2022年1月17日更新業種別M&A

調剤薬局のM&A・譲渡手数料が無料は危険?

調剤薬局のM&A・譲渡件数は年々増加しています。それに合わせてM&A仲介会社も増加しており、M&A・譲渡手数料が無料と宣伝している仲介会社は増加しています。本記事では、調剤薬局におけるM&A・譲渡の際に、仲介会社へ支払う手数料などを紹介します。

目次
  1. 調剤薬局のM&A
  2. 調剤薬局のM&A・譲渡の際の手数料
  3. 調剤薬局のM&A・譲渡手数料が無料は危険なのか?
  4. 調剤薬局のM&A・譲渡の現状
  5. 調剤薬局のM&A・譲渡を行う際に仲介会社選びのコツ
  6. まとめ

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調剤薬局のM&A

近年、調剤薬局のM&Aの成約件数は増加傾向にあります。調剤薬局の譲渡や事業承継には専門的な知識が必要になるため、M&A専門家によるサポートを受けるのがベストです。

M&A仲介会社などの専門家に依頼すれば手数料が当然かかりますが、最近では手数料を無料に設定している仲介会社もみられます。

この記事では、なぜ手数料が発生するのか、無料に設定している仲介会社にサポートを依頼しても大丈夫なのかといった疑問について解説していきます。

調剤薬局とは

調剤薬局とは、薬剤師が処方箋に基づき調剤業務を行ったり、医薬品を販売したりする場所です。

調剤薬局では人体に影響を及ぼす可能性のある医薬品を販売するため、薬局開設許可を受けなければ営業することはできません。

また、調剤業務は薬剤師が行うと決められており、調剤業務は事実上薬剤師の独占業務となっているため、調剤剤薬局には薬剤師の常駐させなければなりません。

しかし、近年は薬剤師不足が顕著になっており人員確保が難しいため、他業界から調剤薬局業界に新規参入することは難しいのが現状です。

そのため、調剤薬局業界では同業者間のM&Aが半分以上を占めており、その多くはM&Aが小規模薬局から大規模薬局への譲渡です。

M&A・譲渡とは

M&Aとは、英語のMerger and Acquisitionの略であり、直訳すると「合併と買収」という意味になります。企業が買収を行う目的には、事業基盤の強化や新規事業への進出などがあります。

かつて、M&Aといえば大企業のみが行うものというイメージが強いものでしたが、最近では後継者問題を解決するための手段として、中小企業においてもM&Aが活用されるようになっています。

調剤薬局のM&A・譲渡の際の手数料

この章では、調剤薬局のM&Aや譲渡を行う際に仲介会社へ支払う手数料の内訳、また手数料が発生する理由について解説します。

手数料が発生する理由

M&Aや譲渡のサポート業務には専門的な知識が必要になるため、そのサービスに対する報酬・手数料を支払うことは当然のことといえるでしょう。

仲介会社が設定している手数料にはたくさんの種類があり、M&Aや譲渡の手続きを進めるたびに手数料が発生することもあります。

このように多くの手数料が発生するようになったのかは、料金体系のシステムが作られた一昔前に理由があります。

理由①M&Aの需要や成約数がとても少なかったから

1つ目の理由は、M&Aの需要や成約件数がとても少なかったからです。現在は完全成功報酬制の仲介会社が多いですが、このシステムは一昔前には成り立たないビジネスモデルでした。

