M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新業種別M&A
日本語学校業界のM&A動向!M&Aで教員不足を解消しよう!
日本語学校業界は、日本での進学や就職を目指す外国人の増加に伴って需要が伸びています。反面、教員不足が深刻化している問題も抱えており、M&Aを活用して解消を目指す動きも目立っています。今回は、日本語学校のM&A動向やM&Aで得られるメリットをまとめます。
目次
日本語学校業界とは
日本語学校とは、日本語を母語としない者に対して日本語教育を実施する機関です。主に第二言語としての教育を行っており、国内外に点在しています。
国内における日本語学校の基準は法務省による告示の有無で判断されることが多いです。法務省の出入国管理庁が定める「日本語教育機関の告示基準」に適合する日本語教育機関においては、入学者に対して在留資格「留学」が認められる制度になっています。
留学ビザの有効期限は6ヶ月~1年で、更新することで最大2年まで延長することが可能です。留学ビザで滞在する留学生は週の労働時間は最大28時間という定めもありますが、滞在中はアルバイトなどを通して実践経験を積むことができます。
日本語学校業界は所轄が複雑
日本語教育に関わる省庁は多岐に渡っており、経営主体や地域によって管理する省庁も異なります。各機関に直接影響する省庁は異なりますが、国内の日本語教育が適切に行われるように関係省庁で密な連携を取り合っています。
国内においては、日本語教育機関の告示を受けている機関は法務省が、それ以外の機関は文部科学省が管轄です。また海外に拠点を置く日本語教育機関においては、外務省が管理しています。
日本語学校業界の事業特性
日本語学校業界の最大の事業特性は経営主体が多様であることです。個人事業者や法人の他に、国際交流協会や地方自治体が経営している日本語学校もあります。
経営主体の多様化は新規参入のハードルを下げる働きを持っており、近年の日本語学校の需要増加と合わさって様々な経営主体の日本語学校が増えています。
ただ一方で、経営実態を把握しにくくなる問題もあります。小規模な日本語学校が増えすぎると各省庁による管理が難しくなり、日本語学校業界全体の動向を掴みにくいというものです。
日本語学校業界のM&A・譲渡・事業承継動向
日本での生活を目指す外国人増加に比例して日本語学校の需要も急激に伸びています。業界全体が右肩上がりを見せるなか、M&A市場も活況を迎えています。この章では、日本語学校業界の動向を探ることで、M&A・譲渡・事業承継動向を見ていきます。
日本語学校業界にはM&Aが必要
日本語学校は留学生や出身国の政治経済状況に強い影響を受けやすく、学費未納や途中退学リスクが高い業界です。学費の未回収が続くと経営状態の悪化は進み、M&Aによる譲渡を視野に入れる日本語学校が目立っています。
M&Aによる譲渡を行わずに閉校する選択肢もあります。ただ、留学生に与える影響や処分した資産にかかる税金を考慮すると、M&Aで得られるメリットの方が遥かに大きいです。閉校・廃業の前にM&Aの可能性について考慮することが非常に大切です。
また、親族や内部に後継者がいない日本語学校が事業承継を行うケースも増えています。経営状態が安定していても後継者不在のままでは最終的に閉校することになるため、外部から適任者を探して事業承継しています。
日本語学校業界のM&Aは増加傾向にある
日本語学校業界のM&Aが増加傾向にある理由は売り手が抱える問題だけではありません。M&A・買収を活用して事業規模の拡大を図る日本語学校が急激に増加しています。
主に教員確保や他地域への進出を目的としたもので、大手の日本語学校が市場シェアを伸ばすために積極的にM&Aを行っています。
また、日本語学校業界の需要増加を察知した異業種からの参入もあります。ゼロからノウハウを積み重ねるのではなく、既に経営状態にある日本語学校に自社のリソースを投下して効果的な事業展開をする狙いです。
日本語学校業界が抱える問題点
日本語学校業界はいくつかの問題点を抱えています。経営状態に影響するものも多く、業界に参入したものの閉校を余儀なくされている日本語学校も多いです。この章では、日本語学校が抱える問題点を確認します。
【日本語学校業界が抱える問題点】
- 教員不足を抱えている
- 優秀な教員が足りない
- 法令遵守の必要性
1.教員不足を抱えている
日本語学校業界で最も深刻な問題点は、圧倒的な教員不足です。教員の総数で見れば着実に増えてはいるのですが、年々増してくる日本語学校の需要に対して教員の供給が追いついていないのが現状です。
教員不足の要因の一つに、文部科学省の文化庁による「420時間以上の講座受講」があります。法務省の告示を受けている日本語学校の教員は同講座の修了者でなくてはなりません。
