2024年9月24日更新業種別M&A

オフショア開発のM&A・事業承継の動向!事例、買収積極企業も解説

現在はグローバル化が進んでおり、世界中に優秀なIT技術者が数多くいます。この記事では、オフショア開発会社におけるM&A・事業承継の動向や事例、買収積極企業など、オフショア開発のM&A・売却を行うために必要な知識を解説しています。オフショア開発会社のM&A・事業承継をお考えの方は、ぜひお役立てください。

目次
  1. オフショア開発会社の現状・市場規模
  2. オフショア開発会社のM&A・事業承継の動向
  3. オフショア開発会社のM&A・事業承継の方法
  4. オフショア開発会社のM&A・事業承継の案件一覧
  5. オフショア開発会社のM&A・事業承継の事例
  6. オフショア開発会社のM&A・事業承継のメリット
  7. オフショア開発会社のM&A・事業承継の価格相場
  8. オフショア開発会社のM&A・事業承継に積極的な企業
  9. オフショア開発会社のM&A・事業承継を失敗させないコツ
  10. オフショア開発のM&A・事業承継まとめ
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オフショア開発会社の現状・市場規模

ITオフショア開発業界では、特に中小企業が厳しい状況に直面していることが市場データから明らかになっています。例えば、2022年と比較して、従業員100名以下の企業の割合は69%から62%に減少し、11~50名規模の企業も21%から16%に減少しています。

一方、従業員5001名以上の大企業の割合は7%から14%に増加しました。これにより、大企業が人件費削減や効率的なIT技術開発を追求する中で、中小企業にとってオフショア開発の継続が難しくなっている可能性が示唆されています。

国内では高度なIT技術者の需要が高い一方で、その数は依然として不足しています。ITスキルの習得には時間がかかるため、大企業は海外の優秀な技術者を活用する傾向が強まり、今後もITオフショア開発の市場拡大が予測されています。

参考:オフショア開発.com「オフショア開発白書(2023年版)」

オフショア開発会社のM&A・事業承継の動向

ここでは、オフショア開発会社のM&A・売却・買収・事業承継の動向を確認しておきましょう。主に、下記のような特徴があります。

  • 国内で徐々にITオフショア開発が増加中
  • 海外企業へのM&Aが増加
  • 人手確保のために活用
  • 需要拡大を踏まえて成長速度向上のために活用

国内で徐々にITオフショア開発が増加中

これまで国内では、大手企業によるITオフショア開発が活発に行われていました。しかし、近年では、中小企業でも徐々にITオフショア開発を導入する企業が増えつつあります。日本国内のITオフショア開発技術の向上がその理由の一つといえます。

海外企業へのM&Aが増加

日本国内では、IT人材が不足を解消するために、コストを大幅に削減できる海外のITオフショア開発企業を買収するM&Aが増加しています。海外のITオフショア開発企業をグループ傘下に置き、開発体制を自社に最適化させることが目的です。

それ以外にも、優秀な人材の確保や、国内で高騰しているIT技術者の人件費削減などが考えられます。近年、急増している中国やインド、ベトナムのITオフショア開発企業を買収するケースが多くなっています。

人手確保のために活用

日本国内では、IT企業の技術者が不足しています。そのため、海外の優秀な人材を確保するために、M&Aが活用されているのです。

近年のM&Aで注目されているのは、ベトナムやフィリピンなどの東南アジアです。中国やインドと比べて人件費を低く抑えられるため、技術力に引けを取らない東南アジアのITオフショア開発企業のM&Aが行われています。

需要拡大を踏まえて成長速度向上のために活用

これまでは、オフショア開発を受託する側であったインドや中国など企業が、人件費高騰を理由に、委託側になることが予想されます。今後も、需要拡大を踏まえ、さらなる成長を加速させるために、海外のITオフショア開発企業を買収するM&Aは活発に行われるでしょう。

