M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年6月27日更新都道府県別M&A
中部地方の事業承継動向を徹底解説|M&Aの成功事例や相談先も紹介
本記事では、中部地方におけるM&A・事業承継の動向や課題などを解説します。中部地方は東京と大阪をつなぐ大都市があり、M&A・事業承継が盛んです。中部地方でM&A・事業承継を検討されている方は必見の内容です。
目次
中部地方の事業承継が抱える深刻な課題
全国的に中小企業の事業承継が喫緊の課題となる中、日本のものづくりを支える中部地方も例外ではありません。特に、自動車や航空宇宙、工作機械などの製造業が集積するこの地域では、独自の技術やノウハウを持つ企業の存続が日本経済全体に影響を与えます。
しかし、経営者の高齢化と後継者不在は深刻化しており、大都市を抱える愛知県ですら高い後継者不在率を記録しています。この状況を打開すべく、地域全体で事業承継M&Aの推進が急務となっています。
データで見る中部地方の事業承継の現状
中部地方は、日本の地域の1つで、近代以降における本州中央部の地方です。その範囲に法律上の明確な定義はありませんが、一般的には新潟県・富山県・石川県・福井県・山梨県・長野県・岐阜県・静岡県・愛知県の9県とされています。
ここでは、中部地方のM&A・事業承継の動向について「後継者不在率」「休廃業件数」の2つの観点から解説します。
中部地方の後継者不在率
2023年における中部地方の後継者不在率は以下のとおりです。
- 新潟県:47.2%
- 富山県:59.4%
- 石川県:58.5%
- 福井県:52.7%
- 山梨県:48.7%
- 長野県:54.1%
- 岐阜県:60.7%
- 静岡県:51.9%
- 愛知県:52.5%
後継者不在率の全国平均は53.9%です。中部地方では、富山県、石川県、長野県、岐阜県の後継者不在率が比較的高く、それに伴い休廃業・解散に至るケースも多くなっているのが現状です。
中部地方の休廃業件数
2023年における中部地方の休廃業件数は以下のとおりです。
- 新潟県:1,107(前年比+13.4%)
- 富山県:544(前年比+26.5%)
- 石川県:526(前年比+23.8%)
- 福井県:389(前年比+6.3%)
- 山梨県:370(前年比+8.8%)
- 長野県:918(前年比+3.8%)
- 岐阜県:958(前年比+13.4%)
- 静岡県:1,620(前年比+6.3%)
- 愛知県:3,439(前年比+14.1%)
中部地方いずれの件でも休廃業件数が増加傾向にあります。
2023年の全国の休廃業・解散件数は前年比で増加し、2年連続で前年を上回りました。この背景には、コロナ禍での実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資の返済本格化や、物価高、人手不足といった経営環境の悪化があります。
特に、これらの要因が重なったことで経営体力が消耗した企業が、将来を悲観して事業継続を断念する「あきらめ廃業」が増加したと見られています。事業承継という選択肢を取れずに廃業に至るケースも多く、地域経済への影響が懸念されています。
中部地方の都道府県別のM&A・事業承継の動向
この章では、中部地方における各県のM&A・事業承継の動向を見ていきましょう。
岐阜県の動向
岐阜県では、製造業を中心に市場の縮小を見越した事業エリアの拡大やシェア獲得を目的としたM&Aが積極的に行われている傾向があります。
また、全国的に経営者の高齢化・後継者不在による休廃業・解散が問題視されていますが、岐阜県では各支援機関と「岐阜県事業承継ネットワーク」を構成し、事業承継診断や事業承継に関するセミナー、相談会などを実施しており、事業承継問題に積極的に取り組んでいます。
愛知県の動向
世界的な企業であるトヨタ自動車、地方有数の大都市である名古屋を有する愛知県は、M&Aが非常に盛んな県の一つです。
2022年の愛知県のM&A件数は206件でした。愛知県は大型のM&Aや海外企業とのM&Aが多い一方、従業員承継の事業承継も件数を伸ばしています。愛知県は後継者不在率が中部地方でトップであり、事業承継が今後も増加するでしょう。
静岡県の動向
静岡県は愛知県と並んで製造業が活発な県で、ヤマハといった著名な企業も本社を置いています。新事業の設立や事業エリア拡大のためなど、企業成長のためにM&Aを行うケースが多いです。
2022年の静岡県のM&A件数は76件と過去最高を記録しており、特に県外の企業とのM&Aが中心となっています。
長野県の動向
長野県は農業・林業が盛んで、製造業では情報通信機械器具製造が活発です。M&A件数も愛知県ほどではないですが、長野県は高い数値を記録しており、2022年には37件のM&Aが実施されています。
