M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年11月20日更新業種別M&A
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の動向!事例・許認可の承継も解説
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の動向や相場、許認可引き継ぎの注意点を解説します。産業廃棄物処理は企業の事業活動で重要であり、他業界と同様にM&A・事業承継が活発化しています。産業廃棄物業界のM&A・事業承継を検討している方は必見の内容です。
目次
産業廃棄物・環境業界とは
廃棄物処理業は、一般廃棄物処理業、産業廃棄物処理業、その他廃棄物処理業に分類されます。このうち、産業廃棄物処理業は事業活動などで生じた廃棄物の処理を行う業種です。
そのなかには、爆発性や感染性など被害が生ずるおそれのある廃棄物の収集運搬・処分を行う、特別管理産業廃棄物収集運搬業・処分業も含まれます。
近年、さまざまな業界でM&Aが活発化しています。産業廃棄物・環境業界も例外ではありません。事業の強化や新規事業への参入など、さまざまな目的のためにM&Aが行われています。
産業廃棄物を処理する流れ
産業廃棄物は以下の3段階を経て処理されます。また、各段階の処理業務を許認可が必要です。
- 収集運搬業・・・産業廃棄物の収集および運搬を行う
- 中間処理業・・・最終処分前段階、産業廃棄物の減量(減容)化・安定化・安全化を行う
- 最終処分業・・・産業廃棄物を最終処分する
事業などで出た産業廃棄物は収集されたあと、分別されて一時保管されます。収集運搬業に該当するものは、ゴミ収集車での収集や分別・保管業務です。
これらの事業には都道府県の許認可が必要であり、許認可を受けるためには使用する収集車に必要な設備(悪臭防止・飛散防止等の設備)が整っているなど諸条件を満たしている必要があります。
分別・保管された産業廃棄物は、破砕・脱水・中和などの処理によって減量(減容)化や安全化が必要です。この工程を行うのが中間処理業であり、中間処理業許可と中間処理施設設置許可の2つを持つ事業者のみが行うことができます。また、産業廃棄物のなかから再生可能な資源を選別するのも、中間処理業の範囲です。
中間処理された産業廃棄物は、海へ投棄したり地中へ埋めたりすることで最終処分が行われます。なお、産業廃棄物の種類によっては中間処理を行わずに最終処分を行うものも多いです。
産業廃棄物・環境業界の特徴
M&Aを行う際は、業界の特徴や動向を把握しておくことが重要です。ここでは、産業廃棄物・環境業界の特徴を紹介します。
許可制のため、新規参入が難しい
産業廃棄物処理業の事業を行うには許可が必要です。そのため、新規参入が難しい業界といわれます。産業廃棄物・環境業界で再生事業を手がける会社も多く見られるようになりました。
ローカルビジネス
廃棄物処理業を手掛ける企業のほとんどは、限定されたエリアで事業を展開しています。というのは、産業廃棄物は車両で運搬するため、遠方の処理場を利用するケースは少なく、一般的には近場の処理場を利用するためです。ローカルビジネスである産業廃棄物処理業は、商圏エリアの状況が売上等に大きく影響します。
市場の細分化
産業廃棄物処理業は、処理品目・営業エリア・業種区分が細かく分かれているうえ、各々が許認可制となっているため市場が細分化されています。
処理方法や処理品目が違う場合は、同業でも直接的な競合相手とならない点が産業廃棄物業界の特徴です。また、独自ノウハウや技術を持つ企業であれば、競合相手が少ない市場で事業を展開することができます。
固定費が大きい
産業廃棄物は悪臭を放つものも多く、また飛散や流出は事故の原因となるため、収集車には対応設備のついた特殊車両を使用します。
特殊車両は一般車両よりも維持費がかかる場合が多く、産業廃棄物の処理施設や保管場所なども必要なため、企業の設備負担額は大きくなることがほとんどです。
法改正による影響が大きい
産業廃棄物処理業を行う事業者は「廃棄物処理法」に従って、産業廃棄物の処理・保管・運搬などを行わなければなりません。
廃棄物処理法は何度も改正されており、直近では2020年の法改正により電子マニフェストの使用が事業者に対して義務づけられました。法改正の内容によっては、新たに設備投資が必要になるなど、その影響を大きく受けます。
産業廃棄物・環境業界の動向
産業廃棄物の処理は、基本的に需要がなくなることはないため、今後も一定の水準で市場は推移するとの予想です。排出量が減少しても、再生事業などに注力して事業展開を行う会社もあります。