オフショア開発会社のM&A・事業承継の方法

この章では、オフショア開発会社のM&A・事業承継の方法を解説します。

①株式売却・譲渡

株式売却・譲渡とは、株式を相手に譲渡することで経営権を譲渡する方法のことです。株式売却・譲渡では、会社が持っている権利義務や契約関係などは全て引き継がれるため、取引先や従業員は大きな変化がなく事業を継続できます。

株主名簿の書き換えを行うのみでプロセスを済ませられるため、簡便な手続きで行えます。ただし、売り手企業の全てを引き継ぐため、後に簿外債務などが発覚するなどのリスクに注意しましょう。

②事業売却・譲渡

事業売却とは、会社内に属する事業を売却することです。主に売り手が事業を売却する際に用いる言葉であり、事業譲渡と同様の意味合いを持ちます。

事業譲渡では、譲渡対象にする資産・負債、従業員や契約などを選んで個別に進める必要があるため、株式譲渡と比べると手続きが複雑になりやすいです。しかし、買手企業にとっては、簿外債務を引き受けてしまうリスクがない点がメリットといえるでしょう。

③そのほかのM&A手法

上記以外の方法には、合併・会社分割などが挙げられます。以下では、それぞれの特徴を簡単に説明します。

合併とは

合併とは、2つ以上の企業が1つの企業に統合されることです。合併には、1つの事業体が消滅し対象の権利義務を承継する「吸収合併」と、全事業体が消滅してその権利義務の全てを新たな事業体が引き継ぐ「新設合併」があります。

会社分割

会社分割とは、会社の事業が有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させるM&A手法です。分割には、事業を既存の会社に承継させるM&A手法の「吸収分割」と、事業を新しく設立する法人に承継させるM&A手法の「新設分割」があります。

【関連】ソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収の動向/相場/メリットを解説【事例あり】

オフショア開発会社のM&A・事業承継の案件一覧

弊社M&A総合研究所が取り扱っているオフショア開発会社のM&A・事業承継の案件として、ベトナムのソフトウェア開発・オフショア開発業を紹介します。

最も強い分野はSaaSでの中小企業向け会計サービスです。その他にもビックデータ、データ分析サービス、マシンラーニング、AIサービス等幅広く事業を手掛け、急成長を遂げています。

エリア 海外
売上高 5000万円〜1億円
譲渡希望額 希望なし
譲渡理由 戦略の見直し

【ベトナム】ソフトウェア開発・オフショア開発業(ウェブサイト・システム) | M&A総合研究所

オフショア開発会社のM&A・事業承継の事例

オフショア開発会社のM&A・事業承継の事例をピックアップしてご紹介します。

エクシオグループによるICD社のM&A・事業承継

2024年7月31日、エクシオグループは、インタラクティブ・コミュニケーション・デザイン(ICD)の全株式を取得する契約を締結しました。

エクシオグループは通信キャリア事業、都市インフラ事業、システムソリューション事業を展開しており、ICDはソフトウェア開発を中心に多業種の案件に対応しています。さらに、ICDはベトナムに子会社(ICD VIETNAM LIMITED LIABILITY COMPANY)を持ち、オフショア開発やラボ型開発を行っています。

今回のM&Aにより、エクシオグループはシステムソリューション事業の強化および企業価値の向上を図り、ICDおよびそのベトナム子会社はエクシオグループの連結子会社となります。

インタラクティブ・コミュニケーション・デザインの 株式の取得に関するお知らせ

タスキによる大洋クラウドサービスのM&A・事業承継

2023年10月30日、タスキは、大洋クラウドサービスの全株式を取得し、完全子会社化する契約を締結しました。

タスキは、不動産業界のDX化を進めるSaaS事業や、IoTを活用した不動産開発事業を展開しています。一方、大洋クラウドサービスは、建設業界向けに電子データの作成・保存を提供し、ローコード開発プラットフォーム「OutSystems」を活用したIT開発を強みとしています。

今回の株式取得により、タスキは建設DXと不動産DXの融合による事業拡大、SaaS事業の強化、BIMツールの発展、新たなIT開発案件の受託などのシナジー効果を期待しています。この買収は、不動産業界と建設業界におけるDXの遅れを解決し、企業価値の向上に貢献すると判断されました。