他方で人口減少の影響が出ており、人手不足や後継者問題の解決を目的とした事業承継も積極的に行われています。
山梨県の動向
山梨県は、中部地方の他県と比べてM&A件数が格段に少ないのが現状であり、M&Aが浸透しているとはいえません。また、人口減少が顕著に現れており中部地方でも少ないため、今後は事業承継M&Aが増加する可能性があります。
とはいえ、2022年の山梨県のM&A件数は16件と過去最高を記録しています。
中部地方におけるM&A・事業承継の今後の展望
中部地方のM&A・事業承継市場は、今後ますます活発化すると予測されます。自動車業界ではEV化や自動運転技術への対応が急務となり、関連サプライヤーの再編を目的としたM&Aが増加するでしょう。また、インバウンド需要の回復を受け、観光業や宿泊業でも事業拡大や経営基盤強化のためのM&Aが期待されます。
一方で、後継者不在問題はより深刻化し、第三者への事業承継は企業の存続に不可欠な選択肢となります。これを受け、金融機関や公的機関による支援も強化されており、これまでM&Aに馴染みの薄かった地域や小規模事業者においても、事業承継M&Aの件数は増加していく見込みです。
中部地方のM&A・事業承継の案件
弊社M&A総合研究所が取り扱っている中部地方のM&A・事業承継の案件をご紹介します。
【中部地方都市圏】地盤改良工事・地盤調査
資格者が複数名在籍しています(住宅地盤主任技士、宅地建物取引士)。地盤調査を行うにあたり幅広い調査方法が可能です。
エリア | 中部・北陸 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 戦略の見直し |
【無借金経営/Net Cash1億円超】愛知県の水道工事業
愛知県に本社を置き、水道工事業を営む企業の法人(株式)譲渡の案件です。別事業へ注力するため、事業ポートフォリオを見直すことを検討しており売却を希望されています。
民間だけでなく官公庁からの業務も受注しており、毎期安定した収益を計上しています。その影響もあり無借金経営で現金資産を1億円以上保有しております。
創業60年以上の実績があり地域内での信頼は厚い点も特徴です。
エリア | 愛知県 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 応相談 |
譲渡理由 | 別事業に注力するため |
【老舗割烹】旬の食材と職人技が光る日本料理店
静岡県にて複数の店舗を展開する老舗日本料理店の法人譲渡の案件です。高級趣向の老舗割烹として一定の知名度を有しており、創業初期からのリピータ客が多い点が特徴です。
直近期ではコロナ禍に受けたダメージから業績を回復し、コロナ前の水準まで戻りつつあります。
エリア | 静岡県 |
売上高 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 7000万円以上 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
【中部地方/県内唯一】木造住宅パネル製造
2023年は人員不足の関係で戸建てのパネル製造の受注を制限し、売上が減少しています。進行期は直近期を上回る水準、今後は人材リソース拡大により更なる売上増加を見込んでいます。
エリア | 中部・北陸 |
売上高 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 2000万円(応相談) |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【独占輸入/中部地方】音響機器輸入卸売業
直近期は、円安による製品単価の大幅値上げで、業界全体で買い控えが起きている状況です。翌期以降は売上・利益共に回復していく見込みです。
エリア | 中部・北陸 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 事業存続に対する不安、戦略の見直し |
中部地方のM&A・事業承継の事例
中部地方のM&A・事業承継の事例をピックアップしてご紹介します。
中部興産による鷺富運送のM&A・事業承継
2024年4月2日、バローホールディングスは、連結子会社である中部興産(岐阜県可児市)が、鷺富運送(石川県白山市)の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。
中部興産は物流システムの設計・開発や倉庫運営、自社配送を行い、東海・北陸・関東・関西に24の物流センターを運営しています。一方、鷺富運送は、石川県・福井県・富山県を拠点に食料品や医薬品の輸配送業務を展開し、幅広い物流サービスを提供しています。
