M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年12月31日更新業種別M&A
障害者施設・就労支援施設のM&A・事業承継の現状は?案件例や事例も紹介!
本記事では、障害者施設・就労継続施設の概要・現状やM&A・事業承継の案件、事例を紹介します。最近では、障害者施設・就労継続支援施設でもM&A・事業承継の実施件数が増加中です。障害者施設のM&A・事業承継を検討している方は、必見の内容です。
目次
- 障害者施設・就労継続支援施設の概要
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&Aの可否
- 障害者施設・就労継続支援施設のM&Aの現状
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型をM&A・事業承継する理由3選
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継の案件例3選
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継の事例3選
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継は事業譲渡がおすすめ
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継の注意点6選
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継時におすすめの相談先3選
- 障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継まとめ
障害者施設・就労継続支援施設の概要
障害者施設・就労継続支援施設では、経営困難や労働人口減少などを理由とする人材不足の課題が深刻化しています。倒産・休廃業・解散などを仕方なく選ぶ施設は少なくありません。
M&Aを活用すれば、障害者施設・就労継続支援施設を存続させられる可能性があります。最近は、障害者支援・就労継続支援施設においても、M&Aの実施件数が増加している状況です。ここでは、障害者施設・就労継続支援施設とM&Aの概要について順番に解説します。
障害者施設とは
障害者施設(別名:障害者支援施設)とは、知的障害・身体障害・精神障害を持つ人の日常生活および社会生活を総合的に支援する社会福祉施設のことです。
障害者施設について規定する障害者総合支援法によると、「障害者につき、施設入所支援を行うとともに、施設入所支援以外の施設障害福祉サービスを行う施設」と定義されています。
障害者施設は基本的に入所型であり、2006年に施行された障害者自立支援法のもと、身体障害・知的障害・精神障害・発達障害などに対するサービス統合化に伴って誕生した種別です。
施設の多くは、旧知的障害福祉法による「知的障害者更生施設(入所)」や旧身体障碍者福祉法による「身体障害者療養施設」などの入所型施設から移行する形で、現在も事業を行っています。
具体的なサービス内容は、夜間から早朝にかけて提供される施設入所支援と、昼間に提供される生活介護などの日中活動系サービス(昼間実施サービス)の2種類です。
施設入所支援は夜間から早朝のみ実施されることから、2種類を組み合わせて24時間利用する人も少なくありません。日中活動系サービスには、生活介護・自立訓練(生活訓練・機能訓練)・就労移行支援などが該当します。
人員と設備は、「障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害者支援施設の設備及び運営に関する基準」によりサービスごとに基準・制限が設けられています。
子供向けの障害者施設
子供向けの障害施設(障害児入所施設)は、入所する障害のある児童に対して、保護・日常生活の指導・自活に必要な知識や技能の付与などを行う施設です。提供されるサービスは、福祉サービスを実施する「福祉型」と、合わせて治療も実施する「医療型」の2種類に分けられます。
2014年以降、障害児入所施設では、一元化により複数の障害を持つ児童にも対応可能となりました。福祉型の対象者は、身体に障害のある児童・知的障害のある児童または精神に障害のある児童(発達障害を含む)です。
医療型は、知的障害児(自閉症)・肢体不自由児・重度心身障害児などを対象としています。いずれのサービスも、児童相談所・市町村保健センター・医師などに療育の必要性が認められた児童のみ利用可能です。
大人向けの障害者施設
