーを目的に行われています。

しかし、民生用リチウム電池市場における競争の激化や円高・ウォン安による価格競争のため、期待したシナジー効果を得られていません。そのため、パナソニックは2012年3月期に三洋電機ののれんを減損しました。

当初に見込んでいた両社のノウハウがある技術力の共有によるシナジー創出も予定したシナジーが得られず、人材が流出しています。

ウォルマート

ウォルマートは、2008年6月に西友を買収しました。ウォルマートはこの買収をきっかけとして、日本でのM&Aを促進しシェアを広げることを狙っていましたが、期待した業績の改善とならず、累積赤字となりました。

PMIで価格設定を変更し、安価な商品を販売する戦略でしたが、消費者が低価格に慣れて他の店に顧客を奪われてしまったのです。ウォルマートは2020年11月に、KKRおよび楽天へ西友を売却しています。

みずほ銀行

第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が2002年4月に合併して、みずほ銀行が設立しました。銀行業界はデータの集約により販売コストなどを下げられ、固定コストも削減できます。この合併はこれらのコスト削減が狙いで行われました。

しかし、統合した日に大規模なシステム障害が起こり、銀行は多大な損害を被ってしまいます。前もってシステム移行の準備はされましたがスケジュールが遅れ、直前に必要なテストも実施できずに移行されて行った合併でした。

M&AにおけるPMIの事前知識を得る方法

M&AにおけるPMIの事前知識を得る方法

PMIはM&Aの成否を左右する重要なフェーズです。課題の分野は多岐にわたり、また期間も長期にわたるため、事前に入念な準備が必要となります。

特にこれまでM&Aを実施した経験がない企業は、経営者や経営企画部などに在籍するM&A実務担当者がPMIはどのような流れで進めるべきか、どのような点に留意するべきかなど、事前に知識を得なければなりません。

そのための方法として、主に以下の2点があります。それぞれメリットがあるため、本業との兼ね合いや担当予定の職責を勘案しつつ、企業や担当者に合う方法を選択すると良いでしょう。

  1. セミナーへの参加
  2. 関連書籍の閲読

①セミナーへの参加

M&Aに関するセミナーは、その内容の幅広さから目的に合うものを選択する必要があります。M&Aに関するセミナーはさまざまな開催者によって随所で開かれていますが、PMIの重要性が認識されてきた近年ではPMIに的を絞ったセミナーも増えているのです。

セミナーの開催者

M&Aに関する非常に重要なフェーズについて知識を得る機会なので、実績や信用力がある、または多くの情報を適切かつ正確に発信する企業などが開催するものを選びましょう。

具体的にはインターネットで検索するほか、コンサルティング会社が発刊するメールマガジン内での紹介や新聞広告の確認、またはM&A仲介会社や商工会議所の相談窓口に相談することで効率的に探せます。

セミナーの内容

セミナーでは領域ごとに専門家が招かれ、当該領域での一般的なPMIの進め方や課題、留意すべき点などを説明します。経験談や成功例、失敗例などを語ることもあるでしょう。

セミナー内で、参加者同士やパネラーなどと交流の場が設定されるケースもあり、同志とその場で意気投合して後々頼りにできる人脈づくりに発展することもあります。

セミナーの内容は開催者や登壇者によって異なるため、目的意識を持って探してください。内容が専門的になればなるほど、セミナーは有料になる可能性が高いです。

セミナーに参加するメリット

セミナーに参加するメリットは、経験談を直接聞ける点です。説明者がどのようなM&A案件を手掛けたかを知れば、参加者側も自ずと手触りが感じられ、より鮮明な記憶を実地で生かせます。

セミナー内では、デスクトップでは得られない情報を獲得でき、「ここだけの話」のような有効な情報は、後々大きな影響力を持つでしょう。例えば、経営陣が社内にいつM&Aを開示したか、企業間の人事交流はどのような職務レベルで実施すべきか、などです。

登壇中の説明に関して確認したい点や、参加者がセミナーをつうじて聞きたいことがある場合も、質疑応答の時間などを活用して専門家に直接確認できます。

②関連書籍の閲読

関連書籍の閲読でも、PMIの事前知識が得られます。書籍の閲読による知識獲得のメリットは、その手軽さです。自分のペースで知識を獲得でき、手元に書籍さえあれば急な課題をすぐに解決できることもあります。

昨今、M&AひいてはPMIに対する関心の高まりからPMIをテーマにした書籍が急増しており、以下に紹介するものは、PMIに関して学ぶために適した書籍です。
 

  • M&Aシナジーを実現するPMI: 事業統合を成功へ導く人材マネジメントの実践
  • ポストM&A成功戦略:企業価値を最大化する統合の実践シナリオ
  • 日本型PMIの方法論:中堅・中小企業を成長させるポストM&Aのプロセス