完全成功報酬制は、手数料がかからず成功したときだけ報酬をもらうシステムであるため、M&Aが失敗すると一切利益が発生しません。

当時はM&Aの案件数自体も少なかったため、M&A仲介会社ではM&Aが成功しない限り赤字になり、経営が成り立たなくなる可能性もありました。

そのような理由により、ビジネスモデルを成り立たせるために手数料を設定せざるを得なかったという背景があります。

理由②通信技術が発達していなかったから

2つ目の理由は、通信技術が発達していなかったからです。現在は通信技術が発達しているため、費用をかけず、短時間で調査・情報収集を行うことができます。

しかし、一昔前に企業調査や案件情報の収集するためには、移動費やほかの仲介会社への手数料など、多くの費用が掛かっていました

そのため、仲介会社側は手続きの途中段階まで達成することができれば、中間報酬として手数料が発生するという設定をし、企業調査や案件情報の収集費用に充てていました。

手数料の内訳

仲介会社が設定している手数料には、主に以下の7種類があります。

  1. 着手金
  2. 月額報酬
  3. 中間金
  4. 企業評価費用
  5. 相談料
  6. 成功報酬
  7. 最低手数料

1.着手金

着手金とは、仲介会社に業務を依頼するときに支払う手数料のことです。業務を開始する前に支払う手数料であり、いわゆる前払金にあたります。

着手金は企業価値の調査やM&A先の選定などにかかる費用であり、M&Aが成立しなくても返金はされません。

一般的な相場は50~200万円程度ですが、近年はオンラインによる案件情報共有などにより初期段階で費用があまりかからなくなったことや、仲介会社同士の競争激化などの理由により、着手金を無料にしている会社が増えています。

2.月額報酬

月額報酬とは、仲介会社に毎月支払う手数料のことです。相場は30~200万円ですが、月額報酬を設定していない仲介会社も増加しています。

その理由には、近年はM&Aの案件数が増加しており、短期間でM&Aを成約させるケースが多く月額報酬を設定しても利益にならないことや、利用者に対して費用負担が大きいイメージを与える可能性もあることがあげられます。

月額報酬は毎月支払う手数料なので、期間が長くなれば費用負担が大きくなるので、M&A先を時間をかけて選定したい場合は、月額報酬のかからない仲介会社を選ぶとよいでしょう。

3.中間金

中間金とは、M&Aで基本合意書を締結したときに支払う手数料です。M&Aの一般的なスケジュールでは、まず相手先を選定した後、トップ面談へと進みます。

トップ面談などにより両社にM&Aの意向がある場合は、基本合意書を締結して独占的にM&Aの交渉を行います。

基本合意書の締結後は、企業監査や契約の最終交渉を経て、最終契約書を締結することでM&Aが完了します。

このような手順のなか、基本合意書の締結は中間にあたるため、その時点で発生する手数料が中間金と呼ばれています。

4.企業評価費用

企業評価費用とは、企業価値を算出したものをレポートにまとめてもらった際に支払う費用です。

専門家に依頼して企業価値を算出してもらうためには当然費用が掛かりますが、その試算に関係するサービスの対価が企業評価費用です。

企業価値費用の相場は、対象となる企業の規模や資産の内容などによって異なるため、一概に述べることはできませんが、数十万円程度かかる場合もあります。

5.相談料

相談料とは、正式なM&Aの依頼をする前に相談するときにかかる手数料であり、一般的な相場は数千円~1万円程度とされています。

しかし、最近では相談料を無料にしているところが増えており、M&Aに関する相談のハードルを下げることや仲介会社の競争激化がその理由として考えられます。

6.成功報酬

成功報酬とは、最終契約書を締結したときに支払う手数料です。ほとんどの仲介会社では、レーマン方式によって成功報酬額が計算されます。

レーマン方式とは、M&Aの取引金額に応じて成功報酬額を決める計算方法です。取引金額の基準は仲介会社によって異なっており、移動総資産(株式価格+負債総額)や企業価値(株式価格+有利子負債)、株式譲渡対価などがあります。

当然ですが、対象とする取引金額が高くなるほど、成功報酬は高くなります。しかし、M&A総合研究所は対象となる取引金額が一番小さい株式譲渡対価をベースに計算しており、M&Aにかかる費用を抑えることができます

7.最低手数料

最低手数料とは、成功報酬額で最低限支払う必要のある手数料です。成功報酬額はレーマン方式によって決まることが多いと述べましたが、M&A取引金額が小さければ当然のことながら成功報酬額も少なくなります。

あまりにも額が小さすぎると利益にならないため、ほとんどの仲介会社では最低手数料を設けています。取引金額が小さいと思われる場合は、最低手数料が安価な仲介会社に依頼すれば費用を抑えることができます。

調剤薬局のM&A・譲渡手数料が無料は危険なのか?