大人向けの障害者施設には、通所・入所の2種類があります。通所施設では、施設に通う障害者にサービスを提供します。サービスの具体例は、入所施設が行う日常生活・自立訓練(生活訓練・機能訓練)に対する自立支援や、地域活動センターの行う相談・コミュニケーション活動などです。
上記のほか、日常生活に必要な食事・入浴・排泄などの支援も通所施設のサービスに該当します。施設によっては、障害者による創作や生産活動の支援・身体的能力向上に向けた支援・生活能力を向上させる支援なども実施している状況です。
入所施設では、滞在する障害者にサービスを提供します。一般企業で就労・障害者福祉サービスを受ける人に向けて、夜間の宿泊場所・共同生活の場所などを提供する施設です。入所施設には、介護者の都合に合わせて、夜間のみ入所対応を行う短期入所施設も含まれます。
就労継続支援施設とは
就労継続支援施設とは、通常の事業所での雇用が困難となった就労経験のある障害者に対して、生産活動の機会を提供しつつ、知識・能力向上のために必要な訓練などを行う施設です。就労継続支援施設では、援助付きの雇用として、障害者総合支援法を根拠とする就労継続支援をしています。
つまり、一般企業・公益法人などの団体への就職が困難な障害者を対象とする職場ともいえるのです。とはいえ、最終的には利用する障害者の一般企業・団体での就労が目指されており、就労に必要な最低限の能力・技術の習得が目的とされています。
就労継続支援施設は都道府県知事の指定制です。指定を受けた事業所には政令で定められた額の介護給付費・訓練等給付費が支給されます。
就労継続支援施設はA型とB型の2種類に分かれるため、ここからはそれぞれの特徴を解説します。
就労継続支援施設A型の特徴
就労継続支援施設A型とは、雇用契約を締結したうえで、障害や難病のある人が支援付きの職場で働ける施設です。一般企業での就労が難しい人に対して、継続して働ける職場を提供・支援しています。障害者総合支援法にもとづく福祉サービスです。
就労継続支援施設A型の対象者は、以下のとおりです。
- 移行支援事業を利用したが、雇用に結びつかなかった人
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、雇用に結びつかなかった人
- 就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない人
利用者の傾向を見ると、以前は知的障害者の割合が高かった一方で、現在は精神障害者の割合が高いです。雇用契約は就労継続支援施設A型事業所との間で締結され、原則的に最低賃金以上の給料が支給されます。
基本的には一般就労と変わりません。しかし、一般就労と比べて就労時間が短時間であるほか、給料が安価となるケースも少なくありません。
厚生労働省の資料によると、2024年7月時点で全国の就労継続支援施設A型は4,472カ所あり、利用者数は87,262人に達しています。利用者の中では精神障害を持つ方の割合が高く、年齢層では40代以上が全体の半数を占めています。
就労継続支援施設B型の特徴
就労継続支援施設B型は、年齢・体力面で雇用契約を締結した就労が困難な人が軽作業などの就労訓練を行える施設です。作業に対して工賃を支払いながら自身のペースで働ける職場を提供しています。A型と同様に福祉サービスの一つです。
就労継続支援施設B型では、比較的に簡単な作業を短時間から行うことが可能です。年齢制限はなく、障害・体調に合わせて自身のペースで働けます。事業所と雇用関係を締結しないため、賃金ではなく生産物に対する成果報酬として工賃が支払われる仕組みです。就労の能力向上が期待できます。
就労継続支援施設B型の対象者は、下記になります。
- 就労経験者で、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
- 50歳に達している者または障害基礎年金1級受給者
- 上記に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題などの把握が行われている者
利用者の傾向を見ると、知的障害者の割合が高い状況です。2024年7月時点で、全国の就労継続支援施設B型は17,820カ所あり、利用者数は368,915人に達しています。利用者の内訳を見ると、知的障害を持つ方が全体の半数以上を占めており、年齢層では40歳以上から50歳未満の人が最も多いことが特徴です。
障害者施設・就労継続支援施設の違い
障害者施設と就労継続支援施設における相違点は、就労支援の有無にあります。障害者施設では、生活・学習・コミュニケーション支援のほか、宿泊場所や生活維持に欠かせない看護・医療などのサービスを提供しています。