一方で、処分場などをめぐって住民が反対するケースもしばしば問題になります。周辺の住民との対立が深刻化すれば、事業継続は難しいでしょう。特に処分場などの移転や建設においては、反対の声が多く上がる傾向です。
このような動向に対応するためにも環境面での配慮が求められます。より環境に優しい技術が進歩すれば、住民とのトラブルをなくすことにもつながるでしょう。産業廃棄物・環境業界では、新技術に対する取り組みも重要な課題となっています。
産業廃棄物・環境業界の市場規模
環境省「令和4年度環境産業の市場規模推計等委託業務 環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」より
2021年における環境産業の市場規模は全体で108兆908億円であり、2020年から比べ2.3%増加となりました。 2000年は58兆3049億円だったので、20年あまりで約1.7倍へ増加したことがわかります。
また、2021年度における産業廃棄物総排出量(全国)は約3億7100万トンであり、2020年度から約300万トン(実績比△0.9%)の減少となりました。
参考:環境省「令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」
参考:環境省「 令和4年度環境産業の市場規模推計等委託業務 環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」
環境省「令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」より
産業廃棄物・環境業界は大規模災害の影響を大きく受けることはありますが、継続的に大きく市場規模が伸びることは見込めません。そのため、資本力のある大手企業は、処理施設の販売などで海外進出を目指すケースも増えると予想されます。
産業廃棄物・環境業界の課題・展望
産業廃棄物・環境業界は中小事業者が多く、競争は激化しています。人材確保も困難であり、労働環境・雇用条件がよいとはいえないがゆえ、なかなか人材流出を抑えられない状況です。
業界の課題としては、労働条件の悪化に加え、不法投棄問題・労働災害発生問題・技術・技能の断絶などが挙げられます。ネガティブなイメージも強い業界でもあるため、これらの課題はまだ改善できているとはいえません。
また、業界では業績が向上している事業者と下降している事業者の二極化が進んでおり、将来的には成長戦略などの方策が必要になると考えられます。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の動向
本章では、産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の動向を紹介します。
事業エリアの拡大
都道府県(地方自治体)の許認可がなければ産業廃棄物処理業を行うことはできませんが、適切な事業者数を維持する目的から許認可を申請してもなかなかおりないのが実状です。
そのため、産業廃棄物処理業界では、許認可の引継ぎを目的にM&A・事業承継が行われるケースが多くみられます。買い手側にとっては、自社が取得していない許認可を保有する企業を取得することで、事業規模やエリアの拡大を図ることができ、同時に従業員を確保できる点がメリットです。
技術力強化
産業廃棄物の中間処理業を行う企業は独自技術を有していることが多く、たとえばプラスチック廃棄物を土へ再生する技術などが挙げられます。
業界内では各社が独自技術を生かして資源を再生する流れが目立っており、技術力あるいは開発力の強化を目的にM&Aを行うケースも多いです。さらに最近では、環境関連業の企業と産業廃棄物処理業の企業とのM&Aもみられます。
隣接する業種でのM&A・事業承継
産業廃棄物処理業界は資源循環事業などと隣接関係にあり、シナジー効果が見込まれる隣接事業者とのM&A・事業承継も多く行われています。
そのほか、産業廃棄物の収集運搬事業者と中間処理事業者とのM&A・事業承継など、産業廃棄物の処理工程の一貫体制構築を目指すケースも多いです。
固定費・維持費の負担が大きい産業廃棄物業界では、今後も業務の効率化や合理化を目指すM&A・事業承継が増えるものと考えられます。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継メリット
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継では、売り手・買い手双方に多くのメリットがあります。M&Aの際は想定されるメリットを考えたうえで相手先探しを行うことが重要です。ここでは売り手・買い手それぞれのメリットを紹介します。