株式会社大洋クラウドサービスの株式の取得による 完全子会社化に関するお知らせ

ハイブリッドテクノロジーズによるDTC社のM&A・事業承継

2020年4月1日、エアトリの子会社であるハイブリッドテクノロジーズは、ベトナムにあるDentsu Techno Camp Co., Ltd.(DTC社)を完全子会社化し、社名を「Hybrid Techno Camp Co., Ltd.」に変更することを発表しました。

エアトリはアジアを中心に旅行事業やITオフショア開発事業を展開しており、今回のM&Aにより、DTC社のデジタルマーケティングに強みを持つソリューションを取り込み、シナジー効果を狙っています。

また、ハイブリッドテクノロジーズは、この買収を通じてデジタルマーケティング市場におけるシェア拡大を図り、日本とベトナムをつなぐ企業として成長を目指しています。

Dentsu Techno Camp Co., Ltd.社の持分取得による完全子会社化に関するお知らせ

オフショア開発会社のM&A・事業承継のメリット

本章では、オフショア開発会社を対象とするM&Aで期待されるメリットを、当事会社それぞれの立場に分けて順番に紹介します。

売却側のメリット

売却側で期待されるメリットは、主に以下があります。

  • 後継者不在問題の解消 
  • 社員の雇用先維持
  • 競争激化の状態からの脱却
  • 大手企業への傘下入りに伴う事業の安定化
  • 譲渡利益の獲得

競争激化・市場規模の縮小・トレンドの変化など、オフショア開発業界で起こるさまざまな環境変化を踏まえると、M&Aによる売却は、会社の継続・成長にとって適した選択肢になり得ます。

買収側のメリット

買収側で期待されるメリットとしては、主に以下が挙げられます。

  • 優秀な人材の吸収
  • 成長速度の向上

日本国内での人材確保が難しいことから、外国人の技術者を獲得する目的でM&Aによる買収が行われるケースが増えています。そのほか、近年におけるオフショア開発市場の需要拡大に対応すべく、M&Aによる買収を行うケースも多いです。

【関連】IT企業は株式譲渡・会社譲渡がおすすめ!売却事例やスキームの違いを解説!

オフショア開発会社のM&A・事業承継の価格相場

オフショア開発会社のM&A・事業承継の取引価格は、対象企業の現在における資産価値だけでなく、近い将来に得られる収益の期待額を、ブランド力・事業の将来性・事業シナジーなどを加味しながら算出します。

そのため、ITオフショア開発会社のM&A価格を算出する際は、技術者の数とクオリティが重要な要素です。

ITオフショア開発会社の受託形式には、案件ごとに開発を受注する形式と、契約企業に対して専属チームを組み中長期にわたり開発を行う形式(ラボ型開発)があります。ラボ型開発では将来的に安定収益が期待されるため、企業価値評価にとってプラスに働きやすいでしょう。

【関連】アプリ開発会社のM&Aスキームとは?売却の方法や手順・買収企業・事例・相場を解説【案件一覧】

オフショア開発会社のM&A・事業承継に積極的な企業

ここでは、オフショア開発会社のM&A・事業承継を積極的に行っている買収企業を3社紹介します。

  1. GMOインターネット
  2. オルトプラス
  3. バイタリフィ

①GMOインターネット

GMOインターネットは、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、仮想通貨事業などを展開する総合インターネットグループです。

アジア圏や北米などにおけるスマートフォン関連分野の開発体制強化と、アジア圏における事業展開を進めるために、スマートフォン関連分野の技術力のさらなる強化を図っています。

その一環として、2011年6月には、ベトナムを代表する技術系大学ハノイ工科大学を卒業した優秀なプログラマーやエンジニアを多数有するRun systemと資本業務提携契約を締結しています。