就労継続支援施設では、障害者に継続的な仕事を提供するほか、一般就労のサポートも行う施設です。障害者施設は生活に関わる部分を支援する一方で、就労継続支援施設は生活支援と就労支援を実施します。
就労継続支援施設A型・B型の違い
就労継続支援施設A型とB型における相違点は、雇用契約の有無にあります。就労継続支援施設A型では、利用者と雇用契約を締結します。B型では雇用契約を結ばず、生産物に対する成果報酬を支払う仕組みです。
就労継続支援施設A型では、一般企業での就労が難しいと判断されたものの、雇用契約に応じた就労は可能と判断された障害者に対して就労支援を行っています。
就労継続支援施設B型は、一般企業での就労だけでなく、雇用契約に応じた就労自体も困難と判断される障害者を対象に支援を行う福祉サービスです。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&Aの可否
障害者施設や就労継続支援施設A型・B型のM&A(合併・買収)、売却、譲渡は十分に可能です。
買い手側にとっては、利用者との契約を結び直せば利用者を確保できるため、これらの施設は魅力的なM&Aの対象となります。市場動向からも、就労継続支援施設A型・B型は売り手にとって有利な状況と言えるでしょう。
今後も関連業種や新規参入による需要が見込まれるため、これらの施設のM&A、売却、譲渡は十分に可能性のある選択肢と言えます。
障害者施設・就労継続支援施設のM&Aの現状
近年、障害者施設や就労継続支援施設のM&A(合併・買収)が増加しており、業界内での再編が進んでいます。
これらの施設は、地域社会に貢献する重要な役割を担っていますが、経営資源の不足や人手不足、そして運営の効率化が求められる中で、M&Aは解決策の一つとして注目されています。
ここでは、障害者施設および就労継続支援施設におけるM&Aの現状を、以下の4つの視点から探ります。
障害者施設の運営状況とM&Aの背景
障害者施設や就労継続支援施設の運営は、少子高齢化の進展や障害福祉サービスの需要増加により、特に人材確保や経営効率化が大きな課題となっています。
これらの施設の多くは、地域密着型であり、運営の効率化を図るためには、一定規模の施設の統合や事業承継が必要となっています。
実際に、障害者福祉業界では、経営改善を目的に、施設間でのM&Aが進んでおり、これにより人員の配置やリソースの最適化が進んでいます。
労働力不足と人材確保の課題
障害者施設における人材確保は依然として大きな課題です。
福祉業界全体で慢性的な人手不足が続く中、施設運営における労働力不足を補うために、施設間でのM&Aが行われています。
特に、経営が厳しい中小規模の施設が、規模拡大を目指す大手法人に吸収されるケースが増えており、これにより人材の確保や研修、福利厚生の充実が期待されています。
規模を拡大することで、より多くの利用者へのサービス提供が可能となるほか、介護職員の負担軽減にも繋がるとされています。
政府の支援とM&Aの促進
日本政府は、障害者福祉サービスの質の向上を目指して、様々な支援策を講じています。
これには、M&Aを通じてサービス提供者の経営基盤を強化するための助成金や税制優遇措置も含まれています。政府の支援政策は、障害者施設の統合を加速させ、業界全体の効率化を促進しています。
特に、地方自治体や地域団体との連携を深め、より安定的な運営が可能となるようなM&Aが増えている現状があります。
M&Aせずに廃業する施設の数
障害者福祉事業者の倒産や休廃業件数は、基本的に増加傾向にあります。ただし、2020年の倒産件数は減少しています。これは、新型コロナウイルス感染症の影響下で、国や自治体による支援措置が倒産の抑制に効果を発揮したためと考えられます。
一方で、感染防止策に伴う運営負担の増加に対応しきれず、休廃業件数はやや増加しました。このように、コロナ禍の特殊な状況が倒産や休廃業の動向に影響を与えたと見られています。
社会福祉法人の事業譲渡と合併については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型をM&A・事業承継する理由3選
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型をM&Aする主な理由は、以下のとおりです。
- 後継者問題の解決をするため
- 従業員や利用者の減少に対応するため
- 新しい事業へと転換するため
それぞれの理由について詳しく見ていきます。
①後継者問題の解決をするため