売り手側のメリット
産業廃棄物・環境業界のM&Aで売り手側が得られるメリットは、以下の3つが挙げられます。
従業員の雇用継続
何らかの理由により事業継続を断念した場合、廃業という選択をしなければなりません。その場合は従業員は雇用を失いますが、M&Aで自社あるいは事業を売却すれば、従業員の雇用を継続することができます。
産業廃棄物・環境関連業界で技能を持つ従業員を引き継ぐことは、買い手にとってもメリットであるケースが多いです。
稼働率の安定化
事業を成長させ売上拡大を図るためには、業務効率の向上や稼働率の安定化が不可欠ですが、自社のリソースのみでは限界があるケースも多いです。
M&Aでの自社あるいは事業を売却すれば、M&A後は買い手企業のリソースを相互活用できるようになり、自社単独では難しかった業務効率の向上や稼働率の安定化をスムーズに行うことができます。
個人保証の解消
融資を受けた際に経営者が個人保証を負っている場合、子などの親族への事業承継が難しいケースも多いです。もし廃業という選択をしても個人保証はそのまま残るため、金銭的な面だけでなく精神的な負担も非常に大きくなります。
ですが、M&Aによる売却の場合、買い手企業が個人保証も引き継いでくれるケースが多いです。金融機関など融資元での手続きは必要ですが、個人保証の解消は売り手企業の経営者にとって大きなメリットとなります。
買い手側のメリット
産業廃棄物・環境業界のM&Aにおける買い手側のメリットは、主に以下の4つがあります。
優秀な人材の獲得
特に産業廃棄物業界は労働環境のイメージなどもあり、人材不足の解消が課題となっている企業も多くみられます。
安定的に事業を行うためには十分な人材を確保していなければなりませんが、特に専門技能を持つ人材は一度に獲得することが難しいため、M&Aで売り手企業の優秀な人材を確保できることは買い手企業の大きなメリットです。
事業拡大
先に述べたように、廃棄物処理業はローカルビジネスであるため事業エリアの拡大が難しいことも多い業界です。
事業エリアの拡大は売上に直結する要素ですが、M&Aで自社が未進出のエリアで事業を展開する同業他社を取得すれば、効率的に事業を拡大することができます。また、売り手側の実績などから将来の事業展開を予測しやすいのもメリットといえるでしょう。
技術力・ノウハウの獲得
産業廃棄物・環境関連業界は、保有している設備・技術力・ノウハウによって業績が大きく変わるともいわれます。
M&Aを活用すれば、売り手側の保有設備や培ってきたノウハウを取得できるため、自社単独で進めるよりもスムーズな事業拡大や成長に期待できる点がメリットです。
また、売り手側・買い手側のノウハウを共有することで新しい技術力の開発につなげることもできます。
シナジー効果
M&Aによるシナジー効果の創出は、買い手側の目的であることも多く、十分に発揮されれば事業拡大や売上向上などを見込むことが可能です。
買い手企業のメリットとしては、同業種間でのM&Aではコスト削減や処理技術向上、隣接する業種では事業ノウハウの活用による業容拡大などがあります。
シナジー効果が十分に発揮されれば、事業成長にかかるスピードを加速させることができるため、買い手にとっては非常に大きなメリットといえるでしょう。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継を成功させるポイント
ここでは、産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継における成功のポイントを紹介していきます。
売却を行うケース
産業廃棄物業界で自社あるいは事業の売却を検討している場合、まず交渉相手を探さなければなりませんが、以下のような強み・特徴のある企業であれば満足度の高いM&Aが実現できる可能性がより高まります。
アピールポイントがあるか
売却をする際は、相手企業に自社の魅力をしっかりと伝えることが大事です。自社の事業内容や技術、事業エリアなどに魅力があれば、多くの企業が買収に名乗り出る可能性が高まり、買い手候補が多ければ自社に合った企業もみつかりやすくなります。
新技術・特許を有している
近年は環境における技術などのニーズも高まっています。売り手側が独自の技術や特許などの強みを持っていれば、買い手のニーズとマッチし、買い手が積極的にアプローチしてくる可能性も高まります。
保有している設備も重要
産業廃棄物・環境業界で使用する設備は、他の業界で使用する設備よりも比較的早く新調しなくてはなりません。産業廃棄物・環境業界のM&Aにおいては、買い手が売り手の設備を重要視する傾向が強いです。
