M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年9月13日更新都道府県別M&A
秋田県の事業承継・M&A案件例!事業承継・引継ぎ支援センターの取組も解説
秋田県は社長の平均年齢が全国一高齢で、後継者不在率も高く、事業承継問題は大きな課題です。秋田県の経済停滞を招かないために国・自治体・関連民間機関が連携し総力をあげて実施している事業承継・M&Aの支援事業を確認しましょう。
目次
秋田県の産業に見られる特徴
秋田県では、電子部品やデバイス産業が大きな割合を占めており、特に本荘・由利地域を中心にこれらの産業が集積し、県内の製造業を牽引しています。
近年では、鉱山技術を活かした環境・リサイクル産業の集積が進むほか、医療や医薬品分野での企業進出が見られ、さらに自動車や航空機分野への県内企業の参入も進展しています。秋田県は、これらの産業を支えるために5つの産業集積地域を設定し、企業の立地を支援しています。
一方、県内の経済状況を見ると、個人消費は回復が一旦落ち着いた状態にあり、製造業やサービス業もやや低調な動きが続いている状況です。
参考:秋田県「様々な業種の企業が集積」
秋田県における事業承継・M&Aの動向
続いて、秋田県における事業承継・M&Aの動向を解説します。
秋田県企業の後継者不在率
2023年の秋田県における「後継者不在率」は70.0%に達し、全国平均を16.1ポイント上回る高い水準が続いています。調査対象となった全業種1,889社のうち、1,323社が後継者が「いない」または「未定」と回答し、不在率は前年から0.1ポイント上昇しました。この状態が続く中、県内企業の約7割が後継者不在の状況にあります。
2018年と2023年の後継者状況を比較できる県内企業948社を分析した結果、14.8%の企業が新たに後継者を決定していました。具体的には、6.2%の企業が事業承継後に後任者を決定し、8.6%の企業が事業承継前に新たな後継者を策定しました。一方で、2018年時点で後継者候補がいたにもかかわらず、2023年には不在となった企業は全体の2.3%にのぼりました。
参考:帝国データバンク「秋田県内企業「後継者不在率」動向調査(2023 年)」
秋田県企業の休廃業件数
2023年に秋田県で休業や廃業、解散を行った企業や個人事業主は356件に達し、前年の323件から10.2%増加しました。これにより、全体の約3%の企業が市場から退出したことになります。4年ぶりに前年を上回る結果となりました。
2023年の休廃業件数は、前年と比べて20%以上増加した企業倒産(法的整理)に連動して増加しています。これまで、中小企業は持続化給付金や雇用調整助成金などの支援策により、コロナ禍の厳しい状況を乗り越えてきましたが、2023年にはこれらの支援策が段階的に縮小されました。
それに加えて、電気代や人件費の上昇、人手不足といった経営環境の悪化が重なり、経営を続けることが難しくなった企業が「事業継続か廃業か」の決断を迫られ、多くの企業が経営を断念せざるを得なかったと考えられます。
参考:帝国データバンク「秋田県内企業「休廃業・解散」動向調査(2023)」
秋田県企業のM&A件数
秋田県では、後継者不足や休廃業の増加を背景に、M&Aの件数が増加傾向にあります。2022年には、県内で実施されたM&Aは合計8件で、その内訳は、地域内同士の取引が3件、地域内から地域外への取引が1件、そして地域外から地域内への取引が4件となっています。
秋田県近郊の事業承継・M&A案件例
ここでは、弊社M&A総合研究所が取り扱っている秋田県近郊の事業承継・M&A案件例をご紹介します。
【東北地方/建設機械の販売・修理・レンタル業】地域密着の業歴50年以上の老舗業者
地域密着で業歴50年以上の実績があり、当地では知名度高い老舗業者です。ベルト、ホース、エンジン、足回り、溶接、法定検査等、自社販売以外の機械・装置でも修理対応可能です。
エリア | 東北 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 5000万円〜1億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【東北】施工管理技士 / 建設系人材派遣業
地元の大手建設会社への取引をメインに行う、建設系人材派遣会社です。施工管理技士や、事務等の派遣業を手掛けています。
エリア | 東北 |
売上高 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 5000万円〜1億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【業歴20年以上】東北地方の介護福祉施設運営
医療機関・ケアマネジャーによる紹介、口コミ等で利用者を確保しています。有資格者が多数在籍しており、幅広いサービスを提供可能です。
エリア | 東北 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継)、戦略の見直し |
秋田県近郊の事業承継・M&A事例
