M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月13日更新業種別M&A
web制作会社の事業承継・M&Aマニュアル!課題や注意点を解説
web制作会社はIT業界の目まぐるしい変化もあり、経営に苦しむケースが少なくありません。そのような中、M&Aによる事業承継という選択肢は有効的な手段といえます。本記事では、web制作会社の事業承継M&Aにおける課題・注意点などをお伝えしていきます。
目次
web制作会社の市場動向
近年におけるweb制作業を含む情報サービス業の市場規模を見ると、以下のとおり推移しています。
- 2021年:15兆2,969億8,100万円
- 2022年:15兆9,982億200万円
- 2023年:16兆9,892億6,200万円
上記を見るとわかる通り、情報サービス業の市場規模は年々拡大傾向にあります。
web制作会社における事業承継・M&Aの特徴
web制作会社の事業承継・M&Aには、下記の特徴があります。
第三者への委託
web制作会社の事業はインターネットが普及してから生まれたため、一般的な中小企業に多い経営者の高齢化はあまり見られません。しかし、web制作会社が身を置くIT業界は非常に変化が早く、インターネットの普及以降、関連する技術は続々と発展しています。現在はAIやIoTが注目され、さまざまな会社が起業しています。
ただ、IT業界は良好ではありません。最先端技術が登場し続ける限り、その技術を使いこなせる専門的な知識を持つ人材が必要です。しかし、実用化したばかりの最先端技術を使いこなす人材は限られており、事業に最先端技術を取り入れたくても、そのポテンシャルを引き出せない状況です。
人材の確保、育成に失敗すれば業界の前線に立つことは難しくなるでしょう。また、昨今はスマートフォンの普及もあり、従来のwebサイト制作は下火です。最近はスマートフォンやタブレットに向けたアプリ制作が主流で、webサイト制作がコア事業のweb制作会社は苦境に立っています。
そのため従来の事業を続けるweb制作会社の中には、自社の方法に限界を感じ、第三者に会社を委託する選択を行う会社も増えています。ひと昔前はM&Aを行うことは「会社を売り払う」というネガティブなイメージが伴いましたが、2000年以降にM&Aが定着してからは、積極的に売買するケースが増えています。
web制作会社においても例外ではなく、中小・零細規模のweb制作会社も積極的にM&Aを実施し、第三者に事業承継を行っているのです。
ハッピーリタイアメントの一環
ハッピーリタイアメントのためにM&Aによる事業承継を行うケースもあります。ハッピーリタイアメントとは定年前の50代、早ければ40代で引退し、悠々自適な引退生活を送ることです。ハッピーリタイアメントは欧米では一般的であり、日本でも徐々に定着しつつあります。
ただ、経営者が簡単に引退すると、事業や雇用を放棄することになりかねません。しかし、M&Aで第三者に事業承継を行えば、事業や雇用を守りながら引退できます。また、M&Aによる事業承継であれば売却益を手に入れることができ、引退後の生活資金の確保が可能です。
日本ではハッピーリタイアメントはまだ一般的ではありませんが、今後このような形の事業承継は増えていくでしょう。
web制作会社の事業承継課題
web制作会社の事業承継には、どのような課題があるのか見ていきましょう。
コンテンツの変化
web制作会社はwebサイトなど、さまざまなコンテンツの開発・運営などを行っていますが、事業承継を行うことでそのコンテンツが変化する可能性があります。管理する者が変わる以上、コンテンツへの影響は避けられません。しかしそれが改善でなく、改悪につながるケースは少なくないのです。
webサイトのようなコンテンツは、管理する者によって掲載する情報や内容が変わるため、それがネガティブなものであれば事業が損害を被ることになりかねません。そのため、事業承継を行う際は買い手に自社のコンテンツを任せることができるかしっかり協議しましょう。
買い手が見つからない
「買い手が見つからない」ことはweb制作会社に限らず、M&Aで事業承継を行うあらゆる会社の課題です。日本のM&A市場では業界によって売り手市場となることがあり、売り手が優位になる場面もあります。しかし、それでも条件の合う買い手が見つかる可能性は決して高くはありません。
せっかく巡り会えたとしても、条件で折り合いがつかない買い手もいます。また、会社同士の相性が悪ければ、交渉自体進まないこともあります。さらに、切実な事情を抱えたうえで事業承継を行う場合、買い手が足元を見て不利な条件を押し付けるケースも少なくありません。
頼れる専門家にサポートを依頼するなどして備えておけば、買い手との交渉がはかどるでしょう。