新しい設備を有していることも売り手の大きな魅力となり、M&Aが成功しやすくなります。
買収を行うケース
同業者同士で買収を行う場合、双方のノウハウや技術を活かすことにより、事業の強化や拡大、サービス体制の強化につなげられます。買収を成功させるには、強化したい事業、参入したい分野、取り込みたい技術などを整理しておきましょう。
これらの点がはっきりしていれば、自社のニーズに沿った相手企業が見つかりやすくなります。シナジー効果の高いM&Aの実現のためにも、業界動向なども踏まえて目的を整理しておくことが大切です。
許認可の引き継ぎについて確認しておく
M&A・事業承継では、産業廃棄物処分業許可は引き継げませんが、産業廃棄物施設許可は引き継ぎ可能です。
産業廃棄物処理施設の設置者が、譲渡や賃貸、法人の合併や分割などを通じて地位を引き継ぐ場合、新たな設置者がその施設の設置および維持管理を適切かつ継続的に行えるかどうかが審査されます。
この審査では、施設の設置や運用に関する計画が適切に実施され、維持管理が確実に行われる能力が求められます。
産業廃棄物処理施設に関する申請に必要な主要書類をご案内します。ただし、具体的な要件や書式は申請先の行政機関によって異なる場合がありますので、あくまで参考情報としてご確認ください。
《法人が申請者の場合》
- 技術的能力に関する書類
- 資金計画に関する書類
- 財務関連の資料
- 法人関連の書類
- 役員関連の書類
- 主要株主・出資者の情報
- 政令で定める使用人に関する書類
以上の書類を適切に準備し、審査要件を満たすようご確認ください。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継で注意したいポイント
M&A・事業承継にあたっての注意点も整理しておきましょう。ここでは、特に注意すべきポイントを紹介します。
透明性の高い経営
買い手側企業にとって、売り手企業が透明性の高い経営を行っているかという点は、M&Aにおいて必ず確認すべき事項のひとつです。
特に産業廃棄物処理業の場合、法規制に沿った経営がされているか、環境問題への配慮がなされているかなどを現地調査を行っておく必要もあります。
売り手企業が中間処理業や最終処理業を行っている場合は、環境問題との関わりが深いことも多いため特に注意が必要です。
許認可・人材・設備の確認
また、買い手企業は売り手企業の許認可や設備の状態も確認しておくことが重要です。許認可制である産業廃棄物処理業では、売り手企業が法律で定められた基準を満たしているかを必ず確認しましょう。
また、処理施設や設備の規格および耐久年数、特殊車両を保有している場合はメンテナンス状態や耐久年数の確認も必要です。
人材確保が目的の場合は、売り手企業の従業員の業歴・保有資格・年齢構成なども確認し、M&A後の継続勤務が可能かどうかも確認しておくようにしましょう。
目的を明確にすること
M&Aを実行するにあたっては、最初に目的を明確にしておく必要があります。目的がはっきりしていれば、具体的なM&A戦略の策定を進め、自社にとって最適なM&Aスキームも検討できます。
目的がはっきりしないままM&Aを進めると、たとえM&Aを実現できても、思っていた効果が得られない事態になりかねません。このような事態を避けるためにも、M&Aの目的を明確にしたうえで、その目的に沿った方法でM&Aを進める必要があるのです。
対象企業は丁寧に選ぶこと
売却によって経営権を移転させる場合、買収によって企業を傘下に入れる場合など、M&Aを行う目的はさまざまです。それぞれの目的に応じて、選ぶ企業は信頼できるところでなければなりません。
対象企業の事業内容や方針などを検討したうえで、自社に合うかどうかを慎重に判断することが大切です。ふさわしい対象企業が見つかったら、アプローチを早めに行いましょう。アプローチが早ければ、他の企業に先を越されるリスクも少なくなります。
専門家のサポートを受ける
M&Aの手続きにおいては、専門家のサポートを受けるのがベストです。さきほどもお伝えしましたが、M&Aは法務や税務、財務といった専門知識のほか、対象企業との交渉力も必要になります。
自社だけでこれらの手続きを進めることは難しく、なかなかスムーズに進められません。M&Aの交渉や手続きをスムーズに進めるためにも、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の案件例をご紹介します。
【高収益/無借金経営】東北地方の産業廃棄物収集運搬・中間処理業