日本語学校以外の日本語教育機関の採用条件においても同講座の修了者を指定することも多くなっており、実質的に日本語教員の条件となりつつあります。長時間拘束に対してハードルが高いと感じる人も多く、日本語教員を志す人が減る要因になっています。
2.優秀な教員が足りない
日本語学校は業界全体で教員不足が深刻化していることで、十分な研修を行わずに教員を教育現場に即時投入する傾向にあります。日本語教育現場は経験が浅い教員が大半を占めており、質の高い授業を行える優秀な教員が圧倒的に不足しています。
現場の即時投入は経験を積むことはできますが、業界全体の研修体制が整っていないと潜在的な教育能力や資質を開花させることは難しくなります。日本語教育現場で活躍できる教員の恒常的な育成という課題を抱えています。
3.法令遵守の必要性
日本語学校の役割は外国人に日本語を教えるだけではありません。留学ビザを発行して留学生を受け入れているため、出入国管理法に違反しないように留学生を適切に管理する役割も担っています。
他にも、日本の文化や習慣を一から教えるという役割もあります。日本のグローバル化の一環として出入国管理法の改正等で外国人の受け入れを拡大していますが、日本に訪れた外国人がいきなり労働現場に就いてもトラブルが起きる可能性は高いです。
そこで学校生活を通して日本の規律を教えておくことで、外国人の日本での生活を実現しやすくしています。こうした社会を実現するために厳しい法令が定められており、日本語学校は遵守することを求められています。
M&Aにより日本語学校は教員不足の解消ができる
前章では日本語学校業界が抱える問題点を見てきましたが、特に教員不足に悩んでいる日本語学校が多くなっています。生徒や留学生がいくら集まっても、日本語を教える教員が不足していては満足に授業を実施できません。
ただ日本語教員の育成は時間がかかってしまい、需要を満たすだけの教員を補充することは難しいです。そこで注目されているのがM&Aを活用した教員の確保です。他の日本語学校とのM&Aで経営資源を統合して教員を確保することができます。
M&Aによる譲渡を検討している日本語学校の中には、生徒が集まらずに教員の手が空いているところも多いです。教員不足の買い手と生徒不足の売り手のニーズが一致すれば、M&Aも成立しやすいので有効な手法と言えるでしょう。
日本語学校業界のM&A事例
近年、日本語学校業界では経営課題の解決を目的としたM&Aが活性化しています。この章では、一部の事例をピックアップしてご紹介します。
【日本語学校業界のM&A事例】
- 京進によるダイナミック・ビジネス・カレッジの子会社化
- ルネサンス・アカデミーによる日本語センターの子会社化
- 京進による日本語アカデミーの事業譲受
- 廣済堂HRベトナムによるゼンの子会社化
1.京進によるダイナミック・ビジネス・カレッジの子会社化
2018年12月、京進はダイナミック・ビジネス・カレッジの全株式を取得して連結子会社化することを公表しました。
ダイナミック・ビジネス・カレッジは東京都荒川区で日本語学校を運営する株式会社です。主にアジア圏の留学生を対象に日本の大学進学サポートを行っています。
京進は2010年に東京の日本語学校を買収して日本語教育事業に参入しています。政府が推し進める外国人材の活用拡大を受けて積極的に活動しており、今回の子会社化も日本語教育事業の新たなサービス展開を目的としています。
2.ルネサンス・アカデミーによる日本語センターの子会社化
2017年5月、ルネサンス・アカデミーは日本語センターの全株式を取得して完全子会社化したことを公表しました。
日本語センターは外国人向けの日本語研修と日本語教員を育成する日本語教員養成講座を運営しています。日本語研修は独自の教育メソッドによる短期学習に定評があり、大手企業に努める外国人を対象にしています。
ルネサンス・アカデミーはオンライン教材を活用したマルチデバイス学習サービスを提供しています。双方の経営資源を統合して、日本語研修や日本語教員養成講座のオンライン化による新たな顧客確保を目指します。
3.京進による日本語アカデミーの事業譲受
2017年4月、京進は日本語アカデミーの日本語教育事業である日本語学校「日本語アカデミー」を譲り受けることを公表しました。
日本語アカデミーは福岡県で運営されている日本語学校です。外国人留学生を受け入れて日本語の指導を行っています。
京進は総合教育企業としての歴史のある企業です。日本語教育事業においては歴史は浅いですが、積極的なM&Aを繰り返して業界内の勢力を伸ばしつつあります。今回のM&Aの目的は全国主要都市圏における基盤強化の一環としています。
4.廣済堂HRベトナムによるゼンの子会社化
2016年5月、廣済堂HRベトナムはゼン(ベトナム・ハノイ市)の株式を取得して子会社化することを公表しました。