調剤薬局のM&A・譲渡を行う際、手数料が無料の仲介会社を選ぶことは危険なのかと考える人もいるでしょう。この章では、調剤薬局のM&A・譲渡手数料が無料は危険なのかといった疑問について解説します。

M&A・譲渡手数料無料をおすすめする理由

M&Aや譲渡する際、手数料が無料の仲介会社をおすすめする理由には、主に以下の3つがあります。

  1. 案件の規模による対応の違いがないから
  2. M&A初期の不安・負担がないから
  3. 買い手側は売り手側に多くの買収金額を支払えるから

1.案件の規模による対応の違いがない

1つ目の理由は、案件規模による対応の違いがないからです。先述のとおり、各手数料の相場には大きな幅があり、手数料額を案件規模や難易度で変えることもできてしまいます。

一方で手数料が無料であれば、案件の規模や難易度に関係なく手数料はかからないため、案件の規模に関係なく同じ対応をしてもらえるということになります。

2.M&A初期の不安・負担がない

2つ目の理由は、M&A初期の不安・負担がないからです。近年、M&A仲介会社の数は増加しているので、依頼側としてはどの仲介会社に相談すればよいか判断するのが難しいこともあるでしょう。

さらに初期費用がかかるとなれば、M&Aの実施に不安や負担を感じてしまいM&Aの相談がしにくくなる可能性もあります。

手数料が無料であれば、費用に関する不安や負担を減らすことができる点が依頼者側にとってメリットといえるでしょう。もちろん、初期費用が抑えられるからと言ってサービスの質が低下することはありません。

3.買い手側は売り手側に多くの買収金額を支払える

3つ目の理由は、買い手側が売り手側に多くの買収金額を支払えるからです。M&Aが成約すると買収企業は売り手側に買収金額を支払いますが、その際は手数料が差し引いて売り手側に支払われます

つまり、手数料が設定されているM&A仲介会社を利用した場合、売り手側に入る金額は手数料の分だけ少なくなります。しかし、手数料が無料であればその分も売り手側に入ります。

調剤薬局のM&A・譲渡は手数料より信頼を重視

調剤薬局のM&A・譲渡では、ほとんどの仲介会社は手数料よりも信頼を重視しています。というのは、ある調剤薬局の譲渡をサポートして信頼が得られれば、口コミでの評判をあげることができます。

口コミや評判をもとに、ほかの調剤薬局からM&A・譲渡の依頼がくるようになれば、仲介会社は成功報酬だけで利益をあげることができます。

信頼度のアップは実績や口コミによるものも大きいため、手数料は設定せずに質の高いサービスを提供するM&A仲介会社が増えています。

調剤薬局のM&A・譲渡の現状

調剤薬局のM&A・譲渡件数は増加していると紹介しましたが、なぜ増えているのでしょうか。ここからは調剤薬局のM&A・譲渡の現状について解説します。

  1. 経営者の高齢化によるM&Aが増加
  2. 調剤報酬改定によりM&Aを考える経営者が増加
  3. 大型案件が多く小規模案件はタイミングが難しい
  4. 大手グループがM&Aにより地方進出

1.経営者の高齢化によるM&Aが増加

経営者の高齢化によるM&Aが増加しています。特に中小規模の調剤薬局の経営者は年々高齢化しており、引継ぎを迎える時期になっています。

しかし、後継者となる人材がいなかったり、調剤薬局業界ならではの制約があったりなどの理由により、事業承継ができないケースも増加しています。

また、調剤薬局は地域医療に貢献しているため、地方の調剤薬局ほど簡単に廃業できないという現状もあります。

このような理由により、効率的にかつ短期間で事業承継を行う手段としてM&Aが活用されるようになっています。

2.調剤報酬改定によりM&Aを考える経営者が増加

調剤報酬改定によりM&Aを検討する調剤薬局の経営者も増えています。現在、少子高齢化の影響によって日本の社会保険費が増加しており、政府は削減するための施策を進めています。