産業廃棄物収集運搬~中間処理を一気通貫して対応しており、高い利益率を実現しています。取引先とも長年にわたる信頼関係が構築されており、今後も安定した受注を見込んでいます。
エリア | 東北 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 3億5,000万円(応相談) |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【EBITDA100M】中国・四国地方の産業廃棄物処理業
解体工事から収集運搬、中間処理まで一貫して対応しています。解体工事のほか土木工事、舗装工事、管工事など幅広く対応可能です。
エリア | 中国・四国 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 戦略の見直し |
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の事例
続いて、産業廃棄物・環境業界におけるM&A・事業承継の事例を紹介します。
成友興業による栄興産業の子会社化
成友興業は、栄興産業の全株式を取得し、子会社化を決定しました。成友興業は建設工事や産業廃棄物処理、汚染土壌処理、再生建設資材の生産販売を手掛け、栄興産業は産業廃棄物処理業と再生砕石販売を行っています。
成友興業は、持続可能な企業を目指し東京都内で中間処理事業を展開してきました。
今回のM&Aは、23区および多摩地域での既存事業の成長を進めるとともに、首都圏全体への事業拡大を目的とした戦略の一環です。また、事業承継機会を活用し、地域展開を加速させることも狙いとしています。
成友興業によるエコワスプラントの子会社化
成友興業は、エコワスプラントを株式交付子会社とする株式交付を決定しました。成友興業は建設工事や廃棄物処理事業を展開し、エコワスプラントは産業廃棄物の中間処理を行っています。
この統合により、成友興業とエコワスプラントの取引先であるゼネコンやハウスメーカーを活用して市場を拡大するとともに、建設混合廃棄物の一括受注が可能になります。
また、中間処理の拡充や資源循環の促進により、都市更新に伴う廃棄物処理で新たな価値を提供し、成友興業の理念である再資源化の推進を加速させる狙いがあります。
環境のミカタによるシーピーセンターの子会社化
2023年6月、環境のミカタは、愛知県のシーピーセンターの全発行済み株式を取得し、同社を子会社化しました。環境のミカタは産業廃棄物と一般廃棄物の収集運搬・処理を主軸としており、そのほかにガソリンスタンド事業や廃プラスチックのリサイクルや有価買取業なども手掛けています。
子会社となったシーピーセンターは、パソコンやOA機器のリサイクル・リユース事業を手掛ける企業です。環境のミカタはシーピーセンターの子会社化によって愛知県エリアでの事業拡大と、成長分野の事業を新たに加えることで業容拡大を図るとしています。
ダイセキ環境ソリューションによる杉本商事の子会社化
2023年4月、ダイセキ環境ソリューションは、滋賀県にある杉本商事の全株式を取得して子会社化しました。また本件と同時に、戦略的な資本業務提携を結んだことも発表されています。
土壌汚染対策事業を手掛けるダイセキ環境ソリューションは、汚染土壌調査から浄化処理・資源リサイクルをワンストップで行っており、高い技術力を強みとしています。子会社となった杉本商事は、一般廃棄物や産業廃棄物の運搬・処理業を滋賀県北部エリアを中心に手掛ける企業です。
ダイセキ環境ソリューションは、杉本商事の子会社化および同社との協業によって提供可能な解決策の幅を広げるとし、ノウハウ共有による再生エネルギーなど新規事業立ち上げも視野に入れるとしています。
TREホールディングスによるJWガラスリサイクルの子会社化
TREホールディングスは、江東区のJWガラスリサイクルの全発行済株式を取得して同社を子会社化すると発表しました。JWガラスリサイクルはTREホールディングスの連結子会社タケエイの完全子会社です。
TREホールディングスは、廃棄物処理業・資源リサイクル事業・再資源化事業・再生可能エネルギー事業などをグループで展開しています。
今回子会社となったJWガラスリサイクルは、ガラス屑の再資源化処理および集荷・販売を手掛ける企業で、2022年5月にタケエイの子会社となった企業です。
TREホールディングスはガラスリサイクル需要を大きなビジネスチャンスと考えており、JWガラスリサイクルを戦略的な子会社に位置付ける目的で本譲受を決定しました。なお、本M&AによってJWガラスリサイクルは「TREガラス株式会社」へと社名変更することも併せて発表しています。