この株式取得により、両社は物流ノウハウの共有、システム投資の効率化、人材交流を進め、物流領域の拡大とサプライチェーンの高度化を目指します。また、両社のネットワークを活用して新規の集荷・配荷業務の拡大や配送効率の向上も期待されています。
グランディーズによるもりぞうのM&A・事業承継
2022年9月9日、レオパレス21は、連結子会社であるもりぞう(埼玉県戸田市)の全株式を、グランディーズ(大分県大分市)に譲渡することを決定しました。レオパレス21は現在88.24%の株式を保有しており、譲渡前に少数株主から残りの株式を取得し、全株式をグランディーズに譲渡します。
レオパレス21はアパート・マンションの建築や賃貸管理、リゾート施設運営、介護事業などを手がけています。一方、もりぞうは、関東地方や中部地方で国産銘木「木曾ひのき」を使用した中高級戸建住宅の設計・施工を行っています。グランディーズは建売住宅や投資用物件の販売、建築請負などを展開する企業です。
この譲渡は、レオパレス21の経営資源を最適化する目的と、もりぞうのさらなる成長を支援するために行われました。
トーカイによるもみの木のM&A・事業承継
2022年6月6日、トーカイは、もみの木(愛知県豊川市)の福祉用具貸与・販売事業および住宅改修事業の一部を会社分割の方法で承継することを決定しました。この取引は、もみの木を分割会社、トーカイを承継会社とする簡易吸収分割であり、トーカイは対価として150百万円をもみの木に支払う予定です。
トーカイは、病院向けリネンサプライや宿泊施設への寝具貸与、福祉用具の貸与・販売などを展開し、全国に73の事業拠点を持つ企業です。一方、もみの木は愛知県内で福祉用具貸与・販売事業や住宅改修、不動産事業を行っています。
この取引により、トーカイは中部地方における顧客基盤を拡大し、シルバー事業の競争力を強化していくことを目指しています。
中部地方の事業承継で活用できる補助金・税制優遇
事業承継を円滑に進めるためには、国や自治体が提供する支援策の活用が不可欠です。ここでは、中部地方の事業承継で利用可能な代表的な制度を紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継をきっかけに新たな取り組みを行う中小企業や、M&Aにかかる専門家活用費用(仲介手数料やデューデリジェンス費用など)を支援する制度です。補助対象となる経費の2分の1から3分の2が補助され、事業承継後の設備投資や販路開拓にも利用できます。
公募期間が限られているため、中小企業庁の公式サイトで最新情報を確認することが重要です。
中小企業経営強化税制
M&Aによって経営資源を引き継いだ中小企業が、経営力向上のための設備投資を行う際に税制優遇を受けられる制度です。具体的には、取得した設備にかかる費用を即時償却、または取得価額の最大10%を税額控除することが可能です。M&A後の積極的な投資を後押しし、企業の成長を促進します。
事業承継税制(特例措置)
後継者が親族外の役員や従業員、あるいは第三者である場合でも、事業承継に伴う贈与税や相続税の納税を100%猶予・免除できる制度です。特に中小企業の株式は評価額が高額になりがちで、税負担が承継の障壁となるケースが少なくありません。
この特例措置を活用することで、後継者の負担を大幅に軽減し、円滑な事業承継を実現できます。ただし、適用には詳細な要件があるため、税理士など専門家への相談が必須です。
事業承継・M&A時におすすめの相談先
中部地方での事業承継・M&A時におすすめの相談先を3つご紹介します。
金融機関
近年では、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設ける事例が増えています。特に、投資銀行やメガバンクがファイナンシャルアドバイザー(FA)としてM&Aのサポートに重要な役割を果たすケースが多く見られます。
M&Aを進める際、金融機関は資金調達や取引の進行において欠かせないパートナーです。特に買収を検討する際には、資金の確保が不可欠であり、通常は既存の取引がある金融機関が最初の相談相手となります。
金融機関に相談する最大の利点は、資金調達に関する専門的なアドバイスを受けられる点です。例えば、親族や従業員が事業を引き継ぐ場合、株式取得に必要な資金についての助言が求められます。また、M&Aに特化した部門を持つ金融機関は、他の専門家と連携し、適切なアドバイザーの紹介も行います。
ただし、大手金融機関は大規模な案件に重点を置く傾向があり、中小規模の案件には対応しないこともあります。また、仲介ではなくアドバイザリー形式のため、報酬が高額になることがデメリットとなる場合もあります。
