2022年10月17日更新節税

株式の相続にかかる相続税はいくら?計算方法と税率、節税対策を解説

株式の相続は一般的な相続と違い、時間と手間がかかる手続きを要し、相続税計算方法にはさまざまな手法があり、株式の種類や経営権の移転可否によって用いる手法が異なります。今回は、株式相続に伴う相続税について、計算方法や税率、節税対策などを説明します。

目次
  1. 株式の相続にかかる相続税とは
  2. 株式を相続する際の手続き
  3. 株式の相続税評価額の計算方法
  4. 相続した株式を現金化する方法
  5. 株式相続をスムーズに実施するためのポイント
  6. 株式の相続時にかかる税金の節税対策
  7. 株の相続にかかる相続税まとめ

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株式の相続にかかる相続税とは

経営者が相続を実施する際、財産として株式を相続するケースがあります。しかし、相続される財産である以上、株式にも相続税が課せられるでしょう。

どれだけ相続税が発生するのかを事前に把握しなければ、相続人にとって大きな負担になる可能性があります。今回は、株式と相続税の関係性について見ていきましょう。

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株式を相続したときの相続税率

相続税の税率は、株式をはじめとした相続する財産の総額(法律上は「法定相続分に応ずる取得金額」)によって変化し、控除額も変わります。相続税について考える際は税率を知っておきましょう。

相続税の税率は以下のとおりです。(2022年10月時点)

取得金額 相続税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円より上の金額 55% 7,200万円

当然ながら、相続の際に取得する金額が大きいほど相続税率は上がります。控除額も比例して上がりますが、取得金額が大きい場合は、控除額を差し引いたとしても高額の税金が課されるのです。

相続の際は、財産の不動産への転化や生前贈与の実施などにより取得する金額を減らす方法が有効的です。そうすることで、株式の相続にかかる相続税を節税できます。

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相続税の計算と上場・非上場株の関係

株の相続税計算は、上場株か非上場株かで、取り扱いがかなり違います。上場株と非上場株について、以下で詳しく見ていきましょう。

上場株式

公開済み株式とは、上場している株式をさします。自社の株式が公開済み株式の場合、株価がすでに公開されているため、相続税の計算に必要な株式の終値がわかりやすいです。

株式に課せられる相続税を計算する際は、はじめに証券会社に連絡し、残高証明書を発行してもらいます。このとき、被相続人が亡くなっている場合は残高証明書が個人情報扱いになるため、死亡を証明する戸籍謄本などの書類を提出する必要があります。

証券会社をとおさなくても株式の終値を計算できますが、手間がかかるうえ正確さに欠けるため、可能な限り証券会社に頼りましょう。また、相続税を計算する際は、月、前月、前々月における株価終値の平均額の中で最も低い株式の価格を用います。

ちなみに、株式がまだ発売されていない段階のケース(公開途上)では、取引実績がないため株価がわかりません。そのような場合でも、証券会社が通知する公開価格を基準にして相続税を計算できます。

非上場株式

非公開株式とは、非上場の株式をさします。非公開株式の場合、客観的に株価を算出するのが難しいため、公開済み株式と同じ手順では相続税を計算できません

また、公開済み株式であれば、間に証券会社や投資信託銀行が入ってくれますが、非公開株式では、株式を発行している会社に自ら問い合わせる必要があります。

そもそも非公開株式は、公開株式と違ってダイレクトに経営に影響するものです。したがって、保有率の変化に伴い、どれだけ経営に影響が出るのかを調査する必要があります。

相続税を計算するためには、経営の多角的な分析をすることも必要です。相続人が株式を相続することで会社の支配関係に変化が生じる場合は、計算方法も変わってきます。

このように、非公開株式の相続税を自力で計算するのは非常に困難です。非公開株式の相続税を計算する際は、税理士に協力してもらいましょう。

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株式を相続する際の手続き

この章では、株式を相続する際の手続きについて見ていきましょう。

名義変更が必要

まず、相続した株が上場株のケースです。証券口座で口座を管理していた場合は窓口の証券会社、特別口座で管理していた場合は信託銀行で名義変更をしてください。名義を変更する際は、自分名義の証券口座を開設しなければなりません。

相続した株が非上場株のケースでは、株発行会社へ連絡し、名義変更をしましょう。

株の相続を放棄するケース

株の相続を放棄したくても、株に限定した相続放棄はできません。株を相続したくなければ、全ての相続人で遺産分割協議を行い、株以外の財産を相続することに合意してもらいます。

全財産(株も含む)の相続を放棄する際は、相続開始を知った日から3カ月以内に、家庭裁判所における手続が必要です。

現金化して株を分割して相続するケース

現金化して株を分割して相続するケースでは、複数の相続人で分割し、相続できます。一人が株をまとめて相続し、名義変更後に株を売却し、現金として配分するのが一般的な流れです。

株式の相続税評価額の計算方法

株価の計算方式は、会社の規模などによって変化するため、その都度適切な計算式を採用する必要があります。

公開済み株式の場合は、証券会社や投資信託銀行が実施してくれますが、非公開株式の場合は実施してくれません。会社の経営権は、相続人が株式をどれだけの保有率で相続するかによって変化するため、経営権を得るケースの計算方法と、経営権を得ないケースとで計算方法が異なります。

このように、株価の計算方法は状況によって使い分ける必要があります。ここでは、それぞれの計算方法について見ていきましょう。

上場株式の評価方法

上場株には、始値、終値、高値、安値があり、株相続で相続税評価の対象となるのは終値です。基本的に、被相続人が死亡した日の終値が評価の対象です。

ただし、指標がひとつの場合、株価の急な変動などで不公平になるケースがあります。そのため、国税庁はさらに下記の指標を設け、死亡日の終値よりも低い値になると、その中で最も低い値を用いるのです。