秋田県近郊の代表的な事業承継・M&A事例を紹介します。
三菱化工機による東総の事業承継・M&A
2024年5月31日、三菱化工機は、三菱マテリアルテクノから東総の全株式を取得するため、株式譲渡契約を締結しました。三菱化工機はプラントや環境設備の設計・製作を手掛けており、東総はFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製品を製造・販売しています。
今回の株式取得により、三菱化工機は、東総との協業を通じてプラント建設分野での売上増加やコスト削減を図り、FRP製品を活用した装置開発に取り組むことで、成長分野での競争力を強化することを目指します。
また、東総の公共維持管理事業を活かし、安定した収益を見込むとともに、三菱化工機のモノづくりの知見を活用して生産管理・品質管理の向上を図る予定です。
DOWAメタルマインによる秋田製錬の事業承継・M&A
2023年11月17日、DOWAホールディングスの子会社であるDOWAメタルマインは、住友金属鉱山が保有する秋田製錬の全株式を譲り受け、秋田製錬を完全子会社化することに合意しました。
DOWAホールディングスは環境・リサイクル事業や製錬事業を展開しています。秋田製錬の亜鉛製錬事業を取り込み、グループ全体での連携を強化しながら、亜鉛の安定供給と国際競争力の強化を図ることを目指します。
日本酒類販売による秋田県酒類卸の事業承継・M&A
2023年6月8日、日本酒類販売は、秋田県酒類卸の発行済株式の一部を取得し、日本酒類販売の社員が秋田県酒類卸の取締役候補として合意されました。日本酒類販売は酒類や食料品の売買や輸出入を行い、秋田県酒類卸は秋田県内最大の酒類卸会社です。
この提携により、両社は流通機能の相互補完と関係強化を進め、地域と全国をつなぐ食文化の発展に寄与することを目指しています。
事業承継・M&A時におすすめの相談先
秋田県での事業承継・M&A時におすすめの相談先を紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設置する事例が増加しています。特に、投資銀行やメガバンクがファイナンシャルアドバイザー(FA)として重要な役割を担うことが多く見られます。
M&Aを進める際、金融機関は欠かせない存在であり、特に買収側では資金調達のために金融機関との協議が重要です。通常、既存の取引がある金融機関が最初の相談先となることが多いです。
金融機関を活用する最大の利点は、資金調達に関する専門的な助言が得られることです。例えば、事業承継時に親族や従業員が後継者となる場合、株式取得に必要な資金調達に金融機関のサポートが役立ちます。
さらに、M&Aに特化した部署や専門家と連携する金融機関も多く、適切な専門家を紹介してもらえることがあります。
ただし、大手金融機関は大規模なM&A案件を主に取り扱う傾向があり、中小規模案件には対応しないことがあります。また、多くが仲介ではなくアドバイザリー形式での支援を行うため、報酬が高額になる点がデメリットです。
公的機関
近年、公的機関でも事業承継やM&Aに関する相談が可能になっています。例えば、「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業の後継者問題を解決するための公的な相談窓口です。
このセンターでは、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイスに加えて、企業間のマッチングサービスも提供しています。2021年4月に設立され、全国各地のセンターで専門家が無料で相談に応じ、中小企業の事業承継問題に対応しています。
全国47都道府県に窓口があるため、地方企業でも手軽に利用できるのが大きな利点です。国が運営しているため、無料で公正なアドバイスが受けられ、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介も行っています。また、個人事業主の事業承継にも対応しています。
一方で、公的機関ゆえに対応スピードに制約があることや、民間のM&A仲介会社に比べてサポート実績やサービス内容で劣る場合がある点はデメリットとなる可能性があります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収や売却を専門にサポートする業者で、売り手・買い手双方の立場を調整し、交渉を進めていきます。初期の相談から、企業の選定、スケジュール管理、企業評価、書類作成まで、M&Aの全プロセスを一貫して支援します。
仲介会社の役割は、売り手と買い手の要望を調整し、双方にとって最適な取引条件を見つけ出すことです。これにより、スムーズにM&Aが進行しやすくなります。
特に多くの候補企業の中から適切な相手を見つけることができるのが、仲介会社の強みです。M&Aに不慣れな企業でも、具体的なアドバイスを受けながら、安心して取引を進められるのが大きなメリットです。
ただし、一部の仲介会社では、手数料や中間金がかかる場合もあります。コストを抑えたい場合は、成功報酬制を採用している企業を選ぶのが賢明です。
