2022年6月6日更新業種別M&A

ソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収の動向/相場/メリットを解説【事例あり】

今後の成長が期待されているITソフトウェア業界では、ソフトウェア開発の重要性の高まりから、他業界やスタートアップ企業の参入が多く、M&Aが積極的に実施されています。本記事では、ITソフトウェア業界の現状やM&A動向、M&Aのメリットなどを解説します。

目次
  1. ITソフトウェア業界とは
  2. ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収の動向
  3. ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収相場
  4. ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収するメリット
  5. ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収事例
  6. ITソフトウェア業界のM&Aの流れ
  7. ITソフトウェア業界のM&Aを進める際におすすめの仲介会社
  8. まとめ

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ITソフトウェア業界とは

IT業界は、「インターネット・Web業界」「通信業界」「ソフトウェア業界」「ハードウェア業界」「情報処理サービス業界」の5つの業界に分類することができます。

人工知能や電子マネーなど、様々な分野でIT化が進んでおり、今後も市場規模拡大が期待される勢いのある業界です。本章では、その中でもITソフトウェア業界について詳しく解説していきます。

ITソフトウェア業界の定義

ITソフトウェア業界とは、Windows、macOS、Linux、iOS、Androidに代表されるオペレーティングシステム(OS)やパソコン・スマートフォンのアプリケーションソフトを開発する業界のことです。

クライアントの要求に沿った受託ソフトウェアや汎用的な利用を目的としたパッケージソフトウェアの開発などを行っています。

ITソフトウェア業界の中には、企画やシステム設計から運用、保守まで一貫したサービスを行っている会社があり、そのような会社をシステムインテグレーター(SIer)といいます。

ITソフトウェア業界の現状

歴史が浅く、急速な発展を遂げてきたITソフトウェア業界ですが、参入障壁が低いため、市場規模の拡大を期待した他業界からのM&Aによる参入やベンチャー企業のような新規参入が多い業界でもあります。

競争が激しいITソフトウェア業界で生き抜くためには、ITソフトウェア業界の現状を知り、他社との差別化を図る必要があります。

1.業界全体で勢いがある

1990年代にインターネットが普及したことで、ITソフトウェア業界は急速に市場規模を拡大してきました。2000年代以降は1990年代ほどの急激な成長は落ち着き、安定した成長を続けています。

現在は、AIやVRのような新しい技術の開発Iot、ICT、クラウド、ビッグデータなどが社会に浸透してきたこともあり、ITソフトウェア業界を含むIT業界全体は、いまだに衰えることなく勢いにのっている状況です。

2.深刻な技術者不足

ITソフトウェア業界では、急速な市場の成長により多くの人材が必要であるにもかかわらず、プログラマーやシステムエンジニアのような技術者の育成には時間がかかることから、深刻な技術者不足に陥っています。

また、激務やブラック、給料が安いなどのイメージが根強く残っており、特に中小のITソフトウェア開発会社は人材確保が簡単ではありません。

今後も人口減少や少子高齢化などの影響を受けることが予想され、ITソフトウェア業界以外でも人材不足は大きな問題となっているため、ITソフトウェア業界の技術者不足の解消は難しいと予想されています。

ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収の動向

少子高齢化や人口減少などにより様々な産業が大きなダメージを受けている中で、ITソフトウェア業界では、新しい技術の開発が積極的に行われ、市場規模を拡大し続けています。

一方で参入障壁が低いため、ベンチャー企業の参入やM&Aなどによる他業界からの参入が盛んに行われています。本章では、ITソフトウェア業界のM&Aや会社売却、買収の現状と今後の動向について解説します。

1.M&Aの勢いが活発になっている

2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災などの影響を受け、企業のITソフトウェア業界への投資は数年前まで減少から横ばい傾向にありました。

しかし、近年は、IoTやクラウド、AIのような新しい技術が開発され、ITに対する重要性が高まっていることから、企業はITソフトウェア業界への参入に積極的になってきています。

実際に、東証の適時開示情報によるとITソフトウェア業界のM&A件数は、2019年に143件でした。100件を下回っていた2016年から右肩上がりに増加しています。

2.次世代を見通してのM&Aが活発

ITソフトウェア業界では、IoTやクラウド、BI(ビジネスインテリジェンス)、MA(マーケティングオートメーション)など多様なソフトウェア開発が進められています。

