2021年5月25日更新業種別M&A

調剤薬局の経営が厳しいのは調剤報酬改定が原因?生き残りにはM&A?

近年、調剤報酬改定が行われたことにより、調剤薬局の経営が以前にも増して難しいものになっています。本記事では、調剤薬局業界の現状と、調剤薬局が生き残る手段としてM&Aを活用することは有効なのかについて解説します。

目次
  1. 調剤薬局とは
  2. 調剤薬局の経営が難しいと言われる理由
  3. 調剤報酬改定が調剤薬局の経営に与えた影響
  4. 調剤薬局が生き残るための手段
  5. 調剤薬局を積極的にM&A・買収する企業
  6. 中小・個人経営の調剤薬局と大手チェーンの違い
  7. 調剤薬局M&Aの相談先
  8. まとめ

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調剤薬局とは

調剤薬局とは、薬剤師が常駐し「薬局医薬品」を取り扱う薬局のことです。つまり、処方箋を取り扱うことができる薬局を指します。

調剤薬局は医療機関としてみなされているため、経営するためには各都道府県知事からの認可が必要です。

似たような業態にドラッグストアがありますが、ドラッグストアの場合は「薬局医薬品」が扱えない代わりに、都道府県知事からの認可は必要ありません。

しかし、最近ではドラッグストアが認可を受けて「薬局医薬品」を取り扱っている例もあり、業態の多様化が進んでいます。

調剤薬局の経営が難しいと言われる理由

元々、薬剤を仕入れる費用や薬剤師の人件費が高額であることもあり、調剤薬局は経営が難しいといわれています。さらに近年では、さまざまな理由によって、さらに調剤薬局の経営は難易度が上がっています。

【調剤薬局の経営が難しいと言われる理由】

  1. 大手チェーン店の規模拡大
  2. 経営者が引退年齢に差し掛かっている
  3. 薬剤師の確保が難しい
  4. 度々行われる調剤報酬改定

1.大手チェーン店の規模拡大

調剤薬局の経営が今まで以上に困難になってきた理由として挙げられるのが、大手チェーン店の規模拡大です。

昨今では、コンビニエンスストアや家電量販店などがドラッグストア業界に参入してきており、急速に規模を拡大しています。

また、先述したように、近年ではドラッグストアが都道府県知事の認可を受け、調剤薬局と同様に「薬局医薬品」を取り扱うケースが増えてきました。

規模が大きくなったドラッグストアが新規に調剤薬局業界に参入し始めたため、今まで大多数を占めていた個人経営の薬局は、徐々に経営が厳しくなってきています。

2.経営者が引退年齢に差し掛かっている

経営者の高齢化も、経営を継続することが困難な理由のひとつです。現在、調剤薬局業界では後継者問題を抱える企業が増えており、事業継承が難しくなっています。

昔のように、経営者の子供が家業だからと事業を引き継ぐというケースが減ってきている、というのが現状です。

しかし、調剤薬局はあくまで医療機関の一種であり、地域の社会資源としての役割を持っているため、簡単に廃業するわけにはいきません。

結果的に、高齢でリタイアしたいにも関わらず、事業継承ができないために止むを得ず経営を続けているという経営者も増えています。

3.薬剤師の確保が難しい

3つ目の理由は、薬剤師の慢性的な不足です。大手・中堅の調剤薬局運営企業が次々と新規参入してきていることもあり、薬剤師の資格取得率は年々増加傾向であるにも関わらず、慢性的な薬剤師不足が続いています。

また、薬剤師は女性の比率の方が高いため、結婚や出産を機に職から離れるケースが多いことも人手不足の原因と考えられます。

個人経営の場合はさらに厳しく、昨今の若者が安定志向なこともあり、多くの若手薬剤師が就職先として大手企業を選択してしまうため、人材の確保は困難を極めています。

4.度々行われる調剤報酬改定

最後の理由は、.度々行われる調剤報酬改定です。医療費の透明化や患者負担費の軽減を理由に、度々改定される調剤報酬ですが、近年では患者の高齢化に伴う医療費の増加を抑えるため、より経営側にとって厳しい改定が行われています。