  • 課税時期の月における毎日の最終価格の平均値
  • 課税時期の前月における毎日の最終価格の平均値
  • 課税時期の前々月における毎日の最終価格の平均値

証券会社に行き、死亡日の終値と上記の終値が記された「残高証明書」を発行してもらうと、手軽にこれらの終値や平均値を調べられます。受け取りには、被相続人の死亡を確認できる戸籍謄本が必要です。

経営権を得るケース

経営権を得る場合の株価計算方法は原則的評価方式と呼ばれます。原則的評価方式は、会社の規模によって3種類の計算手法を使いわけます。

類似業種比準方式

主に大企業で利用される計算手法です。自社と類似した上場会社を参照し、その株価の数値をベースに計算します。

純資産価額方式

小規模な会社で活用される計算手法です。相続発生日に会社を清算したとの仮定を立て、株主1人にどれだけの分配額が発生するのかを計算します。

折衷方式

中規模な会社で使われる計算手法です。類似業種比準方式と純資産価額方式の両方を一定の割合で組み合わせた計算手法で、会社の規模によって使いわけられます。

以上、3種類の計算方法を規模別に紹介しましたが、会社の事情によっては規模に関係なく計算方法が採択される場合もあるでしょう。

経営権を得ないケース

株式を相続しても経営権を得ない場合は配当還元方式を使用します。配当還元方式の計算は比較的簡単であり、以下の算式を用います。

  • (株主への年間配当額÷0.1)×(1株あたりで算出される資本金などの価格÷50)

この手法は、あくまで経営権を得ないケースにのみ使われ、他のケースでは使用しないため注意しましょう。

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相続した株式を現金化する方法

相続した株式を現金化するには、上場株の場合、最初に名義変更の手続きを行ってください。そのためには、遺言書や遺産分割協議書などの書類により、正当な相続人であることを示す必要があります。

相続人が、証券口座を持っていなければ、新口座を開設しなければなりません。口座を開設すると、相続した株が振替えられ、普通の手続で売却すれば現金化が可能です。現金を手にできるのは、売却してから4営業日目になります。

非上場株の場合は、名義変更から売却の問い合わせまで発行株会社に連絡し、売主を見つけて譲渡承認請求や買取請求を行いましょう。

株式相続をスムーズに実施するためのポイント

ここでは、株式相続をスムーズに実施するためのポイントを2つ紹介します。

  1. 相続人を確定する
  2. アドバイザーを設置する

①相続人を確定する

スムーズな相続を実現するうえで、相続人の確定は必要不可欠な要素です。相続する株式を売却する際は、相続人を1人確定させておく必要があります。被相続人は遺言書をあらかじめ準備し、当事者と事前協議を実施しなければなりません。

②アドバイザーを設置する

株式相続をスムーズに実施するためには、相続税や株価の計算を円滑に進めなければなりません。相続税や株価の計算に詳しい税理士など、専門知識のあるアドバイザーからサポートを受けるのがおすすめです。

株式を伴う相続は、複雑な手続きが多く、多角的に分析するスキルも必要です。素人だけで実施すると余計な手間がかかるだけでなく、正確な数値を算出できない恐れがあります。アドバイザーを設置していれば、そうした懸念を払拭できるでしょう。

また、税理士にアドバイザーを依頼する場合は、相続関係の実績があるかを確認する必要があります。税理士や税理士事務所には得手不得手があり、誰もが相続のサポートに長けているとは限りません。相続の際に税理士を選ぶ場合は、経営者関係の相続について実績を持っている税理士や税理士事務所を選びましょう。

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株式の相続時にかかる税金の節税対策

この章では、株式の相続時にかかる税金の節税対策について見ていきましょう。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

株を相続した後に売却すると、相続税と譲渡所得税が課されます。しかし、株の相続時には相続税の形で税金を払っているので、株の売却時にまた譲渡所得税が課されると、負担が大きくなると考えられるでしょう。

譲渡所得税は、取得費/譲渡費用が多くなるほど譲渡所得が少なくなり、譲渡所得が少なくなるほど支払う税金も減る仕組みです。ここで活用できるのが「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」になります。この特例により、すでに支払った株の相続税が、株の取得費として換算可能です。

ただし、取得費にプラスする場合は、要件を満たす必要があります。

みなし配当課税の特例

相続税は、一般的に現金で支払いますが、相続した株を売却せずに相続税の納付をする場合、手元の現金が足りないケースがあるでしょう。

このケースでは、相続した株を発行株会社に売却して現金化したいと考えますが、ここで問題となるのが「みなし配当課税」です。これは、会社が株主へ配当を払っていないのに払ったとみなされることで、みなし配当とされると、みなし配当を受けた株主に所得税がかかります。

こうした場合のために、「相続により取得した非上場株を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」があります。これに適用すれば、ほとんどの場合、所得税を払うより税金の負担が軽くなるでしょう。

ただし、この特例を受けるには、相続開始日翌日から相続税における申告書の提出期限の翌日以後3年を過ぎる日までに譲渡し、前もって届出書を税務署に出さなければなりません。

株の相続にかかる相続税まとめ

株式の相続は一般的な相続と違い、時間と手間がかかる手続きを要します。どれだけ適切に相続できるかによって、相続税や会社の経営そのものが変わる可能性もあります。

株式相続による相続税を計算したい場合は、アドバイザーの指示を得ながら入念に実施することが重要です。

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