ゼンはベトナムでZEN日本語学校を運営している株式会社です。ベトナム人を対象にした日本語教育・留学コンサルティングと日本人を対象にしたベトナム語教育を手掛けています。
廣済堂HRベトナムはベトナム国内で総合人材サービスを提供しています。今回のM&Aで獲得したゼンの言語教育事業や留学コンサルティングのノウハウを活用することで、事業規模の拡大を狙います。
日本語学校業界のM&Aによるメリット
日本語学校業界のM&Aは、業界が抱えている問題点を解消できるほどの効果が大きいメリットも得られます。この章では、日本語学校業界のM&Aで得られるメリットを売り手側と買い手側のそれぞれの視点から解説します。
売り手側のメリット
まずはM&Aの実施にあたって売り手側が得られるメリットからです。日本語学校業界においては様々なメリットがありますが、主なメリットは以下の5点が挙げられます。
【日本語学校業界のM&Aにおける売り手側のメリット】
- 教員を確保して経営を安定
- 大手日本語学校グループの傘下入り
- 個人保証・担保の解消
- 後継者問題の解決
- 大手のノウハウを獲得
1.教員を確保して経営を安定
売り手側の最大のメリットは教員の確保による経営安定です。買い手側から教員を派遣してもらったり買い手の経営資源を活用することで独自に教員を調達したりと、教員不足を解消する方法の選択肢が大幅に広がります。
沢山の教員を確保することができれば、多くの生徒や留学生を受け入れることもできますので経営を安定させることに繋がります。
2.大手日本語学校グループの傘下入り
M&Aによる譲渡で大手日本語学校グループの傘下に入るとブランドを手にすることができます。ブランドは信用力にも直結しますので金融機関からの借入もやりやすくなるでしょう。
また大手の日本語学校は現地の仲介機関と強固なネットワークを保有してることがほとんどです。留学を目指す外国人を優先的に紹介してもらえますので、生徒や留学生集めにおいても高い効果を発揮してくれます。
3.個人保証・担保の解消
日本語学校業界は、金融機関からの借入の際に個人保証・担保を提供している経営者も多いです。規模の小さい事業者が資金回収の保険として提供するもので、事業に失敗した時は個人資産で弁済することになります。
大手と比較すると経営基盤の脆弱性や信用力が劣るため仕方のないことですが、非常に大きなリスクで経営者の悩みの種になっています。その点、M&Aなら権利義務の引き継ぎが可能なので、個人保証・担保からも解消されます。
4.後継者問題の解決
全国で少子高齢化が進んでおり、あらゆる業種で後継者問題が深刻化しています。日本語学校業界も例外ではなく、M&Aで後継者問題を解決しようとする動きが強まっています。
従来の事業承継は親族に引き継ぐ「親族内承継」が一般的でしたが、近年は外部から後継者を探す「M&Aによる事業承継」が広く活用されています。広範囲から後継者候補を募ることができるので適任者を探しやすいメリットがあります。
5.大手のノウハウを獲得
大手日本語学校グループに傘下入りすることでノウハウを共有できます。大手が長い時間をかけて培ってきたノウハウは経営基盤を強化する上で大きく役立ってくれるでしょう。
また、M&A後に実施するPMIにおいてもノウハウは重要です。PMIは想定した事業シナジーを創出するための統合プロセスです。経営の流れや教員の特徴を把握した上で適切にノウハウを共有する必要があります。
買い手側のメリット
M&Aにおける買い手側の最終的な目的は事業規模の拡大にありますが、その過程は多岐に渡ります。日本語学校業界の買い手側が得られるメリットは以下の4点です。
【日本語学校業界のM&Aにおける買い手側のメリット】
- 事業を拡大できる
- 新規地域への進出・シェアの獲得
- 低リスクで新規地域への進出
- 新規参入の障壁を低くする
1.事業を拡大できる
M&Aの買い手側の最大のメリットは、事業発展に必要な経営資源をスピーディーに確保できる点です。日本語学校業界においては、教員が代表例です。教員の育成に時間を掛けることなく即戦力を手にできます。
教員以外にも建物・設備の取得もあります。異業種からの参入でゼロから環境を構築するよりも既存の日本語学校を買収することで手早く事業を拡大させることが可能です。
2.新規地域への進出・シェアの獲得
地方の日本語学校を買収することで該当地域の進出とシェアを獲得することができます。国内シェアを拡大してグループの母体が大きくなれば、ブランドも向上して経営の安定に繋げることも可能です。
また、海外進出して現地に日本語学校を開校する動きもあります。日本語学習者は特にアジア圏に集中しており、日本語を使って仕事することを目標にしているため、現地の日本語学校の需要も高いです。
3.低リスクで新規地域への進出
M&Aを活用せずに新規地域へ進出しようとすると莫大なコストがかかります。全てを自前で揃えようとすると、土地確保・建物建設・教員雇用・生徒募集など、手間とコストが計り知れません。