今までは大手・中堅の調剤薬局が対象となる改定がメインでしたが、政府が薬局の数自体を減少させる方針で改定していることもあり、今後は小規模の薬局に対しても厳しい改定が行われる可能性が高くなっています。

このような状況を鑑みるに、調剤薬局の経営は今まで以上に困難になっていくと考えられるでしょう。

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調剤報酬改定が調剤薬局の経営に与えた影響

近年の調剤報酬改定は、規模の大小を問わず、調剤薬局業界に大きな影響を与えています。調剤報酬改定によって、調剤薬局が受けた影響には以下の3つがあります。

【調剤報酬改定が調剤薬局の経営に与えた影響】

  1. 中小・個人経営の調剤薬局の経営難
  2. 大手チェーンへの締付け
  3. 薬剤師不足に対する制度改正

1.中小・個人経営の調剤薬局の経営難

まず挙げられるのは、収益性の低下による経営の悪化です。2019年4月に厚生労働省が発表した「調剤業務のあり方について」という通知により、今まで薬剤師のみが行うことができた一部の業務が解放され、薬剤師以外の人でも可能になりました。

結果、薬剤師の調剤にかかる業務量が削減され、今後は技術料が大きく減額されることが予想されています。

また、技術料が引き下げられるのも関わらず、薬剤師には今までの対物業務だけでなく、今後は対人業務も求められます。

よって、技術料の引き下げがあるにも関わらず、安易に薬剤師の人数を減らすわけにもいかないため、収益性が低下し経営難になる薬局が増加しているのが現状です。

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2.大手チェーンへの締付け

先述した通り、現在調剤薬局業界では、大手企業の参入が相次いでいます。しかし、国は少子高齢化によって維持が難しくなっている社会保障制度を存続させるために、現在6万件以上存在する薬局を半分程度にまで減らす方針です。

さらに、国ではかかり付け薬局の増加に力を入れており、結果的に近年の調剤報酬改正では、病院前に店を構えるいわゆる門前薬局に対する調剤基本料引き下げが行われています。

急速に規模を拡大させたい大手チェーン店には不利な改定が続いており、今後も類似した改定が行われていく見通しです。

3.薬剤師不足に対する制度改正

薬剤師業界では慢性的な人手不足が発生しており、人手不足の緩和処置として、近年の調剤報酬改定では育児・介護を行っている場合、「週4日以上かつ24時間以上」の勤務が認められるようになりました。

特に、女性が多く結婚や育児による退職が多かった薬剤師にとっては、以前よりも条件が緩和されたことにより働きやすくなっており、ライフワークバランスが保ちやすくなっています。

代わりに、かかりつけ薬剤師の要件が「勤めている薬局の在籍期間が6カ月以上」から「1年以上」に延長されました。

より長く勤務した方が有利になるような改定を行ったことにより、業界全体の人手不足が緩和されることが期待されています。

調剤薬局が生き残るための手段

度重なる調剤報酬改定改定により、経営が難しくなっている調剤薬局暁業界で生き残っていくには、どのような施策が必要なのでしょうか。ここでは、調剤薬局が生き残るための手段として、以下の3つを紹介します。

【調剤薬局が生き残るための手段】

  1. 医療機関との関係強化
  2. 地域性を生かした経営
  3. M&Aによる調剤薬局の譲渡・承継

1.医療機関との関係強化

まず挙げられる施策としては、他の医療機関との関係強化があります。調剤薬局の売り上げの大半は「薬局医薬品」、つまり処方箋です。

売り上げを上げるためにも、病院やクリニックなどの医療機関との関係強化に努めることが、有効な手段といえるでしょう。

医療機関との関係性を深めるためには、患者の疑問にしっかりと答えつつ、医療機関との連携をスムーズにできると有利です。

多くの医療機関から自社と連携することのメリットを感じてもらえるよう、かかりつけ薬剤師の育成に力を入れるとよいでしょう。

2.地域性を生かした経営

現在、調剤報酬についての制度として「地域支援体制加算」があります。地域支援体制加算とは2018年の調剤報酬改定によって新設された制度で、地域医療に貢献するような取り組みをしている調剤薬局に対し、調剤報酬点数の加点を行うものです。