②オルトプラス

オルトプラスは、主にスマートデバイス向けコンテンツの開発・運営を行う日本のソフトウェア開発会社です。オフショア開発や東南アジア進出支援なども行っています。

2019年4月、オルトプラスは、ゲームソフト開発のエクストリーム(東京都豊島区)と共同出資で新会社を設立し、新会社にベトナムのオフショア開発子会社ALTPLUS VIETNAMの全株式を譲渡することを決定しました。

③バイタリフィ

バイタリフィは、ベトナムでのオフショア開発や、iPhone・Androidなどのスマートフォン向けのアプリ開発、Webサービスの企画開発などを得意とする会社です。

2019年7月、バイタリフィは、ハノイでオフショア開発を手掛けるスクーティーと資本業務提携を行い、第3者割当増資を引き受け、子会社化しました。これによりバイタリフィは、日本向けだけでなく、東南アジアからの請負やAI分野での新サービスの開発などを加速させています。

【関連】ベトナムのM&A事情!特徴や注意点と成功のポイント・事例を紹介!

オフショア開発会社のM&A・事業承継を失敗させないコツ

オフショア開発会社のM&A・事業承継を失敗させないためには、以下のポイントを意識して進めることが必要です。

  1. 計画的に準備してM&A・事業承継を行う
  2. 業界需要に注意してタイミングを逃さない
  3. 簿外債務などに注意する
  4. M&A・事業承継の交渉期間の情報漏えいに注意する
  5. M&A・事業承継の専門家に相談する

①計画的に準備してM&A・事業承継を行う

オフショア開発会社のM&Aを失敗させないためには、M&Aアドバイザリーとの個別相談・M&A仲介会社との仲介契約締結・企業価値評価などを計画的に準備してM&A・事業承継を行うことが大切です。

M&Aは自身で進めることも可能ですが、実務量が非常に多いうえに、税務や法務などの専門知識が必要とされるため、専門家のサポートを受けて行う方が効率的でしょう。

②業界需要に注意してタイミングを逃さない

オフショア開発会社のM&Aを失敗させないためには、業界需要に注意してタイミングを逃さないことも重要です。現在、IT人材不足は年々深刻さを増しており、業界需要は非常に高い状態にあるといえます。

③簿外債務などに注意する

オフショア開発会社のM&Aを失敗させないためには、簿外債務などのリスクにも注意しておかなければなりません。簿外債務とは、企業の貸借対照表上に計上されていない債務のことです。「簿外負債」とも呼ばれています。

中小企業の場合、簿外債務・簿外負債が発生するケースは決して珍しくないため、デューデリジェンスを徹底し、リスクを最小限に抑えることが必要不可欠です。

④M&A・事業承継の交渉期間の情報漏えいに注意する

オフショア開発会社のM&Aを失敗させないためには、M&Aの交渉期間の情報漏えいに注意することが大切です。M&Aを行う際は、秘密保持契約を結びます。秘密保持契約とは、M&Aに関する情報を秘匿するために締結される契約のことです。

M&Aは異なる会社同士が経営統合を行うため、情報漏えいは従業員や取引先を動揺させる要因となり、離職や取引中止などが起こるおそれがあります。情報漏えいを防ぐためには、秘密保持契約を締結するとともに、従業員や取引先への告知タイミングにも注意しておくことが重要です。

⑤M&A・事業承継の専門家に相談する

M&A・事業承継自体は自社の経営陣のみで進めることも可能です。しかし、スムーズかつ効果的に進めるためには、M&Aに関する専門知識や経験が必要不可欠です。特にオフショア開発のM&A・事業承継には注意すべき点が多いため、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら進めましょう。

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オフショア開発のM&A・事業承継まとめ

昨今はグローバル化が進んでおり、世界中に優秀なIT技術者が数多くいます。そのため、オフショア開発を行うことで、海外の優秀な人材をシステム開発に引き込み、より高品質のシステム開発を目指すことが可能です。 

今後はこれまで以上にグローバル化が進むため、オフショア開発会社のM&A・売却・買収はより積極的に行われるようになると推測されています。

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