M&Aのよる買収であれば、売り手が保有する資源を活用することができますので不足部分を限定的に補充するだけで低リスクで新規地域へ進出することができます。
4.新規参入の障壁を低くする
大手グループはリスク分散の一環としてM&Aを活用した事業の多角化を行うことが多いです。ノウハウをゼロから積み上げるのではなく、売り手が築いてきた経営基盤を活用することで効果的な事業拡大を狙います。
特に日本語学校業界は異業種からの新規参入が目立つ業界でもあります。ノウハウ以外にも共有したい経営資源は沢山あるため、M&Aを活用することで新規参入のハードルを大きく下げています。
日本語学校業界のM&Aの成功ポイント
M&Aで日本語学校を買収する際は、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。この章では、日本語学校業界のM&Aの成功ポイントを解説します。
【日本語学校業界のM&Aの成功ポイント】
- 収益モデルを確認する
- 人的資産・施設などの保有
- 法令遵守への考え
- 生徒情報の管理
1.収益モデルを確認する
日本語学校の収益モデルにおいて注目する点は、教員の常勤・非常勤です。それぞれの業務内容は異なるため収益モデルにも大きな影響を及ぼします。買収先の教員の常勤・非常勤の割合について、事前に確認しておくことが大切です。
常勤教員はフルタイムで業務に取り組む専属教員です。毎日の授業の他、教材作りや生徒・留学生の相談まで幅広い業務をこなします。
非常勤教員は授業のコマ単位で契約を行います。業務内容は日本語学校次第でばらつきがありますが、基本的には契約した授業のみを担当する形になります。
2.人的資産・施設などの保有
日本語学校の買収目的に教員・事務員等の人的資産の確保があります。それぞれの業務は一定以上のノウハウが求められるものでなので、実務経験がある人的資産は大変貴重です。
また、日本語学校の施設・設備は原則として設置者の所有であることが義務付けられています。条件を満たしていない場合は法務省の告示を取り消されてしまう可能性もありますので、M&Aの前に確認しておくことが重要です。
3.法令遵守への考え
日本語教育機関が日本語学校として留学生を受け入れる上で注目するポイントは、法務省の「日本語教育機関の告示基準」です。告示基準には設備・施設・教員等に対して細かい指定がなされており、全てを満たしていないと法務省の告示を受けることができません。
また、既に告示校であっても告示基準に反する事項が見つかった際は告示が取り消される可能性もあります。買収先の日本語学校が法令を遵守できているか、事前確認が大切です。
4.生徒情報の管理
日本語学校は生徒の情報管理に関する業務が煩雑になる傾向にあります。管理・申請・証明書など、様々な情報を管理することになるため、情報管理についてシステム化できていない日本語学校の場合、生徒情報を正しく管理できていない恐れがあります。
生徒情報が一致していないとM&A後に生徒数に食い違いが起こる可能性もあります。交渉段階から生徒情報の管理体制について尋ねておくと無用なトラブルを避けられます。
日本語学校業界のM&Aは専門家への相談がオススメ
日本語学校業界のM&Aは教員不足の解消を始めとした様々なメリットを得られます。しかし押さえておくべきポイントも沢山ありますので、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
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まとめ
日本語学校は教員不足の深刻化が激しい業界です。M&Aによる解決を目指す日本語学校も増えており、業界内のM&A市場も活性化しています。
この流れは今後も続いていくと見られており、いつM&Aの当事者になってもおかしくない状況にあります。早期から備えておくことで万全の体制でM&Aに臨むことができるでしょう。
【日本語学校業界が抱える問題点】
- 教員不足を抱えている
- 優秀な教員が足りない
- 法令遵守の必要性
【日本語学校業界のM&Aにおける売り手側のメリット】
- 教員を確保して経営を安定
- 大手日本語学校グループの傘下入り
- 個人保証・担保の解消
- 後継者問題の解決
- 大手のノウハウを獲得
【日本語学校業界のM&Aにおける買い手側のメリット】
- 事業を拡大できる
- 新規地域への進出・シェアの獲得
- 低リスクで新規地域への進出
- 新規参入の障壁を低くする
【日本語学校業界のM&Aの成功ポイント】
- 収益モデルを確認する
- 人的資産・施設などの保有
- 法令遵守への考え
- 生徒情報の管理
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