web制作会社の事業承継・M&A案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っているweb制作会社の事業承継・M&A案件例として、WEB制作事業×補助金利用に関するコンサルティング事業をご紹介します。
中小企業や個人商店向けにWEB制作やチラシ作成などの販売促進支援を手掛けています。WEB制作だけでなく、IT導入支援補助金のコンサルティングも対応可能です。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 事業の成長と創業者利益の獲得 |
web制作会社の事業承継・M&A事例
web制作会社の事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。
チェンジホールディングスによる東光コンピュータ・サービスの子会社化
2024年8月14日、株式会社チェンジホールディングス(チェンジHD)は、東光コンピュータ・サービス株式会社を完全子会社化することを決定しました。この取引は、SBIホールディングスの子会社であるSBI地域事業承継投資との協働により進められています。
チェンジHDは、デジタル人材育成や業務のデジタル化を推進する事業を行っており、東光コンピュータ・サービスはシステム開発やソフトウェアの導入サポートを提供しています。今回のM&Aは、システムインテグレーター業界の後継者問題を解決するための取り組みの一環であり、地域活性化を目指しています。
今後、チェンジHDと東光コンピュータ・サービスは、カーボンクレジット事業において全国展開を目指して協力していく予定です。
クロス・マーケティンググループによるトラフィックスの子会社化
2024年2月1日、株式会社クロス・マーケティンググループは、2024年1月31日に株式会社トラフィックス(TFC社)の株式取得を完了しました。クロス・マーケティンググループは、デジタルマーケティングやデータマーケティング事業を展開する企業の管理を行っており、TFC社はBPO、Web制作、クリエイティブを主要事業としています。
TFC社は、自社開発のSaaSソリューション「Entry Box」や「Gate Option」を提供しており、これらのシステムはキャンペーン応募やイベント運営を効率化します。クロス・マーケティンググループは、今回の株式取得を通じて、デジタルマーケティング事業の中核企業との連携を強化し、さらなる成長を目指します。
ラグザスによるフォーティファイヴの子会社化
2023年11月1日、ラグザス(大阪市)は、フォーティファイヴ(大阪市)の全株式を取得し、完全子会社化することに合意しました。ラグザスグループは、プログラミング学習や留学支援などを提供しており、フォーティファイヴはWEB制作やコンテンツ制作を展開する企業です。
本件は、ラグザスの成長戦略の一環であり、サービスと技術を統合し、顧客により効果的なソリューションを提供することが目的です。グループ全体のコンテンツ制作力の向上によるシナジー効果も期待されています。
ベクトルによるアクセンチュアへの連結子会社シグナルの全株式譲渡
2023年7月24日、ベクトルは、完全子会社であるシグナルの全株式をアクセンチュア株式会社に譲渡することを決定し、契約を締結しました。この譲渡は2024年2月期中に完了予定であり、完了時には特別利益が計上される見込みです。
ベクトルは企業PRやコンサルティング事業を展開し、シグナルはPRやWebマーケティング事業を手がけていました。しかし、SNSマーケティングの普及に伴い、ベクトルグループ内で事業が重複するようになったため、事業見直しの一環として株式譲渡が行われることになりました。
100(ハンドレッド)によるウェブドロップスの子会社化
2023年6月2日、100(東京都世田谷区)は、ウェブドロップス(北海道札幌市)の全株式を取得し、子会社化しました。両社は、2023年6月1日より経営統合を見据えた業務を開始しています。
100は、HubSpot導入支援やデジタル化支援、コミュニティカフェの運営を行っており、ウェブドロップスはWeb制作や運用サポートを手掛けています。これまでも両社はHubSpotを用いたWebサイト構築業務で協業してきましたが、今回のM&Aにより、100は体制強化とサービスの拡充を目指しています。
web制作会社における事業承継・M&Aの注意点
web制作会社がM&Aによる事業承継を行う際は、会社の内情に注意を払う必要があります。web制作は個人でも行える事業であるため、web制作会社は10人ほどの従業員で業務を回したり、経営が不安定になったりするケースがあります。