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型がM&Aする理由の一つに、後継者問題の解決が挙げられます。後継者不在問題は、中小企業などさまざまな業種で問題視されている状況です。
厚生労働省が2018年〜2019年に実施したアンケートによると、合併した社会福祉法人のうち約20%が後継者不在を理由に挙げています。役員・従業員の中に相応しい人材がいなかったからです。
親族外承継ではなく第三者との合併を選択して後継者問題を解決するケースが少なくありません。
②従業員や利用者の減少に対応するため
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型がM&Aする理由には、従業員や利用者の減少も挙げられます。待遇面への不満や肉体的な負担の大きさなどを理由に、長期的に勤務する従業員が少なく退職者が多い状況です。
身体障害・知的障害・発達障害・精神障害を持つ利用者のケアには、根気強さも求められます。こうした状況の中で、労働に見合う待遇を受けられないと感じる従業員が多いために、従業員の確保が困難となっているのです。
2018年以降は、障害福祉サービス等の報酬改正に伴う追加対応が必要となりました。重度・高齢の障害者・医療ケアが必要な子供・精神障害で長期入院者の地域移行・就労継続支援施設で支払う工賃の引き上げなどの対応です。
上記の影響によって、利用者の管理体制について変更対応を余儀なくされる施設も多く、対応の難しさから利用者を減少させたことで運営が困難となり、M&Aを検討するケースも増加中です。
③新しい事業へと転換するため
障害者施設・就労継続支援施設を思うように運営できない場合は、新しい事業へと転換したいと感じる経営者も多いです。障害者施設や就労継続支援施設などの運営はボランティアとしての性質もあり、想像よりも過酷に感じるケースもあります。
こうした中で施設運営の継続が困難であれば、新規事業への転換が望ましい場合も少なくありません。M&Aを実施すれば売却利益の獲得が期待できるため、この資金をもとに新規事業を開拓するケースも見られます。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継の案件例3選
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継の案件には、どのようなものがあるのでしょうか。最新の案件例を3つ紹介します。
①【西日本・複数法人同時譲渡】就労継続支援業(図面チェック)、製作図業(ウェブサイト・システム)
西日本の就労継続支援業(図面チェック)、製作図業をご紹介します。
100名以上の従業員と同時譲渡希望企業の外注先数300名以上で事業に対応しています。製作図、図面チェックを対応できる企業が少なく、人材確保をすれば更なる成長が見込めます。
エリア | 中国・四国 |
売上高 | 10億円〜25億円 |
譲渡希望額 | 5億円〜7.5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
②【入居率100%/急成長事業】 障がい者介護施設運営業
首都圏にて入居率100%(待機者有)を継続する障がい者向け介護施設運営をする企業をご紹介します。
自治体や相談事業者からの紹介が多く、安定したビジネスモデルを展開しています。独自のノウハウが蓄積されており、大規模な設備投資不要なビジネスモデルを構築しています。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 会社の成長発展のため |
③関東×障がい者向け福祉サービス(就労移行支援、自立訓練、デイサービスなど)
障がい者向け福祉サービス運営をする企業をご紹介します。
就労実績100名以上、就労定着率90%以上、リワーク実績30名以上、リワーク定着率90%以上と、支援実績が豊富です。リワーク支援を利用した場合の就労継続率が他社に比べて高い特徴があります。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継の事例3選
近年における障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A事例を紹介します。
①和心によるのWALAの子会社化
2024年10月31日、和心は、WALA(神奈川県川崎市)の株式を取得し、子会社化する基本合意書を締結しました。和心は商品企画やECサイト運営などを手掛ける企業で、WALAは神奈川県で障碍者支援を行うB型就労支援施設を運営しています。