リファインバースグループによるコネクションの子会社化
2022年7月、リファインバースグループは、足立区にあるコネクションの全発行済み株式を取得して子会社化しました、リファインバースグループは、廃棄物を資源や素材へと再生・製造する事業をに新しく新たな資源や素材を製造する事業を手掛ける企業です。
子会社となったコネクションは、産業廃棄物の収集運搬および処分業を行っており、中間処理施設を東京都内に有しています。現在、リファインバースグループは、プラスチックケミカル再生利用向けの原料調達および供給の事業化を進めており、本M&Aもその一環で行われたものです。
リファインバースグループはコネクションの事業拠点を活有効用し、廃プラスチックの回収および資源化などの課題に対処していくとともに業務のキャパシティ拡大を図るとしています。
エンビプロHDによる富士見BMSの子会社化
2021年10月、エンビプロホールディングスは、連結子会社であるエコネコルを通じて、富士見BMSの全株式を取得し、子会社化すると発表しました。富士見BMSは、産業廃棄物から製紙原料・バイオマス燃料を製造しています。
エンビプロHDは、金属やプラスチックやリチウムイオン電池などのリサイクル事業、リユース事業を中核に、グローバルな事業を展開しており、富士見BMSを傘下とすることで業務や経営管理の効率化につなげていくとの考えです。
ダイキアクシスによるアルミ工房萩尾の完全子会社化
2021年10月、ダイキアクシスは、アルミ工房萩尾の全株式を取得し、完全子会社化しました。新居浜市に本社を構えるアルミ工房萩尾は、住宅サッシ・エクステリア建材の施工・販売を手掛ける企業です。
ダイキアクシスは、水回り関係を中心とした住設機器をゼネコン、ハウスメーカーなどに販売する住宅機器関連事業を主軸としています。
ダイキアクシスはこのM&Aによってエリア拡大を進め、水回り関係だけでなく住宅サッシやエクステリア建材なども提案することでより高い商材・サービスの提供が可能となり、シナジー効果発揮も見込んでいます。
ファンファーレによる資金調達の実施
2021年9月、ファンファーレはシンガポールのALL STAR SAAS FUND2 PTE. LTDを引受先として、資金調達を実施しました。調達金額は、総額で約1.5億円です。
ファンファーレは、AI導入で産業廃棄物の回収業務を効率化しています。産業廃棄物業界における業務理解に強みを持ち、業界内の認知度が上がったため、プロダクトローンチ後も契約件数が増え続けています。
こうした背景から、業界独自の機能や要件に応えるための開発組織の拡充やカスタマーサクセス体制の構築や強化、DX促進に資金をあてる予定としています。
アシードHDによるロジックイノベーションの子会社化
2021年7月、アシードホールディングスは、岡山のロジックイノベーションの全株式を取得し、子会社化しました。ロジックイノベーションは、倉庫を活用した物流アウトソーシング・物流代行や、食品廃棄物・廃プラスチック・木屑などのリサイクル事業を手掛けています。
アシードホールディングスは、飲料分野を事業としているグループ企業の持株会社です。ロジックイノベーションを子会社化とすることでグループのネットワークを活用できるようになり、より付加価値の高い物流サービスの構築が可能になるとしています。
アミタホールディングスと大平洋金属との資本業務提携
2021年4月、アミタホールディングスと大平洋金属は資本業務提携を契約すると発表しました。アミタホールディングスはグループとして企業の環境部門業務支援や環境リスク低減・CSR活動支援、環境マネジメント業務の委託業務などを手掛けています。
一方の大平洋金属は、フェロニッケル(鉄とニッケルの合金)の精錬やスラグ加工品の製造業のほか、廃棄物リサイクル事業を手掛ける企業です。
今回の資本業務提携により、両社は互いのノウハウやリソースを共有してシナジーを発揮させ、企業価値向上を目指すとしています。
ヤマダHDによる三久の子会社化
2021年4月、ヤマダホールディングスは、茨城県の三久の株式を全て取得し、子会社化しました。ヤマダHDグループは、主力である家電販売をはじめとして、住宅や家具・インテリア、リフォーム、不動産、金融などの事業を展開しています。
三久は、産業廃棄物処分や産業廃棄物収集運搬、一般廃棄物処分事業を行っています。ヤマダHDグループは、「循環型社会の構築と地球環境の保全」に向けた取り組みを、さらに推進できると考え、このM&Aに至りました。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継の相場