薬価や調剤報酬が引き下げられているため、将来的に経営が厳しくなると考える調剤薬局経営者も増加しています。

さらに、将来的には企業価値が低下する可能性も考えられるため、売却益が高いうちに売却しようと考える経営者も少なくありません。

3.大型案件が多く小規模案件はタイミングが難しい

現在、大型案件が多いため、小規模案件を取り扱ってもらえない現状があります。大型案件をこなすには大人数のM&Aアドバイザリーが必要になります。

1人のアドバイザリーの仕事能力には限界があるため、現在小規模案件まで手が回っていないのが現状です

4.大手グループがM&Aにより地方進出

調剤薬局の大手グループは、M&Aにより地方進出しています。調剤薬局業界は、調剤報酬の改定により収益性が徐々に落ちています。

そのようななか、中小規模の調剤薬局は売却して多額の売却益を得るという戦略を取ることが多く、対して大手の調剤薬局は薄利多売戦略を取っています。

大手の調剤薬局では、顧客一人当たりの利益は少なくなっても、顧客数を増やすことで利益拡大を図ろうとしています

その戦略の一環として、地方の調剤薬局を積極的に買収して、事業規模を拡大させています。

調剤薬局のM&A・譲渡を行う際に仲介会社選びのコツ

最後に調剤薬局のM&A・譲渡を行う際の仲介会社選びのコツを4つ紹介します。

  1. 手数料を明確にしている
  2. 調剤薬局のM&Aを行っている
  3. M&Aの知識に精通している
  4. 担当者との相性がよい

1.手数料を明確にしている

1つ目のポイントは手数料を明確にしていることです。仲介会社の手数料には7種類があり、なかには料金体系が複雑なところもあります。

手数料をよく理解しないまま仲介会社に依頼してしまうと、予想していたより多くの手数料が請求される可能性があります

そのような事態を避けるためには手数料を明確にしている仲介会社を選ぶことが大切です。なかでも手数料が無料で完全成功報酬制を採用している仲介会社であれば、費用を抑えることができます。

2.調剤薬局のM&Aを行っている

2つ目のポイントは、調剤薬局のM&Aの実績があることです。調剤薬局のM&Aも他業界と同様に手続きを行う必要があります。

M&Aを進めるためには専門的な知識が不可欠ですが、調剤薬局のM&Aの場合は許認可制や薬剤師の確保などにも注意しなければなりません

調剤薬局業界に精通しているM&A仲介会社にサポートを依頼すれば、成功確率をより高めることができるので、調剤薬局M&Aの実績があるかを確認するようにしましょう。

3.M&Aの知識に精通している

3つ目のポイントは、M&Aの知識に精通していることです。M&Aの相談は地元の金融機関や士業事務所でも行うことができますが、M&Aを専業しているわけではないため実績や知識が十分でない可能性もあります。

M&Aの知識・実績が十分でない場合、自社に合った相手先がなかなかみつからなかったり、適切なサポートを受けられなかったりすることも考えられます。

M&Aに関する相談を行う際は、自社が行う業界のM&Aに精通しているM&A仲介会社を選ぶほうが、成功する確率を高めることができます。

4.担当者との相性がよい

4つ目のポイントは、担当者との相性がよいことです。M&A仲介会社の担当者の知識・実績が豊富であったとしても、相性がよくなければ意思疎通がうまく図れずにスムーズなM&Aを行えないこともあります。

担当者との相性がよくないと感じたら担当者を交代してもらったり、最悪の場合はM&A仲介会社を変更したりするなども検討しましょう。

まとめ

今回は、調剤薬局のM&A・譲渡手数料が無料の仲介会社は大丈夫なのかについて解説しました。買い手側・売り手側ともにメリットがあるため、手数料無料の仲介会社を利用するのがおすすめです。

【M&A・譲渡手数料無料をおすすめする理由】

  • 案件の規模による対応の違いがないから
  • M&A初期の不安・負担がないから
  • 買い手側は売り手側に多くの買収金額を支払えるから

【調剤薬局のM&A・譲渡を行う際に仲介会社選びのコツ】

  • 手数料を明確にしていること
  • 調剤薬局のM&Aを行っていること
  • M&Aの知識に精通していること
  • 担当者との相性がよいこと

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