和心はこのM&Aにより、社会的責任を果たすとともに、既存事業とのシナジー効果を追求し、グループ全体の企業価値向上を目指します。
②エルアイイーエイチによるMAGパートナーズの完全子会社化
2024年9月24日、エルアイイーエイチは、MAGパートナーズを完全子会社とする株式交換を決定し契約を締結しました。これにより、MAGパートナーズの子会社であるづくり株式会社及び株式会社京竹もエルアイイーエイチの孫会社となります。
MAGパートナーズの障害者就労支援事業をエルアイイーエイチグループに加えることで、事業領域を拡大し、企業価値の向上を目指します。また、通信教育事業を活用した職業訓練の提供により、障害者支援事業の高付加価値化も図ります。
③manabyによるスタンディの就労移行支援事業所の譲受
2024年7月18日、manabyは、スタンディ(福島県郡山市)が運営する一部の就労移行支援事業所を譲り受ける契約を締結しました。
manabyは東北・関東・関西で約40拠点の障害者就労支援事業所を展開しており、本譲受により関東エリアでのサービス範囲拡大を図ります。また、スタンディの就労移行支援に関するノウハウを有する人材を承継することで、事業の強化を目指します。
スタンディは、就労支援や農福連携事業などを展開しています。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継は事業譲渡がおすすめ
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継では、事業譲渡の手法がおすすめです。ここでは、事業譲渡を選ぶメリット・デメリットを順番に解説します。
障害者施設・就労継続支援施設をM&Aする際に事業譲渡を選ぶメリット3選
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型をM&Aする際に事業譲渡を選ぶメリットは、以下のとおりです。
- 後継者問題を解決できる
- 従業員の確保・利用者の減少など将来的リスクの回避ができる
- 事業譲渡利益が得られる
①後継者問題を解決できる
障害者施設・就労継続支援施設を事業譲渡する最も大きなメリットは、後継者問題を解決できる点にあります。施設の経営者が高齢となり運営が困難になると事業承継の選択が検討されますが、自身の周囲で適任となる後継者を確保できるとは限りません。
M&Aによる事業譲渡では、第三者に事業を引き継げるため、後継者不在の問題を解決できます。事業譲渡は事業のみの譲渡となりますが、第三者に引き継いで運営してもらえれば、経営者自身は引退が可能です。
②従業員の確保・利用者の減少など将来的リスクの回避ができる
障害者施設・就労継続支援施設はボランティアとしての性質もあります。在籍するスタッフが過酷に感じやすく離職率の高い業種です。事業譲渡をすれば、従業員の確保を図れるうえに、利用者の減少も防げる可能性があります。
2018年には障害福祉サービス等の報酬改定があり、重度・高齢の障害者・医療ケアが必要な子供・精神障害で長期入院者の地域移行・就労継続支援施設で支払う工賃の引き上げなどへの追加対応も必要となりました。事業譲渡は事業のみを譲渡できるため、将来的なリスクを回避できます。
③事業譲渡利益が得られる
事業を譲渡すると、譲渡利益の獲得が期待できます。事業譲渡をはじめM&Aによる売却では、企業もしくは事業を譲渡(売却)するため、対価を現金で受け取れる点がメリットです。
事業譲渡後も会社は存続することから、譲渡利益は経営資金に充てられるほか、新規事業に向けた資金としても活用できます。借り入れがある場合は、返済に充てることも可能です。
障害者施設・就労継続支援施設をM&Aする際に事業譲渡を選ぶデメリット3選
障害者施設・就労継続支援施設をM&Aする際に事業譲渡を選ぶデメリットは、以下のとおりです。
- 従業員や利用者に不安を与える
- 希望する条件でM&A・事業譲渡ができるとは限らない
- 個人では交渉が難しい
①従業員や利用者に不安を与える
障害者施設・就労継続支援施設の事業譲渡を検討すると、従業員・利用者などに不安感を与えるおそれがあります。事業譲渡により施設を運営する代表者が交代するならば、従業員は従来のサービスを提供できるか不安感を抱くことも少なくありません。
利用者からしても、従来どおりにサービスを利用できるのか、事業譲渡について不安感を抱きます。事業譲渡の内容が確定したら、従業員・利用者など関係者に対して報告や説明を丁寧に実施すると良いです。
②希望する条件でM&A・事業譲渡ができるとは限らない