また、サイバー攻撃などから情報流出を防ぐ高度なセキュリティソフトの需要も発生するなど、IT化が進むことで、これまで以上の高い技術が必要とされることになります。

多様化・高度化しているソフトウェア開発を実現するために、専門的な技術やノウハウをもつ会社のM&Aが増加していくと予想されています。

3.人手不足・技術者不足によるM&Aの増加

市場が拡大しているITソフトウェア業界では、必要な人材や技術者も増加しています。しかしながら、労働人口の減少などから人材確保が難しく、大きな課題となっています。

実際に、受注はあるのに人材がいないために仕事を受けることができないという状況も発生しています。

ITソフトウェア業界での人材確保は会社としての競争力に直結するため、優秀な人材の確保を目的としたM&Aが増加することが予測されています。

4.構造を変えるような業界再編が起こりつつある

ソフトウェア開発は、顧客から直接注文を受ける元請けの大手企業から、中堅の下請け企業、さらに中堅企業から下請けの中小零細企業に一部の開発をオーダーするというケースが多く、多重下請け構造になっています。

参入障壁が低く、ベンチャー企業やスタートアップ企業が多いため、ITソフトウェア業界には多くの中小零細企業が存在しています。

最下層にいる中小零細企業は、よいソフトウェア開発を行ったとしても利益が少なく事業の拡大が難しいという状況にあるため、事業拡大を目的に大手の傘下に入るというケースが増えています。

【関連】アプリ開発会社のM&A動向!売却相場や買収積極企業、おすすめ仲介会社を解説

ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収相場

ITソフトウェア業界を含むIT業界では、企業価値を算出する際、他業界で利用されているDCF法ではなく、類似業種比較方式が用いられることが一般的です。

類似業種比較方式とは、対象企業と同業の上場企業の価格を基準に算定する方法です。ITソフトウェア業界では、ユーザー数などを基準に企業価値が算定されます。

また、業界内で有名な実力のあるソフトウェア開発者やプロデューサーがいるような会社であれば、企業価値が上がり、M&A相場も高くなるというケースもあります。

一般的に、市場拡大が期待され、活発なM&Aが実施されているITソフトウェア業界のM&A相場は、他業界よりも高めに設定されているケースが多くなっています。

【関連】会社売却の相場

ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収するメリット

次に、ITソフトウェア業界でM&Aする際の、売り手企業目線でのメリットを解説していきます。ITソフトウェア業界のM&Aには下記のような様々なメリットがあります。

【ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収するメリット】

  1. 後継者問題の解決
  2. 従業員の雇用先を確保
  3. 大手傘下に入ることで規模の大きな仕事ができる
  4. 売却益・譲渡益が獲得できる
  5. 個人保証・担保の解消

1.後継者問題の解決

経営者の高齢化や健康面の問題、早期退職など様々な理由により会社を離れる経営者がいますが、会社を引継ぐ後継者を探すのは簡単なことではありません。

会社や事業は好調で継続を希望していても、後継者が見つからずに廃業となるケースもあります。この後継者問題はITソフトウェア業界に限らず、多くの業界で問題となっています。

M&Aにより会社を売却すれば、後継者が見つからなくとも廃業することなく会社を継続することが可能となります。

特にITソフトウェア業界でのM&Aは活発に行われているので、業績がよかったり、特別な技術やノウハウを持っているような会社であれば高い評価を得ることができ、高額で売却できる可能性もあります。

2.従業員の雇用先を確保

M&Aには会社ごとに異なる様々な目的があります。例えば、不採算部門の売却や事業の選択と集中、経営者の引退などがあります。

M&Aをしなければ、対象となる事業は閉鎖となったり会社の倒産や清算となるケースもあります。そして、その事業や会社で働く従業員は解雇されることになる可能性もあります。

しかし、M&Aをすれば、事業や会社が継続されることになるので、従業員の雇用を守ることが可能となります。従業員を守るためにもM&Aは有効な手段です。

3.大手傘下に入ることで規模の大きな仕事ができる

前述のとおり、ITソフトウェア業界は多重下請け構造になっており、最下層の中小零細企業は事業規模の拡大が難しい構造になっています。

というのも、ITソフトウェア業界の仕事柄、機密保持や守秘義務契約のもとに成立している仕事も多く、実績や技術力を公表できない場合があり、会社としての信用を高めるのに時間がかかるためです。