秋田県の公的事業承継支援
全国的な事業承継問題解決に向けて、国および各自治体は数年前から各種の事業承継支援施策を開始しました。その中心的存在が、自治体ごとに組成された事業承継ネットワークです。秋田県でも秋田県独自の体制により、秋田県事業承継ネットワークが構築されています。
秋田県における公的事業承継支援内容の紹介として、秋田県事業承継ネットワークの構成機関詳細と、構成機関が実施している事業承継支援の代表的な実例を見てみましょう。
秋田県事業承継・引継ぎ支援センター
秋田県事業承継・引継ぎ支援センターは、秋田県内で起業を目指す人や経営意欲のある人々(Aターン希望者)と後継者のいない事業主をつなぎ、事業の引継ぎを支援しています。
後継者のいない事業主にとっては、事業を継続することによって雇用を確保し、経営資源を有効活用し、地域経済への貢献を果たせるようになります。
一方で、起業家たちは顧客や仕入先、店舗などの経営資源を引き継げ、リスクを最小限に抑えることが可能です。知名度・ノウハウ・長年にわたって蓄積された知識など、目に見えない資産もスムーズに引き継げます。
経営意欲のあるAターン希望者にとって、この支援センターは単なる雇用ではなく、後継者として事業家や経営者としての道を選ぶことが可能です。事業に詳しい経験豊富な事業主からのアドバイスを受けながら起業できます。
以上のように、秋田県事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者不在の事業主や起業家にとって貴重な支援組織です。相談は無料なので、
気軽に利用できます。
秋田県事業承継ネットワーク
秋田県事業承継ネットワークを構成する支援機関は全46機関です。以下にその全てを掲示します。
【国および県内関係機関】
- 経済産業省東北経済産業局
- 財務省東北財務局秋田財務事務所
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構東北本部
- 秋田県産業労働部産業政策課
- 公益財団法人あきた企業活性化センター
- 秋田県よろず支援拠点
- 秋田県事業承継・引継ぎ支援センター(中小企業庁委託事業)
- 秋田県中小企業再生支援協議会
【商工団体】
- 秋田県商工会連合会
- 秋田県商工会議所連合会
- 秋田県中小企業団体中央会
- 秋田県内商工会(全21会)
- 秋田県内商工会議所(全6所)
【金融機関および保証協会】
- 秋田銀行
- 北都銀行
- 秋田信用金庫
- 羽後信用金庫
- 秋田県信用組合
- 日本政策金融公庫
- 商工組合中央金庫秋田支店
- 秋田県信用保証協会
【その他】
- 地域経済活性化支援機構
秋田県事業承継ネットワーク構成機関による支援事例
秋田県事業承継ネットワークの46構成機関は、それぞれが役割を持ち事業承継支援を連携しながら実施しています。基本的に事業承継セミナーなどは、各機関が単独または共催で随時行っていますが、各機関が独自に行う事業承継支援も特徴的です。
その全ては紹介しきれませんので、代表的な取り組みをピックアップして掲示します。
秋田県商工会連合会の事業承継支援事例
秋田県商工会連合会の場合は、独自に「秋田県事業承継相談センター」を2018(平成30)年7月に開設しました。場所は秋田県商工会連合会事務所内です。地域の中小企業にとって、最も身近な存在の1つである商工会ならば、事業承継の悩みを訴えやすいかもしれません。
秋田県事業承継相談センター独自の取り組みとして、後継者育成塾などの主催を行っています。
秋田県信用組合の事業承継支援事例
秋田県信用組合は、2017(平成29)年12月、事業承継・M&Aマーケット「TRANBI」を運営する東京のアストラッドと業務提携を結びました。この提携により、秋田県信用組合は事業承継問題を抱える顧客に対し、TRANBIのネットワークを活用したM&Aによる事業承継機会を仲介する狙いです。
秋田銀行の事業承継支援事例
秋田銀行が中心となり、秋田市、秋田県信用保証協会、ゆうちょ銀行、辻・本郷ビジネスコンサルティングとともに組合員として出資する地域活性化ファンドが、2019(令和元)年11月に設立されました。当然ながら事業承継支援もファンドの目的に組み込まれています。
各機関の出資額は秋田市の5千万円以外は非公表ですが、総額3億円のファンドです。1件あたり3千万を目安に資金提供する方針となっています。
秋田県の事業承継支援事例
秋田県は、秋田県独自の事業承継向け資金融資を実施しています。融資枠は最大1億円(条件つきで2億円)ですが、商工会議所または商工会の推薦が必要です。秋田県産業労働部産業政策課団体・金融班が問い合わせ窓口になっています。
秋田県の事業承継・M&Aまとめ
秋田県においては、中小企業の事業承継問題への危機意識は官民ともに高まっており、それを解決すべく各種の公的事業承継支援施策も打たれています。しかし、制度は利用しなければ生かせません。経営者自身が少し公的な視点を持って、事業承継問題に望む姿勢が肝要です。
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