具体的には、個々の患者の管理や薬の服用に関する指導、休日・夜間や在宅に対する業務対応などが加点対象となります。

近年の調剤報酬改定では、対物業務に対する技術料が引き下げられている反面、対人業務に対する評価が向上している傾向です。

今後も業界で生き残るためには、地域支援体制加算の取得をはじめとした、対人業務の充実が重要になってくるでしょう。

3.M&Aによる調剤薬局の譲渡・承継

調剤薬局を残していくためには、状況に応じてM&Aによる譲渡・承継も検討した方がよいでしょう。

近年では、大手の調剤薬局運営企業が大規模なM&Aを繰り返していることもあり、譲渡先の選定については幅を利かせることができます。

高齢化が進み、受療率も上がっている日本において、薬局はほかの医療機関と同様、地域になくてはならない存在です。

自身による経営が難しい場合は、タイミングを見計らいつつM&Aによる譲渡も視野に入れることが重要になります。

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調剤薬局を積極的にM&A・買収する企業

先述のように、調剤薬局業界で生き残るためには、M&Aによる譲渡・継承も視野に入れる必要があります。しかし、実際にM&Aをするとしても、取引相手をどう選べばよいか悩んでしまう人も多いでしょう。

もちろん、M&Aの専門家やM&A仲介会社のサポートを借りるのが、譲渡・継承先を探す上で最も重要な手段ですが、ある程度の事前知識は必要です。

この章では、M&Aをする上での事前知識として、どのような企業が調剤薬局を積極的にM&A・買収するのかを紹介します。

1.大手チェーン

大手チェーンを展開する企業は、近年、M&Aによる既存調剤薬局の獲得を経営戦略の軸としています。

特に、近年の改定によって門前薬局の収益が減少しており、かかりつけ薬局が優遇されている傾向にあります。

大手チェーンは、個人経営の調剤薬局に比べ地域との関係性が薄いことから、かかりつけ薬局としての新規参入が難しくなっています。

この問題を解消するために、大手チェーンを展開する企業では新規での出店ではなく、地域に根付いた既存調剤薬局の獲得が盛んになっています。

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2.新規参入企業

もう1つ挙げられるのが、新規参入企業です。新規参入企業の場合、大手チェーン以上に地域との関係性が薄く、また他業種からの参入ならともかく、完全な新規参入の場合は患者からの知名度もありません。

よって、大手チェーンと同様に、地域に根付いたかかりつけ薬局の買収を検討している可能性が高いといえるでしょう。

中小・個人経営の調剤薬局と大手チェーンの違い

同じ調剤薬局といっても、中小・個人経営の調剤薬局と大手チェーンではさまざまな違いがあります。この章では、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

中小・個人経営のメリット

中小・個人経営のメリットには、主に以下の3つがあります。

  1. 給与面
  2. 地域性
  3. 人間関係

1.給与面

中小・個人経営の調剤薬局では、大手ほど人員数が必要ないことから、従業員の給与を上げやすい傾向があります。

結果的に、給与面での従業員の不満が少なく、大手よりも比較的人が離れづらいのがメリットです。

2.地域性

中小・個人経営の薬局は、地域との関連が強くなる傾向があります。患者との関係も築きやすいため、個々の患者の管理や指導を徹底しやすく、結果として地域支援体制加算の取得がしやすいのがメリットです。