そのような会社では、自社の内情が事業承継の弊害になる可能性が高いです。買い手会社は魅力的なコンテンツや成長性を感じた場合、多少のリスクはのみ込んで買収に踏み切ることもあります。
しかしコンテンツの魅力が低く経営基盤も不安定と判断すれば、取引価格を抑えたり交渉を打ち切ったりすることもあるでしょう。そのため事業承継を行う際は、買い手に魅力的に映るよう会社の磨き上げを行ってください。
他の業界・業種のM&Aでも、売却前に会社の磨き上げを行うケースは多いです。M&Aは売買が成立し、契約が締結した段階でゴールではありません。経営統合を経た後に想定したシナジー効果が発揮され、増益が実現した時点でM&Aに成功したといえます。
良識のある買い手であれば、M&Aを行う際に売り手に潜在するリスクを慎重に分析します。それを怠る買い手は信頼しない方が良いでしょう。売り手のリスクを見つけられず買収後に多大な損害を被ったり、経営不振の会社を買収したものの建て直しができずに赤字経営に陥ったりしたM&A事例は少なくありません。
新たなコンテンツの輩出は難しくとも、スキルがある従業員を確保、負債の整理や資金繰りの改善、業務体制の見直しを行うだけでも売り手としての魅力は上がります。必要であれば経営コンサルティング会社や会計士、税理士などの専門家の力も借りましょう。
web制作会社の事業承継・M&A時におすすめの相談先
web制作会社の事業承継・M&A時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&A支援を専門とする部門を設置する動きが活発化しています。特に、投資銀行や大手メガバンクでは、ファイナンシャルアドバイザー(FA)としてM&A取引をサポートし、資金調達や戦略策定を通じて円滑な取引進行に寄与しています。
このようなサポートを利用することで、企業は資金調達や事業承継といった複雑な課題にも対応しやすくなり、専門家の助言により、取引の成功率が高まるという利点があります。
しかしながら、これらの大手金融機関は、比較的大規模なM&A案件を優先する傾向があるため、中小企業が十分な支援を受けられないことがあります。
そのため、企業は自社の規模やニーズに合った支援機関を慎重に選定することが重要です。また、アドバイザリー報酬が高額になるケースもあるため、事前に費用を確認し、コスト面の計画を立てる必要があります。
公的機関
近年、事業承継やM&Aに対する公的なサポート体制が大幅に強化されています。全国47都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業の後継者問題に対応するための窓口として、事業承継やM&Aに関する情報提供や専門的なアドバイス、企業同士のマッチング支援を無償で行っています。
これにより、地域に根ざした中小企業も簡単に専門的なサポートを受けられる環境が整いました。さらに、個人事業主も支援対象であり、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介も受けることが可能です。
ただし、民間のM&A仲介会社に比べると、対応の迅速さや柔軟性に限界がある場合があるため、利用の際にはその点を考慮する必要があります。これら公的機関は、事業承継やM&Aを検討する企業にとって、信頼性の高い選択肢となっています。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業間の売買を包括的にサポートする専門機関です。売り手と買い手の双方に対し、取引先の選定や交渉の調整、進行スケジュールの管理、企業価値の評価(バリュエーション)、契約書の作成など、取引全体を支援します。彼らの主な役割は、双方の希望や条件を調整し、円滑に取引が進むように導くことです。
特に、広範なネットワークを活用して適切な相手を見つける能力に優れており、M&Aの成立率を高めることが期待できます。経験が少ない企業に対しても、実務的なアドバイスを提供し、スムーズに取引が進行するようサポートします。
ただし、仲介会社を利用する際には、着手金や中間金などの手数料が発生することがあり、コスト面での負担が懸念されることがあります。コストを抑えたい場合は、成功報酬型の仲介会社を選ぶのが適しています。
web制作会社における事業承継・M&Aまとめ
web制作会社はIT業界の目まぐるしい変化もあり、経営に苦しむケースが少なくありません。そのような中、M&Aによる事業承継の選択肢は有効的な手段です。今は業界・業種も問わずM&Aが行われる時代であるため、事業承継M&Aが手段となるのは当然ともいえます。
しかし、事業承継M&Aは専門家の協力がなければ成功しにくいため、相性の良い優れた専門家を見つけましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。