産業廃棄物・環境業界では、大手企業のM&Aから中小企業のM&Aまで規模はさまざまです。一概に相場や費用を把握することは難しいといえます。さまざまなM&A・事業承継の事例を検討し、自社の状況に似たものは徹底的に分析して相場や費用の目安をつけておくとよいでしょう。
売却の際、自社にどのくらいの価値があるのかは、専門家に依頼することで算定できます。相手探しや交渉の前に、自社の企業価値について専門家に相談してみましょう。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継時におすすめの相談先
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
最近では、金融機関がM&A支援に特化した部門を設立する動きが活発化しています。特に投資銀行や大手メガバンクは、資金調達や戦略立案を含む幅広いサービスを提供し、取引全体をスムーズに進めるための専門家として重要な役割を果たしています。
この支援を活用することで、企業は事業承継や資金確保といった複雑な課題を効率的に解決できるだけでなく、専門的な助言を得ることでM&Aの成功率を高めることができます。
一方で、これらの金融機関は大型案件を優先する傾向があるため、中小企業が十分な支援を受けられないこともあります。そのため、自社の規模やニーズに合った支援先を慎重に選ぶ必要があります。
また、サービスにかかる費用が高額になる場合があるため、事前に詳細な料金を確認し、費用対効果を見極めることが重要です。
公的機関
最近では、事業承継やM&Aを支援するための公的サービスが急速に充実しています。全国47都道府県に展開されている「事業承継・引継ぎ支援センター」は、後継者不足に悩む中小企業を対象に、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイスを行う無料窓口として機能しています。
また、企業同士を結びつけるマッチングサービスも提供しており、これにより地方企業も専門的なサポートを受けやすい環境が整っています。
さらに、個人事業主に対する支援体制も強化されており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家を紹介してもらうことも可能です。ただし、民間の仲介会社と比べて、対応の迅速さや柔軟性に欠ける場合があるため、利用する際はその点を考慮する必要があります。
このような公的機関は、事業承継やM&Aを検討する企業にとって、信頼できる選択肢として活用する価値があります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収や売却をスムーズに進めるための多岐にわたるサポートを行う専門機関です。
売却を希望する企業と買収を検討する企業の間で、適切な取引先を見つけるだけでなく、交渉の支援や進捗管理、企業価値の査定、契約書作成といった実務も担い、取引全体が円滑に進むよう調整役を務めます。
特に仲介会社の強みは、幅広いネットワークを活用して、適切な取引相手を迅速に見つける能力にあります。この点は、M&Aの成功率を大幅に向上させる重要な要素です。
また、M&A初心者の企業に対しても、実務的で分かりやすいアドバイスを提供し、安心して取引を進められる環境を整えます。
一方で、仲介会社を利用する際には、着手金や中間報酬などのコストが発生するケースが多いため、事前に料金体系をしっかり確認する必要があります。コストを抑えたい場合は、成功報酬型の仲介会社を選ぶことで、費用負担を軽減しながら必要な支援を受けることが可能です。
産業廃棄物・環境業界のM&A・事業承継まとめ
産業廃棄物の処理は、さまざまな企業が事業活動を行ううえで非常に重要です。その重要性に加え、環境問題に対する意識も高まっているという点が、産業廃棄物・環境業界の特徴でもあります。
こうした背景もあり、再生事業や再資源化技術などの重要性も高まっています。産業廃棄物処理業と環境事業が、M&Aによってより密接につながるケースが見られるわけです。
最近の産業廃棄物・環境業界では、環境に関する新しい技術などの取り込みを目的としてM&A・事業承継のが行われています。環境事業も含めた新分野への参入を目的として、M&Aを検討する企業も増えており、今後はM&A・事業承継の事例が多様化することも考えられます。
産業廃棄物・環境業界でのM&A・事業承継を考える際には、幅広い事例を分析しつつ、業界の動向も踏まえて検討を進めることが重要です。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。