患者との関係構築は、大手チェーンでは大きな課題となっており、新規出店ではなく既存店舗獲得が増加している大きな理由となっています。

3.人間関係

中小・個人経営の調剤薬局は大手ほど人材を抱えていないことから、人間関係の構築が容易です。

従業員と経営者の距離が近いため、直近の課題などについて直接話し合うことができます。

また、人が離れづらいこともあり、新人の育成や関係構築にコストをかける必要がないのも、大きなメリットといえるでしょう。

中小・個人経営のデメリット

中小・個人経営の調剤薬局が持つデメリットには、以下の2つが考えられます。

  1. 資本力
  2. 薬剤師不足

1.資本力

中小・個人経営の調剤薬局は資本力の面で大手チェーンに大きく劣ります。よって、大規模な展開や他業種への参入が困難です。

結果的に、急速な成長や経営方針の転換が難しく、高頻度で改定される調剤報酬の制度への対応が遅れてしまうことがデメリットです。

2.薬剤師不足

近年の若者の安定志向により、多くの薬剤師は大手チェーンへの就職を志望するようになっています。

結果として、中小・個人経営の調剤薬局は薬剤師の確保に苦心しており、慢性的に人手が不足している状態です。

万一、薬剤師が辞職してしまった場合、代わりの薬剤師がなかなかみつからないのは、大きなデメリットといえるでしょう。

大手チェーンのメリット

続いて、大手チェーンのメリットについて紹介します。大手チェーンのメリットには、主に以下の2つがあります。

  1. 薬剤師の確保
  2. 資本力

1.薬剤師の確保

先述したように、近年では多くのや薬剤師が安定を求め、大手チェーンを志望する傾向にあります。

よって、大手チェーンでは薬剤師の確保がしやすく、事業規模を拡大しても人員不足には困らないことが多いです。薬剤師不足が叫ばれている現状では、大きなアドバンテージといえるでしょう。

2.資本力

大手チェーン最大のメリットは、豊潤な資本力です。資本に余裕があることから、中小や個人経営では不可能な、急速な事業展開を行うことができます。

さらに、近年頻繁に行われている調剤報酬改定にも、余裕を持って対応することができるため、変動の激しい調剤薬局業界でも生き残りやすいのが特徴といえるでしょう。

大手チェーンのデメリット

大手チェーンのデメリットには、以下の2つが考えられ、主に給与面の問題から生じる人事の難しさがあげられます。

  • 給与面
  • 人事面

1.給与面

大手チェーンでは、人員を多く採用しなければならないことから、従業員の給与を上げづらいのが現状です。

そのため、従業員が給与に対して不満を上げやすい傾向があり、中小・個人経営の調剤薬局に比べ、給与面を理由とした人離れが多くなっています。

人員が短期で離れてしまうことは人事面にも大きな影響を与えており、大きなデメリットといえるでしょう。

2.人事面

上記の給与面の問題と連携して、人事面の業務が難しくなっているのも、大手チェーンのデメリットです。

人離れが激しいことから、人事異動による組織再編や、新規の従業員の獲得を頻繁に行う必要があり、時間的にも費用的にも大きなコストがかかります。

異動や新人の獲得により、人間関係の構築を1から行う必要があることも、従業員にとっては負荷となるため、いかに人離れによる人事を減らすかが課題になるでしょう。

【関連】調剤薬局の譲渡のおすすめ相談先を紹介!譲渡額相場や手数料も解説!

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まとめ

今回は、調剤薬局の調剤報酬改定について解説しました。年々激変する調剤薬局業界で生き残るためには、医療機関との関係強化や地域との密着が重要です。

【調剤薬局の経営が難しいと言われる理由】

  1. 大手チェーン店の規模拡大
  2. 経営者が引退年齢に差し掛かっている
  3. 薬剤師の確保が難しい
  4. 度々行われる調剤報酬改定

【調剤報酬改定が調剤薬局の経営に与えた影響】
  1. 中小・個人経営の調剤薬局の経営難
  2. 大手チェーンへの締付け
  3. 薬剤師不足に対する制度改正

【調剤薬局が生き残るための手段】
  1. 医療機関との関係強化
  2. 地域性を生かした経営
  3. M&Aによる調剤薬局の譲渡・承継

【調剤薬局を積極的にM&A・買収する企業】
  1. 大手チェーン
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