M&Aにより大手の傘下に入れば、最下層では回ってこなかったような仕事を受注できるチャンスが広がることになり、事業の拡大を実現することが可能となります。

4.売却益・譲渡益が獲得できる

業績や企業価値にもよりますが、M&Aにより会社や事業を売却すれば、経営者は多額の売却益や譲渡益を獲得することができます。

例えば負債がある会社が、事業の一部をM&Aにより売却し、対価として金銭を受け取ることができれば、譲渡益で負債を返済することができ、健全な経営に転換することが可能となります。

また、M&Aでの会社の売却益を、早期退職後の生活費に充てたり、新しい事業にチャレンジするための資金にすることもできます。

5.個人保証・担保の解消

中小企業経営者が金融機関から資金を確保するためには、代表者の個人保証や担保が必要となることが一般的です。

そして、個人保証や担保があると、経営に失敗して大きな損失を負った場合などに個人の資産も取り崩さなければいけなくなります

M&Aにより会社売却を行えば、個人保証や担保などの負債は新しい経営者に引継がれることになるため、経営者の個人保証や担保は解消され、自己資産を削られるデメリットがなくなることになります。

ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収事例

ハードオフコーポレーション

出典:https://www.hardoff.co.jp/

ソフトウェア開発の重要性が高まっている中で、ITソフトウェア業界のM&Aはより活発になっています。

2020年2月には、パソコンやテレビなどのハードウェアを中心に衣類やカー用品など様々なリユース事業を展開するハードオフコーポレーションが、インフォノースの株式を取得し完全子会社化しました。

インフォノースはハードオフコーポレーションで使用されているPOSシステムを開発しているITソフトウェア会社です。

インターネット経由での買取や販売に対する需要に対応するためのシステムやソフトウェア開発の内製化を促進し、オムニチャネル化のスピードアップを図ることを目的としたM&Aでした。

ITソフトウェア業界のM&Aの流れ

ITソフトウェア業界でM&Aを成功させるためには、M&A完了までの流れを把握し、流れに沿って不備のないように進めていくことが重要です。本章では、ITソフトウェア業界のM&Aのおおまかな流れを解説します。

【ITソフトウェア業界のM&Aの流れ】

  1. M&A戦略や計画を練る
  2. M&Aの専門家に相談する
  3. M&A先の選定、交渉の開始
  4. トップ同士の面談
  5. 基本合意書の締結
  6. デューデリジェンスの実施
  7. 最終契約書の締結
  8. クロージング

【関連】M&Aの手続きの流れ、進め方について解説!準備から円滑に進めよう

1.M&A戦略や計画を練る

M&Aを円滑に実施するためには、M&A仲介会社のような専門家に相談することが一般的ですが、相談の前にまずは社内でM&A戦略や計画を練る必要があります。

「なぜM&Aをするのか」「いつまでにM&Aを完了させるのか」など、社内の状況を整理し、M&Aの目的やスケジュールをある程度決めておくことで、専門家への相談がスムーズになります。

2.M&Aの専門家に相談する

社内でのM&A戦略や計画が定まったら、M&Aの専門家に相談します。M&Aの専門家には、仲介系M&A会社やコンサルティング系M&A会社、金融系M&A会社、ファイナンシャル・アドバイザーなどがあります。

それぞれの専門家の特徴やメリット・デメリットを理解し、希望のM&Aにするためにはどの専門家にするべきかを十分に考え、信頼できる会社を選ぶことが重要です。

M&Aの専門家が決まったら、仲介契約またはアドバイザリー契約を結び、本格的にM&Aがスタートします。

【関連】 M&AではFAを利用すべき?仲介との違いや業者選びのポイントを解説!

3.M&A先の選定、交渉の開始

M&A会社が決定した後は、専門家とともにM&Aの目的やスケジュール、会社の財務状況などを整理し、会社の価値から売却価格などを決定し、それに見合ったM&A先の選定を行います。

M&Aの相手先は、基本的にM&A仲介会社などが様々なエリアや業界から最適な企業をピックアップし、希望に沿った会社を決定します。

M&A先が決定したら、交渉を開始します。専門家のサポートの下で交渉を進めるので、不明点や疑問点などがあれば、専門家とともに解決していくことができます。

4.トップ同士の面談

相手先もM&Aに積極的であれば、次にトップ同士での面談を行います。実際に会うことで、相手企業のM&Aに対する考え方や、M&A後の経営方針、従業員の処遇など細かい部分を知ることができます