事業譲渡では希望の譲渡価格・条件などを反映させたうえでM&Aの相手探しに着手します。しかし、必ずしも現在の経営者が希望する譲渡価格・条件でM&A・事業譲渡できるとは限りません。
特に、障害者施設・就労継続支援施設など福祉サービスを提供する会社の買収を希望する買い手候補は限られています。相手側から細かい条件を提示される場合もあります。あらかじめ、買い手が提示する条件への対応策・譲れない条件の有無などを確認しておくと良いです。
③個人では交渉が難しい
障害者施設・就労継続支援施設などの福祉施設では、経営者自身のみでM&A交渉を実施することは困難です。交渉をスムーズに進めるには、M&Aの知識や経験だけでなく、障害者施設・就労継続支援施設の業種特有の知識も必要となります。
経営者自身で済ませるには難しい手続きが多いため、M&A・事業譲渡の業務を手掛ける専門家に相談しながら進行させると良いです。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継の注意点6選
この章では、障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継を実施する際に注意すべき点をご説明します。
①バリアフリーが完備されているか
障害者施設・就労継続支援施設には、建物に出入口のスロープ・手すり・エレベーター・車椅子利用専用のトイレや浴室などの設備等が必要です。
M&Aによる譲渡を進める際は、バリアフリーが完備されているか、修繕が必要な箇所の有無と併せて確認しましょう。
②サービス管理責任者と児童発達支援管理責任者の在任
障害者総合支援法および児童福祉法には、障害者施設・就労継続支援施設A型・B型の事業者に対しては自治体から障害福祉サービス等報酬が支給されると定められており、これにはサービス管理責任者と児童発達支援管理責任者の報酬も含まれています。
もし譲渡時にサービス管理責任者と児童発達支援管理責任者が退職していた場合は、以下のような影響が買い手側に及びます。
- 株式譲渡の場合:2ヶ月後から障害福祉サービス等報酬額が3割減額される
- 事業譲渡の場合:行政側から新規の許可が得られず、事業開始できない
このような事態となれば買い手とのトラブルのも発展しかねないため、買い手はサービス管理責任者と児童発達支援管理責任者の在任しているどうかの確認が必要です。
また、売り手側も、M&Aに伴いサービス管理責任者と児童発達支援管理責任者が退職してしまわないよう、配慮や対策が必要といえるでしょう。
③人員配置体制が整っているか
障害福祉サービス等報酬には算定基準があり、人員配置体制も基準のひとつです。もし人員配置体制の条件を満たしていなければ、障害福祉サービス等報酬は減額されます。
M&Aを円滑に進めるためにも、譲渡前に人員配置体制が整っているかどうかをよく確認することが大切です。
④加算
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型だけでなく、福祉事業に従事する労働者に対し、国は「処遇改善加算制度」を設けています。
処遇改善加算制度とは、介護職などの労働者の報酬がほかの労働者よりも低いため、その報酬を補うための制度です。
従業員のキャリア向上のための環境改善を進めた事業者に対して報酬の加算分が支給されますが、支給されるためには複数の要件を満たし、かつその状態を維持し続けなければなりません。
一度支給されたとしても、その後のチェック時に要件を満たしていなければ、返還を命じられることもあるので注意が必要です。
⑤M&Aの実施タイミング・理由
就労継続支援施設A型・B型は、法改正があれば収益にも変化が生じます。改正の時期と内容によっては、なかなか交渉相手がみつからない状況も考えられるため、M&Aを進めるタイミングが重要です。
また、就労継続支援施設A型・B型のM&Aでは、買い手は人材確保を目的としているケースもあります。そのような場合、もしM&A前に売り手側の従業員が多く退職してしまっていては、交渉がうまく進まない事態も考えられます。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型は、労働環境や待遇の悪さから従業員が退職しやすい事業でもあるので、M&A前に従業員が流出しないよう配慮や対策しておくことも必要です。
⑥相手先選び
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型は、障害者の生活と就労の両面を支える重要な事業です。そのため、譲渡後は責任をもって事業継続してくれる相手先をしっかり選ぶ必要があります。