公的機関
最近では、公的機関による事業承継やM&Aに関する相談窓口が整備されつつあります。例えば、「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業が抱える後継者不足の問題に対して、公的な支援を提供する窓口として機能しています。
このセンターでは、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイスだけでなく、企業間のマッチング支援も行っています。2021年4月に設立されて以来、全国に設置された拠点で専門家が無料で相談を受け付け、中小企業の事業承継に関わる多様な問題に対応しています。
全国47都道府県に窓口があるため、地方の企業でも利用しやすく、信頼性の高いアドバイスを無料で受けられる点が大きな利点です。また、M&A仲介会社や専門家の紹介も行われており、個人事業主の事業承継にも対応しています。
ただし、公的機関であるため対応が遅れる場合もあり、民間のM&A仲介会社と比べるとサポート内容に限界がある点が課題です。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収や売却を専門にサポートする企業であり、売り手・買い手双方の立場に立って契約を締結し、交渉の進行を円滑に行います。これらの企業は、最初の相談段階から、買収候補の選定、スケジュール管理、企業価値の評価、書類作成に至るまで、M&Aの全工程を包括的にサポートします。
仲介会社は、双方の要望や条件を調整し、最適な合意点を導き出す役割を果たします。そのため、複数の候補から最適な相手を選定でき、結果として成功率の高いM&Aを実現しやすくなります。
特に、初めてM&Aに挑む企業にとっては、仲介会社の丁寧なサポートや的確なアドバイスが大きな安心材料となり、交渉もスムーズに進行します。
ただし、仲介会社によっては、着手金や中間金が発生する場合があり、コスト負担が懸念されることもあります。費用を抑えたい場合は、成功報酬制を採用している企業を選ぶのが一つの方法です。
中部地方のM&A・事業承継向けの公的機関
この章では、中部地方でM&A・事業承継向けのサポートを行なっている公的機関を見ていきましょう。
中小企業基盤整備機構 中部本部
中小企業基盤整備機構は、中小企業における経営課題解決の支援を行う独立行政法人です。昨今の状況を鑑み、中小企業基盤整備機構は事業承継も重要な経営課題の一つだと位置づけ、セミナーや専門家紹介などといった支援を行っています。
中小企業基盤整備機構に限らず、公的な相談機関が行うセミナーや専門家紹介はリーズナブルに受けられるため、ぜひ活用しましょう。
中部経済産業局(愛知・岐阜)、関東経済産業局(長野・山梨・静岡)
経済産業局は各地方にある経済産業省の出先機関で、事業承継税制や事業承継における補助金の申請、事業承継の相談などができます。
ただし、中部地方の場合、県によって管轄している経済産業局が異なるため注意してください。愛知県と岐阜県は中部経済産業局、長野県、山梨県、静岡県は関東経済産業局が管轄です。
中部事業承継紹介センター
中部事業承継紹介センターは、事業承継に悩む経営者のために出会いの場を提供する一般社団法人です。事業承継M&A向けに無料でマッチングを実施しているので、初期費用を抑えて買い手・売り手を探せます。
事業承継M&Aに関するセミナー・情報交換会の実施や、中小企業診断士・弁護士・税理士などといった事業承継専門家との相談会も行っています。中部事業承継紹介センターは、事業承継M&Aを手軽に行える相談機関といえるでしょう。
事業承継・引継ぎ支援センター(中部各所)
事業承継・引継ぎ支援センター(中部各所)は、日本各地にある事業承継の支援機関です。中小企業庁の管轄にある組織で、事業承継を考える中小企業・個人事業主のために外部からの後継者候補をマッチングしています。
M&Aではなく、後継者への事業承継を考えている経営者にとって、事業承継・引継ぎ支援センターは活用しやすい相談機関です。事業承継M&Aにも対応し、専門家紹介も実施しています。
中部地方のM&A・事業承継についてまとめ
中部地方は東京と大阪をつなぐ大都市があり、M&Aが盛んな県が多いです。一方で、人口減少の影響が深刻であるため、今後は事業承継M&Aが増加する可能性が高いといえます。
M&A・事業承継をスムーズに進めていくためには専門家のサポートが不可欠です。検討を始めたらできるだけ早めに相談することが成功のカギともいえるでしょう。
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