M&A手法によって交渉内容や決定事項は異なりますが、M&A合意に至るまでの詳細な内容を決定することになる非常に重要なステップです。

5.基本合意書の締結

トップ面談や条件交渉を経て、契約内容に双方の合意が得られたら、基本合意契約を締結します。基本合意契約には、M&Aの取引形態や譲渡日、譲渡価額、スケジュールなどが記載されます。

基本合意契約には基本的に法的拘束力はありませんが、締結することで、双方のM&Aに対する本気度を示すことができます

それにより、今後のデューデリジェンスや表明保証条項の決定などのような、時間や費用がかかるステップを進めやすくなります。

6.デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、買い手企業が売り手企業を調査することです。もし売り手企業に財務面や法務面、税務面などで問題があれば、M&A後に大きなリスクとなる可能性もあります。

そのようなリスクを防ぐために売り手企業を様々な専門的視点から調査を行い、M&Aをする価値があるかどうかを見極めるために行われます。

ただし、デューデリジェンスを完璧に行うには時間も費用もかかるうえに、間違いがあるというリスクもあります。

そのため、売り手企業が自ら財務や法務事項などを表明し、その内容が正しいことを保証する表明保証を行うことが一般的です。

7.最終契約書の締結

デューデリジェンスが完了し、最終契約内容が決定し、双方が合意すれば、最終契約を締結します。最終契約書には、これまでに交渉してきた内容を漏れがないように記載することになります。これにより、契約上はM&A完了となります。

内容は基本合意契約と似ている部分もありますが、法的拘束力を持つ書類なので、違反したり、虚偽などがあれば損害賠償請求を受ける可能性もあるので注意が必要です。

たとえ故意ではなくとも間違った表明保証内容や、不十分なデューデリジェンスなどは損害賠償請求の対象となります。

【関連】M&Aの契約書とは?契約手順に沿って意向表明、基本合意書、最終契約書を解説します

8.クロージング

最終契約を締結してもまだ会社の売買は完了していません。譲渡日までに事業や会社の引渡し、譲渡価額の支払い、代表者の変更などを行います。これらの作業をクロージングといいます。

最終契約締結からクロージングまでに一定期間を設けてクロージング作業を行うケースが一般的です。

しかし、ITソフトウェア業界の中小企業のようなスピード感を求める場合には、最終契約と同時にクロージングする場合もあります。

ITソフトウェア業界のM&Aを進める際におすすめの仲介会社

ITソフトウェア業界で円滑にM&Aを進めるためには、基本合意契約や秘密保持契約、デューデリジェンス、表明保証など、専門的な知識が必要となってきます。

契約内容やデューデリジェンス、表明保証内容に不備やミスがあれば、たとえ故意ではなかったとしても、損害賠償請求を受ける可能性もあります。

大きなリスクを避け、ITソフトウェア業界で満足のいくM&Aを成功させるためには、専門家への相談を受けるのがよいでしょう。

M&A総合研究所は、さまざまな業界のM&A成約実績を有するM&A仲介会社です。ITソフトウェア業界に精通したアドバイザーが在籍しており、M&Aをフルサポートいたします。

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まとめ

少子高齢化や人口減少などにより市場規模が縮小している産業が増加している中で、ITソフトウェア業界はまだまだ勢いがあり、今後も成長が期待されている数少ない業界のひとつです。

市場規模拡大への期待や高まるITソフトウェア開発の重要性などから、他業界からのITソフトウェア業界への参入やスタートアップ・ベンチャー企業の参入などが多く、そのため、ITソフトウェア業界では積極的にM&Aが実施されています。

本記事では、ITソフトウェア業界の現状やM&A動向、ITソフトウェア業界でM&Aを行うメリットやM&Aの流れなどを解説してきました。

【ITソフトウェア業界の現状】

  1. 業界全体で勢いがある
  2. 深刻な技術者不足

【ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収の動向】
  1. M&Aの勢いが活発になっている
  2. 次世代を見通してのM&Aが活発
  3. 人手不足・技術者不足によるM&Aの増加
  4. 構造を変えるような業界再編が起こりつつある

【ITソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収するメリット】
  1. 後継者問題の解決
  2. 従業員の雇用先を確保
  3. 大手傘下に入ることで規模の大きな仕事ができる
  4. 売却益・譲渡益が獲得できる
  5. 個人保証・担保の解消

【ITソフトウェア業界のM&Aの流れ】
  1. M&A戦略や計画を練る
  2. M&Aの専門家に相談する
  3. M&A先の選定、交渉の開始
  4. トップ同士の面談
  5. 基本合意書の締結
  6. デューデリジェンスの実施
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