相手先を選ぶ際は、M&A仲介会社などの専門家に依頼すると幅広いなかから探すことができます。相談する前に自社の希望条件などをまとめておくと、よりスムーズな相手先探しが可能です。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継時におすすめの相談先3選
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介しあます。
①金融機関
金融機関に事業承継を相談することには、多くのメリットがあります。金融機関は広い取引先ネットワークを活用して、適切な事業承継先を紹介してくれる可能性があります。また、自社の財務状況や事業内容を詳しく把握しているため、具体的で実用的なアドバイスが期待できます。
さらに、事業承継に関する知識が不足している場合でも、金融機関を通じて専門家を紹介してもらえるため、安心して相談できる点も大きな魅力です。
ただし、注意点もあります。事業承継やM&Aの提案に合わせて、融資などの金融商品を勧められる場合があるため、提案内容をよく確認し、自社に必要のないサービスを契約しないよう慎重に対応することが大切です。
②公的機関
全国47都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業庁が運営する公的な相談機関です。このセンターは、事業承継に関する相談や支援を提供しており、国が運営しているため高い信頼性を誇ります。
大きな特徴として、事業承継に関する専門知識を無料または低コストで提供しているため、中小企業や個人事業主でも気軽に利用できる点が挙げられます。
ただし、M&Aや事業承継で高度な専門性が求められる場合には、センターのサービスだけでは十分に対応できないこともあります。そのような場合は、民間の専門機関を併用することで、より効果的で充実したサポートを受けることができます。
③M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&Aや事業承継に関する信頼できる相談先の一つです。事業承継がM&Aと密接に関わるケースが多いため、仲介会社に相談することで、その豊富な経験と専門知識を活かし、スムーズに手続きを進めることができます。
また、仲介会社は税理士や弁護士といった専門家と連携しており、必要に応じて専門的なアドバイスを受けられる点も大きな魅力です。
さらに、計画の立案から契約の締結、実行、そしてアフターフォローまで、一貫してサポートを提供する体制が整っています。そのため、効率的かつ確実にM&Aや事業承継を進めたい方にとって、仲介会社の利用は非常に有力な選択肢となるでしょう。
M&Aの相談先については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&A・事業承継まとめ
最近は障害者施設・就労継続支援施設の利用者が増加傾向です。背景には精神障害者や発達障害者の利用増加が関係しています。障害者施設・就労継続支援施設では、慢性的な人材不足が問題視されている状況です。
障害者施設・就労継続支援施設はボランティアとしての性質もあり、在籍するスタッフが過酷に感じやすい業種です。待遇面に不満を持つ従業員は多く、離職率が高くなっています。
このような利用者の増加・人材不足といった課題に対応すべく、事業譲渡を利用する経営者は多いです。ただし、事業譲渡は手続きが複雑で、経営者だけでは困難といえます。
スムーズに事業譲渡を済ませるためは、M&A仲介会社などの専門家からサポートを受けると良いです。要点をまとめると、下記になります。
・障害者施設とは
→知的障害や身体障害や精神障害を持つ人の日常生活および社会生活を総合的に支援する施設
・就労継続支援施設A型・B型とは
→生産活動の機会を提供しつつ知識や能力向上のために必要な訓練などを行う施設
・障害者施設・就労継続支援施設A型・B型をM&Aする理由
→後継者問題の解決、従業員や利用者の減少、新しい事業へと転換したい
・障害者施設・就労継続支援施設A型・B型をM&Aする際に事業譲渡を選ぶメリット
→後継者問題の解決、従業員の確保や利用者の減少など将来的リスクの回避、事業譲渡利益の獲得
・障害者施設・就労継続支援施設A型・B型をM&Aする際に事業譲渡を選ぶデメリット
→従業員や利用者に不安を与える、希望条件でM&Aや事業譲渡ができるとは限らない、個人では交渉が困難
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。