M&Aでどのようなシナジー効果を得たいのか念頭に置き、各課題に対処する必要があります。M&A実行前に書籍の閲読をとおして、目的や統合後における理想の姿をあらためてイメージすることが重要です。

M&Aシナジーを実現するPMI:事業統合を成功へ導く人材マネジメントの実践

実務ガイドブックで、体系的にPMIを解説しています。PMIの実態と課題からPMIの全体像、ハード(組織、人事)とソフト(企業、組織文化)の両面におけるPMIなどが実務を中心に記してあり、事例やケーススタディも交えて具体的に解説している書籍です。

ポストM&A成功戦略: 企業価値を最大化する統合の実践シナリオ

ポストM&AはPMIをさし、M&Aの成立後(ポスト)における成功を戦略的に解説しています。発売以来、長きにわたってPMIを学ぶための本として読み継がれているのでおすすめです。

日本型PMIの方法論:中堅・中小企業を成長させるポストM&Aのプロセス

2019年に発刊された中小企業のPMIという切り口でPMIの実務をまとめています。内容は、実際にM&AのPMIを手掛けた著者の経験と理論が基となっているため、参考になる情報が多いでしょう。

【関連】M&Aセミナー活用のメリット・デメリット​とは?​種類​や注意点を解説
【関連】M&Aおすすめの本・書籍とは?本・書籍で学びたい内容、勉強方法もご紹介

M&AにおけるPMIの資格

M&AにおけるPMIの資格

PMI日本支部では、 PMI資格の受験を行っています。受験でPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)資格を取れば、さまざまな業界で役立てることが可能です。

プロジェクトマネジメントスキルの国際資格として世界中で認知されているため、どの業界でもどこの国でもかなりのアドバンテージとなります。

M&AにおけるPMIのまとめ

M&AにおけるPMIのまとめ

日本のM&AではPMIはなおざりにされがちで、専門家のM&A仲介会社や経営コンサルティング会社でもPMIを軽視するケースがあります。PMIを失敗すれば、M&Aの失敗につながるといえるほど重要なプロセスです。おろそかにせず、早い段階から準備することをおすすめします。

今回の記事をまとめると、以下です。

・PMIとは?
→M&A後の経営統合を進めるプロセス:業務統合の実践、システムやインフラの統合、人と企業文化の統合、などの課題を解決する形で進行

・PMIを成功させるポイントは?
→①指示を出す人間はリーダーシップを持つ
 ②PMIのビジョンと行う意味を明確に共有
 ③PMIをどのように進めるべきかなど、事前知識をセミナーや書籍などから得る

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株式譲渡と事業譲渡の違いは?税金、手続き、メリットについて解説【図解】

M&Aの主な手法は株式譲渡と事業譲渡ですが、両者は手続き・税金・メリット・デメリットなどあらゆる点で違います。本記事では、株式譲渡と事業譲渡の違いについて図解も交えながら解説しています。...

会社売却でかかる税金はいくら?計算方法、税金対策をわかりやすく解説

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会社売却にかかる税金は、株式譲渡・事業譲渡といったスキームによっても違い、株式譲渡の場合は株主が個人か法人かによっても違います。この記事では、会社売却にかかる税金に関して計算方法を解説するととも...

会社を売るタイミングはいつ?業績から最適な売り時を考えて売却しよう!

会社を売るタイミングはいつ?業績から最適な売り時を考えて売却しよう!

M&Aによる会社売却はタイミングが重要で、同じ会社でもタイミングの違いによって売却価格が大きく変わる可能性があります。この記事では、会社売却の適切なタイミング、会社売却のメリットや利益を...

【2021】出版業界のM&A動向と事例9選!会社売却・買収の実績を解説!

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出版業界は、電子書籍の普及と紙媒体の衰退といった大きな変化の渦中にあり、業界再編などを目的としたM&Aが活発です。本記事では、出版業界の最新M&A事例9選を紹介するとともに、出版...

宅配・フードデリバリー・ケータリング業界のM&A動向は?事例や相場も解説【2023年最新】

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本記事では、宅配・フードデリバリー・ケータリング業界のM&A動向や最新事例などを解説します。近年は宅配・フードデリバリー・ケータリング業界が好調を維持するとともに、M&A動向も活...

M&Aの手数料はなぜ高いのか?レーマン方式や支払う費用の相場、計算方法、仲介会社の報酬体系を解説

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昨今、M&Aが年々普及していく一方で、M&Aの手数料の高さがクローズアップされるようになりました。本記事では、M&A仲介会社の手数料が高い理由やレーマン方式・手数料相場、...

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